連載コラム「邦画特撮大全」第79章
今回の邦画特撮大全は劇場版『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』を紹介します。
2020年12月18日より公開された『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、2019年から2020年夏まで1年間放送されていた令和初の仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーゼロワン』の劇場版です。
当初は例年通り2020年夏に公開される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年12月の公開へ変更となりました。本作はTVシリーズ最終回のその後を描いた作品です。
CONTENTS
映画『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
石ノ森章太郎
【監督】
杉原輝昭
【脚本】
高橋悠也
【出演】
高橋文哉、岡田龍太郎、鶴嶋乃愛、井桁弘恵、中川大輔、砂川脩弥、桜木那智、中山咲月、山口大地、成田愛純、佐伯新、児島一哉、なかやまきんに君、南圭介、大後寿々花、吉田悟郎、アキラ100%、畑育芽、小山悠、後藤洋央紀、江田拓寛、山田梨奈、矢部太郎、伊藤美来、山崎紘菜、福士誠治、伊藤英明、山寺宏一(ナレーション)
【作品概要】
令和第1弾の仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーゼロワン』の単独劇場版。TVシリーズでメイン監督を務めた杉原輝昭監督がメガホンをとり、脚本は同じくTVシリーズのメインライター・高橋悠也が務めました。
出演者は高橋文哉、岡田龍太郎ほかTVシリーズのレギュラー陣が総出演。また第1話に登場し話題となったヒューマギア“腹筋崩壊太郎”のなかやまきんに君など、TVシリーズに登場したヒューマギアたちも一部再登場。本作の敵役、TVシリーズ最終回のラストに登場した謎の男エス/仮面ライダーエデンに扮するのは、映画『海猿』シリーズなどで知られる伊藤英明です。
同時上映は劇場短編『仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』。
映画『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』のあらすじネタバレ
悪意を持った人工衛星アークの脅威から世界を守った飛電或人/仮面ライダーゼロワン。しかし新たな脅威が世界を襲います。
「神が6日で世界を創造したのなら、私は60分でそれを破壊し、楽園を創造する」。
世界を滅亡させ新たな「楽園」の創造を目指す謎の男“エス”とその信者たちが行動を開始。信者たちが変身した“仮面ライダーアバドン”は世界各地で一斉にテロ活動を始めました。
或人はゼロワンに変身し、エスの変身する“仮面ライダーエデン”と戦いますが、エデンの驚異的な力に圧倒されてしまいます。
A.I.M.S.の隊長となった刃唯阿/仮面ライダーバルキリー、不破諫/仮面ライダーバルカン、そしてかつて人類滅亡を目指したヒューマギアの滅/仮面ライダー滅たちは、都市部へのガス攻撃を開始した“仮面ライダーアバドン”と戦闘に。或人の秘書のヒューマギア・イズは或人とは行動を共にせず、他の仮面ライダーのサポートに動きます。
仮面ライダーエデンに立ち向かったはずの或人は、なぜか異世界を彷徨うことに。そこでエスの正体を知る女性・遠野朱音と出会います。朱音は世界を滅亡せんとするエスをどうにかして止めたいのでした。
迅/仮面ライダー迅は敵のネットワークシステムに侵入。しかしそれによって彼らが操る戦闘機が出撃。不破と迅の2人は戦闘機と戦うも、その爆発の中に巻き込まれ姿を消してしまいます。
一方、天津垓/仮面ライダーサウザーはZAIAの常務・野立万亀男を捕え尋問。エスとは一体何者なのかを問い質します。
映画『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』の感想・評価
TVシリーズのその後を描いた劇場版『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』。当初の構想ではTVシリーズ間のエピソードでしたが、公開時期の変更によりTVシリーズの後日談となったそうです。結果として、『仮面ライダーゼロワン』という作品の決定版になったと言えるでしょう。
まず本作の注目点の1つが、人類とヒューマギア(AI搭載人型ロボ)との「共闘」です。TVシリーズは人類とヒューマギアの「対立」を中心軸に展開していました。人類を代表する飛電或人/仮面ライダーゼロワンと、ヒューマギアを代表する滅/仮面ライダー滅による最終決戦で、或人は滅を倒しはせず彼の中に芽生えた「心」に訴えかけたことで戦いを終わらせます。TVシリーズは人類とヒューマギアとが共存・共栄がついに始まるという、希望ある未来を予感させる最終回だったのです。
その後の滅は「世界の悪意を監視する」という立場で行動しています。TVシリーズでの滅は仮面ライダーに変身するもあくまで「敵」という立位置でしたが、本作劇中での彼の活躍は完全にひとりの「ヒーロー」でした。クライマックスではゼロワン以外の5人の仮面ライダーが集結。かつて戦った者同士が手を取り共通の敵と戦う、という展開はやはり盛り上がります。
となると敵役を「ヒューマギア」にするのは得策ではないでしょう。では本作に登場した敵は何だったのかというと、TVシリーズでも提示されていたように、やはり人間の「悪意」に帰結します。ヒューマギアに代り「ナノマシン」という新たな要素が登場しますが、つまるところ本作でそれを操っていたのは悪意のある人間でした。本作で描かれた「人間が存在する限り悪意が存在する」というような正邪相克の永続性は、同じく石ノ森章太郎原作の漫画『サイボーグ009』の「地下帝国ヨミ編」を彷彿させます。
そして本作ではTVシリーズよりも大人へ成長した主人公・飛電或人の姿を堪能できます。敵であるエス(一色理人)/仮面ライダーエデンは大切な人を失い、今回の陰謀を引き起こしました。TVシリーズで或人は戦いの中で秘書ヒューマギア・イズを失い、悪意の中に呑まれました。いわばエスはかつての闇に囚われた或人自身、もしくは悪意を乗り越えられなかった或人のありえたかも知れない姿に映ります。或人とエスが教会で対峙したシーンでは、悪意を乗り越えた或人だから見せられる姿や言える言葉が描かれました。
またアクションシーンは見せ場の満載で、ボディを光らせた仮面ライダーゼロワンと仮面ライダーエデンの一騎打ちから始まり、仮面ライダーバルキリーのバイクアクション、仮面ライダーバルカンと仮面ライダー迅による戦闘機との空中戦。『ゼロワン』の持ち味とも言えるアクロバティックなカメラワークによるアクションが、よりスケールアップしているのです。
まとめ
1年間のTVシリーズで成長した登場人物たちの姿や、「ナノマシン」という新たな要素を導入しながら発展・継承された「悪意」そして「心」というテーマ。『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、まさに『仮面ライダーゼロワン』の決定版と言える作品です。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は劇場短編『仮面ライダーセイバー 不死鳥の騎士と破滅の本』を紹介します。お楽しみに。