女性だけの特殊部隊と少女の戦いを描いたハード・ミリタリー・アクション!
カロリーヌ・フレストが脚本・監督を務めた、2019年製作のフランス・イタリア・ベルギー・モロッコ合作のハード・ミリタリー・アクション映画『レッド・スネイク』。
クルド人部隊を支援する世界の有志連合には、「蛇の旅団」と呼ばれる各国の女性だけで構成された特殊部隊がありました。
蛇の旅団に救われた少女は、殺された父親の仇討ちと生き別れた弟を救うため、兵士として戦う道を選んだ姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
蛇の旅団とイスラム過激派組織「ISIS」の戦いを実話を基に描いた、ハード・ミリタリー・アクション映画『レッド・スネイク』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『レッド・スネイク』の作品情報
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
【公開】
2021年(フランス・イタリア・ベルギー・モロッコ合作映画)
【脚本・監督】
カロリーヌ・フレスト
【キャスト】
ディラン・グウィン、アミラ・カサール、カメリア・ジョルダーナ、エステール・ガレル、マヤ・サンサ、ナンナ・ブロンデル、ヌーシュ・スコーゲン、マーク・ライダー、パスカル・グレゴリー、ダリナ・アル・ジュンディ
【作品概要】
2015年にフランスでイスラム過激派テロリストが起こした、「シャルリー・エブド襲撃事件」で同僚を犠牲にした経験を持つカロリーヌ・フレストが、脚本・監督を務めた長編初監督作品です。
『ドラキュラZERO』(2014)のディラン・グウィンが主演を務めています。
映画『レッド・スネイク』のあらすじとネタバレ
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
2014年8月。イラクとシリアで発生したイスラム過激派組織「ISIS」が突然、イラク西部にある、孔雀天使をあがめる独自の信仰を持つ少数派ヤジディ教徒の村を襲撃しました。
そのISISに、クルド人(本作では、中東のクルディスタンに住むイラン系山岳民族を指す)部隊が応戦。アメリカやフランスなどの世界の有志連合が、彼らを援護することにしました。
その有志連合には、様々な国の女性だけで構成された特殊部隊「蛇の旅団」がありました。
ISISは「女性に殺されると天国へ行けない」という古い言い伝えを信じているため、女性だけの部隊は恐れられていたのです。
ヤジディ教徒の村に暮らす19歳の少女ザラは、ISISの戦闘員に父親を殺され、弟ケイロと生き分かれてしまい、自身は奴隷としてISISの指揮官アル・ブリターニに売られてしまいました。
妻がいるにもかかわらず、ザラを自宅でレイプするアル・ブリターニ。ザラは何とか叔父のシャヒーンと連絡を取り、彼の自宅から脱走します。
シャヒーンが手配してくれた運び屋のおかげで、ザラはISISが暮らす町を脱出。難民と合流し、運び屋が言っていた自由地帯へ逃亡しようとしました。
しかしその道中、アル・ブリターニ率いるISISの戦闘員に見つかってしまい、ザラと難民は追いかけられ、殺されそうになってしまうのです。
そこへ現れたのが、蛇の旅団とクルド人部隊の司令官シャラン大佐率いるクルド人部隊でした。
ISISの戦闘員との激しい銃撃戦の末、蛇の旅団とクルド人部隊が、ISISの戦闘員が乗る車両と自爆車を撃破。アル・ブリターニたちは撤退していきました。
蛇の旅団とクルド人部隊のおかげで、彼らが守る自由地帯へ辿り着けた難民とザラ。ザラはそこにいたシャヒーンと、襲撃時に引き離されてしまった母親と再会しました。
その翌日。ザラはシャヒーンに置き手紙を残し、父親の仇討ちと生き分かれた弟を救い出すため、武器を取って戦う道を選びました。
以下、『レッド・スネイク』ネタバレ・結末の記載がございます。『レッド・スネイク』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
ザラが入った蛇の旅団の主力部隊は6人。「コバニの雌ライオン」というコードネームで呼ばれているクルド人の指揮官ロザリンと、「マザー・サン」というコードネームで呼ばれているイタリア人女性ラウラ。
