原作の「京都編」を2部作で描いた後編の『るろうに剣心 伝説の最期編』
映画『るろうに剣心 伝説の最期編』は、原作のクライマックスにあたり、人気の高いエピソード「京都編」を描いた2部作の後編です。
政府から日本転覆を企む志々雄真実の討伐を依頼され、彼らが拠点を置く京都へと旅立った緋村剣心。恐ろしく強い志々雄から手痛い攻撃を受け、薫がアジトである大型船に攫われました。
助けに行った剣心の目の前で薫は海に突き落とされ、剣心も海へジャンプ。剣心を救った元師匠の特訓を受け、さらに強くなった剣心は、志々雄の野望を止めるべく、東京へ戻ります。
映画を手掛けたのは、『龍馬伝』の大友啓史。緋村剣心に挑んだ佐藤健、神谷薫には武井咲と魅力的なキャストに加え、適役に神木隆之介、藤原竜也、伊勢谷友介といった実力派も顔を揃えました。
原作屈指の人気エピソード「京都編」を基に、主人公と新たな強敵との戦いを目の覚めるようなアクションで描いています。
CONTENTS
映画『るろうに剣心 伝説の最期編』の作品情報
【公開】
2014年(日本映画)
【原作】
和月伸宏:『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』(集英社)
【監督】
大友啓史
【脚本】
藤井清美、大友啓史
【音楽】
佐藤直記
【キャスト】
佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、江口洋介、藤原竜也、宮沢和史、土屋太鳳、大八木凱斗、田中泯、福山雅治、小澤征悦、滝藤賢一、三浦涼介、丸山智己、高橋メアリージュン
【作品概要】
『るろうに剣心 伝説の最期編』は、2012年に公開された『るろうに剣心』の続編にあたり、『るろうに剣心 京都大火編』に次ぐ2部作の後編です。
緋村剣心に佐藤健、神谷薫に武井咲というキャスティングをはじめ、剣心の仲間の青木崇高、蒼井優らは変わりません。強敵志々雄真実に藤原竜也、その配下の瀬田宗次郎に神木隆之介、元御庭番衆・四乃森蒼紫に伊勢谷友介といった豪華キャストが揃いました。
炎をまとった刀で迫る志々雄に、剣心と仲間たちが立ち向かうクライマックスの殺陣は目が離せないスピード感と凄みがあります。
映画『るろうに剣心 伝説の最期編』のあらすじとネタバレ
船から荒れ狂う海に飛び込み、波打ち際で気を失って倒れている緋村剣心(佐藤健)を謎の男が助けました。
子供の頃の夢を見て覚ました剣心は、名前と剣技を与えてくれた師匠である比古清十郎(福山雅治)と久しぶりの再会を果たしました。謎の男は比古だったのです。
比古は偶然見つけた剣心を救い、作陶工房を兼ねた自宅に運びました。剣心は志々雄を止めるために、飛天御剣流の奥義伝授を師匠に願い出ました。
その頃、志々雄たちの乗った「煉獄」が東京湾に到着。
志々雄は大久保の後任者、伊藤博文(小澤征悦)を呼び出し、海岸で会合を行います。
しかし、都合の悪い事は全て闇に葬る伊藤の政治のやり方に「俺を焼いたのも政治なのか」と志々雄が問いかけ、危険なムードに陥ります。
志々雄は、戊辰戦争勝利の後、官軍の裏切りにあって体を焼かれたせいで発汗することが出来なくなり、生きているのも不思議なぐらいの高熱を常に宿す肉体となっていました。
志々雄に「命が惜しければ剣心を探し、民衆の目の前でさらし首にしろ」と脅された伊藤は、政府に剣心の指名手配を命じました。
一方、京都の御庭番衆が営む料亭葵屋では、左之助(青木崇高)と弥彦(大八木凱斗)が剣心と薫(武井咲)の安否を気にしていました。
京都にも剣心の指名手配の情報が入り左之助は激怒しますが、弥彦は剣心がまだ生きているという証拠で、きっと薫も一緒だと言います。
その時、葵屋に一人の女性が店の名前入りの手ぬぐいを持って来ました。その手ぬぐいは、操(土屋太鳳)が薫の腕の傷に巻いたものでした。
女性から手ぬぐいを巻いていた女性が海で助けられて入院していることを聞き出し、左之助と弥彦がその病院へ行き、昏睡している薫を確認しました。
その頃、剣心は師匠から特訓を受けていました。奥義を伝授してもらうべく、剣心は師匠に木剣で挑みかかります、が全く刃が立たず軽くあしらわれます。
それでも剣心は命を引き換えにしてでも奥義を会得しようとします。ですが、比古は愚かだと首を振り、今の自分に欠けているものを理解するよう告げられました。
翌日、竹林の中で比古は「今のお前ではまた人斬りという過ちを犯すだろう。そんなお前に引導を渡すのが師匠の務めだ」と語り、剣心と真剣を交えました。
戦いの中で恐怖を覚える剣心ですが、それは死への恐怖だと気付きます。志々雄を倒さないまま、志半ばで命を落とすことを拒否する一心で、剣心は刀を一閃。
