愛と人生に裏切られた天才発明家の半生を描いた伝記ドラマ
マイケル・アルメレイダが脚本・監督を務めた、2020年製作のアメリカの伝記ドラマ映画『テスラ エジソンが恐れた天才』。
移民としてニューヨークにやってきた発明家が、エジソンとは別の交流方式の送電を主張し、電流戦争に勝利した姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
一躍時代の寵児になった反面、研究一筋で繊細な心を持つ天才発明家が、実業界や社交界に不協和音を立て始めてしまいます。
そんな天才発明家の脅威の頭脳と、孤高の魂を描いた伝記ドラマ映画『テスラ エジソンが恐れた天才』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
映画『テスラ エジソンが恐れた天才』の作品情報
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【脚本・監督】
マイケル・アルメレイダ
【キャスト】
イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン、イブ・ヒューソン、エボン・モス=バクラック、ジム・ガフィガン
【作品概要】
『ハムレット』(2001)や『アナーキー』(2015)などを手掛けた、マイケル・アルメレイダが脚本・監督を務めたアメリカの伝記ドラマ作品です。
『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)のイーサン・ホークが主演を務め、「ツイン・ピークス」シリーズのカイル・マクラクランが共演しています。
映画『テスラ エジソンが恐れた天才』のあらすじとネタバレ
オーストラリア帝国(現クロアチア共和国)生まれの青年ニコラ・テスラは、ドイツ・オーストラリア・プラハで学んだ後、ブタペストに移り、親友のアンソニー・シゲティと共に国営電信局に勤めました。
1884年。発明家・科学者・エンジニアのテスラは、シゲティと一緒にアメリカに渡り、憧れの発明家トーマス・エジソンの元で働き始めます。
エジソンは発明家としては勿論、実業家としても成功していたため、移民のテスラを見下した態度で接しました。
しかも、エジソンは自身が発明した直流送電方式が1番優れていると考えているため、テスラが提案した交流送電方式には興味を全く示しません。
送電方法に関する意見が対立するテスラとエジソン。
テスラはエジソンと袂を分かち、1887年に独立し、シゲティを助手に、「テスラ電灯社」を設立しました。
しかし独立する前、テスラはシゲティに、エジソンに対する思いを語っていたのです。
「部品の修理や改良ばかりの仕事しかさせて貰えなかったが、願わくばエジソンから理解を得て、彼の友人になって一緒に発明したかった」と。
正教会の司祭の父、文盲だが聡明な母に育てられたテスラは、語学と数学に優れていました。
テスラは自身がブタペストを散歩中、交流送電方式を思いつきます。それをエジソンに理解して欲しかったのです。
しかしエジソンは、直流送電方式と金を稼ぐことしか考えておらず、最後まで聞く耳を持ってくれませんでした。
そういった思いから、テスラはエジソンに対抗して、交流送電方式を実現するべく、誘導モーターの開発に取り組みます。
その間、エジソンは妻メアリーとの間に3人の子供をもうけましたが、メアリーを25歳でモルヒネの過剰摂取で亡くしてしまいました。
人見知りなテスラは独立後、外交面を助手のシゲティに任せ、自分は交流送電方式のラジオやラジコン、噴水・電気モーター・点火プラグなどを発明します。
さらにテスラは高周波、高電圧を発生させる共振型変圧器を発明し、自身の名をもじって「テスラコイル」と名づけました。
そんなテスラは、米国電気工学者協会(AIFF)でデモンストレーションを行います。
それを見た実業家ジョージ・ウェスティングハウスが、テスラの研究への出資を名乗り出ました。
