少女とホワイトライオンの友情をCG未使用で描く感動ドラマ。
映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』が、2021年2月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開されます。
少女ミアとホワイトライオンのチャーリーが育む友情、そして家族の再生を通して、南アフリカの社会問題を映し出す本作を、ネタバレ有でレビューします。
CONTENTS
映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス映画)
【原題】
Mia et le lion blanc(英題:Mia and the White Lion)
【監督】
ジル・ド・メストル
【脚本】
ウィリアム・デイヴィス
【製作総指揮】
ニコラ・エルゴージ、ジル・ド・メストル
【撮影】
ブレンダン・バーンズ
【キャスト】
ダニア・デ・ビラーズ、メラニー・ロラン、ラングレー・カークウッド、ライアン・マック・レナン
【作品概要】
『アラン・デュカス 宮廷のレストラン』(2018)などのドキュメンタリー作品を手掛けてきたジル・ド・メストルが、南アフリカの社会問題となっているトロフィー・ハンティングをテーマに描いたヒューマンドラマ。
主人公の少女ミア役には、300人以上が参加したオーディションの中から選ばれたダニア・デ・ヴィラーズ。ミアの母アリスを、『イングロリアス・バスターズ』(2009)のメラニー・ロランがそれぞれ演じます。
動物研究家で保護活動家のケヴィン・リチャードソンと共に、実際に3年を超える年月を掛け、リアルな少女とライオンの友情をCGを使わず撮影し、世界57ヵ国でヒットを記録しました。
映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』のあらすじとネタバレ
ライオンファームの経営のため、家族と共にロンドンから南アフリカへ引っ越してきた11歳のミアですが、友だちができずに学校で孤立しており、家でも父ジョン、母アリス、そしてパニック障がいを抱える兄ミックにその不満をぶつける日を過ごしていました。
ある夜、パニックを起こして寝付けなくなったミックに、アリスがアフリカに伝わる神話を話し始めます。
それは、真夜中にアフリカ全土で自然の大変動が起こり、住民たちが怯える中、なぜかモザンビークに住むシャンガーン人の祈祷師だけが笑っている。その理由を聞かれた彼は、「人間は常に母なる自然を壊してきたではないか」と答え、「でもいつかクリスマスに、白い毛のライオンが生まれる奇跡が起こる」と告げたという話でした。
それからしばらく経ったクリスマスに、ジョンが生まれたばかりのホワイトライオンを連れてきます。
出生率はわずか100万分の一というホワイトライオンの誕生に、ジョンはファームの目玉が出来たと喜び、ミックはチャーリーという名を付け、可愛がります。
それでもアリスは関心を示しませんでしたが、いつもまとわり付いてくるチャーリーの世話を、仕方なくするようになります。
そのうち、ファームの他のライオンに邪見にされるチャーリーに自身を重ねたミアは、徐々に心を開くように。
わずか数か月でどんどん成長していき、家の中でも家財道具を散らかすようになったチャーリーに、アリスとジョンは気が気でなくなりますが、ミアは一緒の布団にくるまって寝るほどに仲良くなります。
ファームの目玉となったチャーリーのおかげで観光客も増える一方で、従業員にケガをさせて客を怯えさせる事態も発生。それでもミアは、「じゃれ合いたいだけ」と言って必死にかばいます。
一方、古くからの知人らしき男ダークと久々に再会したジョンは、彼からある依頼をされるも拒否するのでした。
それから3年後。
チャーリーは以前にも増して家中を動き回り、ミア以外には懐かなくなるほどに成長。
それでもチャーリーとじゃれ合うミアを危惧したアリスは、あまり近づかないよう告げるも、彼女は頑として聞き入れません。
また、学校行事で旅行に行ったにもかかわらず、チャーリーを心配するあまり勝手に帰宅してしまったり、ミアがファームの鍵をかけ忘れたことで、夜中に外に抜け出たチャーリーを総出で探しに出るといった事態に。
ついには、ミアの勧めでチャーリーと触れ合おうとしたミックが足を滑らせて頭を強打する事故が発生したことに激怒したジョンは、チャーリーを売り払うことを決断するのでした。
ジョンから、チャーリーをサーカスに売ると聞かされたミアは、場所がどこかを探るため、ファームにいた別のライオンを運ぶトラックに忍び込みます。
しかし、トラックが到着した場所にはダークがいました。
実はダークは、トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした、観光客向けの狩猟「トロフィー・ハンティング」の一種である、人工繁殖させた動物を囲いの中に放って狩猟する通称「缶詰狩り」(キャンドハンティング)の運営者でした。
ファーム経営の資金繰りのため、やむなくジョンは育てたライオンを缶詰狩りの獲物として売却していたのです。
映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』の感想と評価
本作『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』は、南アフリカの社会問題となっている「缶詰狩り」をテーマにしています。
表向きは、ライオンファームで飼育したライオンを動物園やサファリパークの人気者としてもらったり、自然に還して種族繫栄させるためと見せかけ、その裏ではライオンたちをトロフィー・ハンティングの一種である缶詰狩りの獲物にしていたという事実。
そもそも、娯楽のために動物を撃つトロフィー・ハンティング自体が、南アでは合法となっているということに驚きを隠せません。
そうした行為が南ア経済を支えているという現状に警鐘を鳴らす狙いで、監督のジル・ド・メストルは、元々得意とするドキュメンタリーではない、フィクションドラマとして製作されました。
そして何といっても特筆すべきは、人間とライオンの友情を、CGを一切使わずに3年もの期間をかけて撮影したという点でしょう。
主人公の少女ミア役のダニア・デ・ヴィラーズとホワイトライオンのチャーリーの間には、演技ではなく本当の友情が必要だとして、3年間、週3回、1回2~3時間の刷り込み(インプリンティング)のセッションを行っています。
またダニア同様に、ミアの兄ミック役のライアン・マック・レナンもライオンとのコミュニケーションを築いていきましたが、これは、もし途中でダニアがライオンが怖くなって降板してしまう事態となった際に、脚本を変更してライアンを主役に据えるという案も想定していたとの事。
内容こそフィクションドラマですが、撮影しながら子役たちとライオンが共に成長していく様子は、まさにドキュメンタリーそのもの。
ホワイトライオンはもちろんのこと、子役たちも3年の歳月を経て大人びていく過程が、リアルにうかがえます。
まとめ
本作のエンドクレジットの前に、「100年前には25万頭いたライオンの数は9割減少し、昨年確認されたのは2万頭未満。絶滅の危機にあるライオンは、このままでは20年後には姿を消してしまうとされる」という現状が伝えられます。
日本では馴染みがないトロフィー・ハンティングですが、知らないよりは知っておくべき問題なのは確か。
人間のエゴが絡んだ、動物の生態系の崩壊を真正面から捉えた本作から、あなたは何を感じますか。
映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』は、2021年2月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。