「レディー・クルダ」というコードネームで呼ばれている、クルド人の父親を持つ女性クルダと、「アメリカン・スナイパー」というコードネームで呼ばれているアメリカ人女性スナイプ。
まだコードネームがないフランス人女性の新兵ヤエルとケンザの6人がいました。部隊に加わったザラは、兵士になるための厳しい訓練を受けます。
訓練を終えたザラは、ヤエルたちと一緒に、ロザリンたちの前で自身のコードネームを選びました。
ケンザは千年くらい前にいた、アルジェリアやモロッコなど北アフリカ一帯の先住民、「ベルベル人」の女戦士の名前である「カーヒナ」。
ヤエルはここへ来る直前に亡くなった、若い時に国外追放されてしまった祖母のあだ名、「サシュカ」。
ザラはヤジディに大切な色である赤と、命の恩人である蛇の旅団からとって、「レッド・スネイク」というコードネームにそれぞれ選びました。
コードネームを持ったザラたちに、ロザリンはこう言いました。「常に最後の弾は取っておいて、敵の手に落ちないために」
その後、ザラたちは焚火を囲んで語り合いました。イスラム過激派によって、大切な家族を殺されたケンザの過去や、イスラム教から改宗したとして長年虐げられてきたヤジディ教徒のこと、大切な弟と引き離されてしまったザラのことなど………。
国も文化もアイデンティティも、宗教も伝統も違うザラたちは、イスラム過激派によって辛く悲しい目に遭ってきたという、共通点がありました。
なのでより一層絆が強く、団結力を高めていく蛇の旅団。ザラは彼女たち姉妹と共に、前線へ赴きます。
ISISの戦闘員が潜伏する村を空爆後、ザラたちは生き残った敵がいないか捜索を開始。前線には赤ん坊の人形に仕掛けられた地雷と、空爆で焼け死んだ敵の死体が転がっていました。
捜索中、どこかで子供の泣き声が聞こえ、ラウラはロザリンの制止の声も聞かず、子供を助けようと部隊から離れてしまいます。それを慌てて追いかけるクルダ。
しかし、クルダがラウラを見つけるより先に、村を巡回していたISISの戦闘員に見つかってしまいます。
クルダは孤軍奮闘するも多勢に無勢。機関銃も小銃も弾切れとなってしまった彼女は、無線越しに離れた仲間へ別れを告げ、自分を蹂躙しようとするISISの戦闘員が近寄った瞬間を狙って、持っていた手榴弾で自爆してしまいました。
無線越しにクルダの自爆を知ったロザリンたち。ラウラは子供を救出後、自爆しようとしているクルダの元へ駆けつけるも間に合わず、彼女の死を目の当たりにしてしまいました。
クルダの死後、スナイプの狙撃で、彼女とロザリンたちを狙っていた敵の狙撃兵を撃破。ロザリンたちは隠れていた建物から一斉に飛び出し、近くにいたISISの戦闘員を一斉射撃で殺します。
しかし、まだ息があったISISの戦闘員が1人いることに気づかず、背後をとられたケンザは人質に取られてしまいました。
ヤエルは一瞬躊躇ったものの、ケンザの指示に従って彼女の後ろにいた敵を射殺。しかし、彼女が撃った弾は、ケンザの左腕を掠ってしまい、ケンザは負傷してしまいます。
その直後、銃声を聞いて駆けつけたアル・ブリターニ率いるISISの戦闘員が襲来。スナイプがいち早く気付き、皆に知らせたことで、ロザリンたちは彼らに見つからずにすみました。
スナイプの合図で、彼女の近くに隠れていたロザリンがロケットランチャーを発射。アル・ブリターニ以外を全員爆死しました。
ラウラと合流したザラたちは、生き残ったアル・ブリターニを発見。ロザリンは彼がISISの戦闘員の指揮官と睨み、情報を聞き出すために瀕死の彼を殺さず、捕虜にすることにしました。
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
前線での戦闘後、ザラたちはクルディスタン地域に構えた基地へ帰還。ラウラの遺体を弔った後、アル・ブリターニを尋問しました。
その際、アル・ブリターニは銃口を突きつけるロザリンにこう言いました。「アブー・マリアムの居場所を教える」
「転々としているアブー・マリアムに会うには儀式がある。彼の誕生日に奴隷を贈るのさ」「(ザラの)弟もその場に来るぞ」
アル・ブリターニへの尋問中、ザラは堪らずその場を離れ泣き崩れます。アル・ブリターニへの怒りや憎しみよりも、彼に凌辱されたことが頭にこびりついて離れないことが、ザラにとっては苦痛で仕方ありません。
