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Entry 2021/11/29
Update

『アバウトタイム 』ネタバレ結末あらすじと感想考察。愛おしい時間についてリチャード・カーティス監督が奥深い家族の姿を描く

  • Writer :
  • 大塚まき

ラブコメ×タイムトラベルで本当の愛や幸せな“時間”を描く成長物語

タイムトラベルという能力を手にした青年・ティムが、時間を何度も遡り本当の愛や幸せとは何かに気づいていく姿を描いた『アバウト・タイム 愛おしい時間について』。

本作は、『ノッティングヒルの恋人』(1999)『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)などの脚本家と知られるリチャード・カーティスが監督を務めました。

タイムトラベル能力をもつ主人公・ティム役は『ハリー・ポッターと死の秘宝』(2010)『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)のドーナル・グリーソン、ヒロインのメアリー役に『きみに読む物語』(2005)『誰のせいでもない』(2015)のレイチェル・マクアダムス、ティムの父親役にはビル・ナイ。

タイムトラベルというモチーフでラブコメを交えて奥深い人生観まで描いた『アバウト・タイム 愛おしい時間について』。

本作がどういう構成で描き出し、観る人を惹きつける魅力溢れる作品に仕上がっているのかをネタバレありでご紹介いたします。

映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』の作品情報


(C)Universal Pictures

【公開】
2014年(イギリス映画)

【原題】
About Time

【監督・脚本】
リチャード・カーティス

【キャスト】
ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リディア・ウィルソン、リンゼイ・ダンカン、リチャード・コーデリー

【作品概要】
監督を務めたのは、『ノッティングヒルの恋人』(1999)『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)『戦火の馬』(2011)などの脚本家と知られるリチャード・カーティス。『ラブ・アクチュアリー』(2003)『パイレーツ・ロック』(2009)では監督を務め、本作『アバウト・タイム 愛おしい時間について』にて監督引退を表明。

タイムトラベル能力をもつ主人公・ティム役は『ハリー・ポッターと死の秘宝』(2010)『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)のドーナル・グリーソン、ヒロインのメアリー役に『きみに読む物語』(2005)『トゥ・ザ・ワンダー』(2012)『誰のせいでもない』(2015)のレイチェル・マクアダムス、ティムの父親役にはビル・ナイ。

映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』あらすじとネタバレ


(C)Universal Pictures

イギリス南西部のコーンウォール。ひょろっとして、オレンジ色の髪をしているティムは、優しくて頼もしく自由なママと家族でもっともノーマルで時間を持て余している父、きっちりとした服装で日々を過ごす、チャーミングなママの弟のデズモンド叔父さん、ケイティ、キットカットなどの愛称で呼ぶ妹のキャサリンの5人家族。

毎日浜辺に出かけ、石投げをして、サンドイッチを食べるのが家族の習慣。金曜日の夜はどんな天気だろうが、自宅の外壁をスクリーンにして映画鑑賞するという、風変わりだけど仲の良い家族と過ごしていました。

しかし、恋愛に奥手のティムは、21歳になっても彼女ができないことが悩みの種。年に1回の大晦日パーティーでも積極的になれず、そんな自分を情けなく思っていました。

新年の朝、父から一族の秘密を明かされます。それは、わが家の男だけはタイムトラベルができる特殊なパワーがあるというのです。

その力は、自分の過去にだけ戻れるというものでした。方法は暗いところで、拳を握って戻りたい場面を念じればいいだけというものでした。

突拍子もない話を信じてないまでも、試しにクローゼットに入ります。すると大晦日パーティーの晩に遡り、そのパワーが本物だと知ります。

父から理想の人生を送るためにパワーを使えと言われて、思いついたのは念願の彼女を作ることでした。

その夏、妹の彼氏の従妹、シャーロットに恋に落ちます。夏の2ヵ月、家に滞在した彼女にタイムトラベルを使ってアプローチしますが、恋愛には発展せず、タイムトラベルでは愛は手に入らないという教訓を得ます。

その翌日、ティムは実家を出て、ロンドンへ。父の脚本家仲間・ハリーの家に下宿し、法律事務に就職しました。

そして半年が過ぎたある日、悪友ジェイに誘われて行った暗闇レストランで運命の出会いをします。ママと同じ名前のメアリーという女性に恋したティムは、彼女の連絡先を聞くことができて浮かれて家に帰ります。

