アメリカ軍・爆発処理班の過酷な任務を映し出した戦争アクション!
キャスリン・ビグローが製作・監督を務めた、2008年製作のアメリカの戦争アクション映画『ハート・ロッカー』。
870以上の爆発物を処理した型破りの班長と、彼率いるアメリカ軍・爆発物処理班がイラク戦争中ののイラク・バクダッドに駐留し、爆発物処理に従事する姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
イラクに駐留する米軍爆発処理班の過酷な任務をリアルに映し出し、第82回アカデミー賞9部門にノミネートされた映画『ハート・ロッカー』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『ハート・ロッカー』の作品情報
【公開】
2010年(アメリカ映画)
【脚本】
マーク・ボール
【監督】
キャスリン・ピグロー
【キャスト】
ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デビッド・モース、エバンジェリン・リリー、クリスチャン・カマルゴ
【作品概要】
本作は、『悪魔の呼ぶ海へ』(2000)や『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)、『デトロイト』(2017)などを手がけたキャスリン・ピグローが製作・監督を務めたアメリカの戦争アクション作品です。
主演は「アベンジャーズ」シリーズや『ザ・タウン』(2010)、『ボーン・レガシー』(2012)などに出演するジェレミー・レナー。本作は第82回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、作品賞をはじめ6部門受賞した他、史上初の女性による監督賞受賞をも果たしました。
映画『ハート・ロッカー』のあらすじとネタバレ
イラク戦争中の2004年、イラク・バグダッド。アメリカ軍の爆発物処理班(EOD)と、後方支援及び爆発物を捜索する歩兵小隊で構成された部隊「ブラボー中隊」は、戦時下のバクダッドに駐留し、路上に仕掛けられた「IED(即席爆発装置)」と呼ばれる爆弾の解体・爆破処理に従事していました。
その任務中、起爆装置を乗せた遠隔ロボットの荷台が壊れてしまったことで、EODの班長マシュー・マット・トンプソン二等軍曹が防爆スーツを着用し、代わりに爆破処理用の起爆装置を爆発物にセットすることになりました。
無事起爆装置をセットし、トンプソンはEODの上級隊員J.T.サンボーン軍曹と、EODの下級隊員オーウェン・エルドリッジ技術兵の元に戻ろうとします。
その途中、エルドリッジとサンボーンは、近くの肉屋の店長の不審な動きを目撃。彼らが危険を察知し、肉屋の店長を止めようとした瞬間、肉屋の店長が携帯電話によってIEDを起爆させてしまいました。
その結果、IEDの近くにいたトンプソンは死亡。その後、殉職したトンプソンの後任として、爆発物処理の専門家ウィリアム・ジェームズ一等軍曹がEODの班長に赴任します。
ジェームズはこれまで、873個以上の爆発物を解体したベテラン。しかもジェームズは、アメリカ陸軍の精鋭歩兵部隊「第75レンジャー連隊」の第3大隊出身であり、アフガニスタンでの任務経験がありました。
ブラボー中隊、任務明けまであと38日。トンプソンの死に責任と恐怖を感じているサンボーンとエルドリッジは、防爆スーツを着用し1人でIEDの解体に挑んでいくジェームズの姿に、気が気ではありませんでした。
2人の不安は的中し、歩くジェームズの横の路地から1台のタクシーが爆走し、咄嗟に銃を抜いた彼のすぐそばで停車。歩兵小隊とサンボーンたちが警戒を強めていく一方、ジェームズは冷静にタクシー運転手に銃口を突きつけ、後退するよう命じました。
