映画『溺れるナイフ』は、ジョージ朝倉による人気少女コミックの映画化作品。
映画『溺れるナイフ』は、菅田将暉と小松菜奈の2度目の共演となる青春ラブストーリーで、10代の若者の恋愛と成長を描いています。
原作は、映画化された『ピース オブ ケイク』でも知られる漫画家・ジョージ朝倉の同名少女コミック。
『あの娘が海辺で踊ってる』『5つ数えれば君の夢』などで注目を集めた女性監督・山戸結希が取りまとめ、「MOON CHILD」の井土紀州が共同脚本を手がけました。
あやうい魅力を持つ少年と美しすぎる少女の恋の行方を、菅田将暉と小松菜奈が熱演しています。
映画『溺れるナイフ』の作品情報
【公開】
2016年(日本映画)
【監督】
山戸結希
【原作】
『溺れるナイフ』ジョージ朝倉
【キャスト】
小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音、志磨遼平、斉藤陽一郎、伊藤歩夢、堀内正美、市川実和子、ミッキー・カーチス
【作品概要】
『溺れるナイフ』は、『ピースオブケイク』(2015)のジョージ朝倉による同名漫画の映画化作品。原作は、2004年から別冊フレンドにて連載が始まり、2014年まで休載を挟みながら連載され、単行本は前17巻で完結しています。
監督の山戸結希は、独学で製作した短編『あの娘が海辺で踊ってる』(2012)で第24回東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞します。
その後、『5つ数えれば君の夢』(2014)で商業映画デビューを果たし、乃木坂46の「ハルジオンが咲く頃」、RADWIMPSの「光」などのミュージックビデオを手掛けています。
女性監督やキャストを起用した企画のプロデュースも行っており、映画『21世紀の女の子』(2018)を製作しました。2019年には『ホットギミックガールミーツボーイ』を監督しています。
主演の小松菜奈は、本作と『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)『黒崎君の言いなりになんてならない』(2016)『ヒーローマニア-生活-』(2016)で第90回キネマ旬報ベスト・テンで新人女優賞を受賞しています。
カメラマン役で出演したのは、音楽ユニットであるドレスコーズの志磨遼平。本作の主題歌「コミック・ジェネレイション」も手がけています。本作で映画初出演を果たしました。
映画『溺れるナイフ』のネタバレとあらすじ
中学生の望月夏芽(小松菜奈)は、家族の事情で田舎の浮雲町へと引っ越してきました。
雑誌モデルの仕事を続けたい夏芽は東京に戻りたいと思っていましたが、海辺で出会った同級生の長谷川航一郎(菅田将暉)に恋をします。
航一郎は地元一帯を取り仕切る神主一族の跡取り息子で、自由奔放です。航一郎の気を引きたい夏芽は、写真家の広能晶吾(志磨遼平)に写真を撮ってもらいます。
撮影中に、突然現れた航一郎は、夏芽は自分のものだと言い放って去っていきました。
出来上がった写真集を見せたのをきっかけに急接近した航一郎と夏芽は付き合うようになります。
火祭りの夜、東京から来た旅行客の男に騙されて車に乗せられた夏芽は山奥に連れて行かれ、強姦されかけました。
助けにやってきた航一郎も殴られて倒れこみます。町の大人たちが止めに入り大事にはいたりませんでしたが、夏芽は心に傷を負いました。
高校生になった夏芽は、レイプされたとネットや学校でも噂されてふさぎこみながら生活していました。
中学のころからの同級生の大友勝利(重岡大毅)と松永カナ(上白石萌音)はふたりの仲を心配しています。
一方で航一郎は高校に上がってからは不良連中とつるんでいました。下校帰りに航一郎の姿を見かけた夏芽は追いかけて港までやってきました。
ボートにのりこむ航一郎を追いかけて夏芽も乗ります。「あの時助けて欲しかった」と伝えるものの、「自分たちは幻想を見ていたんだ」と言って取り合いません。そんな航一郎を押して一緒に海に飛び込んだ夏芽。
お前の人生に俺を巻き込むなと、航一郎は夏芽を突き放しました。
ずぶぬれになって帰宅した夏芽を大友が慰めます。一緒にバッティングセンターに行って将来の夢のことなど話します。
距離を縮めたふたり。翌日風邪で寝込んでいるところに大友はお見舞いに来ました。
元気が出るCDを持ってきた大友は、航一郎との仲を知っているので遠慮していましたが、夏芽のためになんでもしてやりたい、笑わせたいと言われて付き合うことになりました。
下校中突然、映画の話をするためにカメラマンの広能が現れます。シナリオではレイプシーンがあり、そのことを理由に広能に断ります。
がっかりした様子の広能は、もう会うことはないだろうと言って去って行きました。
映画『溺れるナイフ』の感想と評価
漫画の実写映画化ということで、非現実的な映像とポップな音楽が独特の世界観を築いた作品となっていました。
特に、2カ所ある水中のシーンはとても幻想的です。菅田将暉と小松菜奈のふたりの表情と演技を、水中で見事に捉えています。
原作の舞台でもある和歌山の熊野で撮られた本作、撮影期間はたった17日間という限られたスケジュールだったそうです。
撮り直しのきかない状況で困難を極める水中、そして海面に顔を出してやりとりする場面もいくつかありました。
セリフはアフレコのようでしたが、波に揺られながら目線を合わせて演技するふたりには注目です。
また、無数の水の泡がのぼっていく様子や、海上から水深部に差し込む光の度合も絶妙な美しさで、音楽とマッチしています。
また、本作の魅力はなんといっても小松菜奈の唯一無二の存在感です。
漫画原作の本作が映画化されることになり、漫画ファンが「神キャスト」だと歓喜したそうですが、漫画から出てきたようなオーラのある雰囲気と、少し物憂げな表情がはまり役でした。
原作者の朝倉ジョージは実写映像化できないような漫画にしようと描いていたと語っています。
本作の映像化にあたって、主演の小松菜奈なしでは成立しなかったのではないでしょうか。また、ミュージックビデオを思わせるような楽曲の使い方にも注目です。
まとめ
2016年に『ディストラクション・ベイビーズ』で初共演した小松菜奈と菅田将暉。本作で2度目の共演を果たし、その後『糸』で3度目の共演となっています。
ふたりが息の合った演技で、10代の切ない恋心と夢に向かって成長していく姿を熱演しています。主演のふたりに注目して観てみてはいかかでしょうか。