しかし、家には不機嫌なハリーの姿が……。今夜は自分が書いた初日の舞台のお披露目でしたが、主役がセリフをド忘れして、舞台は台無しになったというのです。

ティムは、タイムトラベルで上演前に遡り、舞台をなんとか成功へ導きます。しかし、その時間を変えたことで、暗闇レストランでメアリーと出会ったことがなかったことになっていたのです。

落胆するティムは、偶然に見た新聞広告でケイト・モスの写真展があることを知ります。メアリーがファンと言っていたことを思い出し、何日も待ち伏せして声をかけますが、彼女には新しい彼氏ができていました。

今度はタイムトラベルで新しい彼氏と出会う前のパーティー会場で声をかけ、メアリーが好きなケイト・モスの話題にしたり必死にアプローチ。パーティーを抜け出したふたりは、レストランで会話が弾み、メアリーの家まで歩いて帰ります。

家の前でキスを交わしたティムは、「最高だ」と呟きました。その雰囲気で部屋にあがり、ベッドで抱き合いますが、うまくいきません。

ティムは、タイムトラベルで抱き合う前に巻き戻しては、何度も初めての夜を繰り返しました。それは、今まで抱いたことのなかった「人生で最高の夜」でした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アバウト・タイム 愛おしい時間について』ネタバレ・結末の記載がございます。『アバウト・タイム 愛おしい時間について』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Universal Pictures

それから、交際がはじまり、何度も同じ地下鉄をふたりで行き交います。

そんなある日、メアリーの両親が突然会いにやって来ます。彼と一緒に住んでるとは話してなく、戸惑いながらティムを紹介し、一緒に食卓を囲みます。

夜、メアリーに演劇を観に行こうと誘いますが、疲れているからと断られます。仕方なく、ローリーを誘って出掛けると、初恋の相手のシャーロットの姿が。

ますますきれいになったシャーロットに声をかけますが、彼女の友人に失礼なことを言い失態をおかします。

タイムトラベルをしてやり直しますが、最悪な結果は変わりません。もう彼女に声をかけるのをやめて帰ろうとすると、シャーロットの方がティムを見つけて声をかけました。

今度は普通に再会を果たし、彼女から食事に誘われます。食事中に「あの夏を後悔してきたわ」と言うシャーロット。

「家まで送って」と言われるまま、彼女の部屋の前まで行きますが、ティムは「今から大事な用があるんだ」とメアリーと住むアパートへ駆け出します。

寝ているメアリーを起して、「結婚してほしい」とプロポーズしました。メアリーはプロポーズに答え、ティムの両親に会いにコーンウォールへ。

メアリーを家族に紹介し、結婚を決めたこと、お腹に赤ちゃんがいることを発表します。

アパートに戻ってから早急に挙式のことを決めるため、メアリーは1つ決定するたびに服を1枚脱ぐという提案をします。ティムはその提案にそそられて、コーンウォールで挙式をすること、付添人をローリー、ハネムーンのことを決めました。

ジミー・フォンタナの「イル・モンド」の曲が流れ、花嫁のメアリーがバージンロードを歩きます。外は嵐が迫っていました。実家の庭に設置されたパーティー会場に行く時には雨風が吹き荒れ、皆ずぶ濡れです。

室内に入り、ローリーが新郎新婦にスピーチをしますが、離婚の裁判のことを秘話として話そうとします。スピーチの適任者を選びなおすために何度もタイムトラベルすることに。結局、父のスピーチで収まりました。

しかし、父もまた、もう一度やり直したいと時間を遡り、愛していることと、心から息子の父親であることを誇りに思うと伝えます。

ティムは結婚式が雨の日になり後悔していないかメアリーに聞きます。ちっともと答えたメアリーは続けて、「私たちの人生も同じよ。いろんな天気があるわ」と寄り添います。

それから、女の子が生まれポージーと名付けました。ティムは、自分が父親になったことで、はじめて想像を絶する愛と不安が芽生えます。毎日が幸せに過ぎ去り、タイムトラベルの出番がなくなっていました。

ポージーの誕生日会に両親と友人たちが集まります。妹のキットカットも来るはずでしたが、恋人のジミーだけが訪ねてきました。

些細なことで喧嘩になり、別々に出てきたというのです。お酒を飲んで車で出掛けたキットカットは交通事故を起こし、病院に運ばれました。

ティムは、事故を起こす前に戻って、キットカットを迎えに行きます。事故は防げましたが、妹の気分はふさぎ込んだまま。

立ち直らせたいティムは、妹にタイムトラベルのことを打ち明けます。妹と一緒に大晦日パーティーの日に戻り、ジミーとは恋に落ちない道を選ばせました。

過去から帰ってくると、ジェイが恋人になっていて、幸せそうなキットカット。

ひと安心したティムが、家に帰ると最愛の娘のポージーが、まったく別の男の子になっていたのです。父に説明を求めると、出産前に戻ると生まれてくる子が違う子になるということでした。

