新たな鮫島事件『真・鮫島事件』は2020年11月27日(金)より全国公開
2001年に、ある書き込みがキッカケで、インターネット上で様々な憶測が飛び、「語ってはならない事件」として都市伝説化した「鮫島事件」。
その「鮫島事件」の事を知ってしまった事から、異形の存在に襲われる、若者の恐怖を描いたホラー映画『真・鮫島事件』。
コロナ禍の日本を舞台に、現在の時代背景が反映された、新たな「鮫島事件」を描いた、本作の魅力をご紹介します。
映画『真・鮫島事件』の作品情報
【公開】
2020年公開(日本映画)
【監督・脚本】
永江二朗
【キャスト】
武田玲奈、小西桜子、濱正悟、林カラス、鶴見萌、山形啓将、水島里菜、佐藤仁、しゅはまはるみ、佐野岳
【作品概要】
平成史上、最大の闇とも呼ばれる「鮫島事件」を原作に、『2ちゃんねるの呪い 劇場版』(2012)や『心霊写真部 劇場版』(2015)の監督として知られる、永江二朗がオリジナル脚本で映画化。
主人公の女子大生、佐々木菜奈を、モデルとして活躍する他、映画『暗殺教室』(2016)など、数多くの映像作品に出演している武田玲奈が演じます。
映画『初恋』(2020)でヒロインに抜擢され、話題になった女優の小西桜子の他、若手の注目俳優が出演。
また『カメラを止めるな!』(2017)の、しゅはまはるみが、個性の強い大家を演じています。
映画『真・鮫島事件』のあらすじとネタバレ
コロナにより、街の風景が様変わりした日本。
大学生の佐々木菜奈は、高校の頃の同級生、仲瀬フミ、戸高亮、追水裕貴、山田鈴と、リモートで飲み会を開催していました。
ですが、リモート飲み会に参加予定だったはずの、あゆみが一向に参加してきません。
一同は不審に思いながらも、昨日、裕貴と鈴、あゆみの3人で、ある心霊スポットを訪れた話で盛り上がります。
すると、あゆみがリモート飲み会に参加してきました。ですが、画面の向こうにいるのは、あゆみではなく、あゆみの恋人でした。
あゆみは、心霊スポットから帰って来て以降、様子がおかしくなり、ベッドの上で凄まじい表情を浮かべて、亡くなっていました。
あゆみの恋人は「お前ら何を知ってる?あの話ってなんだ?」と凄い剣幕で問いただしますが、玄関に誰かが来たようでした。
玄関の扉を開いたあゆみの恋人は、何者かに引きずられ、そのまま連れ去られてしまいます。
驚愕する一同。
亮は、あゆみの恋人が言っていた「あの話」について、裕貴と鈴を追求します。
最初は、口に出す事をためらっていた様子の裕貴と鈴ですが、亮の剣幕に押され、鈴が「鮫島事件」と口に出します。
その瞬間、5人の部屋の電気が一斉に消え、菜奈の周囲が異常なまでに暗くなります。
菜奈はブレーカーを上げますが、電気は復旧しません。
菜奈が窓の外を見ると、景色は様変わりしており、不気味な暗雲が立ち込めていました。
映画『真・鮫島事件』感想と評価
かつて、電子掲示板「2ちゃんねる」で話題になった、ネット発都市伝説の代表格として知られる「鮫島事件」。
「鮫島事件」の事は、語ってはならないとされており「おや、誰か来たようだ」というフレーズが有名ですね。
その「鮫島事件」を原案にしたホラー映画『真・鮫島事件』は、コロナにより、新たな生活様式として普及された、リモート社会を題材にしている、まさに、今の空気が反映された作品となっています。
本作の大半は、パソコンのモニター画面で進行されていき、リモート飲み会の中で「鮫島事件」に触れてしまった事がキッカケで、主人公の菜奈と、友人達が「鮫島の呪い」に襲われていきます。
パソコンのモニター画面だけで進行するホラー映画といえば、2014年のホラー映画『アンフレンデッド』という作品があります。
『アンフレンデッド』は、終始facebookの画面のみで物語が進行していきますが、『真・鮫島事件』では、パソコンのモニター画面に映し出された、友人達に起きていく異変と、菜奈の部屋に起きる怪奇現象、この2つが同時進行していきます。
「鮫島事件」の事を話題にして以降、「鮫島の呪い」により、リモート飲み会に参加していた友人達が、1人1人鮫島の亡霊に連れ去られていくのですが、この常識では説明がつかない状況を、菜奈はただ見ているしかありません。