そんなザラに駆け寄ったラウラもまた、16歳で同じ経験をしたことがありました。そのことをザラに打ち明けたラウラは、彼女にこう言いました。
「あなたが受けた心の傷は深く、銃弾よりも痛い。でも生きて、立って戦っている。あなたは強いのだから、何も恥じることはない」
「昔から、戦争では女が苦しんだ。でもここでは、私たちが恐れられている。それは私たちが得た力よ」
アブー・マリアムという男の副官であった、アル・ブリターニの携帯を尋問して入手したシャラン大佐。有志連合との中継役を担う有志連合のエージェントにそれを渡し、アブー・マリアムの携帯のGPSを追跡し、転々としている敵の居場所を突き止めようとします。
ザラは単身、アル・ブリターニの元へ向かい、彼の首にナイフを突きつけて尋問しました。
アル・ブリターニは余裕綽々とした態度で、ザラにケイロのことを話します。「(他に捕まえた子供たち同様)弟は改宗し、ISISの戦闘員となった。アブー・マリアムに気に入られている」
「いつか異教徒の集団の中で自爆し、殉教者となるだろう」「ネットに動画もある、信じられなければ見てみるがいい」
さらにアル・ブリターニは、ザラは自分を殺せないと踏んで、挑発していきました。「父親と同じ弱虫だな。(俺に歯向かってきた)父親は銃を突きつけられて叫んでいた」
「それは、俺がお前を犯した時のお前と同じだ」「お前もあの時は楽しんでいただろう?素直になれ」
「女は男に無理矢理犯されてもイク。お前も何度もイってたもんなあ?」………それを聞いたザラは激情に駆られるがまま、アル・ブリターニに飛び掛かり、馬乗りになって腹をめった刺しにしました。
その後、シャラン大佐が死んだアル・ブリターニに、ザラたち5人が奴隷にそれぞれ扮して、GPSによる追跡で位置を特定したアブー・マリアムのアジトへ潜入。
アブー・マリアムの誕生日に贈る貢物を渡すふりをして、ザラたちが彼の目の前でニカーブ(イスラム教女性の服装)を脱ぎ捨て正体を露わにし、奇襲攻撃を仕掛けます。
それを合図に、ロザリン率いる蛇の旅団の別働隊と、クルド人部隊がアジトへの突撃を開始。空からは戦闘ヘリによる空爆が、ISISの戦闘員に襲い掛かってきます。
村にいたのより遥かに人数が多いISISの戦闘員を相手に、激しい銃撃戦を繰り広げていく蛇の旅団と有志連合、クルド人部隊。
アブー・マリアムと彼のそばにいたケイロは、混乱に乗じてその場から逃走するも、護衛の2人が殺されてしまいます。
するとアブー・マリアムは、ケイロを置いて逃走。奴隷たちがいる場所で敵を食い止めるよう、体に巻き付けた爆弾で自爆するよう命じたのです。
ケイロを奪還するべく追いかけてきたスナイプとラウラは、護衛2人を倒して追いつきましたが、起爆スイッチに手をかけるケイロを見て愕然とします。
この間、横から現れたISISの戦闘員にケンザが腹を撃たれ、瀕死状態に陥ってしまいました。ヤエルと一緒に駆け寄ってきたザラに、ケンザは弟の元へ行くよう促します。
ザラは後ろ髪を引かれる思いで2人のそばを離れ、ケイロの元へ向かいましたが、スナイプたち同様、弟の姿を見て愕然としました。
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
ザラはスナイプたちを、逃げたアブー・マリアムを追いかけるよう促し、敵に洗脳されてしまったケイロの説得にかかります。
ザラの呼びかけに一切応じなかったケイロは、母親がよく歌っていた歌をうたう彼女が姉であることを思い出し、両手を広げて彼女に抱きつきました。
ザラはケイロに巻かれた爆弾を外し、やっと会えた弟と強く抱き合いました。同時刻。スナイプがアブー・マリアムに撃たれて足を負傷。
代わりにラウラと、後から駆けつけたシャラン大佐が敵を追い詰め、ラウラがアブー・マリアムに止めを刺しました。
しかし、瀕死状態だったケンザは助からず、ヤエルの腕の中で息を引き取りました。そのことを知らないロザリン率いる別働隊は、奴隷として囚われていた女性たちを救出しました。
アブー・マリアムのアジトを制圧し、アブー・マリアムたちISISを打倒した蛇の旅団とクルド人部隊。皆が歓喜に沸く中、ロザリンは1人浮かない表情を浮かべるシャラン大佐に声を掛けます。
「有志連合に見捨てられる。彼らに我々クルド人の独立は支持されない」と話すシャラン大佐に対し、ロザリンはこう答えました。
