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映画『ザ・シークレットマン』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

ウォーターゲート事件を内部告発したFBI副長官の目線で映像化。

『コンカッション』や『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のピーター・ランデスマン監督が徹底的なリサーチの末に脚本を書き上げた映画『ザ・シークレットマン』をご紹介します。

1.映画『ザ・シークレットマン』の作品情報


(C) 2017 Felt Film Holdings.LLC

【公開】
2018年(アメリカ映画)

【原題】
Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House

【監督】
ピーター・ランデズマン

【キャスト】
リーアム・ニーソン、ダイアン・レイン、マートン・ソーカス、アイク・バリンホルツ、トニー・ゴールドウィン、ブルース・グリーンウッド、マイケル・C・ホール、ブライアン・ダーシー・ジョーンズ、ジョシュ・ルーカス、エディ・マーサン、ウェンディ・マクレンドン=コービ、マイカ・モンロー、トム・サイズモア、ジュリアン・モリス、ケイト・ウォルシュ、ノア・ワイリー

【作品概要】
アメリカ合衆国で初めて任期途中に辞任へと追い込まれたリチャード・ニクソン大統領。
その引き金となったウォーターゲート事件と、事件の全容を白日の下に晒し、ディープ・スロートと呼ばれた告発者の全容を描いたサスペンス映画。

フェルト役を『シンドラーのリスト』や『96時間』で知られるリーアム・ニーソンが演じ、その妻オードリー役を『トスカーナの休日』のダイアン・レインが務めています。

演出は『コンカッション』や『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のピーター・ランデスマン。

2.『ザ・シークレットマン』あらすじとネタバレ


(C) 2017 Felt Film Holdings.LLC

FBI副長官のマーク・フェルトは、ホワイトハウスの上層部から煙たがられながらも、圧力に屈する事無く正当な捜査を貫き、その姿から「FBI捜査官の鑑」と言われていました。

ある日、フェルトの元にFBIの長官、ジョン・エドガー・フーバーが死去したという知らせが入ります。

フェルトは早急に機密書類を破棄し、長官の引継ぎ体制に入ります。

次期長官はフェルトと思われましたが、FBI長官代理として、ニクソン大統領の忠臣であるL. パトリック・グレイが派遣されます。

これまでFBIの幹部は全員叩き上げでしたが、ホワイトハウスの息がかかった部外者が長官代理に就任した事に、フェルトは不満を抱きます。

帰宅したフェルトに妻オードリーは退職を勧めますが、フェルトは「まともな長官が現れたら」と拒みます。

また、フェルトの娘ジョアンが家出をして1年間音信不通となっており、オードリーの精神状態は不安定になっていたのです。

その夜、1本の電話がフェルトにかかってきます。

「複雑な内容なので、現場に来てほしい」との連絡に、フェルトはウォーターゲートビルに向かいます。

現場には民主党本部に侵入し、盗聴器を仕掛けようとした5人の男が逮捕されていました。

5人は全員が元CIAに属し、中には元FBIだった者までいることから、フェルトは事件の異常性を感じます。

早速、捜査の指揮を執るフェルトでしたが、グレイは48時間で捜査を打ち切るように指示を出します。

グレイのオフィスに大統領法律顧問のジョン・ディーンの姿を見た事から、ホワイトハウスによる捜査妨害の可能性を感じたフェルト。

彼は対抗策として、ある行動に出ます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ザ・シークレットマン』ネタバレ・結末の記載がございます。『ザ・シークレットマン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
フェルトはタイム誌の記者で友人である、サンディ・スミスと密会し、圧力を受けていると情報を流します。

