Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/05/21
Update

映画『ふゆの獣』あらすじ感想と評価解説。内田伸輝監督が暴力的に描く求めても求めても掴めない愛|インディーズ映画発見伝8

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第8回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」。

コラム第8回目では、内田伸輝監督の映画『ふゆの獣』をご紹介いたします。

脚本は作られずプロットとキーとなるセルフのみで、4人の男女が即興芝居でリアルな涙、葛藤、怒りをぶつけ合います。長回しで撮影された男女のむき出しの感情は暴力的でありながら、どこか美しく焼きつけられます。

本作は、第11回東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞し、内田伸輝監督の長編2作目の映画となります。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

映画『ふゆの獣』の作品情報


(C)映像工房NOBU

【公開】
2011年(日本映画)

【監督】
内田伸輝

【キャスト】
加藤めぐみ、佐藤博行、高木公介、前川桃子

【作品概要】
監督を務める内田伸輝はドキュメンタリー映画『えてがみ』(2002)で初監督を務め、PFFアワード2003審査員特別賞、香港国際映画祭スペシャルメンションを受賞。

続く、初長編映画『かざあな』(2007)は、第8回TAMA NEW WAVEグランプリをはじめ、国内の映画祭で数多くの賞を受賞し、国内だけでなくバンクーバー国際映画祭コンペティション部門に正式招待されました。

『僕らの亡命』(2017)などの作品に続き、『女たち』が2021年6月1日(火)に公開予定です。

映画『ふゆの獣』のあらすじ


(C)映像工房NOBU

ユカコは同じ職場のシゲヒサと付き合っています。しかし、シゲヒサの浮気を疑い不安になり駅の地下道で座り込みます。

座り込んだユカコに声をかけ介抱したのは同僚のノボルでした。

ノボルはアルバイトのサエコに恋心を抱き思いを伝えますが、サエコからノボルのことを同僚以上には思っていないと断られてしまいます。

ノボルは自身の恋の悩みをユウコに打ち明けます。

一方サエコはシゲヒサに思いを寄せ、シゲヒサとサエコは密会を重ねていました。

ある日、4人の男女は同じ部屋で顔を合わせることとなってしまい…

映画『ふゆの獣』感想と評価


(C)映像工房NOBU

本作で描かれているのは求めても求めても得られない愛です。

ユウコはシゲヒサが浮気しているかもしれないと思いつつも、その現実を受け入れたくないとどこかで思い、自分が心配性なだけだと思い込もうとしています。

しかし拭えない不安や、浮気の形跡は見えないようにしていても目にとまってしまいます。

電話が鳴っても出ようとしないシゲヒサ、剥がれたネイル、口紅のついた空き瓶…それらを目にしてもユウコはシゲヒサと別れたくない一心で何も言えず、一人で抱え込みます。

ノボルは自分が気兼ねなく話せるサエコに思いを寄せ、サエコも自分に気を許しているから自分に気があるはずだとどこかで思っていますが、サエコにとってノボルは仲の良い同僚でしかありません。

ノボルが思いを寄せるサエコも、シゲヒサに思いを寄せていますが、自分が浮気相手であることを分かっています。

浮気をしている当のシゲヒサは、男は浮気をするもので女性は一人だけではないと思っています。

それぞれの状況を映し出し、4人で対面してから描かれる剥き出しの感情のぶつかり合いは、即興の演技だからこそ必死に愛を求め、それでいて傷つきたくないという人間の生々しさがありありと伝わってきます。

感情がぶつかり合う破滅的な瞬間は暴力的でありながら、人間本来の姿を映し出します。

手に入らなくても、どんなに愚かでも、愛を求めようと必死になり、ぶつかり合う彼らの姿はどこか美しく感じられます。

まとめ


内田伸輝監督(c)Cinema Discoveries

4人の男女が即興芝居で演じ、愛を求めぶつかり合う剥き出しの感情を映し出した映画『ふゆの獣』。

内田伸輝監督の感性で、鮮やかに描き出した暴力的でありながらも生身の人間の愛を求め合う姿はどこか美しくもあり、観客を惹きつけます。

誰もが他者の愛を求め、孤独を埋めようとするその気持ちは醜くもあり美しいと伝えてくれます。

《内田伸輝Twitter》

次回のインディーズ映画発見伝は…

次回の「インディーズ映画発見伝」第9回は、荻颯太郎監督の『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』。

何不自由ない高校生活を送っていた主人公ですが、幼馴染の佐々本琴音がしばらく学校を休むと担任から伝えられ、それを聞いた主人公は…

青春、恋愛、シリアス、サスペンス、ヒューマンドラマ、様々なジャンルの要素を詰め込んだエンタテインメント映画です。

次回もお楽しみに!

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら


関連記事

連載コラム

広島尾道にて深田晃司監督が若手監督を前に語る。特別講演「現代映画の動向」にて邦画の“いま”を斬る【SHINPA Vol.12前編】シネマ尾道の名もなき映画イベント1

第4回尾道映画祭中止なるも、ファンの要望に応え一部開催 新型コロナウイルス感染拡大防止のあおりをうけ、2020年2月28日~3月1日にかけて開催予定となっていた第4回尾道映画祭は中止することが決定。 …

連載コラム

【ネタバレ】シン仮面ライダー|ケイ(松坂桃李)元ネタはロボット刑事?ジェイ/アイ×白いバラの意味と“人類愛”の化身ゆえのジレンマ|仮面の男の名はシン6

連載コラム『仮面の男の名はシン』第6回 『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・ウルトラマン』に続く新たな“シン”映画『シン・仮面ライダー』。 原作・石ノ森章太郎の特撮テレビドラマ『仮 …

連載コラム

韓国映画『ザ・コール』ネタバレ感想解説と結末までのあらすじ。パクシネとチョンジョンソの時空を超えた血みどろバトル|Netflix映画おすすめ7

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第7回 1999年と2019年という別々の時代を生きる、共に28歳の2人の女性。彼女たちがある日コードレス電話により20年の時を超えて繋がっ …

連載コラム

『帰れない山』あらすじ感想と評価解説。映画化で北イタリア・モンテローザを舞台に描く大人の青春劇|映画という星空を知るひとよ145

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第145回 第75回カンヌ国際映画祭にて審査員賞を受賞した感動作『Le otto montagne』が、邦題『帰れない山』として日本で公開されます。 イタリア文 …

連載コラム

ジェイソン・アイザックスのインタビュー【映画『ホテル・ムンバイ』の重要性を語る】FILMINK-vol.17

FILMINK-vol.17「Jason Isaacs: Why Hotel Mumbai Matters」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学