「我々だけで、(文化の差別がない独立国家)クルディスタンを作ろう」………そう言うロザリンに、シャラン大佐はキスをねだり、皆に隠れてキスをしました。
足を負傷したスナイプは病室で治療を受け、彼女の負傷した足に巻かれたギブスに、ラウラがメッセージを書いていました。
その様子を見ていたヤエルを、ザラは近くの丘へ連れ出します。ザラが丘に建てられた建物の壁に急いで描いた、ケンザの絵を見せるためです。
ケンザの絵を見て、彼女が確かにここにいたことを噛みしめるザラたち。そんな彼女たちの元へ、ケイロ・ラウラ・ロザリンが駆け寄ってきます。
ケンザのことを知らないケイロに、ザラは「未来を見せてくれる天使よ」と紹介しました。
映画『レッド・スネイク』の感想と評価
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
イスラム過激派組織と戦う蛇の旅団
ロザリンたち蛇の旅団は、シャラン大佐率いるクルド人部隊と協力し、イラク西部の地域を襲うISISと激闘を繰り広げていきます。
特殊部隊や兵士といえば男性のイメージが強いですが、ロザリンたち女性ばかりの特殊部隊というのも、男性とはまた違った勇ましさと逞しさがあります。
男性兵士同士が仲間を兄弟だと感じるように、ロザリンたちもまた、国も文化も何もかも違うのにも関わらず、まるで姉妹のように互いを大切に想っています。
蛇の旅団がISISの戦闘員と繰り広げる戦いは、どれも迫力満点のアクション場面ばかりで興奮しますが、戦いの合間に戯れる彼女たちの姿はとても微笑ましいです。
姉妹のように仲が良いロザリンたちの姿を見ているからこそ、戦いの最中で戦死したクルダとケンザの死はとても悲しく、涙が止まりません。
イスラム過激派組織の過激さ
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
本作では、イスラム過激派組織「ISIS」の暴力性が垣間見れます。
ISISに襲撃される前から、他の宗教の人々から迫害されていたザラたちヤジディ教徒ですが、他の地域で暮らすクルド人同様、ISISにも酷い目に遭わされてしまいました。
またザラたちのような若い女性は奴隷としてISISの戦闘員に売られ、買ったISISの戦闘員に凌辱されてしまうのです。
作中でもアル・ブリターニは妻帯者であったものの、ISISは異教徒の女性は人間とみなしていないため浮気とはならず、平気でザラを凌辱しました。
それだけでも十分酷いというのに、ザラの父親を含む大人の男たちは虐殺され、ケイロを含む子供は洗脳され、無理矢理イスラム教に改宗させられISISの戦闘員にされてしまいます。
イスラム教に改宗しない者は男性なら死、女性なら生き地獄が待っているなんて、考えただけでもゾッとしますし、ISISの暴力性によってできた悲劇は見るに堪えられません。
まとめ
(C)Place du Marché Productions ‒ Kador ‒ Davis Films ‒ Delice Movie ‒ Eagle Pictures ‒ France 2 Cinema
クルド人やヤジディ教徒を「異教徒」として排除しようとするイスラム過激派組織に、女性だけの特殊部隊と彼女たちに救われた少女が立ち向かっていくハード・ミリタリー・アクション作品でした。
本作の見どころは、女性だけの特殊部隊「蛇の旅団」の戦いと、イスラム過激派組織の異教徒に対する残酷な行いです。
ニュースでよく報道されるイスラム過激派組織ですが、実際に彼らが異教徒にどんな酷い仕打ちをしているのか、その非道なまでの惨状とイラクでの悲劇を、本作でわずかながらでも知ることができるでしょう。
エンドロール前には、「我々のために命を落とした女性戦士に捧げる」というテロップが流れていました。
実話に基づいて描かれている物語であるため、その女性戦士とはイスラム過激派組織との戦いで命を落とした、クルダとケンザのことだと考察できます。
イスラム過激派組織に迫害されたクルド人やヤジディ教徒のために、命を賭して敵に立ち向かっていた女性戦士へ捧げられたハード・ミリタリー・アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。