終始だんまりを決め込んでいたタクシー運転手でしたが、しばらくすると、これ以上はヤバいと察知したのか、ゆっくりと後退していきます。タクシー運転手はその後、駆けつけた歩兵小隊によって身柄を拘束されました。
ジェームズは、路上に落ちているもの全てに気を配りながら前進し、小さな瓦礫の中へ巧妙に隠されていたIEDを発見。そのIEDを解体した後、彼はIEDからのびたワイヤーの先を辿っていきます。
そのワイヤーは、少し離れた場所に仕掛けられていた複数のIEDと繋がっていました。1つのIEDが起爆した途端、ワイヤーで繋がった複数のIEDも続けて起爆するよう配置されていたのです。
ジェームズがそれらも全て解体したのち、複数のIEDからのびた1本のワイヤーを再び辿っていくと、ある建物から1人の男が飛び出してきました。ジェームズが解体したIEDの部品を見た男は、無言でその場を立ち去っていきます。
この男こそがジェームズが解体したIEDを仕掛け、起爆させようとした爆弾魔でした。その証拠に、男はジェームズから離れた後、ズボンのポケットに隠し持っていた起爆装置を捨てて、逃走しました。
その後、ブラボー中隊は車輌(ハンヴィー)に乗えい、自分たちが寝泊まりしている基地「ビクトリー基地」へ帰還。
軍の精神分析医ジョン・ケンブリッジ軍医中佐は、トンプソンの死で士気の落ちたエルドリッジにカウンセリングを行いました。エルドリッジはケンブリッジに助言を貰っても、否定的な発言をしてしまいます。
ブラボー中隊、任務明けまであと37日。サンボーンは、チームワークや危険を顧みないジェームズと反発しました。
「また現場に出る前に行っておく、昨日のような危険を顧みない行動はやめろ」心配ない」「俺は7年諜報部にいて、お前のような危険を顧みない、死に急いでいる奴を見たことがある」「お前の道は正しいのか? 楽しみだな」
その後、ブラボー中隊は、国連ビルの敷地内に不法に停められた車に、爆発物が積んでいないか確認しに行きます。防爆スーツを着用したジェームズが車に近づいた瞬間、国連ビルのすぐ隣にある建物の屋上から、武装した男が銃を発砲し炎上させます。
歩兵小隊が車を炎上させた男を無事確保。ジェームズは炎上し続ける車を消火器で消火した後、車のトランクにぎっしり積まれたIEDの解体処理をしていきます。
エルドリッジがジェームズのそばに、サンボーンが国連ビルの屋上に配置につき、周囲の警戒にあたりました。
ジェームズは「死ぬなら気持ちよく死にたい」と言い、地獄の炎天下でも着ていたはずの防爆スーツを脱ぎ、無線を切ってヘッドホンを投げ捨てます。
ジェームズが車内をくまなく探した結果、車のインパネ中央部にある、センタークラスター(エアコンなどのスイッチやナビゲーションなどが取り付けられている部分)の中に隠されていた起爆装置を発見。
ジェームズは慎重に取り出し、解体作業を開始。この間、サンボーンとエルドリッジが、国連ビルが見渡せる場所にある尖塔に、こちらを監視する男3人がいるのを発見します。
3人のうち1人の男が、ずっとジェームズたちの様子をカメラで撮影していたカメラマンに、何か合図を送ります。それを見たサンボーンたちが警戒を強め、ジェームズに撤退を促したその時、ジェームズは無事IEDの解体に成功します。
ハンヴィーに乗り込み、ビクトリー基地に撤収しようとした時、サンボーンは安全対策を取らず、挙げ句の果てに無線を切ったジェームズの顔を1発殴りました。しかし怒るサンボーンとは対照的に、歩兵小隊を率いるリード大佐は、炎上車を消火しただけでなく、IEDの爆発も防いだジェームズを賞賛しました。
リード大佐はジェームズと握手し、彼に「爆弾を処理するのに、1番大切なことは?」と尋ねます。これに対しジェームズは、「死なないこと」と答えました。
映画『ハート・ロッカー』の感想と評価
「苦痛の極限地帯」に赴くEODメンバーの心情
『ハート・ロッカー』という映画のタイトルは、アメリカ軍のスラングで「苦痛の極限地帯」または「棺桶」を意味します。