そのおかげでテスラは、高額で特許を勝ち取り、ウェスティングハウスの協力を得て、交流電力システムを設計しました。
実はウェスティングハウスは、エジソンが設立した会社との合併を考えていましたが、彼に多忙を理由に断られてしまっていたのです。
1895年、ナイアガラの滝にある発電所に、テスラが発明した交流放電式が採用され、アメリカ初の交流水力発電所が設計されました。
一方、エジソンは1885年、ミナという年の離れた若い女性と再婚し、アメリカに21の発電所を設けます。
その間、テスラはモルガンの娘、アン・モルガンと出会い、彼女から自身の才能を賞賛されます。
アンがテスラの才能を評価する一方、彼女の父、J・P・モルガンはエジソンを雇っていました。
モルガンは戦争に参加した際、発明したもので富を築き、世界の大富豪となった男です。
しかしモルガンは、24歳でエミリと結婚しましたが、4ヶ月後の新婚旅行中に結核で亡くしてしまいます。
その後、絶望と悲しみから立ち直ったモルガンは、別の女性と再婚し、4人の子供をもうけました。
そんなモルガンは、父から引き継いだ銀行業や企業資金に力を入れます。モルガンが住む大邸宅は、全てエジソンが発明した電気がつけられていました。
エジソンはテスラに対抗し、モルガンの協力のもと、犯罪者を処刑する電気椅子を開発します。
犬での実験が成功したため、初めて犯罪者を処刑することが決まりました。小型斧で自身の妻を殺害した男、ウィリアム・ケラーです。
処刑実行当日、電気椅子に座ったケラーは400〜800ボルトの電流を浴びても死ぬには至らず、追加で2000ボルトの電流を流して、命を落としました。
映画『テスラ エジソンが恐れた天才』の感想と評価
研究一筋の天才発明家が行き着いた最期が悲しすぎて泣けます。
移民としてニューヨークにやってきたテスラ。まず憧れの発明家、エジソンとも最後まで分かり合えないままでした。
2人がアイスをぶつけ合う場面は、思わずくすっと笑ってしまうほど面白いです。
ただ、肝心のエジソンとテスラの電流戦争が詳しく描かれていないのが、少し物足りなく感じてしまいます。
その電流戦争で、エジソンに勝利したテスラは、一躍時代の寵児となりますが、エジソンの会社との合併のため、それまで協力してくれていたウェスティングハウスとの別れが待ち受けていたのです。
しかもシカゴ万国博覧会の前には、今まで一緒に研究してきた友人のシゲティとの別れもあったテスラ。
そんな彼を支えてくれたモーガンやアンですら、他の発明家に研究を奪われ、大赤字を出した彼の元から去ってしまうのです。
世界を明るく輝かせてくれた天才発明家のテスラの最期が、貧しく孤独のままホテルで1人、冠状動脈血栓のため86歳でこの世を去ってしまうなんて、あまりにも悲しすぎて泣けます。
自分の頭の中で思い描いた発明を実現すべく、人との交流を断ち切ってまで研究に没頭したテスラの、驚異の頭脳と研究過程は本当に素晴らしいものばかりです。
まとめ
世界を輝かせてくれた天才発明家、テスラの半生を描いた、アメリカの伝記ドラマ作品でした。
エジソン視点で描かれる映画『エジソンズ・ゲーム』とは違った、テスラ視点で描かれる電流戦争に至るまでの過程は、天才同士ならではの発想と規模の大きさに感嘆します。
研究一筋で繊細な心を持つテスラ。彼がエジソンの次に憧れたのは、死を演じるフランスの舞台女優サラでした。
普段口数が少ないテスラが、サラといる時は心なしか目を輝かせ、饒舌に話してくるところがギャップがあって愛おしいです。
イーサン・ホークだからこそ、研究に没頭するあまり、周りとの関係を気薄にしてしまうテスラの苦悩と葛藤を、完璧に演じられていました。
テスラが思いつく発想、研究や発明が、現代の電化製品に多く役立っています。
ここまで頑張ったテスラに、映画を観終わった後には、「よく頑張ったね」と褒めてあげたくなる気持ちが込み上げてくることでしょう。
驚異の頭脳と孤高の魂を持つ天才発明家の半生を描いた、伝記ドラマ映画を観たい人に、オススメな作品です。