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Entry 2018/02/13
Update

おすすめSF映画『イカリエ-XB1』あらすじとキャスト。チェコ・ヌーヴェルヴァーグの潮流も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

あの名作SF映画『2001年宇宙の旅』や『スター・トレック』が発表される以前の1963年。

チェコスロヴァキアで誕生した奇蹟のSF映画『イカリエ-XB1』が、デジタル・リマスター版として蘇ります!

SF映画『イカリエ-XB1』は5月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開です。

1.SF映画『イカリエ-XB1』の作品情報


©National Film Archive

【公開】
1963年 (チェコスロヴァキア映画)

【監督】
インドゥジヒ・ポラーク

【出演】
ズデニェク・シュチェパーネク、フランチシェク・スモリーク、ダナ・メドジツカー、イレナ・カチールコヴァー、ラドヴァン・ルカフスキー、オットー・ラツコヴィチ

2.SF映画『イカリエ-XB1』とは


©National Film Archive

SF映画の名作映画としてあげられ、1968年に公開された『2001年宇宙の旅』。

アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが出し合ったアイデアを取りまとめ製作された、映画ファンなら誰もが知る映画史に残る作品ですね。

またその2年前となる1966年に、SFテレビドラマシリーズとして放映開始された『スター・トレック』。

トレッキーというスタートレックのマニア的なファンを生み出し、その後も新シリーズやスピンオフテレビドラマ、また劇場版の映画、アニメと制作されなど、あらゆるSF的な要素のエピソードを展開させたストーリー性を誇るマスターピース的存在。

このある意味でSF映画の原点とも呼ぶ2作品より以前に、実は誕生した映画がありました。


©National Film Archive

1963年の共産主義下のチェコで制作された初の本格的SF映画『イカリエ-XB1(原題:IKARIE XB 1)』です。

本作は5月19日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開が決定しました。

しかも今回の上映素材は2016年に4K修復され、同年のカンヌ国際映画祭「カンヌ・クラシック部門」で脚光を浴びたデジタル・リマスター版で、日本では劇場初公開となります。


©National Film Archive

3.SF映画『イカリエ-XB1』あらすじ


©National Film Archive

はるか22世紀後半。生命探査の旅に出た宇宙船イカリエ-XB1は、アルファ・ケンタウリ系へと向かう宇宙航海の途上で、漂流中の朽ちた宇宙船を発見します。

その宇宙船はかつて地球から旅立った宇宙船でしたが、船内には謎の死を遂げた乗組員たちの死体。

この難破船に積まれた核兵器の爆発により、調査員たちも命を落としてしまう悲劇の後も、変わらぬように旅を続けるイカリエ-XB1でした。

しかし、謎のダークスターによって乗組員たちは、皆眠りに落ちてしまい…。


©National Film Archive

4.SF映画『イカリエ-XB1』の見どころ


©National Film Archive

1963年にチェコで初めてつくられた本格的なSF映画『イカリエ-XB1』は、密室である宇宙船内で少しずつ狂気に汚染されていく乗組員のクルーたちのサスペンスな人間ドラマです。

そこにオリジナリティある近未来のユートピア世界を、当時のスタイリッシュな感覚で描き出しています。

その独自性の溢れた世界観はスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968)にもインスピレーションを与えたという逸話があるほどです。


©National Film Archive

本作『イカリエ-XB1』は、2016年に4Kにデシタル・リマスター版に修復され、カンヌ国際映画祭「カンヌ・クラシック部門」で上映され、チェコ・ヌーヴェルヴァーグの中心人物たちが結集した重要作品だと、話題となりました。

『イカリエ-XB1』が製作された1963年の頃は、チェコ・ヌーヴェルヴァーグが本格的に幕開けされた年。

例えば『火事だよ!カワイ子ちゃん』(1968)や『パパ/ずれてるゥ!』(1971)また『カッコーの巣の上で』(1975)などで評価の高いミロス・フォアマン監督。

また『厳重に監視された列車』(1967)や『スイート・スイート・ビレッジ』(1986)などで知られるイジー・メンツェル監督たちが才能を見せ始めた時代なのです。

さらには本作にもその芸術運動に参加した多くの重要人物たちが関わっています


©National Film Archive

スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』を基に、インスピレーションを受けて脚本を執筆したのは、1966年公開『ひなぎく』の脚本に協力したパヴェル・ユラーチェク。

衣裳デザインのエステル・クルンバホヴァーも、『ひなぎく』や『パーティーと招待客』などを手がけて、チェコ・ヌーヴェルヴァーグのミューズと呼ばれた重要人物です。

音楽はヤン・シュヴァンクマイエル監督やカレル・ゼマン監督のアニメーション作品で知られるズデニェク・リシュカ

演出を務めたインドゥジヒ・ポラーク監督は、子ども向けの人気シリーズ映画をはじめ、数多くの特撮映像を手がけていてチェコでは著名な映画監督です。

つまりSF映画『イカリエ-XB1』は、SF映画として名作『2001年宇宙の旅』や傑作『スター・トレック』の原点的な作品のスタンスにありながらも、チェコ・ヌーヴェルヴァーグの潮流をたしかに感じさせる作品でもあるのです。

まとめ


©National Film Archive

SF映画『イカリエ-XB1』は、脚本はインドゥジヒ・ポラーク、パヴェル・ユラーチェク。

また撮影はヤン・カリシュ。演出を果たしたのはインドゥジヒ・ポラーク監督。

カンヌ映画祭でも上映されたデジタル・リマスター版として蘇ったモノクロ映画『イカリエ-XB1』は、5月19日(土)より新宿シネマカリテほか 全国順次公開 。

88分のSF映画の原風景を刮目せよ!

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