その情報は翌日、記事として掲載されグレイは激怒しました。

フェルトも参考人のリスト情報を、ホワイトハウスが把握していた事から、情報が漏洩していることを確信します。

ホワイトハウスの妨害により、全く進展しないウォーターゲート事件の捜査。

フェルトは同時に、アメリカ国内の極左テロ組織「ウェザー・アンダー・グラウンド」の捜査もグレイに命じられます。

そのままタイムリミットである48時間が経過し、アメリカ政府は捜査終了をテレビで宣言しますが、納得いかないFBI捜査官達は激怒します。

しかし、ウォーターゲート事件など無かった事のように、ニクソンは大統領選は再選を決めます。

フェルトはワシントン・ポスト紙記者のボブ・ウッドワードと密会し、ウォーターゲート事件の情報を流します。

全容が掴めない事件を、記事にする事に戸惑うウッドワードに、フェルトは「その情報は爆弾だ」と忠告しました。

更にワシントン・ポスト紙では、謎の密告者に「ディープ・スロート」と名前を付けた事をフェルトは聞かされますが「名前など、どうでもいい」と言い放ちます。

次の日のワシントン・ポスト紙に「FBI捜査官が証言」という見出しで、ウォーターゲート事件の極秘情報が掲載されていました。

FBIの極秘情報が外部に流出した異常事態に、組織内は混乱。

グレイにより長年本部に勤めていた捜査官たちは、別の支局に飛ばされて行きます。

そして、密告者はフェルトと考えたグレイは、副長官をフェルトから汚れ仕事を専門にしているFBI幹部、ビル・サリバンに変更すると伝えます。

フェルトは、サンディ・スミスに更なる機密情報を密告、機密情報がタイム誌に掲載されます。

機密情報が洩れている事を問題視され、グレイは審議会に呼び出されます。

審議会での追及に、観念したグレイは、自分がディーンに82件の機密情報を渡していた事を告白。

ウォーターゲート事件の、ホワイトハウスによる関与を認めます。

これにより、世論の反発を受けたニクソン大統領は辞任、グレイとディーンも辞職に追い込まれます。

フェルトはウォーターゲート事件と同時に、ジョアンが極左テロ組織と関係している可能性から、独自の捜査を進めており、ジョアンの居場所を突き止めるのでした。

それから3年後、FBIを退官したフェルトは、「ウェザー・アンダー・グラウンド」の捜査で不法に家宅侵入した罪に問われ、裁判を受けます。

尋問に「自分が全てやった」と仲間だった捜査官をかばい、全ての罪を被るフェルト。

最後に陪審員から「あなたがディープ・スロートなのか?」と質問されます。

その質問にフェルトは、何も答えないのでした。

3.映画『ザ・シークレットマン』の感想と評価


(C) 2017 Felt Film Holdings.LLC

20世紀後半のアメリカ政治史上、重大な事件の1つと言われているウォーターゲート事件

謎の密告者「ディープ・スロート」の存在が、人々の関心を集め続け、30年間謎の存在とされていました。

本作は2005年7月に、自らディープスロートだと明かした、マーク・フェルトの目線でウォーターゲート事件を描いています。

何故、マーク・フェルトは機密情報を外部に漏らしたのか?

劇中で「FBIは家族同然だった」というセリフを、さまざまな人物が言っている事から、フェルトはアメリカ政府の関係者によって破壊され始めた、FBIという組織を守る為の行動だったと思います。

最後はFBI長官代理となったグレイに命じられた、汚れた仕事の始末を一手に引き受けて、フェルトは有罪となってしまいます。

本作で脚本と監督を務めたピーター・ランデズマンは、フェルトを「自己犠牲の精神がある人物」と評しており、アメリカ人というよりもむしろ日本人に近いと感じています。

組織の中で1人苦しみ続けるフェルトの姿は、私たち日本人にもが共感できる部分があります。

ただ、鑑賞される際には「ウォーターゲート事件」に関わった人たちや、時代背景などを少し予習しておくと良いでしょう。

まとめ


(C) 2017 Felt Film Holdings.LLC

本作は、報道記者でもあったピーター・ランデズマンの徹底的なリサーチにより制作されました。

フェルト役を演じたリーアム・ニーソンもフェルトを、徹底的に研究したそうです。

表情を顔に出さず、常に周囲を観察していたというフェルトを完全に再現しています。

本作でリーアム・ニーソンが表情を変えるのは3回だけですが、ちょっとした動きでフェルトの心理状態を観客に伝えており、演技派俳優の実力を見せつけています

演技を活かしたカメラワークでは、FBI捜査官同士が疑心暗鬼に陥る場面や、フェルトが新聞記者と密会する場面などは、画面全体が手持ちカメラで撮影された映像となっており、ドキュメントのような緊張感のある映像となっています。

自らの信念を貫くため、大統領という絶対的な権力に挑み失墜させたマーク・フェルトを、緊張感のある映像で静かに描いた『ザ・シークレットマン』、2月24日(土)より新宿バルト9ほかで公開中です。

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