世界的推理作家が消えた原稿の行方と、殺人事件の真相を追うミステリードラマ
ジョー・スティーヴンソンが監督を務めた、2020年製作のイギリスのミステリードラマ映画、『アガサと深夜の殺人者』。
戦争が激化し生活に困窮したアガサ・クリスティが、生活を立て直そうと自身の作品の原稿を売ろうとした時、原稿が盗まれ買い取る相手も死んでしまう事件に巻き込まれてしまう姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
世界的推理作家アガサ・クリスティの史実をもとに作られた、イギリスのミステリードラマシリーズ第3弾、映画『アガサと深夜の殺人者』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『アガサと深夜の殺人者』の作品情報
【公開】
2020年(イギリス映画)
【脚本】
トム・ダルトン
【監督】
ジョー・スティーヴンソン
【キャスト】
ヘレン・バクセンデイル、ブレイク・ハリソン、ジョディー・マクニー、トーマス・チャンヒング、モーガン・ワトキンズ、エリザベス・タン、ダニエル・カルタジローン、アリスター・ペトリ、ジーナ・ブラムヒル、ジャクリーン・ボーツウェイン、バネッサ・グラース、スコット・チェンバーズ
【作品概要】
ジョー・スティーヴンソンが監督を務めた、イギリスのミステリードラマ作品です。
前作『アガサと殺人の真相』(2018)や『アガサとイシュタルの呪い』(2019)に続き、本作は世界的推理作家アガサ・クリスティを題材にした、ミステリードラマシリーズ第3弾となります。
『私が愛したギャングスター』(2000)のヘレン・バクセンデイルが、主演を務めています。
映画『アガサと深夜の殺人者』のあらすじとネタバレ
1940年、第二次世界大戦の西部戦線真っ最中のイギリス・ロンドン。
戦争が激化し破産寸前に追い込まれた世界的推理作家アガサ・クリスティは、自身のファンである中国人ビジネスマンのフランキー・レイに、2万ポンドで『ポワロ』の原稿を買ってもらい、生計を立て直そうとしていました。
アガサは念のため、14年前に従軍看護師殺害事件(『アガサと殺人の真相』を参照)の容疑者候補として知り合った、小悪党のボクサーのトラヴィス・ピックフォードを用心棒として雇い、キイズ・ホテルへ向かいました。
キイズ・ホテルのラウンジに到着したアガサとトラヴィス。2人の元へ現れたのは、フランキーと彼の用心棒ロッコ・ヴェラ、レイの通訳を担当する女性ジュン・ユーファンです。
アガサが譲渡証明書を渡し、フランキーに『ポワロ』の原稿を買って貰おうとした瞬間、空襲警報が鳴り響きます。
空襲警報を聞きつけ、駆けつけた婦人警官のオハナウアー巡査は、ラウンジにいたホテルの客とアガサたちに避難するよう命じました。
ホテルのボーイであるクラレンス・アレンが案内する、頑丈な地下室のシェルターに避難したのは、アガサたち5人を含めて12人です。
旅行者のオードリー・エバンスとネル。イタリア人のエリ・スキアッチターノ、彼は闇市場で買った物をホテルの地下室に隠していました。
元軍人のマルコム・キャンベル卿と、彼に寄り添い同行する女性グレース、クラレンスとオハナウアー巡査です。
早く現金を手に入れ、取引を終えて夫のマックスが待つ家へ戻りたいアガサは、フランキーとの取引を再開しようとします。
しかし取引が再開されようとした瞬間、原稿が入ったアガサの鞄を預かっていたトラヴィスが、少し目を離した隙に、何者かに原稿が盗まれてしまったのです。
トラヴィスから報告を受けたアガサは、盗まれた原稿を取り戻すため、オハナウアー巡査に協力を求めました。
するとオハナウアー巡査は、原稿を盗んだ犯人探しを手伝う代わりに、アガサに「自分が賢い悪役として登場する本を書いて欲しい」と告げるのです。
オハナウアー巡査と協力関係を結んだアガサは、彼女が皆をシェルターに留めてくれる間に、原稿を取り戻そうとします。
そのためにまず、アガサはフランキーに、原稿が盗まれたことを正直に打ち明けました。
するとフランキーは、「ロッコに拷問させて犯人を炙り出そう」と提案するほど、激しく取り乱してしまいます。
「原稿を盗んだ犯人を知っている」と言うロッコに犯人探しを任せた結果、彼が疑ったエリと彼が口論し、喧嘩に発展。
エリの指示で、ロッコを襲ったクラレンスは、ロッコから反撃をくらい死亡してしまいました。
クラレンスの死に怒ったエリと、ロッコが一発触発状態に陥った瞬間、アガサを待っていたフランキーが、何者かによって毒殺されてしまう事件が発生。
アガサとトラヴィスは、原稿が盗まれ、フランキーが毒殺されたのは、自分たちの取引を知っている者による犯行だと推測しました。
アガサたちは、ジュンにお金の在処を聞くと、彼女は「フランキーの上着のポケットに、2万ポンド入っている」と話しました。
しかし、フランキーとアレンの遺体は、フランキーが殺された部屋に安置されており、オハナウアー巡査が監視しています。
そこでトラヴィスは、ロッコと一緒にエリにわざと喧嘩をふっかけ、オハナウアー巡査の気を引くことにしました。
その隙に、アガサがフランキーの上着を調べた結果、2万ポンドが無くなっていることが発覚。彼女は、自分たちが犯人に狙われていると確信したのです。
