映画『カゾクデッサン』は2021年4月23日(金)より京都みなみ会館、4月24日よりシアターセブン(大阪)、元町映画館(神戸)にて公開!
交通事故に遭い意識が戻らない妻の身を案じる夫とその息子。ある日息子が母の元夫を病室に連れて現れます。息子の出生には複雑な事情が隠されていました──。
「家族」のそれぞれの思いが交錯する様子を、魅惑的なカメラワークと、潤いのある光と影の映像美で描いた映画『カゾクデッサン』は、今井文寛監督の初長編監督作品です。
主人公・剛太に水橋研二、中学生の光貴に大友一生が扮したのをはじめ、瀧内公美、中村映里子、大西信満ら、個性あふれる実力派が顔を揃え、東京での公開時には大きな反響を呼びました。
このたび、待望の京阪神公開が始まり、4月24日(土)、25日(日)には京阪神の3劇場で今井文寛監督のオンライン舞台挨拶が行われました。
本記事では24日に行われた元町映画館でのオンライン舞台挨拶の模様をお届けします。
CONTENTS
照明部から監督へ
本編上映終了後、オンラインにて今井監督と元町映画館がつながり、映画館のスクリーンに今井監督が登場。元町映画館の支配人、林未来さんの質問に監督が応えるという形で進行し、充実したトークとなりました。
林さんの「今井監督は元々、照明のスペシャリストでいらっしゃるのですが、監督をしようと思ったきっかけはなんだったんでしょうか」という質問に今井監督は、次のようにコメント。
「映画監督になりたくて、上京したのですが、周りの人は、映画に精通している人ばかりで、もう僕に映画監督は無理かなと思い始めていたんですね。写真をちょっとやり出してCMの撮影スタジオで働いていた時に、成瀬巳喜男を映画館で観る機会があったんです。『乱れ雲』(1967)を観て、はまってしまって、そこから僕はもう映画監督になるしかないと思いこんじゃった。会社を辞めて映画の勉強をし始めたのですが、そんな中、知り合った方々から、照明の仕事を手伝ってよと呼ばれるようになりまして、生計を建てるために照明の仕事をしながら、映画の勉強をさせていただき、今に至っています」
『カゾクデッサン』が生まれた背景
初長編監督作品として『カゾクデッサン』を撮るにいたった経緯については、「自分が尊敬できる魅力的な人物を描きたいという気持ちがまずありました。思い浮かべたのは照明部の先輩方の姿です。いわゆる“バンカラ”といいますか、言葉もきついし、荒っぽい面もあるんですが情が厚い方々なんですね。その先輩たちの良いところを自分が引き継いでいるかというとそうとも言えず、その申し訳無さもあって、映画のキャラクターに先輩たちへの思いを込めました。
また、“家族”をテーマにしたのは、結婚する人が周りで増えていく中で、 “家庭”というものを今の自分の立ち位置で描いてみたかった。そうしたことが合わさって、この物語が始まっていきました」と述べました。
俳優同士の演技がもたらした生のリアクション
キャスティングに関しては、映画『百円の恋』のプロデューサーである狩野善則さんの協力が大きかったそうです。応募してきた役者さんと面接して、キャスティングを決めていったといいます。
また、林さんから、思春期の難しい役柄を演じた大友一生さんの印象を聞かれた際は、「ガッツがありましたね。若い世代の眩しさに自分も惹きつけられてわくわくして映画を撮らせていただきました。ただ映画に出ていただく限りはしっかりいい演技をしてもらわなくてはいけないのでそこは一切妥協しませんでした。
水橋研二さんとの喧嘩のシーンは大変でしたが、水橋さんが大友さんの生のリアクションが欲しいということで、殺陣師の方にはもちろん確認を取ってのことですが、段取りになかったことをいろいろやって大友さんから本当のリアクションを引き出してくれました。監督としては、この表情いいなとにやにやしておりました(笑)」と撮影のエピソードなども混じえて語りました。水橋さんを始め、ベテランの俳優さんたちが、大友一生さんを支えてくれて監督として非常にありがたかったとも。
脚本と実際の撮影について
