連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第17回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第17回は、ルーベン・フライシャー監督が贈るゾンビコメディ映画『ゾンビランド』です。
『ヴェノム』『L.A.ギャングストーリー』などで知られるルーベン・フライシャー監督の長編映画デビュー作品。
出演は、ウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン。豪華俳優4人の愉快なアンサンブルが炸裂しています。
32のルールに従うことでゾンビの世界を生き延びてきた内気な大学生が、人生のメンターや彼女との交流を通して、安息の地へ向かうと思いきや、寄り道無駄道を楽しんでいく。
当初予定されていた「ようこそゾンビランドへ」という邦題が馴染むほど、テーマパーク的魅力が爆発した痛快なゾンビコメディです。
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映画『ゾンビランド』の作品情報
【公開】
2009年(アメリカ映画)
【原題】
Zombieland
【監督】
ルーベン・フライシャー
【キャスト】
ジェシー・アイゼンバーグ、エマ・ストーン、ウディ・ハレルソン、アビゲイル・ブレスリン、アンバー・ハード、ビル・マーレイ
【作品概要】
『ヴェノム』『L.A.ギャングストーリー』などで知られるルーベン・フライシャー監督の初の長編映画にして現在2作存在する『ゾンビランド』シリーズ1作目。
『LBJ ケネディの意思を継いだ男』『ヴェノム』のウディ・ハレルソン、『グランド・イリュージョン』『ソーシャルネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ、『ラ・ラ・ランド』『L.A.ギャングストーリー』のエマ・ストーン、『マギー』のアビゲイル・ブレスリンと豪華なキャストが顔を揃えています。
脚本家にレット・リース、ポール・ワーニック。ふたりは今作でデビューした後に『デッドプール』2作などを手掛けています。
映画『ゾンビランド』のあらすじとネタバレ
「アメリカよ ここをそう呼びたいけど 人民の人民による人民のための国はなくなった。だってもう人がいないから。ここはもうゾンビランド合衆国だ」というアメリカ国歌『星条旗』にのせて、コロンバスによるモノローグから始まります。
謎の新型ウイルス感染者が次々とゾンビと化し、その後ウイルスは感染爆発。猛烈な勢いで全世界へと広まっていきました。
コロンバスは、内気で神経質の引きこもりでしたが、今やテキサス州ガーランドでも数少ない生き残りの1人となっていました。
彼は「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」を作り、それを慎重に実践することで生き延びてきたのです。
ルール1:有酸素運動 身軽の動けなければ、ゾンビに追いつかれてしまいます。
ルール2:二度撃ちして止めを刺せ 死んだと思って油断すると命取り
ルール3:トイレに用心 無防備な時間が長いほど、寿命は短くなります。
ルール4:シートベルトをしろ 急停車にご注意。
ルール5:ゾンビを発見したらまず逃げろ
ルール6:フライパンでぶっ叩け
ルール7:旅行は身軽であれ 人間関係も身軽な方が円満でしょう。
ルール8:クソったれな相棒を見つけろ
ルール9:家族・友人でも容赦しない
(以下、劇中のも未登場のものも含みます)
ルール10:素早く振り向け
ルール11:静かに行動すべし
ルール12:バウンティ・ペーパータオルは必需品
ルール13:異性の誘惑には注意
ルール14:ショッピングモールは補給基地
ルール15:ボウリングの球をぶん投げろ
ルール16:人の集まる場所は避けろ
ルール17:英雄になるな
ルール18:準備体操を怠るな
ルール19:葬儀・埋葬の必要はない
ルール20:人を見たらゾンビと思え
ルール21:ストリップクラブは避けろ
ルール22:逃げ道を確保しろ
ルール23:金品よりも食料確保
ルール24:生き残るためには犯罪も
ルール25:火の用心
ルール26:肌の露出は最小限に
ルール27:就寝前には安全確認
ルール28:食事と風呂は短時間で
ルール29:二人組で行動しろ
ルール30:予備の武器を持て
ルール31:後部座席を確認しろ
ルール32:小さいことを楽しめ
そして彼は音信不通となった両親を探しに実家のあったオハイオ州コロンバスへと向かいます。
道中でコロンバスはカウボーイ気取りの射撃の達人タラハシーと出会い、生存者同士、彼と行動を共にします。「ルール8:クソったれな相棒を見つけろ」に従い、彼の車でテキサスの州境まで向かいます。
道中、タラハシーは好物の菓子トゥインキーを探し、廃墟と化した大型スーパーに立ち寄ります。いずれ全世界のトゥインキ―に訪れる賞味期限を恐れて一つでも多くのトゥインキ―を求め奔走します。
