何のために、誰のために飛ぶのか? 魂を込めた最高のジャンプを飛べ!
1998年長野オリンピックにて、スキージャンプ団体が獲得した金メダル。その栄光の裏には、人知れず大会を支えた25人のテストジャンパーたちの姿がありました。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』は、2021年6月18日(金)全国ロードショーされました。
実話を基に映画化された『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』。主人公となる、トップスキージャンパーでありながら、長野オリンピックではテストジャンパーとして裏方を務めていた西方仁也選手を、田中圭が演じます。
オリンピックにかける選手たちの熱い想い、それを支える家族や仲間たち、そしてオリンピックの栄光と挫折。オリンピックという特別な空間で生み出される、壮絶なドラマに感動の涙が止まらない。
東京2020オリンピックに向け気持ちを高められる作品『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』を紹介します。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【監督】
飯塚健
【キャスト】
田中圭、土屋太鳳、山田裕貴、眞栄田郷敦、小坂菜緒、落合モトキ、菅原大吉、八十田勇一、濱津隆之、古田新太、大友律、狩野健斗、山田英彦、加藤斗真
【作品概要】
1998年長野オリンピックにて、スキージャンプ団体金メダル獲得を陰で支えたテストジャンパーたちの知られざる物語。
監督は、『虹色デイズ』(2018)『ステップ』(2020)の飯塚健監督。テストジャンパーたちの存在を知り、これは映画にしなければという熱い思いで製作に至りました。
主人公の西方仁也選手を田中圭、金メダリスト原田雅彦選手を『カメラを止めるな!』(2017)の濱津隆之が、その他にも実在するスキージャンパーたちを、若手からベテランまで豪華俳優たちが集結し、熱く演じています。
選手たちの想いが切なく響く映画の主題歌、川谷絵音が作詞作曲をし、MISIAが歌う『想いはらはらと』にも注目です。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』のあらすじとネタバレ
1998年、長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。日本は岡部孝信、斎藤浩哉と飛び、現在トップの成績。
残りのエース原田雅彦と、船木和喜のジャンプに期待が高まります。スタート地点に原田が現れました。しかし、天候は悪化。視界は最悪の状態です。
その様子を複雑な想いで見つめる男がいました。元日本代表・西方仁也です。西方は、今大会でテストジャンパーとして現場に入っていました。
「どうして俺がここにいて、お前がそこにいるんだ。落ちろ、落ちろ」。西方が原田に嫉妬と怒りの感情を抱く理由は、4年前のリレハンメルオリンピックが始まりでした。
1994年、リレハンメルオリンピックスキージャンプ団体戦。「日の丸飛行隊」のメンバーとして日本代表を牽引する西方は、金メダルへもう一歩のところまで来ていました。
残るは、エース原田のジャンプ。しかし、原田のジャンプは失敗に終わります。惜しくも金メダルを逃した日本代表チームは、帰国後も肩身の狭い思いを虐げられます。
「本当に、ごめん」。落ち込む原田に、西方は「4年後の長野冬季オリンピックで絶対、金を取るぞ!」と励ますのでした。
長野オリンピックにむけ、厳しい練習が続きます。西方にとっては年齢的にも最後のオリンピックでした。
スキージャンプ日本代表選手の選考は、いつにも増して困難なものになっていました。メキメキと頭角を現したのは、若手ジャンパー・船木和喜。強気な姿勢で代表を目指す南川崇。原田も数々の大会で良い成績を取っています。代表に選ばれるのは8名。
西方は、応援してくれる妻・幸枝と産まれたばかりの息子のためにも、「何としても代表に選ばれ金メダルを獲得する」と、強い想いを胸に練習に励みます。
長野まであと652日。練習中に西方が、ジャンプに失敗。着地の転倒により腰に怪我を負ってしまいます。以前から腰の痛みを感じていたにも関わらず、選考争いの焦りから隠していたのが原因です。
長野まであと92日。長野オリンピックスキージャンプ日本代表選手、8名のうち6名が発表されました。西方はまだ怪我のリハビリの最中でした。
長野まであと27日。長かったリハビリを終え、日本代表選抜の最後のアピールとなる大会で見事優勝に輝いた西方でしたが、とうとう日本代表選手に選ばれることはありませんでした。
悔しさに打ち拉がれ、自暴自棄になる西方。悔やんでも悔やみきれない思いが湧き上がります。「原田のせいで自分は銀だったのに、なんであいつが代表に残ったんだ」。
そんな西方の元に、神崎コーチが訪ねてきます。長野オリンピックでテストジャンパーをやらないかという誘いでした。
「この期に及んで裏方の仕事なんてまっぴらだ」と、神崎の誘いを突き返す西方。スキージャンプの引退も考えていました。
長野まであと5日。スキージャンプが開催される白馬ジャンプ競技場に、テストジャンパーとして参加する西方の姿がありました。
やはり、足のケガで代表落ちをした南川もいます。その他にも、女子高校生ジャンパー・小林賀子、聴覚障害を持つジャンパー・高橋竜二など、神崎コーチに集められた25人のテストジャンパーたちが顔を合わせます。