友人達が1人ずつ消えていく事により、「鮫島の呪い」が、間違いなく菜奈にも近づいていくという、カウントダウンのような恐怖がありますが、同時に、菜奈の部屋の扉が何者かに叩かれたり、押入れの中にあったフルートが、勝手に動かされていたりという、部屋の中で起きる怪奇現象により、間違いなく菜奈自身も「鮫島の呪い」の標的で、それが確実に近づいてきているという、恐怖を生み出します。
ですが、物語が進行する中で、決して語ってはならないとされる「鮫島事件」の真相が明らかになります。
そして「鮫島の呪い」を解く方法が明らかになるのですが、菜奈は「鮫島の呪い」で別次元に飛ばされており、部屋から出る事が出来ません。
そこで、兄の将輝が、呪いの発端とされる廃アパート「白風荘」に向かい、鮫島が監禁された部屋を目指すのですが、ここから、これまでの忍び寄る恐怖から一変し、廃アパートの中を、鮫島の亡霊から逃げながら突き進む、体感型のホラーとなっていきます。
将輝が、菜奈にアパートの内部を見せながら進んでいく為、スクリーンには、廃アパートの内部が将輝目線で映されます。
これにより、観客も将輝と同じ目線で、廃アパートを進んでいく感覚になっていきます。
また、廃アパートの内部が、やけに生活感が残っていたりして、生々しい不気味な部屋が次々と登場します。
部屋の中には、キリスト教で、死に至る罪とされる、七つの大罪を連想させる言葉が血で殴り書きされており、さらに不気味さが増します。
後半の展開は、お化け屋敷に入ったような恐怖で、七つの大罪とかも、特に意味は無いのですが、とにかく不気味に作られた「白風荘」の内部を、将輝目線で味わうだけでも、かなり怖いです。
さらに、リモート飲み会のメンバーで、菜奈の親友フミにも「鮫島の呪い」による異変が起き、フミが犠牲になる前に「鮫島の呪い」は解けるのか?という緊迫した展開となっていきます。
主人公である菜奈は、部屋から一歩も外に出れないのですが、パソコンのモニターに映し出されたフミと、テレビ電話で連絡を取り合う将輝、2つの恐怖の挟み撃ち状態となります。
緊急事態宣言以降、リモートで物語が展開する映像作品が、いくつか製作されています。
『真・鮫島事件』も、そういった緊急事態宣言以降の状況が反映された作品なのですが、1人ずつ鮫島の呪いの餌食になっていく様子が、パソコンのモニター越しに映し出される展開は、かなり怖くて、こういったリモートとホラーの相性は良いのではないかと感じました。
過去に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)『REC/レック』(2007)『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)のように、手持ちカメラで撮影された映像のみで、物語が展開するホラー映画が流行した時期がありましたが「リモートを使用したホラー映画は、アイデア次第で傑作が誕生するのではないか?」そんな事を感じさせる作品でした。
まとめ
前述したように「鮫島事件」は、ネット発の都市伝説です。
ネット発都市伝説の特徴として「聞いてはならない」「口に出してはならない」「やってはいけない」など、最初は傍観者だったはずの自分が、いつの間にか当事者になっていたとう恐怖があります。
「鮫島の呪い」も、、呪いの当事者に自分がなっている事に気付かず、知らずに呪いを拡散させてしまうという恐ろしさがあります。
作中で菜奈が言っていますが、自身が感染した事に気付かず、相手にうつしてしまうという点で、「鮫島の呪い」は「コロナウィルス」を連想させます。
本作は、マスクをした菜奈が新宿を歩く場面から始まるのですが、道行く人が全員マスクをしているという、日常的に見慣れているはずの光景が、スクリーンを通して見ると異様に感じました。
コロナ禍における「いつ自分が当事者になるか分からない」という、何とも言えない不安や恐怖を「鮫島の呪い」を通して表現した本作は、今の日本を映し出した作品と言えます。