パソコンも使えないアナログ捜査官vs天才サイバー犯罪者の戦いを描いたサスペンス!
ティラー・ラッセルが脚本・監督を務めた、2021年製作のアメリカのPG12指定のサイバー・ダーク・サスペンス映画『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』。
1人の若き天才が立ち上げた、ドラッグや殺人まで匿名で取引可能な史上最大の闇サイト「シルクロード」。
そのシルクロードを使って起きた犯罪事件を追うことになった、パソコンも使えない現場主義の麻薬捜査官の姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
全米が震撼したサイバー犯罪事件を題材にした、ジェイソン・クラーク主演のサイバー・ダーク・サスペンス映画『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』の作品情報
【公開】
2022年(アメリカ映画)
【原作】
デヴィッド・クシュナーの小説『Dead End on Silk Road: Internet Crime Kingpin Ross Ulbricht’s Big Fall』
【脚本・監督】
ティラー・ラッセル
【キャスト】
ジェイソン・クラーク、ニック・ロビンソン、ケイティ・アセルトン、ジミ・シンプソン、ダニエル・デヴィッド・スチュワート、ダレル・ブリット=ギブソン、レクシー・レーブ、ウィル・ロップ、ポール・ウォルター・ハウザー、アレクサンドラ・シップ
【作品概要】
『トゥルー・リベンジ』(2010)のティラー・ラッセルが脚本・監督を務めた、アメリカのサイバー・ダーク・サスペンス作品。
原作は、『Zola ゾラ』(2022)の製作総指揮・原作を担当したデヴィッド・クシュナーの小説『Dead End on Silk Road: Internet Crime Kingpin Ross Ulbricht’s Big Fall』です。
本作は、実際に2013年に摘発された闇サイト「シルクロード」の事件を題材にしています。
主演を務めるのは『ターミネーター:新起動/ジェネシス』(2015)のジェイソン・クラーク、共演は『ジュラシック・ワールド』(2015)のニック・ロビンソンです。
映画『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』のあらすじとネタバレ
2011年。アメリカ東部メリーランド州ボルチモアの麻薬取締局(DEA)に所属する麻薬捜査官リック・ボーデンは、自分勝手かつ強引な性格が災いし、麻薬組織のボスを怒らせ、18ヶ月かかったプエルトリコでの捜査を無駄にしてしまいました。
更生施設に入れられ、休職を余儀なくされたリック。長きにわたる入院生活を終え、帰宅した彼は妻のサンディから、幼い娘エディに学習障害があることを知らされます。
その翌日。リックは職場に復帰しようとしましたが、上司のジョニー・モラレスから、サイバー犯罪課への異動を命じられてしまいました。
ですがリックは、パソコンが使えないアナログ捜査官でした。そのためリックは、パソコンの使い方すら分からず戸惑っていました。
一方、アメリカ南部テキサス州オースティンに住む青年のロス・ウルブリヒトは、天才的な頭脳を持っているものの、飽きやすい性格で何を始めても長続きしませんでした。
自由な世界を求めていたロスは、親友のマックスのアイデアを参考に、接続経路を匿名化するソフトウェア「Tor(トーア)」と暗号通貨「ビットコイン」を組み合わせ、違法薬物を完全匿名で取引可能にした闇サイトを開設します。
それから3ヶ月後。闇サイトのベータ版「地下ブローカー」を完成させたロスは、ベータテストとして実際に違法薬物を購入しました。
ロスが買った違法薬物は何の問題もなく郵送され、ベータテストは無事成功。ジュリアはそれは違法だと止めるも、ロスは聞く耳を持ちません。
挙句、ロスはその時彼女が読んでいた本『チンギス・ハーンとモンゴル帝国の歩み』を見て、彼女に酷評されたサイト名を「シルクロード」に改名しました。
「シルクロード」が本格的に運営されていく中、リックは早くサイバー犯罪課の一員になろうと必死に努力していました。
しかしリックの年下の上司である、DEAのサイバー犯罪課のシールズ主任から、「引退するまでの9ヶ月間、何もしなくていい」と通告を受けてしまいます。
自分なりのやり方で捜査活動を続けたいと考えたリックは、馴染みの情報屋レイフォードに会いに行き、どうやって薬物をネットで買うのか教えろと言いました。
これに対しレイフォードは、麻薬常用者向けのサイトで買えると言い、リックに「シルクロード」を見せました。