原稿やお金はもちろん、譲渡証明書も犯人が狙っているかもしれない。そう考えたアガサは、エリたちに自らの素性を明かします。
さらにアガサは、「譲渡証明書がなければ原稿の売買が行えないため、譲渡証明書がない原稿に何の価値は無い」と告げるのです。
アガサは犯人と交渉するつもりでしたが、トラヴィスが「原稿を見つけた者には1,000ポンドあげよう」と言い出したせいで、皆は金欲しさに原稿を探し始めてしまいます。
そんな原稿探しごっこに呆れたオハナウアー巡査は、皆の所持品検査を行うことにしました。
すると、オハナウアー巡査が怪しむエリの鞄を調べた結果、アガサの原稿が入っていました。
原稿が見つかって帰ろうとするアガサを、オハナウアー巡査は最近支給されたばかりの拳銃を持ち、「空襲中だし、まだ事件が未解決よ。警察に従わない奴は撃ってやる」と脅します。
外がどうなっているか調べもせず、まだ空襲も終わっていない、事件も未解決だと言い、拳銃で脅してでもアガサたちを地下室に拘束するオハナウアー巡査。
空襲音がしない外へ出て、家に帰りたいアガサたちは、そんな彼女の態度に不満を募らせ、対立します。
そこへトラヴィスが仲裁に入り、オハナウアー巡査と一緒に、空襲が終わったかどうか、外の様子を見に行きました。
その間、アガサはキャンベル卿とグレース、オードリーとネルに、取り戻した原稿内容について尋ねます。
原稿内容を一切明かさないアガサに対し、オードリーとネルは、「スパイ小説は?人脈も豊富で、どんな秘密も知っているんでしょ?」と尋ねました。
アガサは昨年、スパイ小説を完成させましたが、出版社側に売れないと判断されてしまい、その小説は未出版となってしまったのです。
そのスパイ小説について、執拗に聞くオードリーたちに、困惑するアガサ。そこへ、戻ってきたトラヴィスたちが、外は空襲中のままだと皆に伝えます。
映画『アガサと深夜の殺人者』の感想と評価
アガサとトラヴィスの凸凹コンビ
14年前、列車内で起きた従軍看護師殺害事件で、事件の真相を追うアガサと、容疑者候補として呼び出されたトラヴィスが出会いました。
前作『アガサと殺人の真相』で絡んだ2人が、本作でコンビを組み、消えた原稿の行方を追っていくことになるなんて驚きです。
それに、トラヴィスの飄々とした態度で食えない男なところも、14年前と変わらず。アガサとのやり取りも14年前と変わらなくて、前作を観た人は特に面白かったことでしょう。
ただ『ポワロ』の原稿を、フランキーに高値で売り譲渡するはずが、空襲警報を受け地下室に避難した途端、原稿は消えてしまいます。
さらに、フランキーも毒殺され死亡。さらに次々と地下室に避難した人々が死んでいく事件に発展。アガサの不憫さに胸が痛くなります。
そんな中、最後までアガサを守った用心棒のトラヴィス。2人の凸凹コンビの活躍は、観ているこちらもハラハラドキドキして面白いです。
全ての事件の黒幕の正体
空襲警報を受け、ホテルの地下室に避難したアガサたち。そこでは、突如アガサの原稿が消え、買い取る予定だったフランキーも毒殺され死んでしまいます。
フランキーの毒殺に続いて、ロッコの正当防衛によるクラレンスの死亡、消えた原稿が鞄に入っていた容疑者候補のエリが、顔をナイフで刺されて死亡。
さらに、フランキーの通訳をしていたジュンも、何者かに襲われて死亡してしまい、立て続けに事件が起こります。
アガサは無事、消えた原稿を取り戻すことが出来ました。しかし犯人が欲するのが、アガサの原稿と譲渡証明書なため、彼女は自分のせいで人が殺されていくのではと思い、精神的に追い込まれてしまうのです。
そんなアガサを支え、守っていたはずの用心棒トラヴィスが、全ての事件の黒幕でした。
トラヴィスが、アガサに殺意を持った理由は明確に明かされていませんが、彼の狙いはアガサを毒殺し、絶筆となった『ポワロ』を2万ポンドより高値で売り捌くことです。
その目的のために、邪魔者を次々と消していったトラヴィス。最後までアガサを殺すことを諦めていませんでしたが、見事彼の思惑を見破ったアガサの勝利で幕はとじました。
まとめ
世界的推理作家アガサ・クリスティが、14年前に知り合った小悪党の元ボクサー、トラヴィスと一緒に消えた原稿の行方を追う、イギリスのミステリードラマ作品でした。
本作の見どころは、第二次世界大戦の渦中にある時代背景を活かした展開と、アガサの小説家としての苦悩です。劇中では、西部戦線真っ只中のイギリス・ロンドンが舞台となっています。
空襲警報を受け、地下室に避難したアガサたち。空襲がどんなに恐ろしいものか、早くホテルから出て家族がいる家に帰りたい皆の気持ちが、画面越しに痛いほど伝わってきます。
それに再婚して幸せなはずのアガサが、戦争が激化し米国が印税を払わないせいで、国税局に睨まれ借金を抱え、生活に困窮してしまったから大事な作品の原稿を売るしかないその苦悩。
世界的推理作家の苦悩する姿という、意外な一面を知れて嬉しい反面、前作『アガサと殺人の真相』同様、小説家として苦悩している彼女を何とかしてあげたい気持ちが湧いてきます。
世界的推理作家と小悪党が、密室空間で起きた事件の真相と消えた原稿の行方を追いながら、水面下で戦うミステリードラマ映画が観たい人には、特にオススメな作品です。