会場からの質問に移り、これからシナリオの勉強をする予定だという方から、「ラストショットに置かれた人形や、光の使い方などは、脚本の段階で工夫しようと心がけていられたのでしょうか」という質問が出ました。
「脚本段階から考えていたものは多いです。海外の場合は、細かく脚本に書いて指定するようなのですが、日本の場合はあまり書き込まないんですね。僕自身、ここはこうしてやろうと思っていてもあえて脚本には書きませんでした。スタッフもいろいろアイデアを出してくるかもしれないし、皆、優秀な方なので意見も聞きたかったからです。
低予算の作品なので、セットでなくロケになります。そうするとロケ場所によって撮り方が変わってくるんですね。それに合わせることによって新しいことが生まれたり、その空間の中で役者が生きてくる。そんな中で柔軟にやらせていただきました。脚本段階であったものをあえてすっぱり消したものもあります。それこそが実際に撮影することの魅力でもあるなと感じています」と今井監督はコメント。
そして最後に「このような状況の中、この映画を選んで足を運んでくださり、誠にありがとうございます。この映画、予算は全部、自分の貯蓄から出しましたが、それだけでは足りず仲間たちの協力を得て映画を一本撮ることが出来ました。そのように完全なインディペンデント映画ではありますが、商業映画には負けないものを作ろうという強い思いを持って完成させた作品です。今後とも『カゾクデッサン』を応援してくだされば嬉しいです」という監督の言葉で締めくくられました。
映画『カゾクデッサン』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督・脚本】
今井文寛
【キャスト】
水橋研二、瀧内公美、大友一生、中村映里子、大西信満、SHIN、萩原護、岩﨑愛、ナガセケイ、山田諭、髙野春樹、河屋秀俊、坪内守、逢坂由委子
【作品概要】
映画『カゾクデッサン』のあらすじ
剛太は、元ヤクザという過去を持ちますが、今はかたぎとなって恋人のバーで働いています。
ある日、剛太のところに元妻・貴美の息子、光貴が現れました。
「母が交通事故にあって意識が戻らないんです。よかったら声をかけてみてもらえませんか」という光貴の言葉に驚いた剛太は、光貴の案内で、病院へ向かいました。
病室には今の夫の義治が付き添っていました。剛太は貴美に声を掛けてみますが、反応はありません。
剛太が帰ると、義治は、「2度と会うな。あいつのせいで母さんはひどい思いをしたんだ」と息子に言い聞かせます。しかし光貴は剛太に魅力を感じ始めていました。
翌日、光貴と父は些細なことから親子ゲンカになり、そのことが引き金となり光貴は自分の出生の秘密を知ってしまいます。
動揺する光貴は、励ましてくれた友人や諭してくれた友人にまで暴力を振るい、病院でも暴れてしまいます。
剛太がバーで仕事をしているといつもと違った態度の光貴が店に入ってきました・・
まとめ
2021年4月24日(土)に元町映画館(神戸)にて行われた、映画『カゾクデッサン』上映後オンライン舞台挨拶の模様をお届けしました。
オープニングの開け放たれたベランダのシーンの片隅に過去の映像が被さってくるという驚くべき画面構成や、病棟のワンシーンワンカットなど、大胆な映像表現で観る者の心をがっちり掴む映画『カゾクデッサン』。
役者陣の魂のはいった演技もなんとも魅力的です。とりわけ、水橋研二が演じた主人公の強面な佇まいの中にユーモラスな雰囲気も混じえた人物造形に、人間臭い暖かみを感じることでしょう。
本作で初長編映画監督デビューを果たした今井監督は、配給もご自身で担っています。
待望の京阪神公開は、緊急事態宣言直前のスタートとなりましたが、本作の上映館である元町映画館、京都みなみ会館、シアターセブンは、休館せず、十分な感染対策を取り、万全な体制で上映を続けることを発表しています。
状況によっては更なる変更の可能性もありますので、各映画館のスケジュールをチェックをしながら、感染予防のもと、映画館へ足をお運びください。
映画『カゾクデッサン』は2021年4月23日(金)より京都みなみ会館、4月24日よりシアターセブン(大阪)、元町映画館(神戸)にて公開!