大型スーパーでは、迫りくるゾンビ軍団を倒しながらバックヤードに身をひそめる美人のウィチタとその妹リトルロックと出会います。
妹はゾンビに噛まれ、残り時間はあとわずかだと言います。ウィチタは自らの手で妹を楽にさせたいと、タラハシーから銃を受け取ります。すると彼女たちは銃口を彼らに向け、武器と車を奪い逃走。
住宅地を歩きながら、奪われた車のことをぼやくタラハシーとコロンバス。やがて車と大量の重火器を見つけたふたりは神に感謝し、「ありがとう貧乏白人の神様!」。
やがて仲を深めていくタラハシーとコロンバス。互いの身の上話から、「ささやかなことを楽しめ」という名言に感心したコロンバスはルール32に加えました。
しばらくすると「助けて」と書かれた車が道をふさいでいました。確認に向かうタラハシー。それは罠で、ガス欠になったウィチタとリトルロックが待ち伏せしていました。
4人はLAへと向かいます。そこにある遊園地パシフィック・プレイランドはゾンビの襲撃を免れたという噂があり、妹の為にそこへ向かうウィチタ。コロンバスの故郷オハイオが既に陥落したことを不意に口走ってしまいます。
ショックを受けたコロンバスを気遣い、ウィチタは道中に見つけたバンでコロンバスと別れることを提案しますが、コロンバスはそのまま4人での移動を希望しました。
立ち寄った民芸品店で商品を破壊し、暴れまわる4人。心が通じ合っていくようでした。
やがて4人を乗せた車はハリウッドセレブ住宅街ビバリーヒルズに差し掛かり、表札に“B・M”と書かれた家に侵入します。
映画『ゾンビランド』の感想と評価
ルーベン・フライシャー監督作品の史上2番目の傑作
ルーベン・フライシャー監督の持ち味であるエクストリームな描写が光るゾンビ映画。軽快なテンポで観やすく仕上げています。
劇中の冒頭で、テーマパーク的と表現した作風ですが、本作を観ればその持ち味とゾンビアポカリプスとの相性の良さが非常によく分かります。
ルーベン監督作の中では本作の続編である『ゾンビランド ダブルタップ』(2019)が最も評価が高く、メタギャグやブラックジョークも1作目より増加しています。
1作目はキャラクター紹介の段取りがノルマとしてあるため、2作目における、関係性の発展に対して見劣りしがちですが、『ゾンビランド』は話の進行とともに関係性の発展が巧みに描かれているため、明確に面白い・つまらないでは分かれない良さがあります。
元よりゾンビ映画とはテーマパーク的楽しさのあるジャンルでありました。
『ゾンビ』(1978)の中盤。ショッピングモールに立て籠もった主人公たちが服は着替え放題、酒もご飯も飲み食いし放題と施設を自由に遊んで暮らしているさまを描いていましたし、『アイ・アム・レジェンド』(2007)でもひとり生き残った主人公が市街地で広々とゴルフを楽しみ、悠々自適に、誰もが一度は憧れる、地球丸ごと貸し切り状態を満喫していました。
人類が滅びた地球で生き残ったら、確かに大半は孤独で寂しい日々を過ごしでしょうが、「ルール32:ささやかなことを楽しめ」とあるように、そんな日々にかすかな楽しみを見出すのは人生において大事なことです。
不器用な疑似家族モノ
『デッドプール』(2016)の脚本家らしいブラックなユーモア、そしてメタギャグが盛りだくさん。本作の良さはそういった笑いどころが嫌味になっていないところにあります。
あまりにもしつこくこすられるギャグは観ていて鼻血らむ気がしますが、くどすぎず、くすっと笑えるこのバランスは絶妙です。
行きがかり上、行動を共にしだした4人がチームを越えて、家族のような絆を紡いでいくような後半も、変にべたべたしだしたり、普段隠しているお互いへの気持ちを吐露し合ったりすることも少なく、相も変わらずふざけ合うだけというのもこの映画の良いところでしょう。
重たいくだりはすぐに処理され、次のギャグへと繋がるというこの軽さこそが一番の魅力であると言えます。
まとめ
本作を振り返り、主演のウディ・ハレルソンは「遊び場で仕事しているみたいで最高だった」と語っています。
本当に遊んでいるかのような彼の演技は素晴らしく、そこに共演者たちとの面白い掛け合いが合わさり、非常に見ていて楽しい映画となっています。
またゾンビ映画として本作の特筆すべき点としては、ゾンビ側に全くスポットライトが当たらず、すべて書き割りとして描かれているところが挙げられます。なぜなら生存者4人の描写をたっぷり描くシチュエーションとしてのゾンビ映画だからです。
よってこの映画におけるゾンビというキャラクターは全て背景になっています。
本作に続く2作目では32あったルールは倍の73カ条に。彼らの関係性はさらに進み、ゾンビランドの魅力が文字通り2倍増しになっています。
そんな最高な2作目を存分に堪能するための予習として観ると、十分にフリが利いていてより楽しめるはずです。
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