連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第118回
2022年10月26日(水)にNetflixで配信された映画『ムッソリーニの財宝を狙え』。レナート・デ・マリアが脚本・監督を務めた、2022年製作のイタリアのアクションアドベンチャー作品です。
第二次世界大戦末期のイタリアを舞台に、レジスタンスに参加した寄せ集めのチームが、ミラノにあるファシストの庁舎から、第二次世界大戦を誘発したイタリアのファシズム政治家ムッソリーニの財宝を盗み出すという大胆な計画を企てたという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ピエトロ・カステリット主演の映画『ムッソリーニの財宝を狙え』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『ムッソリーニの財宝を狙え』の作品情報
【配信】
2022年(イタリア映画)
【脚本】
レナート・デ・マリア、フェデリコ・ニェジニ、ヴァレンティーナ・ストラーダ
【監督】
レナート・デ・マリア
【キャスト】
ピエトロ・カステリット、マティルダ・デ・アンジェリス、フィリッポ・ティーミ、トンマーゾ・ラーニョ、マッチョ・カパトンダ、イザベラ・フェラーリ、アルベルト・アストーリ、ルイジ・フェデーレ、ココ・レベッカ・エドガメ、マウリツィオ・ロンバルディ
【作品概要】
『ザ・ルースレス とあるマフィアの転落人生』(2019)のレナート・デ・マリアが脚本・監督を務めた、イタリアのアクションアドベンチャー作品です。
本作はR16+指定作品であるため、16歳以下の方は視聴できません。
『アルマジロの予言』(2019)のピエトロ・カステリットが主演を務めています。
映画『ムッソリーニの財宝を狙え』のあらすじとネタバレ
1945年、第二次世界大戦末期。イタリア社会共和国(RSI)の国家総領および首相のベニート・ムッソリーニと彼が率いる政党「国家ファシスト党」は、自分たちが提唱した政治イデオロギー「ファシズム」に基づいて、独裁的な政治を行なっていました。
ですが実質的に、この第2のイタリア・ファシズム政権は、ドイツの傀儡政権でした。
「パルチザン」や「レジスタンス」と呼ばれる彼らの支配に抵抗する者たちは、日々命懸けでレジスタンス運動を行なっていました。
そんな中、泥棒のピエトロ・ランベルティ(仲間からはイソラと呼ばれている)は、仲間のマルチェロ・ダボリとアメデオと共に、パルチザンに武器や弾薬などを売り、何とか生活費を稼いでいました。
そんなある日、マルチェロはミラノにあるファシスト(ファシズムにおける活動家や賛同者のこと)の庁舎からの暗号文を傍受しました。
アメデオがアメリカの子供向け漫画をヒントに解読した結果、ムッソリーニとその幹部連中が、7日後にスイスに亡命しようとしていることが判明。
さらに彼らは、イタリア軍の全ての司令部があり警備が厳重な場所「ブラックゾーン」の宝物庫に保管された、イタリア国民から奪った金塊とイタリアの財宝すべてを持っていこうとしているのです。
それを知ったピエトロ(以後、イソラと表記)は、マルチェロと旧知の仲である爆弾の専門家モロトフ、腕っぷしに自信がある女泥棒ヘッサ、ドイツのニュルブルクリンク24時間耐久レースの王者ジョヴァンニ・ファブリを新たに仲間に加え、ムッソリーニの財宝を盗むという計画を企てました。
しかしここである問題が発生します。マルチェロが連れてくるはずのモロトフが逮捕され、縛り首の刑に処されることとなったのです。
そこでイソラたちは、モロトフ救出作戦を決行。ヘッサが警備兵から手錠の鍵を盗み、カトリック教会の関係者に扮したイソラがその鍵を受け取り、モロトフに渡す。
そして刑が実行されたと同時に、マルチェロがモロトフの首にかけられた縄目掛けて狙撃し、ファブリが車をドリフト走行して舞い上がらせた砂塵に紛れて、モロトフを救出・奪還するという作戦でした。
ムッソリーニの財宝が運び出されるまで残り5日。無事メンバーが揃ったところで、イソラは早速計画内容を皆に伝えます。
まずブラックゾーンに入るための許可証をヘッサが手に入れ、アメデオがそれを偽造する。
偽造に必要なイタリア社会共和国(RSI)のスタンプは、イソラの仲間が庁舎から盗みます。
次に兵士や囚人を運んでいるトラックを盗む。それをファブリが運転し、兵士に扮したモロトフとイソラが乗り、他のメンバーはその座席の下に隠れます。
ヘッサがブラックゾーンにある警報の管理センター「シレーネ塔」に登り、空襲時になる警報を鳴らす。
そうすれば空襲が来ると勘違いした警備員たちが一斉にシェルターに逃げ込みます。さらにモロトフとアメデオがその周囲に爆弾を設置し、空襲されたように見せかければ完璧です。