結局、時間を遡ってキットカットの事故を防ぐことを諦めました。病院でメアリーと共にキットカットにつきっきりでいると、ジミーとは別れ、お酒もやめて、まじめに働くと宣言するキットカット。

別れ際にジェイがキットカットに好意を持っていることを伝え、退院後に一緒に食事に行こうと約束します。

家に戻ったティムは、やっとポージーに会えることができました。それからしばらくして、2人目の子どもが生まれ、4人家族になりました。

ある時、父が癌を患い余命いくばくもないことを知らされます。実家を訪ねて、父と話すと何故だか同じシチュエーションがあったような気がして「前にこの会話した?」と聞きます。

父は、タイムトラベルをしていたのです。ひどく落ち込んで話したのを後悔してやり直したのでした。

それでも父は「タイムトラベルを使っても 私は人生がやり直せるとは言ってない」と断言しました。

そして、大事な話があると言って、幸せになる秘訣を教えてくれました。“秘訣パート1は、普通に生活すること”でした。

“秘訣パート2は、毎日を同じようにもう一回繰り返すこと”。そうすると、緊張や不安で気づかなかった人生のすばらしさに2回目は気づくというのです。

ティムは言われた通りに同じ日を繰り返してみます。何気ない出来事が違った視点で感じられて、すばらしい日だったことに気づきます。

そして父が亡くなったと知らせが入ります。実家に着くとティムは、時間を遡り、父との会話を楽しみます。

葬儀が終わり我が家に帰ってくると、メアリーから3人目がほしいと言われます。新しい子供の誕生は、父との永遠の別れになることを意味していました。ティムは、返答に悩みますが、孫が増えることは父も望んでいることだと思い直します。

3人目はすぐに授かり、生まれそうになる直前にタイムトラベルをして、父といつもの卓球場面に戻ります。

父に孫がもう1人増えることを伝えます。もう過去に戻ってこれなく、これが父と会える最後の時間でした。最後に何かしたいことを聞くと、「海辺の散歩」と答えた父と一緒にタイムトラベルをします。

まだティムが幼い頃に戻り、海辺を歩き、石投げをして過ごします。

それからティムたちは、父の死を受け入れ、妹には赤ちゃんが生まれ、穏やかな日々を送りました。ティムは、タイムトラベルの最後の秘訣を悟ります。それは1日だって過去に戻らないことでした。

“この日を楽しむために自分は未来から来て”
“最後だと思って今日を生きている”
“僕たちは一緒に人生をタイムトラベルしてる”
“今を精一杯 生きて”
“すばらしい日々を かみしめよう”

映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』感想と評価


(C)Universal Pictures

映画の冒頭は、主人公・ティムのモノローグで家族を紹介する場面からはじまります。風変りだけれど素敵な家族で幸せに満ち足りていることが、このオープニングだけで伝わってくるようです。

そして、映画のエンディングもまた、ティムのモノローグとBen Foldsのエンディング曲「The Luckiest」がかぶさり、曲のメッセージとともに胸に響いてきます。それは何気ない日常の“今”を楽しむために、自分の人生を生きるというシンプルで普遍的なメッセージを問いかけてくるのです。

このメッセージに集約するために、映画の物語はティムという主人公の“欠けている”部分からはじまり、誰かを真剣に愛し、親になり、父を見送り…その中で自分の人生を愛するものにしていく様をとても丁寧にかつ、ラブコメという楽しみにも溢れながら奥深く描き出していきます。

恋に落ちるまでをラブコメを交えて描く

まずは自分に自信を持てなく、それ故に恋愛に対しても積極的になれずにいるティムが、タイムトラベルという能力を手にしたことで、そのパワーを駆使して恋に挑みます。

ご都合主義だけどコミカルかつドラマチックなラブコメという要素を織り交ぜて、恋に落ちどう結ばれたかを映画の序盤から中盤で描き出します。

本作のタイムトラベルという能力は、天才的な発明や大がかりなタイムマシーンは必要なく、拳を握って暗いところに入り、戻りたい場面を念じさえすれば、パパっと時間を遡れるという気軽さ。その軽快なテンポでメアリーとの恋の行方を映し出します。