その一振りに感心する比古は、剣心に足りなかったものは生きようとする意思であり、その命の重みが奥義の会得への第一歩だと諭しました。
ようやく奥義を得た剣心は比古と別れを告げ、志々雄を追うことに……。
出立の際に、剣心の居所を突き止めて駆けつけた操から薫の無事を聞き、剣心と操はいったん京都へ向かいました。
剣心は自分の指名手配を知り、抜け道の地図を授かります。そして蒼紫との闘いでけがをして寝ている翁に別れを告げようと居室へ向かうも、翁の姿はそこにありません。
翁は蒼紫が剣心を襲うと予測し、負傷の身をおして抜け道へ向かったのです。果たして抜け道に蒼紫が現れ、翁は彼に剣を向けますが、翁はもはや立っているのもままならないありさまです。
そこに操と剣心が追い付き、ついに剣心と蒼紫が相見えます。
激闘の末に蒼紫は剣心に打ち倒され、2人の戦いを見届けた翁は力尽きて命を落としました。
剣心は後を操達に任せ、そのまま単身で東京へ。
操により、葵屋に保護された蒼紫。操に自身を殺すよう促すも、亡き翁や御庭番衆のためにも生きるよう告げられました。
病院で気がついた薫は、左之助、弥彦とともに、東京へ戻ることにします。
映画『るろうに剣心 伝説の最期編』の感想と評価
師匠が諭す「生きる意志の強さ」
人斬り抜刀斎として生きてきた緋村剣心の師匠・比古清十郎。比古はかつて、殺された村人や自分を連れ去ろうとした人買いの屍を埋める墓穴を掘る少年・剣心を救いました。
剣心は優しすぎるので刺客にはそぐわないと思いながらも、比古は剣心に己の剣の技を教えました。
偶然にしろ、二度も比古に救われた剣心は、さらに強くなるために、比古に教えを乞います。比古は人斬りをした剣心は、その罪悪感から抜け出して生き抜こうとする意志が必要と説きます。
「生きようとする意志は何よりも強い」。
師匠の言葉を胸に、剣心は明治政府が生み落とした恨みの亡霊・志々雄との対決に臨みます。
志々雄を倒すのは安定した平和な暮らしをしている人々のため。
剣心の決意は固く、死と直面するような激しい闘いでも少しもひるみません。ここが最強の敵である志々雄の周辺にいる強者たちとは、大きく違うところでしょう。
自分の利欲だけのために志々雄の元に集まる輩にとって、一番かわいいのは自分自身なのですから。
守るべき人がいて自分の使命を理解している剣心にとって、‟生きる意志”はどんな戦術よりも強い心の支えとなっていたのです。
豪華キャストが繰り広げる対決・決着・死闘
本作では前半に、比古を演じる福山雅治と剣心に扮した佐藤健の激しい修行シーンが出てきます。
真剣ではないにしろ、躊躇なく打ち下ろされる剣裁きは鋭く、その迫力に圧倒されました。
次いで、剣心を付け狙う四乃森蒼紫との対決。
修業を終え、一段と剣の心を理解した剣心は凄みを増した剣で闘い、蒼紫を打ち負かします。
執念の塊のような蒼紫は、伊勢谷友介がなりきっていました。
幽鬼のような表情からはその思いの強さが伝わります。
そして、瀬田宗次郎との決着。
相手は、以前に剣を交えた時に剣心の逆刃刀を折った凄腕剣士です。案の定、互角とみられる闘いが始まります。
けれども、使命感と生きる意欲に燃える剣心の剣は、やがて冷酷冷静な宗次郎の闘い方を狂わせていきました。
宗次郎は初めて「あれ?」と不安げな顔をし、剣心に打ちのめされて、大泣きをします。
これこそ、感情の欠落した宗次郎が人間らしくなった瞬間! 宗次郎演じる神木隆之介の細かい演技が光ります。
ラスボスは、藤原竜也扮するる志々雄真実。
志々雄は政府側の裏切りにあって体を焼かれたという過去を持つ、ある意味可哀想な剣士で、剣の腕前は剣心と互角といわれています。しかし、剣心と違って残酷非情な性格の持ち主でした。
その復讐に燃える剣裁きは半端でなく、小柄な剣心は何回も弾き飛ばされます。
献身を助けるべく参戦した、左之助、斎藤、蒼紫らが次々にかかっても歯が立ちません。
いつのまにか、志々雄を取り囲むようにして、攻撃を仕掛ける4人。ラスト間際の殺陣シーンのド迫力に、一瞬たりとも目が離せません。
ここは、本作の最も注目すべきアクション場面と言えます。
まとめ
明治政府を倒し国盗りを企む志々雄真実との死闘が繰り広げられた『るろうに剣心 伝説の最期編』。
満身創痍で志々雄に勝った剣心ですが、明治政府は剣心を囮にして志々雄をおびき寄せ、あわよけば2人とも亡き者にするつもりでいました。
自分勝手な理屈で秘密を知る者を亡き者にしようとする政府のやり方には不信感が募りますが、ラストの敬礼でそれらの想いも払拭されることでしょう。
志々雄と共に、伝説の人斬り抜刀斎も死んだのです。
剣心とその仲間たちとの平穏な時代の訪れが期待できるラストシーンに胸をなでおろします。