そして誰もいなくなったブラックゾーンの宝物庫に、イソラたちが侵入。完璧に人払いをしたため、財宝だけでなく、国民が盗まれた宝もゆっくり時間かけて盗むことができる、というのがイソラが企てた強奪計画でした。
計画内容を聞いたモロトフは、イソラに爆薬はどうやって調達するのか尋ねます。空襲に見せかけるほどの爆発を起こすには、100キロの爆発性ブロック「トリニトロトルエン(TNT)」が必要です。
当然ファシストからは盗めないため、イソラはこの間武器を売買したパルチザンのアハブに売った分を奪うことにしました。
アハブに売った武器弾薬、爆薬はおおむねミラノの北にあるブリアンツァの別荘にあります。その別荘の主人はレジスタンス側の映画監督で、アハブのおじのマルケーゼ・セルベローニです。
イソラは自分たちの協力者であり、自身の恋人であるイボンヌに、RSIのスタンプを盗んで欲しいと頼みに行きました。
しかしその帰り際、イソラは隠し通路の先で待ち伏せていたイタリア陸軍のアキル・ボルサリーノ大佐と彼の腹心であるレオニダに捕まってしまいます。
実はイボンヌは、ボルサリーノの愛人でした。そのためボルサリーノは、「禁制品の売買は許すが俺の女に手を出すな。仲間ともども縛り首にされたくなければな」と忠告しにきたのです。
残り4日。イソラたちは使用人とパーティー客に扮して、ブリアンツァの別荘で開かれたセルベローニ主催のパーティーに潜入。
セルベローニにわざとシャンパンをかけて1人きりにさせ、武器・弾薬・爆薬の保管場所を吐かせます。
作戦は見事成功し、無事爆薬を調達したイソラたち。ですが出発前、パーティーに出席していたアハブに見つかってしまい、イソラはまたもやピンチに陥ります。
そんな彼を助けたのは、見張りをしつつ盗んだシャンパンを嗜んでいたファブリでした。ファブリのおかげで難を逃れたイソラは、皆と一緒に車でその場から立ち去ります。
映画『ムッソリーニの財宝を狙え』の感想と評価
イソラことピエトロ・ランベルティ率いる寄せ集めのチームが、ムッソリーニの財宝を強奪するという大胆な計画は、その財宝があるブラックゾーンという厳重な警備を突破しなければならないという非常に難易度が高いものでした。
そしてなんといっても、イソラたち6人が誰一人欠けることなく、計画実行する日を迎えることが最も重要なことです。
なぜなら、イソラたちの敵として立ち塞がるボルサリーノと彼が率いる軍隊が、いつどこでイソラたちを捕まえにくるか分かりません。
イソラたちの計画がボルサリーノたちにバレやしないか、誰かが捕まったり殺されたりしないかどうか、終始ハラハラドキドキさせられます。
また、今回の強奪計画以前に、イソラはボルサリーノと確執がありました。2人はイボンヌを巡って争う恋のライバルでした。
強奪計画前にイソラがボルサリーノに捕まった時はどうなるかヒヤヒヤしましたが、イボンヌから手を引くことを条件に、ボルサリーノは彼を見逃したのです。
それほど、ボルサリーノはイボンヌにご執心だったのでしょう。そのことを前々から知っているノラが、彼への愛が憎しみに変わり、イソラに協力するという裏切りをするのも納得がいきます。
そんな愛憎劇もあるなか、イソラたちは予定を前倒しにして強奪計画を実行。彼らはムッソリーニの財宝を盗み出すことに成功しました。
マルチェロがイソラを殺そうとした兵士を狙撃する姿と、ノラたちの裏切りに遭いピンチに陥ったイソラたちの元へ、アハブたちパルチザンが救援に駆けつける姿は、観る人の心にズキュンとくるほどとても格好良いです。
まとめ
ファシズム時代のイタリア・ミラノで、イソラたち寄せ集めのチームがボルサリーノたちイタリアの軍隊を相手取り、ムッソリーニの財宝を盗み出すという、イタリアのアクションアドベンチャー作品でした。
イソラたちの頼もしい協力者であったイボンヌの突然の離脱、モロトフの死、ノラがイソラたちに取引を持ち掛けることなど、作中では思わぬ人物が予想外の行動に出ることがあって驚かされることばかりです。
そしてなんといっても、作中最も難敵とされたボルサリーノが、イソラたちと戦って死ぬのではなく、裏切った妻のノラに殺されるという衝撃の結末を迎えます。
モロトフの死に関しては、モロトフがマルチェロと同じくイソラの父親の戦友だったこと、またチームの若いメンバーにとっては父親的ポジションであったことから、モロトフが誰に看取られることなく爆死したことはとてもショックで、悲しく思いました。
また、本作は史実に基づいたほぼ実話の物語となっています。
登場人物たちの人間模様と、ド派手なアクションで描かれるムッソリーニの財宝強奪計画を描いた、ハラハラドキドキのアクションアドベンチャー映画が観たい人にとてもオススメな作品です。