人を狂わせる「魔女の森」で、極秘任務は遂行できるのか!?
第2次世界大戦末期の時代を舞台に、森に墜落した輸送機と極秘書類の捜索に向かった、アメリカ軍が遭遇する恐怖を描いた映画『ウォーハント 魔界戦線』。
本作は戦争映画の緊張感に、ホラー映画の要素を加えた、独特の世界観になっています。
森に潜む魔女に遭遇する、ブリューワー軍曹の部隊と、魔女の秘密を探るジョンソン少佐という、同時進行する2つの話が合わさった時、驚愕のラストが待ち受ける、本作の魅力をご紹介します。
映画『ウォーハント 魔界戦線』の作品情報
【公開】
2022年公開(アメリカ映画)
【原題】
WarHunt
【監督・原案・脚本】
マウロ・ボレッリ
【共同脚本】
レジー・ケヨハラ3世、スコット・スバトス
【キャスト】
ミッキー・ローク、ロバート・ネッパー、ジャクソン・ラスボーン、アグラヤ・タラーソバ、アンナ・パリガ、ロー・スタッセン、ポリーナ・プシュカレバ・ニオリー
【作品概要】『
第二次世界大戦末期、ナチスに撃墜され、森に墜落した輸送機の捜索を命じられたブリューワー軍曹達が、謎の魔女に遭遇するアクションホラー。
ブリューワー軍曹の上官で、魔女の秘密を探るジョンソン少佐を『ナインハーフ』(1986)『レスラー』(2008)のミッキー・ロークが存在感たっぷりに演じています。
ブリューワー軍曹を演じるロバート・ネッパーは、「HEROES ヒーローズ」「ツイン・ピークス The Return」など、数々のテレビドラマに出演している実力派の俳優。
ブリューワー軍曹から密命を受け、部隊の中で暗躍するウォルシュを、「トワイライト・サーガ」シリーズの、ジャスパー・ヘイル役で一躍有名になったジャクソン・ラスボーンが演じています。
映画『ウォーハント 魔界戦線』のあらすじとネタバレ
第2次世界大戦末期の1945年、ナチスドイツと激しい戦いを繰り広げているアメリカ軍。
機密文書を乗せたアメリカ軍の輸送機が、謎の攻撃を受けてドイツの森に墜落した為、ブリューワー軍曹率いる部隊が、捜索に入ることになります。
捜索当日、ブリューワー軍曹の上官であるジョンソン少佐が現れ、ウォルシュという兵士を部隊に加えるように命じます。
ブリューワー軍曹は乗り気ではありませんでしたが、上官の命令に逆らう訳にもいかず、嫌々ながらウォルシュを部隊に加えます。
墜落機の捜索を進める部隊は、木の上に吊るされたドイツ軍の兵士の死体を発見します。
死体からは、ドイツ軍しか所有していない装備で攻撃された痕跡があり、考えられる理由は「仲間割れが起きた」ということでした。
そこに、森に潜んでいたドイツ兵が突然現れ、ブリューワー軍曹の部隊は攻撃を受けますが、反撃してドイツ兵を1人捕虜にします。
さらに森の中を進む部隊は、山の中に不自然な小屋を発見します。若い兵士であるラッカーは、山小屋の中を覗き、綺麗な女性が入浴していることに興奮します。
その後、輸送機の墜落ポイントに到着した部隊は、それぞれ別行動を開始します。ラッカーは、先程の美女と森で出会い、墜落した輸送機まで案内してもらいます
そして、美女の誘惑を受け入れたラッカーでしたが、その数分後に森に銃声が響き渡ります。一方、基地に戻ったジョンソン少佐は、古いドイツ語の書物の解読を開始します。
100年前のドイツ語で書かれた、その書物には「生命の樹」という謎の言葉が記されていますが、ジョンソン少佐には心当たりがあるようでした。
映画『ウォーハント 魔界戦線』感想と評価
極秘任務を受け、墜落した輸送機の探索に出た部隊が、迷い込んだのは「魔女の住む森だった」という、独特の世界観を持つ映画『ウォーハント 魔界戦線』。
本作の特徴は、ドイツ軍の潜む森で、極秘任務を遂行しようとする、アメリカ軍の戦いを描いた「戦争映画の緊張感」を持つ前半と、人間を「生命の樹」の生贄にしようと襲ってくる、魔女との戦いが中心になる「異形の者とのサバイバル」の後半で、作風が大きく変わる点です。
ただ「何の脈絡もなく、いきなり魔女が登場するか?」というとそうではなく、森の中を散策するブリューワー軍曹の部隊が、同士討ちしたと思われるドイツ兵の死体に遭遇したり、捕虜にしたドイツ兵が心神喪失状態だったりと、何となく嫌な雰囲気は、前半から感じる演出になっています。
特に、ブリューワー軍曹の部隊に、新たに参加することになったウォルシュは、極秘任務の詳細を明らかに知っているけど、何も話さないというキャラクターで、戦闘経験がないはずなのに、アメリカ兵のラッカーを簡単に取り押さえるなど、謎が多いです。
前半は、ブリューワー軍曹がメインの視点で物語が進み、上官であるジョンソン少佐の命令で、仕方なく隊に入れるしかなかった、自身の素性を明かそうとしないウォルシュの不気味さに翻弄されながら、森に潜むドイツ兵や異形の存在から、隊員の命を守るという、ブリューワー軍曹の責務を果たす為の戦いが続きます。
この辺りの戦いは、映画『プレデター』(1987)に作風が近いですね。
ですが、物語の中盤から一転し、魔女により精神が狂わされたブリューワー軍曹から、これまで謎だらけだったウォルシュの視点に代わり、物語は進行します。
「戦争映画の緊張感」から「異形の者とのサバイバル」に作風が変化するのは、ブリューワー軍曹からウォルシュの視点に切り替わった時です。
これまで、謎の存在だった魔女の正体が明らかになり、ウォルシュも「不死身の軍隊を、ドイツ軍に渡さない為の作戦」を実行していたことが分かります。
ここから「生命の樹」や「魔女の記録書」「太陽のコンパス」などの言葉が飛び交うようになり、SFホラーの要素が強くなります。
そしてクライマックスで、最高の活躍を見せるのが、ミッキーローク演じるジョンソン少佐。
ミッキーロークは、片目に銀色の眼帯を装着し、普段は杖をついて歩いているものの、魔女相手にマシンガンをぶっ放し、毒ガス攻撃を喰らわす、カッコ良くて強いジョンソン少佐を、魅力たっぷりに演じています。
嫌味を言うブリューワー軍曹に「お前との会話は楽しいよ」と言い放ったり、基地から出る際に「ちょっとブーツを汚してくる」と言い、魔女との戦いに出向いたりと、ジョンソン少佐の名台詞にも注目です。
「戦争映画の緊張感」「異形の者とのサバイバル」「ジョンソン少佐VS魔女」と、怒涛の展開の後に行き着く、背筋の凍るような展開も、本作を締め括るには「これしかない」と言える最高のラストです。
93分という、最近の映画の中では比較的短めの上映時間で、ここまでいろいろな要素を詰め込み、観客の感情を揺さぶり続けるという意味で、なかなか面白い作品でした。
まとめ
戦争映画の緊張感に、ホラー映画の恐怖を加え、ミッキーロークで仕上げた本作。
ところどころにツッコミ要素もいろいろある、いわゆるB級映画なのですが、とにかく観客の感情を揺さぶり続けようとする、工夫は感じる作品です。
難しいテーマやメッセージ性は何も入れず、ただただ無心で楽しめる作品に振り切った辺り、かなり好感の持てる作品でした。