ベトナム戦争に関する分析を記録した、国防総省の最高機密文書“ペンタゴン・ペーパーズ”。
機密文書の存在を世に発表しようとしたワシントン・ポスト紙のキャサリン・グラハムの姿を、巨匠スティーブンスピルバーグが描く社会派サスペンス。
2018年3月30日より公開中の映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
The Post
【監督】
スティーブン・スピルバーグ
【製作総指揮】
ティム・ホワイト
【キャスト】
メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス、アリソン・ブリー
【作品概要】
政府が隠す最高機密文書、通称“ペンタゴン・ペーパーズ”。アメリカ政府の圧力と戦いながら、機密文書の存在を公表しようとしたキャサリン・グラハムの実話をスティーブン・スピルバーグ監督が映画化。
メリル・ストリープとトム・ハンクスが主演を務め、2大オスカー俳優が初共演を果たしたことで話題になっています。
2.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』あらすじとネタバレ
1965年、激化するベトナム戦争。
国防総省勤務のダニエル・エルズバーグは、ベトナム戦争に同行し、戦地で詳細をまとめた報告書を作成していました。
アメリカへ戻る飛行機の機内で、国防長官のマクナマラに戦況を聞かれたエルズバーグは「ベトナム戦争は絶望的な状況」と伝えます。
しかし、アメリカ政府はエルズバーグの証言を無視し、マスコミには「戦況は好転している」と伝え、エルズバーグは失望します。
アメリカへ戻ったエルズバーグは、政府がベトナム戦争に対する詳細をまとめた機密文書を秘密裏に持ち出し、コピーを開始します。
機密文書にはベトナム戦争が絶望的な状況であることを、アメリカ政府が認めている事実が記載されていました。
ワシントンポスト紙の女性発行人キャサリン・グラハムは、会社の株式公開に向けて準備を進めていました。
キャサリンは自殺した夫の意思を継ぎ、ワシントンポストの経営者になりましたが、記者のベン・ブラッドリーに現場のことには口を出さないで欲しいと釘を刺されるなど、組織の統括に苦労していました。
ベンはニューヨークタイムズの敏腕記者ニール・シーハンが、長い期間記事を書いていない事に疑問を感じ、若い記者を使って探りを入れます。
そこで分かったことは、次の日のニューヨークタイムズ紙に大きな記事が掲載されるらしいということだけでした。
次の日、ニューヨークタイムズ紙には、アメリカ政府が長い間ベトナム戦争において、国民を欺いていた事実と、それを証明する文書に関する記事が掲載されていました。
ニューヨークタイムズに特ダネを独占され、怒ったベンは、残りの文書を手に入れる為に、マクナマラと仲が良いキャサリンに文書を入手するよう懇願しますが、キャサリンに拒否されます。
しかし、謎の経路からワシントンポストに文書の一部が届きますが、届けられた記事の中身は、すでにニューヨークタイムズが記事にしていた内容でした。
そして、ニューヨークタイムズは、機密文書に関する記事を掲載したことで、ホワイトハウスからの圧力がかかり、出版差し止め命令を受けます。
この状況をチャンスと捉えたベンは、独自に機密文書の入手に動いていた新聞記者ベン・バグディキアンを頼り、バグディキアンは友人であるエルズバーグの居場所を突き止め、膨大な量の機密文書を入手します。
ベンが機密文書の入手と、掲載に躍起になっている事を危惧したキャサリンはマクナマラを訪ねて、文書に関する情報とアドバイスを求めます。
マクナマラは「記事を掲載すれば、ニクソンはあらゆる手段を使い、君を潰しにくる」と警告。しかし、キャサリンは「決めるのは自分」とマクナマラに伝えます。
ベンはバグディキアンが入手した機密文書を、数名のスタッフと共に解読と記事にする準備を進めていました。
次の日の新聞に掲載するには、10時間で記事にしなければなりません。
しかし、情報源がニューヨークタイムズと同じである以上、機密文書に関する記事を掲載すると、裁判所の決定に従わない「法廷侮辱罪」が適用される可能性があります。
また、ニューヨークタイムズが3ヵ月かけて精査した機密文書を、僅か10時間で記事にする事を危険視されます。
ワシントンポストのスタッフ間でも掲載に関して対立が始まり、ベンは判断を仰ぐ為に、キャサリンに電話をします。
3.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』感想と評価
メリル・ストリープとトム・ハンクスの実力派俳優が、初共演を果たした本作。
キャサリン・グラハムという、実在した人物に挑んだメリル・ストリープは、「権力に立ち向かう強い女性」ではなく、突然新聞社をまとめなければならくなり、戸惑いながらも逆境に立ち向かう女性として、愛嬌たっぷりに演じています。
機密文書に関する記事を掲載する事を決断するシーンでは、悩みぬいて決断を下すというより、勢いで決めてしまったという雰囲気で演じ、電話を切った後に「とんでも無い事を決めてしまった」という細かい演技を見せており、非常に親近感が沸く人物として演じています。
対するトム・ハンクスは、終始低いトーンの声で、早口でまくしたてるように喋るなど、切れ者の新聞記者という印象を観客に与えます。
メリル・ストリープとトム・ハンクスが、顔を会わせるシーンは多くなく、2人が同じ画面にいる時はストーリーが進む時なので、毎回非常に緊迫感のあるシーンになっています。
また、脇を固める俳優も魅力的な人が多く、特に機密文書を入手する新聞記者、ベン・バグディキアン役のボブ・オデンカークが、渋い雰囲気を出しながら、時に感情的に、時にユーモラスに演じており、存在感を出していました。
ボブ・オデンカークは、海外のテレビドラマを中心に活躍している俳優ですが、今後は製作と主演でアクション映画も企画されているとの情報があるので、非常に楽しみです。
監督を務めたスティーブン・スピルバーグの演出も見事で、キャサリンが機密文書の記事を掲載する事を決断する場面では、細かいカット割りや、さまざまなアングルで撮影し、電話をしているだけなのに、非常に緊迫感のある場面になっています。
スピルバーグ監督の職人技に関心しました。
4.映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』まとめ
スピルバーグ監督は、トランプ大統領の誕生を危惧し「今、撮るべき映画」として本作を急いで製作しました。
政府の隠ぺい体質は、現在の日本も決して他人事ではありません。
言論の自由を、あらためて考える良いキッカケになる作品だと思います。
また、映画としても非常にクオリティの高い作品となっているので、お勧めです。
本作のラストは、ニクソンが辞任するキッカケになった「ウォーターゲート事件」に繋がっており、興味のある方は、リーアム・ニーソン主演の映画『ザ・シークレットマン』と併せて観賞すると、更に楽しめますよ。