入浴をテーマにしたコメディ映画『テルマエ・ロマエⅡ』
映画『テルマエ・ロマエⅡ』は、ヤマザキマリの原作を映画化した『テルマエ・ロマエ』(2012)の続編です。
斬新なテルマエ(浴場)を作った古代ローマの浴場設計士ルシウスは、またもや新しい浴場の依頼を受けて悩んでいました。そんな時、前回同様に現代日本へタイムスリップしたルシウスは、平たい顔族(=日本人)の山越真実と再会して……。
前作に引き続き、濃い顔立ちの主人公のローマ人に阿部寛、平たい顔の現代日本人のヒロインは上戸彩が演じます。監督は『翔んで埼玉』(2019)の武内英樹。
浴場がテーマのコメディを観終わった後は、お風呂が大好きになるのではないでしょうか。映画『テルマエ・ロマエⅡ』をネタバレありでご紹介します。
映画『テルマエ・ロマエⅡ』の作品情報
【公開】
2014年(日本映画)
【原作】
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWAエンターブレイン刊)
【脚本】
橋本裕志
【監督】
武内英樹
【音楽】
住友紀人
【キャスト】
阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開、笹野高史、市村正親
【作品概要】
ヤマザキマリの人気コミックを実写化したコメディ映画『テルマエ・ロマエ』(2012)の続編。『翔んで埼玉』(2019)『劇場版 ルパンの娘』(2021)の武内英樹監督がまとめました。
前作同様に主人公を阿部寛が演じます。北村一輝、宍戸開、市村正親ら古代ローマ人を演じるベテラン俳優陣も再結集。現代日本人でありヒロインに扮する上戸彩も続投です。
映画『テルマエ・ロマエⅡ』のあらすじとネタバレ
2世紀前半、ローマ帝国は世界において全盛期を迎えていました。第14代ローマ皇帝・ハドリアヌスは、ローマの都市整備、属州経営を行います。
ハドリアヌスは侵略戦争による領土拡大路線に終止符を打ち、近隣諸国との平和共存を目指すため領土の一部を他国に返還し、新たな国境線を定めました。
しかし、戦争による「世界征服」を目論む元老院は、戦う強いローマの必要性を民衆に訴え、ハドリアヌス帝の平和路線を覆そうと企んでいました。
「テルマエ」と呼ばれる公衆浴場の建設によって、民衆の支持も得ているハドリアヌス帝と武力による世界征服を企む元老院。
武力による世界征服か、安定による平和共存か。今まさに、この大帝国ローマが変わろうとしていました。
紀元136年。現代日本とローマを行き来していた浴場設計技師ルシウスは、日本の風呂文化からヒントを得て、斬新な浴場を建設したことで、一躍人気者となっていました。
そんなルシウスの新しい仕事は、コロッセオで戦いを繰り広げるグラディエーター用の「治療効果のある浴場」の建設。
元老院からの要請に頭を悩ませたルシウスは、グラディエーター用の風呂に入るが、そのまま引き込まれて現代日本(平たい顔族の世界)へタイムスリップします。
ルシウスが気が付くと、そこは相撲部屋の力士たちのお風呂でした。
そこでルシウスはマッサージチェア、足裏マッサージ器、バスクリン等に出会い、戻った古代ローマのテルマエですぐに再現。薬草を粉末状にした入浴剤で、傷ついた剣闘士たちを癒やすことができ、皆に喜ばれます。
次に舞い込んだ依頼は、子供たちのための風呂を作ること。再び風呂に入って悩んでいたルシウスは、子供に後頭部を蹴られた瞬間、現代日本の温泉リゾート・「湯~とぴあ」にタイムスリップしました。
そこでルシウスは、風呂文化に対する理解を深めるため、風呂専門の雑誌記者になっていた山越真実と再会します。
ルシウスは「湯~とぴあ」で目にしたウォータースライダーを見て驚き、大人でも楽しめるこの遊具をテルマエに取り付けて、ローマで大ヒットさせました。
