連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第11回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第11回は、謎の空間に拉致されてきた80人が、前代未聞の理不尽競走を強制されるサスペンス・アクション映画『ヒューマン・レース』です。
ポール・ハフが監督を務め、2013年にアメリカで製作された、死にたくなければ走るしか方法はないという理不尽な競走を強いられる80人の姿を描いたサスペンス・アクション作品。
レースを拒めば命はなく、2週遅れてしまっても命はない、そんな理不尽極まりないデスゲームに挑む80人の姿とは、どんな内容だったのでしょうか。
アメリカのサスペンス・アクション映画『ヒューマン・レース』をご紹介いたします。
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映画『ヒューマン・レース』の作品情報
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【脚本・監督】
ポール・ハフ
【キャスト】
ポール・マッカーシー=ボイントン、エディー・マギー、トリスタ・ロビンソン、T・アーサー・コッタム、ブリアンナ・ローレン・ジャクソン、フレッド・コーリー、B・アンソニー・コーエン、ノエル・ブリトン、J・ルイス・リード、セリーヌ・ティエン、イアン・ティエン、リチャード・ゲイル、ルーク・Y・トンプソン、トリップ・ホープ
【作品概要】
ポール・ハフ監督が脚本を手掛けたサスペンス・アクション映画であり、2013年4月11日にブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で世界初公開された作品です。
『地球外生命体捕獲』『フロム・ザ・ラビリンス』のポール・マッカーシー=ボイントンが主演を務め、他に『地球、最後の男』のB・アンソニー・コーエンら豪華キャスト陣が出演しています。
映画『ヒューマン・レース』のあらすじとネタバレ
突如謎の空間に拉致されてきた80人の老若男女は、困惑しながらあるデスゲームに強制参加されます。
そのデスゲームとは、「学校・家・刑務所は安全地帯」「矢印に従わなければ命はなく、道を外れても命はない」「2周遅れてしまったり、草に触れたりしたら死ぬ」「さらにレースを拒めば命はない」という、理不尽極まりない命懸けの競走でした。
勝者はたった1人しか選ばれないデスゲーム、未だ状況を把握できていない80人の気持ちなど考えもせず、無情にもゲーム開始の合図が鳴ります。
レース開始前、8歳の妹エイミーを病気で亡くしたベロニカは、暫くして自分も母親や妹と同じ、「B型細胞性慢性リンパ性白血病」を患っていることを、医師から告げられて知りました。
その事に思わず、ランニング中に空に向かって「クソッたれ」と叫んだベロニカでしたが、後日行われた検査結果では彼女の血液の数値は正常に戻っていたのです。
医師にその検査結果を聞いたベロニカは大変喜び、空に向かって感謝を述べ、車に乗って帰路に就こうとしますが、その途中で謎の光に包まれます。
冒頭のレース説明に戻り、デスゲームの参加者に選ばれたベロニカは、横にいた男性に押されて芝生を足で踏んでしまい、その直後に頭が爆発して死んでしまうのです。
ベロニカの悲惨な死を目の当たりにした79人の参加者は、一斉にスタート地点から走り出すものの、彼女同様芝生を踏んでしまった人たちは頭が爆発して死んでしまいました。
元アメリカ陸軍の兵士ジャスティン・コナーは、片脚がない元アメリカ陸軍の兵士エディーを運びながら、砂漠の中で寒い夜を耐え忍びます。
ジャスティンたちはレース前、障害を持った子供たちが通う「ウィッティア州立学校」におり、そこで副校長をしているジャスティンは、子供たちにエディーの戦争時の体験談を聞いてもらっていました。
それが終わるとジャスティンは、エディーと一緒に車に乗り、食事をしに行こうと街へ出ましたが、交差点で停まっているところで謎の光に包まれていきます。
ジャスティンたちが乗る車の近くには、ランニングをしていた聴覚障害を持つ男女の姿があり、彼らも他愛もない話をしている途中で謎の光に包まれていきました。
次にジャスティンたちが目覚めたのは、冒頭のレース会場であり、彼らの頭の中にはそれぞれ自分の声で再生されるレースの説明が流れます。