リックはレイフォードに協力して貰い、試しに「シルクロード」で違法薬物を購入してみることに。するとその1週間後、何の問題もなく違法薬物が郵送されました。
一方ロスは、「シルクロード」内のチャットルームやサイト運営の記録を記したブログ「フォーラム」を使って、「シルクロード」について宣伝するもなかなか上手くいきません。
そこでロスの恋人ジュリア・ヴィーが、ネットメディアにコネがあるといって、記者のエイドリアンを紹介します。
エイドリアンはロスの話に飛びつき、すぐさま「シルクロード」について記事を書きました。
その結果、「シルクロード」は「闇のAmazon」「ドラッグのeBay(イーベイ)」とも呼ばれ、1日の売上が1億円を越えるほどにまで成長しました。
一方その頃、家族3人で水族館に出掛けたリックは、サンディからエディのような学習障害がある子供が通う学校の学費が4万ドルすることを聞かされます。
リックとサンディは悩んだ末、エディのために奨学金の申請をすることにしました。
それから6ヶ月後。リックはサイバー犯罪課を訪れた警官から、郵便公社が麻薬探知犬やX線検査を使って阻止したこと、押収した麻薬入りの封筒にはどれもラクダのスタンプがついていたことを知らされます。
レイフォード経由でリックに届いた封筒にも、ラクダのスタンプがついていました。しかし差出人の住所氏名が記載されていないため、ユタ州ソルトレイクシティの消印がされていることしか分かりません。
そこでリックは、レイフォードに売人の名前を尋ねます。しかし、レイフォードが答えた「クロニック・ペイン」という名前は、売人がネット上で使っているハンドルネームでした。
クロニック・ペインは、以前からチャットでやり取りをしていたロスからその優秀さを買われ、「シルクロード」の運営の一翼を担ってくれないかとスカウトされていました。
その日の夜。リックは「ノブ」という悪人に扮して「シルクロード」に登録。チャットルームでサイト管理者であるロスに接触を図りました。
映画『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』の感想と評価
世界を揺るがした「シルクロード」事件の真相を暴いた、現場主義のアナログ捜査官リック。
DEAのベテラン捜査官として「シルクロード」の運営の一翼を担っていたカーティスを逮捕し尋問する様はとても頼もしくて格好良いです。
そんな格好良いリックが、パソコンの使い方すら分からず、1人悪戦苦闘しているのはギャップがあって可愛いですし、彼と同じパソコンが苦手な人にとって親しみやすさを感じます。
対してロスは、天才的な頭脳を持ち主。自由な世界を求めて、「シルクロード」を開設・運営していきます。
最初は麻薬の売買だけで、人に危害が及ぶような犯罪行為は行わないと決めていたロスでしたが、闇サイトの闇に魅入られてしまったのか、ジュリアたちに隠れて「シルクロード」で武器の売買までできるようにしてしまいました。
そしてついに、殺人の依頼までするように………。どんどん闇へと堕ちていくロスには、ジュリアに「世界を変えるような、何か大きなことを成し遂げたい」と目を輝かせて語っていた時の面影は微塵もありません。
2人とも一つのことに没頭するあまり愛する人たちを蔑ろにしてしまいますが、愛する人たちを突き放したか、愛する人たちの幸せを願っていたかの違いで、リックたちはそれぞれ対照的な結末を迎えたのではないかと考察します。
まとめ
世界を揺るがした史上最大の闇サイトを立ち上げ運営する天才サイバー犯罪者を、パソコンもろくに使えないアナログ捜査官が追い詰めていく、アメリカのサイバー・ダーク・サスペンス作品でした。
ロスは昔から、自分が思い描いていた世界と現実世界とのギャップがあまりに大きかったことに不満を感じていたと、作中で語っています。
それ故に、ロスは他の誰よりも自由な世界を求めていました。そして逮捕されてもなお、「シルクロード」を立ち上げたことに後悔はしていませんでした。
本作は実際にあった「シルクロード」の事件を題材に描かれていますが、ティラー・ラッセルが手掛けた脚本によるフィクションも織り交ぜられているため、実在の天才サイバー犯罪者ロス・ウルブリヒトが本当にそう思っていたかは定かではありません。
ただ、実在のロス・ウルブリヒトも本作のもう1人の主人公ロス同様、承認欲求が強い人物だったのではないかと考察します。
組織に認められないアナログ捜査官と、世間に認められない天才サイバー犯罪者に心揺さぶられるサイバー・ダーク・サスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。