Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2018/02/06
Update

『サラバ静寂』あらすじネタバレ感想とラスト結末の評価解説。吉村界人が“音楽や映画が禁じられた世界”で《音楽》と出会った若者を演じる

  • Writer :
  • 桃から生まれた尻太郎

宇賀那健一監督が音楽や映画が禁じられた世界で「音楽」と出会った若者たちを描いた映画『サラバ静寂』

全ての娯楽が禁止されている世界で、音楽の魅力に取り憑かれた人間たち。世界を変わるのか。世界を変えることは出来るのか。

本作『サラバ静寂』の主演ミズト役に『太陽を掴め』『獣道』の吉村界人。また、国際俳優の浅野忠信と歌手・Charaの娘でモデルのSUMIREがヒカリ役を演じ、斎藤工が警察官・杉村役を演じています。

音楽の分野でよく表現される”初期衝動”のようなエネルギーに満ちた宇賀那健一監督の映画『サラバ静寂』をご紹介します。

1.映画『サラバ静寂』の作品情報

(C)「サラバ静寂」製作委員会

【公開】
2018年(日本)

【監督】
宇賀那健一

【キャスト】
吉村界人、SUMIRE、若葉竜也、森本のぶ、斎藤工、川連廣明、泊帝、内木英二、美館智範、カトウシンスケ、影山祐子、高木直子、田山由起、細川佳央、杉山拓也、南久松真奈、高橋美津子、仲上満、古澤光徳、伏見狸一、ミヤザキタケル、ヒス、ソニー、灰野敬二、大貫憲章、仲野茂、今村怜央

【作品概要】
ガングロギャルを描いた『黒い暴動』の宇賀那健一の監督2作目の映画。

SUMIRE、吉村界人など実力ある若手が主演を務めている。

2.映画『サラバ静寂』のあらすじとネタバレ


(C)「サラバ静寂」製作委員会

音楽や映画などあらゆる娯楽が法律で禁止された世界の田舎のネジ工場でミズトとトキオは働いていました。

毎日毎日、同じことの繰り返しで自分たちが何の為にネジを作っているのかも知れませんでした。

ミズトとトキオは池で水切りをしたり、空き巣に入ったりして持て余ししすぎた暇を潰していました。

そんなある日、ふたりは興味本位で廃屋へと侵入しました。

そこには沢山のテープやレコード、ギターやアンプが並べられておりミズトとトキオは初めて音楽に出会いました。

腹の底からこみ上げる興奮を覚えながら、ふたりはビデオのライブ映像を爆音で聴きいっていました。

そんな時、廃屋の部屋の奥で男の死体を見つけました。

男は音楽を聴いていた罪で杉村というどの超えた暴力を奮う警官に殺されていたのでした。

そんなことを知る由もない、ふたりは夜遅くまで音楽で遊び続けました。

特にトキオは次の日からネジ工場に顔を出さずに、あらゆる物を録音して回るほどに没頭していました。

数日経ち、廃屋でトキオはミズトに「音楽で世界を周ろう。たくさんの人の前で演奏しよう」と夢を語りました。

ミズトもその夢を想像し「やろう」と目を輝かせて言い返しました。

ミズトが胸を膨らませて廃屋を後にしたあと、パトカーの気配に気づきます。

ミズトは慌てて廃屋目掛けて走り出しました。

廃屋に着いた時には杉村たち警官が、すでに乗り込んでおりトキオを痛めつけている途中でした。

ミズトは「なんでこんなことするんだよ」と杉村に歯向い、杉村はそんな彼にも過度の暴力を加えて去って行きました。

朝になり、なんとか起き上がったミズトはすでに息のないトキオの手に握られているテープを見つけます。

それはトキオが作ったオリジナルの楽曲でした。

そんな時、ヒカリという若い女性が廃屋に現れました。ヒカリは廃屋で殺されていた男の娘でした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『サラバ静寂』ネタバレ・結末の記載がございます。『サラバ静寂』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ヒカリもまた自由に音楽が聞きたいという思想の持ち主でした。