テストジャンパーとは、競技前にジャンプ台の状態を確かめ、選手が安心して飛べるようになるまで何度も滑り道を作る裏方です。拍手も歓声もない。記録も記憶にも残らないテストジャンパー。
日本代表選手が現地に入り、マスコミのインタビューに笑顔を向けるのを横目に、西方は鬱屈としていました。「俺は何でここにいるんだ」。元日本代表だったプライドは、ボロボロです。
1998年長野オリンピック、開幕前日。朝早くからテストジャンパーによる走行が行われます。天候は、風が少し強い日でした。
南川が、ジャンプを放棄します。小林は、ずっとさぼり気味だった南川に怒りをぶつけます。「輪を見出さないで下さい」。南川は「ただのテストジャンプだぞ」と馬鹿にする態度です。
事情を把握する神崎コーチは、南川に飛ぶように指示します。しかし、南川は飛ばないのではなく、飛べなかったのです。ケガの恐怖を払拭できない南川もまた、今後の選手人生に大きな不安を抱いていました。
そして、誰よりも熱心に飛んでいた小林にもこのオリンピックにかける熱い想いがありました。スキージャンプの種目に、男子はあれど女子の部がなかった時代です。
女子の自分がオリンピックの舞台で飛ぶことは、もう二度とないチャンスでした。父親に反対されながらも、夢を諦めない小林。
聴覚障害を持つジャンパー高橋は、いつも楽しそうにジャンプをしています。飛んでいるときは自由になれる。
西方の、リレハンメルでのジャンプのとき、振動が伝わってくるほどの歓声を感じたという話に、羨ましいと目を輝かせます。
「西方さんは、どうして飛ぶんですか?」。高橋の問いに苦笑いを浮かべる西方。「金メダルのために飛んでた。俺、何やってんだろうな」。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の感想と評価
1998年の長野冬季オリンピック。スキージャンプ・ラージヒル団体競技での日本の金メダル獲得の裏に、こんな感動ドラマがあったなんて衝撃を受けました。
当時テレビで見ていた、原田選手の言葉にならないインタビュー。そこに込められていた思いを、20数年後にこの映画を通して知り、とても感慨深いです。
オリンピックの華やかな一面をテレビを通して見ている国民は、どうしてもメダルの数に注目しがちです。
しかし、その栄光の裏には、オリンピックを目指す選手の数だけドラマがあり、人知れず泣いている人たちがいるのだと、今作は改めて教えてくれます。
主人公となった西方仁也選手は、日本代表に選ばれなかった長野オリンピックの挫折の中で、ライバルである原田雅彦選手へ抱く嫉妬や怒りという、醜い感情もまざまざと描かれています。
その感情と向き合い認め、屈辱から立ち上がり、初心に帰り再び奮い立つ西方選手の強さ。これぞ、トップアスリート。
演じた田中圭は、そんな西方の強さと弱さの両面を見事に表現し、人間味あふれる人物として演じきっています。
また、誰よりも悔しい思いをしたのに、さらに日本中から非難を受け、仲間への謝罪の気持ちを背負い戦い続けた原田雅彦選手。あの屈託ない笑顔からは想像もつかない苦しみを抱えてきたに違いありません。
共にオリンピックの金メダルを目指した良きライバルの、西方と原田。2人の友情秘話にも感動します。
原田選手を演じたのは、『カメラを止めるな!』の濱津隆之です。もう本人かと見間違うほど、どこか憎めない雰囲気を持つ原田選手を彷彿とさせる演技は、はまり役となっています。
また、映画の中には、オリンピック代表以外にも、実在するジャンプスキーヤーが登場します。
聴覚障害がありながらも、国際スキージャンプ競技大会で優勝した実力の持ち主・高橋竜二選手。障害を持ちながらも、いつも周囲を明るく元気づけてくれるムードメーカー的存在です。
演じたのは、次から次へと出演が止まらない山田裕貴。もうひとつのドラマが生まれるほどの素晴らしい才能をもった高橋選手を、生き生きと演じています。
まだ、女子スキージャンプがオリンピックの種目になかった当時、テストジャンパーとしてでもオリンピックの舞台に立ちたいという熱い想いを持ち参加した、女子高校生ジャンパー・葛西賀子をモデルにして描かれた小林賀子。日向坂46の小坂菜緒がその思いを熱く演じます。
その後、彼女の想いは実り、2014年のソチオリンピックから女子・ノーマンヒルが正式種目になったという事実もあります。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』は、選手たちの物語の他に、家族の物語も描かれています。
自暴自棄になる西方選手を、ずっと温かく包み込む奥様・幸枝さん。演じるのは、優しさ溢れる演技を見せた土屋太鳳。
産まれたばかりの赤ちゃんを育てながら、夫の苦悩に寄り添い時に厳しく時に優しく背中を押してくれる妻の存在は、西方選手を語るうえで欠かせないものでした。
まとめ
1998年長野オリンピックでの感動秘話を映画化した『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』を紹介しました。
多くの感動を与えてくれるオリンピック。その栄光の裏にある人間ドラマに、テレビでは伝えられない大きな驚きと感動がありました。
国を代表して戦う選手たちの熱き想い、そんな選手を支える家族や仲間との絆、そして選手の健闘を応援する観客。皆の気持ちがひとつになるのが、スポーツの祭典オリンピックです。
文化や国籍を超え、平和でより良い世界を目指すオリンピック。東京2020オリンピックではどんな新しいドラマが生まれるのか。
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』を見て、東京2020オリンピックへの気持ちを高めてみてはいかがでしょうか。