一方で、タイムトラベルで過去を変えてしまうことは、大きな危険をはらんでいることもメアリーとの出会いがなかったことになった出来事で提示され、いくらタイムトラベルという特殊なパワーがあっても、劇的に人生が思い通りに叶うわけではないのです。

だからこそ、時によこしまな考えでメアリーにアプローチするべく、何度も時間を遡ります。

かえってそこにティムの純情さが垣間見れ、本当に恋をした時のなりふり構わなくなる様子がタイムトラベルというモチーフと作用して、ユーモアを効かせた感情豊かな主人公として共感を生みとても魅力的なのです。

そして、恋愛の時間経過を地下鉄で行き交うモンタージュによって映し出されるシーンがとても印象的です。

「How Long Will I Love You」の曲がライブで演奏をしている設定で流れ、この曲の間に恋愛の時間が切り取られ、ふたりで過ごす季節の移ろいを感じさせます。

楽しい恋愛の時間があっという間に過ぎ去る感覚を見事に映し出した場面です。

“今”というタイムトラベルへ


(C)Universal Pictures

ティムとメアリーの恋が実り、結婚した後は、家族の物語が丁寧に綴られていきます。

ティムの妹・キットカットが人生に行き詰まる出来事や父の余命宣告からの死といった日常に起こり得るシリアスなドラマをありありと映し出します。

ティムがキットカットの事故や立ち直らせるためにタイムトラベルをして問題を回避できたとしても、別の波乱を生むことを映画は再度示します。

タイムトラベルは未来には行けず、行けるのは自分の過去だけに戻れるというルールは、物事の本質に迫っていく要素にもなっているのです。

見せかけのディテールを変えることはできても、結局のところ、何かを変えるには本人の意思が必要で、どうしようもないことが起こり得るということ。

そうした時に自分には何ができて、何を受け入れようとするのかという当たり前でいて難しい問いに突き当ります。

また、ティムと父の絆が印象深く描かれ、家族との愛についてを際立たせます。

卓球をする場面では、卓球台を挟んで仲睦まじい様子を映し出します。余命幾ばくも無いことを明かす時は、ティムが「前にこの会話した?」と父がタイムトラベルを使ったことに気づきます。わずかな沈黙で何かが違うと分かってしまう間柄なのです。

それらの会話はどれも、ウィットに富んでいてシリアスな中にも笑いが含まれます。

そして、映画の終盤は父が教えてくれた幸せになる秘訣を実行し、何気ない日常がどんなに奇跡的で美しいものなのかと語りかけてきます。

たとえ時間を遡ることができなくても、わたしたちは常に人生を謳歌するために日々を何度も繰り返しています。

失敗したり、思い通りにいかなくても、何度でも“今”という時間を旅することができるということなのでしょう。

リチャード・カーティスが監督業最後に描いた本作は、人生で与えられた“時間”を自分自身で生かし幸せにする方法をラブコメというスパイスを効かせて、奥深い人間ドラマとして仕上げました。

まとめ


(C)Universal Pictures

愛のあるラブコメ作品を描いてきたリチャード・カーティス引退作『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、“時間”というテーマを軸にして、人生観を浮き彫りにさせました。

容赦なく刻み続ける時と対峙して、どうしたら一瞬一瞬を愛に満たされていると実感して生きていけるだろうかと考えさせられます。

映画のエンディングは、ティムが「この日を楽しむために自分は未来からきて、最後だと思って今日を生きている」というモノローグ。そしてBen Foldsの「The Luckiest」曲が流れます。

“いろんなことが
最初は うまくできない
周りからも よく言われるよ
でも やっと気がついた
つまずいて 転んで
今の僕があるんだ
君と出会って 人生が始まった
君と毎日 会える喜び
僕は知っているよ
ここにいる僕が
本当の自分なんだ
今の僕は
最高にラッキー”

エンディング曲「The Luckiest」の歌詞と相まって“今”を思う存分にタイムトラベルすればいいという温かいメッセージを語りかけるようなラストは、普通の日常をドラマチックにできるのは、自分自身という肯定力を与えてくれることでしょう。

そして、最後に登場人物たちの何気ない日常のショットと合わせて、街角の人々のワンショットも重なります。それは、観客の世界への橋渡しとして余韻を残します。

そろそろ目の前に溢れる愛に気づき、それこそがかけがえのないものだということをかみしめてみようと問いかけてきます。

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