2003年から「週刊少年ジャンプ」で連載が開始され、15年半の歴史に幕を下ろした人気漫画『銀魂』。
そしてアニメシリーズの完結作となる映画『銀魂 THE FINAL』は、『銀魂』の最終話を基盤にした、ギャグありシリアスあり、パロディありの「銀魂」ワールドが凝縮された内容となっています。
最終回までが長引いた事で「終わる終わる詐欺」が代名詞にもなっている『銀魂』は本当に完結するのでしょうか?
映画『銀魂 THE FINAL』の作品情報
【公開】
2021年公開(日本映画)
【原作】
空知英秋
【監督・脚本】
宮脇千鶴
【監修】
藤田陽一
【声のキャスト】
杉田智和、阪口大助、釘宮理恵、高橋美佳子、石田彰、子安武人、千葉進歩、山寺宏一、中井和哉、鈴村健一、
【作品概要】
「週刊少年ジャンプ」で連載され、これまでアニメシリーズや実写映画など、数々の映像作品が製作されている、人気漫画『銀魂』。
主人公の坂田銀時が、最後の戦いに挑む本作は、最終巻である77巻を完全に再現した内容となっています。
アニメ版『銀魂』の第1期から作品に携わってきた宮脇千鶴が、監督と脚本を担当しており、テレビアニメ版のキャストも集結。
最後のバカ騒ぎに花を添えます。
映画『銀魂 THE FINAL』のあらすじとネタバレ
江戸時代末期、地球に「天人(あまんと)」と呼ばれる宇宙人が襲来します。
地球人は、天人から地球を守る為の戦いを開始し、後に「攘夷戦争」と呼ばれる数十年にも及ぶ戦争が繰り広げられました。
しかし、江戸幕府は天人の強大な力に屈してしまいます。
江戸は天人が我が物顔で歩くようになり、江戸を守る為に戦った侍たちは刀を奪われ、力を失ってしまいました。
かつて攘夷志士として戦い、「白夜叉」として恐れられた坂田銀時。
現在は、剣術道場の跡取りである志村新八と、戦闘種族である夜兎族の神楽や、何かと銀時に噛みつく巨大な犬、定春と、なんでも屋である「万事屋」を開いていました。
これまで、数々の江戸の危機を救ってきた銀時の前に、最大の敵が現れます。
虚と名乗るその魔人は、惑星のエネルギーである「アルタナ」の暴走により生まれた、「アルタナ変異体」で、500年の歳月を生きています。
虚の望みは自らの死で、その為に、エネルギー源である地球そのものを破壊しようとしていました。
また、これまで虚が不死である事を恐れた人々により、虚は何度も死と再生を繰り返し、その都度別の人格を形成していました。
多数ある虚の人格の1つ吉田松陽は、かつて「松下村塾」を開き、幼き日の銀時に剣術を教えた、銀時にとっては師匠です。
銀時は最大の敵であり、師匠でもある虚と、地球を守る戦いを繰り広げ勝利します。
ですが、「アルタナ」がある限り虚は蘇る為、銀時は虚の復活を阻止する旅に出ます。
その中で、赤ん坊となった虚と銀時は接触しますが、命を奪う事ができませんでした。
赤ん坊の虚は、瞬く間に成長し子供の姿になります。
そして銀時は、子供の虚が、松陽の人格と記憶を持っている事に気付きます。
しかし、虚の不死の力に魅了された、不老不死を求める教団「星芒教」により、虚は奪われてしまいます。
ですが、松陽の人格となった虚は、自らの心臓を銀時に渡し「星芒教」に完全なる不死が奪われる事を阻止します。
不完全な虚の肉体を手に入れた「星芒教」は、虚を完全復活させる為に、地球の「アルタナ」を集めます。
松陽から、虚の完全復活阻止を託された銀時は、同じ「松下村塾」の門下生だった桂小太郎と高杉晋助と共に、江戸に戻ります。
決戦の地は、文明の象徴であるターミナル。
3人は、ターミナルの頂上に突き刺さった「星芒教」の船を目指します。
映画『銀魂 THE FINAL』感想と評価
15年半の歴史を持つ、人気漫画『銀魂』の最後のエピソードをアニメ化した映画『銀魂 THE FINAL』。
原作では、最終巻にあたる77巻のエピソードを基盤に、3部構成で展開されます。
まず第1部は『銀魂 THE FINAL』までのエピソードを、全く何も知らない人でも分かるように解説してくれる、振り返りのパートになります。
ですが、あらすじの説明が早すぎるうえに、作画が何故か『ドラゴンボール』になっている為、全く話が頭に入ってきません。
この、あらすじの作画が『ドラゴンボール』になっているというのも、原作のギャグを完全再現しているのですが、バックで流れる曲が、アニメ『ドラゴンボールZ』の主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」という徹底ぶりです。
余計に、あらすじが頭に入って来ませんでした。
そして、第2部では、シリーズ最大の強敵にして、銀時達の師匠でもある虚との最終決戦が描かれます。
ターミナルを駆け上がり、最上階の虚を目指すという展開で、銀時と桂、そして高杉の「松下村塾」の生徒達が、それぞれの決着をつける為に、非常に熱い戦いを繰り広げます。
原作同様、最初からクライマックスのような戦闘シーンのオンパレードですが、銀時が新八と神楽と再会する場面や、師匠である松陽に「帰ろう」と語りかける高杉など、感動的な場面も入っており、最後の戦いをドラマチックに演出しています。
原作でもあった「銀三」などのギャグも、物語の流れを止めてでもキッチリ入れてくる辺り、流石だと感じました。
そして、銀時は虚との完全決着をつけますが、幼馴染でライバルでもあった高杉が犠牲になり、そして松陽の人格を持つ虚も消滅するという、悲しい結末を迎えます。
ですが、自らの過去と決着をつけ、そして現在の仲間たちと力を合わせて江戸を守る銀時の姿からは、未来に向けた前向きな意思を感じます。
そして、第3部となる「天然パーマにロクな奴はいない」では、虚との死闘後の、江戸の人々の様子を描かれています。
最後という事で、物語を締めくくるナレーションが流れるのですが、それぞれのキャラクターが自分に都合の良い「偽装ナレーション」を始める為、なかなかまとまりません。
『銀魂 THE FINAL』は、最終巻を完全再現している内容ですが、最初は『ドラゴンボール』パロディから始まり、虚との最終決戦と高杉との別れを描いたシリアスパートの後に、メインキャラクター総出演でのギャグパート、さらに剛力彩芽いじりなどの芸能ネタも入れるという、「銀魂」シリーズの魅力が詰まった作品となっています。
劇場の入場者特典が、『銀魂』の作者、空知先生が描いた「炭治郎&柱」の『鬼滅の刃』のイラストカードである辺り、本当に最後まで『銀魂』らしさを貫き通しましたね。
まとめ
『銀魂』と言えば、原作が何度も最終回を引き延ばしにした事から「終わる終わる詐欺」という言葉が定着した作品です。
アニメも2013年に『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』というタイトルで劇場版を製作した後に、新作テレビシリーズが、何事も無かったかのように放送されていました。
このような流れから『銀魂 THE FINAL』とされながらも「また何事も無かったかのように復活するのでは?」と期待したい所ですが、本作の監督、宮脇千鶴は第3期から監督を引き継いだ際に「終わらせるためのプロジェクト」と認識し、最後のエピソードは映画で完結させる事を提案したとインタビューで語っています。
「銀魂」シリーズは、本作で終了となるのでしょう、最後にふさわしい、集大成とも呼べる作品になっていると思います。