その後、ルシウスはハドリアヌス帝から「バイアエに温泉施設の建設」を命じられました。しかし、ハドリアヌス帝の平和路線に反対の元老院は、山賊を使って「ルシウス暗殺」を企みます。
さらに、国境警備中の次期皇帝・ケイオニウスのために、テルマエをパンノニアに用意するよう頼まれます。
テルマエの「運搬方法」についてルシウスが悩んでいると、たまたま横を通りかかった青年に井戸に突き落とされました。
するとルシウスは再び日本にタイムスリップ。そこで竹藪の中で老人が入る、木で出来た「簡易浴槽」と出会います。
パンノニアへの運搬方法を思いついたルシウスは、浴槽の持ち主である老人から『hei-hei-hou』の歌も教えてもらいました。癒やし効果が増すと思い、満面の笑みでルシウスはその曲を覚えます。
風呂に浸かる三郎が「よさ~く~♪」と叫ぶと、木でできた浴槽が壊れ、飛び出したお湯をかぶって、ルシウスはローマに戻っていました。
パンノニアの地で現地調達できる木材を使ってテルマエを作り、ケイオニウスからお礼の手紙を受け取ったルシウスですが、直後に山賊たちに襲われそうになりました。
しかし、そこは山の中で、地中から湯気が出ていることに気がついたルシウスは、逆に「この場所には宝が埋蔵されている」と言い、山賊たちに温泉を掘らせます。
ルシウスは、見事に温泉を掘り当てました。しかし、温泉を宝と思わない山賊たちに再び襲われそうになりました。
あわてて掘り当てた温泉の中へもぐりこんだルシウスは、またまた現代日本へタイムスリップ!
映画『テルマエ・ロマエⅡ』の感想と評価
テルマエとは、「古代ローマにおける公衆の浴場」を意味します。
文字通り、浴場をモチーフにした前作に続く『テルマエ・ロマエⅡ』は、癒しの浴場、子供向けの浴場、家族一緒に楽しめる「湯~トピア」の建設と多くの浴場が登場します。
癒し効果のあるマッサージや入浴剤、歌や娯楽施設など、日本の昔ながらのお風呂屋さんスタイルも満載で、懐かしい思いに駆られる方もおられるのではないでしょうか。
ただの浴場だけでなく、日本古来からある温泉もしっかりと登場! 真実が働く草津温泉では、有名な「湯もみ」も映画に取り込まれ、お風呂好き日本人を深く印象付けています。
テルマエの設計技師ルシウスは、初めて見る現代日本の文化を自分流に解釈してローマに持ち帰って再現しようとします。
けれども、電気や機械のないローマ時代のこと。ウォータースライダーの流水はバケツでの水流しで、マッサージ機のもみもみは人間椅子でと、その一部を「奴隷」を使って作り出しました。
国民を癒すためにテルマエを作り続けると言う、ルシウスを演じるのは阿部寛。
ひっきりなしに風呂に入っては、水からタイムスリップする役どころですから、筋肉逞しい裸体を惜しげもなく晒して、テルマエにかける勇者を熱演しています。
テルマエ勇者に恋心を抱く真実に扮するのは上戸彩です。彼女の持っている天然の癒しやふんわりと包み込むような優しさで、コミカルに真実を演じました。
観終わった後は、温泉に入りたい、そんな気分にさせてくれる心温まるコメディ作品でした。
まとめ
お風呂の話を映画化した「テルマエ・ロマエ」の第2弾。
平和推進派と武力行使派との対立が激化する古代ローマと現代日本との間をタイムスリップで行き来する、設計技師ルシウスと日本人の女性真実の物語です。
ヤマザキマリの原作漫画を基にした本作には、お風呂に対する愛情がたっぷりと込められていました。
ルシウス演じる阿部寛のしょっちゅう映し出される馬のようにアップしたお尻や、コミカルな表情は必見です。
ゆったりと寛げるお風呂の効果を思い起こし、笑いの中にも平和のために躍動するローマ人の想いが伝わってくる作品です。