レース開始時点で4人の参加者が死亡し、残りはジャスティンたち76人、補助器具なしでは歩くこともできない元海兵隊のトーマスは、レースなんか無理だと叫んでいました。
残り75人、ジャスティンたちはまずここがどこか知ろうと、横を走り去っていく参加者に声を掛けますが無視され、仕方なくコース内容を調べるために走り続けます。
ジャスティンたちの目の前で、柵を乗り越えて脱走しようとした男性は頭が爆発して死亡し、残る参加者は72人となりました。
2つのトンネルを抜け、刑務所に辿り着いたジャスティンたちは、階段で足を怪我した少女を助け、少女とその弟を安全地帯である刑務所へ置いていきます。
しかし、自分たちに助けを求めていた姉弟を放っておけなくなったジャスティンは、一度出た刑務所へ戻ろうとしますが、エディーが「俺たちが死んだら誰も助けられない。皆で生き延びるために、今は無駄な時間をかけていられない」と説得するのです。
残り67人、姉弟を助けるために走り続けるジャスティンたちは、「我々は煉獄に堕ちた者、ここは天国に向かう狭き道。神の最後の試練を受けている」と話す神父に出会います。
そのまま3人で走ることにしたジャスティンたちでしたが、教会で神に祈りを捧げた神父は、祭壇に近づこうとしたせいでコースを外れてしまい、頭が爆発して死んでしまうのです。
神父を救えなかったやるせない気持ちを抱えたまま、走り続けていたジャスティンたちは、スタート地点で倒れているトーマスを、偶然通りかかった聴覚障害を持つ男女と協力して助けます。
ジャスティンたちは既に周回遅れしているトーマスを死なせないため、安全地帯である家で、他の参加者たちを足止めし、そこで皆で協力してここから出る解決策を見つけようとしました。
しかしレースの先頭で走っていたイエロージャージの男性が、エディーを押しのけて家を出てしまい、そのままトンネルを抜けて刑務所へ爆走していくのです。
そのせいで家の庭で椅子に座っていたトーマスは、2周遅れとなって頭が爆発して死亡し、このままでは姉弟が危ないと思ったジャスティンは、元自転車の選手だったイエロージャージの男性を追いかけます。
映画『ヒューマン・レース』の感想と評価
同じ街の区画に住んでいて、遊歩道にいただけでレースに強制参加させられるなんて、なんて理不尽なデスゲームなのだろうと誰もが思うことでしょう。
結局のところ、最後にエディーに名乗った天使エシロンが、何のために人類に最後の1人になるよう競わせているのか、人類の代表者になったら何が起きるのか全く語りません。
どんな人間たちを選び、どんな手段を使ってここへ閉じ込めたのかも劇中では一切明かされていません。
しかもエディーが最後、天使に迎え撃とうとしているところで物語が終わってしまうので、どうなったのか知りたいような知りたくないような、もどかしい気持ちになります。
それに最初から天使が出てくるわけでもなく、謎の物体が障害物として出てくるわけでもありません。
ただ単純に極限状態におかれた人間たちが、どんどん精神的にも肉体的にも追い詰められていき、他の参加者を潰して自分だけ生き残ろうとする姿が描かれているので、サスペンス要素満載です。
ジャスティンたちが助けたかった人間が死ぬところ、エディーが大事な友人のジャスティンを殺されてしまった場面は、この映画の中でとても辛く悲しいものでした。
まとめ
人間の恐ろしさと優しさを、エディー・マギーやトリスタ・ロビンソンらが見事に演じきっており、主役のポール・マッカーシー=ボイントンが脱落するなんてと、誰もが驚いたことでしょう。
参加者の数を誰かが数えていくたび、エディーやジャスティンらの心を追い詰めていき、観ているこちらも恐怖でドキドキが止まりません。
人間の頭が爆発されて死ぬなんて、グロテスクでショッキングな映像があって怖いものの、どこか目が離せない魅力が込められていました。
エディー・マギー演じるエディーが、天使と戦うところで終わってしまい、さらにエディーの他に誰が生き残ったのかも明かされていません。
そんな結末を観れば、怖かったけれど続編があったら見たいという気持ちが、不思議と芽生えてくることでしょう。
ルールを破れば頭が爆発して死ぬ、ゲーム主催者の正体も目的も不明という、他とは一味違ったデスゲームを観てみたい人に、このサスペンス・アクション作品をオススメします。