音楽という共通点で繋がったミズトとヒカリは、密かにライブが行われているという「サノバノイズ」に向かい始めます。

杉村たちが非楽町という町が怪しんでいるという会話を聞いていたミズトは、たったそれだけの手掛かりを頼りに非楽町を訪れました。

ミズトとヒカリは盗みを働きながら、通報する市民や警察の危険の中で、「サノバノイズ」の情報を聞き込み続けました。

情報の掴めないまま、それでも懸命に続けているとひとりの若者がミズトとヒカリに声を掛けました。

若者は「ついて来い」と二人を案内します。

案内された先には、杉村の部下でありトキオを殺した現場にもいた三島という警官がいました。

嵌められたと慌てるミズトでしたが、三島は捜査の過程で音楽と出会い、サノバノイズにいたこともある人間でした。

三島は「ここにはもうない。東の森へ向かえ」とミズトとヒカリに伝えました。

ヒカリは自由に音楽を聴く為、ミズトは爆音でトキオの音楽を聴かせる為、東の森へと向かいました。

森の奥深くにサノバノイズの地下へと続く入り口はありました。

中では音楽を愛する人間たちが男女大人子供関係なく音楽を楽しんでいました。

ミズトとヒカリも行われていたバンドの演奏に盛り上がる観衆の中へと飛び込んでいきました。

その頃、三島は杉村に拷問を受けていました。杉村は三島の娘の身の危険を案じさせます。そして三島の片方の耳を切り落としました。

サノバノイズでは様々な音楽が相変わらず演奏され続けていました。

トキオのテープを爆音でかけることも快く引き受けてくれました。

テープが再生されかけたその時、銃声が響き渡りました。

三島の耳をイヤリングにして着けた杉村が多数の警官を連れてサノバノイズに乗り込んだのでした。

杉村の合図でサノバノイズの人々はどんどんと撃ち殺されていきます。

これまで旅を共にしたヒカリも杉村にこめかみを撃ち抜かれました。

またミズトも腹に銃弾を浴びました。

すると、三島がサノバノイズの中へと飛び込んできて杉村を撃ち殺しました。

ミズトとはトキオのテープをサノバノイズの中で生き残った少年たちに渡して息絶えました。

テープには「サラバ静寂」とトキオが付けたタイトルが書いてありました。

3.映画『サラバ静寂』の感想と評価


(C)「サラバ静寂」製作委員会

抑圧こそロックやパンクが生み出される根源です。故に聞いたものを突き動かすようなエネルギーが宿ります。

今作では娯楽が全て禁止されている世界が舞台なので、ロックンロールするにはもってこいの設定だと思います。

現に暇という暇を持て余していたミズトとトキオが、音楽に触れた時の興奮は見ているこちらまでもを高揚させてくれました。

劇場で観るべし!音の迫力!


(C)「サラバ静寂」製作委員会

音楽を扱った映画作品はもちろんDVDやスマホで観るよりも、音響の設備が整っている劇場で観たいものですよね。

作品の印象まで変わることもあります。

その中でも『サラバ静寂』はメロディになりきる前の衝動的で荒々しい音楽が非常に魅力的な作品なので、劇場で観ることを強くオススメします。

『千と千尋の神隠し』などの音楽プロデューサーである大川正義が、『サラバ静寂』を気に入り特別に音響を担当されたようです。

右から左へ時には前から後ろへ、劇場狭しと動き回る大音量は迫力満点で圧倒されました。

斎藤工の怪演


(C)「サラバ静寂」製作委員会

音楽を取り締まる暴力警官杉村を演じる斎藤工が、本当に魅力的でした。

劇中で杉村が舐めているアメやシャボン玉、耳ピアスなどは斎藤工本人が出したアイディアだそうです。

自由に演じていて、またそれが今作の引き込まれる魅力でした。

杉村が登場するシーンは本当に愉快で怖くて異常で説得力があります。

4.まとめ


(C)「サラバ静寂」製作委員会

劇中には沢山のミュージシャンが登場します。

きっと見れば見るほど「あっ、この人も出てる」と発見は尽きないです。

是非”爆音”で『サラバ静寂』を目撃してください。


(C)「サラバ静寂」製作委員会

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『きらきら眼鏡』ネタバレ感想レビュー。考え方ひとつで日常を輝かせることが出来るアイテムとは

見たものすべてを輝かせる「きらきら眼鏡」、あなた心の眼鏡は曇っていませんか? 『津軽百年食堂』『夏美のホタル』など多数の映画化が続く人気作家の森沢明夫が自ら犬童一利監督に熱烈オファーをし映画化した作品 …

ヒューマンドラマ映画

【映画ネタバレ】オリエント急行殺人事件(2017)感想考察とラスト結末解説。最後の晩餐などキリスト教モチーフからポワロの“推理美学”を読み解く

ケネス・ブラナー監督は 名探偵ポワロの“推理の美学”をどう描いたのか? 1934年に原作アガサ・クリスティの発表した『オリエント急行の殺人』は、1974年にシドニー・ルメット監督により豪華キャストによ …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】僕のワンダフルライフ|あらすじ感想結末と評価解説。泣ける犬と人間の物語は名匠ラッセ・ハルストレム監督の真骨頂!

少年イーサンとベイリーの時を超える深い絆 『HACHI 約束の犬』(2009)などで知られる名匠ラッセ・ハルストレム監督がW・ブルース・キャメロンのベストセラー小説を実写映画化した感動作。 飼い主の少 …

ヒューマンドラマ映画

『秋刀魚の味』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。巨星・小津安二郎の感動の遺作で笠智衆×岩下志麻は父と娘を演じる

父と娘の切ない関係を描く小津の真骨頂 老いと孤独をテーマに、妻に先立たれた初老の主人公と結婚適齢期を迎えた娘の心情を、ユーモラスに繊細に描いた映画『秋刀魚の味』。 『東京物語』(1953)の日本映画界 …

ヒューマンドラマ映画

映画『マリッジカウンセラー』あらすじ感想と考察解説。“名優”渡辺いっけいと実力派女優の松本若菜が強力なタッグを組んだハートフルコメディ

昭和のオヤジが結婚相談所で奮闘する『マリッジカウンセラー』が2022年10月28日(金)に公開 『いつくしみふかき』(2020)の渡辺いっけいが主演を務めるヒューマンコメディ映画『マリッジカウンセラー …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学