イラク戦争中のイラク・バクダッドでは、反米組織・反政府組織によって手製の簡易爆弾「IED(即席爆弾装置)」が数え切れないほど製造・配置され、その解体・爆破処理を担ったアメリカ軍のEOD(爆発物処理班)は、常にもたらされる緊張と死の恐怖という「苦痛」を強いられました。
爆弾を無事解体できれば、生きて帰れる。しかし失敗すれば、爆発によって即座に死へ至る。生と死、いずれの結果だけが必ず訪れるという「極限」の状況下で、EODの隊員はそれでも任務を遂行します。
しかし、訓練され心身を鍛えられた兵士とはいえ、彼らもまた「人間」に他なりません。いつも死と隣り合わせの戦場に派兵され、そこで次々と仲間たちが命を落としてゆく様を見て、恐怖に震えないわけがありません。
相次ぐ仲間の死に負い目と恐怖を感じるエルドリッジとサンボーンが、ケンブリッジとジェームズに対して言葉は違えど、「死にたくない」「生きたい」とそれぞれ弱音を吐きだす姿は、観ているだけで胸が苦しくなります。
対極する2人の関係性と「死」への認識
防爆スーツや仲間と連絡を取る命綱でもある無線など、安全対策をきちんとせずに爆発物処理へと向かう、命知らずなEODの班長ジェームズ。危険を顧みずスタンドプレーが目立つ彼に対して、彼を援護するサンボーンは反発します。
ジェームズの生き急いだ行動をサンボーンは何度も注意しますが、ジェームズは全く聞く耳を持ってくれません。いつしかサンボーンのジェームズに対する不満は爆発。時には彼を殴ったり、あまつさえ事故に見せかけての殺害すらも考えてしまいます。
しかしのちに、砂漠での狙撃手からの襲撃の場面にて、撃たれたPMC所属の狙撃手に代わってサンボーンが敵兵の狙撃に対抗した際には、ジェームズが観測手兼支援役となり、サンボーンのために弾の装填や水分補給などを担います。
そして危機的な状況を協力して乗り切り基地へ帰還した後、EOD隊員たちのジェームズの部屋での酒盛りを通じて、ジェームズが決して「命知らず」でも「『死』を忘れてしまった人間」でもないことをサンボーンが知ったことで、2人の関係性は変化します。
それ以降、エルドリッジの救出時やエルドリッジ不在の最後の任務でも、2人は素晴らしいコンビネーションを見せました。背中を預け合い、互いに協力して任務をこなしていくジェームズとサンボーンの姿は、まるで幾多の困難を一緒に乗り越えてきた相棒のように見えます。
しかし映画の終盤では、2人の関係性を良い方向へと変化させたはずの「死」への認識が、2人の間では大きく異なることが無情にも描かれるのです。
まとめ
ジェームズたちアメリカ軍・爆発物処理班が戦時下のイラク・バクダッドにて、至るところに仕掛けられた爆発物を解体・爆破処理していく、アメリカの戦争アクション作品でした。
本作の見どころは、ジェームズたちアメリカ軍・爆発物処理班の過酷な任務と、苦痛と恐怖を伴う極限地帯に赴く彼らの心情です。
死の恐怖が付き纏う戦場で、ジェームズが爆弾を解体していく場面は、観ているこちらも緊張します。また爆発によって多くの死傷者が出る場面、少年が人間爆弾にされてしまう場面など、ショッキングな映像も相まって、ジェームズたちが味わう「ハート・ロッカー」を追体験することになります。
そして物語の冒頭には、「戦場での高揚感は、ときに激しい中毒となる」「戦争とは麻薬である」というテロップが流れます。平穏な日々を取り戻したのにもかかわらず、死と隣り合わせの戦場で生を実感するようになったジェームズは、まさに戦争という麻薬の中毒になってしまったのでしょう。
死と隣り合わせの戦場を駆け回りながら爆発物処理に従事する、命知らずな班長率いる米軍爆発物処理班の過酷な任務を描いた戦争アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。