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Entry 2018/10/03
Update

『クワイエットプレイス』ネタバレ感想と結末の意味を解説。音を立ててはいけない世界で描かれる愛とは

  • Writer :
  • 白石丸

全米で異例の大ヒットを記録し、日本でも話題のホラー映画『クワイエット・プレイス』

本作はホラー演出が冴えわたっており、全編緊張感の絶えない作品になっていますが、それ以上に感動を呼ぶ“家族”の物語にもなっています。

キーポイントになるのは、“親が子を思う気持ち”。映画『クワイエット・プレイス』を解説していきます。

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映画『クワイエット・プレイス』の作品情報


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

【公開】
2018年(アメリカ映画)

【原題】
A Quiet Place

【制作】
マイケル・ベイ

【脚本・監督】
ジョン・クランシスキー

【キャスト】
エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプ

【作品概要】
「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイが製作を務めた、全米でスマッシュヒットを記録したサスペンスホラー作品。

『ボーダーライン』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のエミリー・ブラントが主演を演じ、ブラントの夫でもある俳優のジョン・クラシンスキーが自ら脚本を書き、監督を務めました。

映画『クワイエット・プレイス』のキャラクターとキャスト


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

エブリン(エミリー・ブラント)
絶望的な世界でも、子と夫を思う強き母。音を立ててはいけない世界で妊娠してしまい、来る出産に向けて準備を進める。

リー(ジョン・クランシスキー)
アボット家の家長。サバイバル術に長けており、様々な工夫で一家を守っている。

リーガン(ミリセント・シモンズ)
一家の長女、先天的な聴覚障害を持つ。末っ子ビューを自分のせいで死なせてしまったと悔いている。

マーカス(ノア・ジュプ)
一家の長男。まだ幼いが聡明でいざという時は勇気を発揮する。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

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映画『クワイエット・プレイス』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

音に反応する“何か”によって人類のほとんどが滅び荒廃した世界。そんな中何とか生きのびているアボット家。

音を立てないために手話でコミュニケーションを取り、裸足で移動する日々を過ごしていました。

しかし、末っ子は手に入れたおもちゃの音を立ててしまい、“何か”に襲われて死亡してしまいました。

末っ子に玩具をこっそり渡したのは長女のリーガンでした。彼女はそのことで自分を責めてしまうようになります。

一年後、今も音を立てずに暮らし続けるアボット家。

父親のリーは自己流の無線電波を拡大して世界中にSOSを発信し続ける日々。

妻のエブリンのおなかには新たな命も宿っていました。

産声が外に漏れないように特別なベビーケースも作っていました。

食物を収穫にしに行くリーと長男のマーカス。一方のリーガンは父親との関係はギクシャクしたままでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『クワイエット・プレイス』ネタバレ・結末の記載がございます。『クワイエット・プレイス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

リーガンはひっそりと家を抜け出し一年前、末の弟が命を落とした場所に向かいます。

独り家を守るエブリンは産気づき、必死に陣痛の痛みと戦っていました。

彼女の叫び声もまた“何か”を呼んでしまう恐れがあるからです。

更に人気のなくなったアボット家に“何か”が侵入してきます。

エブリンは自身の苦しみをこらえながら外部に危機を知らせます。

それを見たリーはマーカスを残して家に入ります。

そこには苦しみを乗り越えて新たな命を産み落としたエブリンの姿がありました。

一方、マーカスは姉のリーガンと合流します。

そんな彼らにも“何か”が迫ります。

リーは後の全てを子供と妻に託し、“何か”に無謀な戦いを挑み命を落とします。

絶望に陥るアボット家。

しかし、リーガンの補聴器から発せられる独自の電磁波が弱点であること知ると、リーガンはその電磁波を増幅させます。

“何か”を退けたアボット家。

長い長い一夜が明けます。

映画『クワイエット・プレイス』の感想と評価

実際の夫婦が作った家族の物語


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

本作の監督は、劇中で夫リー役も務めているジョン・クラシンスキー。

その妻を演じているのは、実のパートナーであるエミリー・ブラント

インタビューなどで、なぜ妻をキャスティングしたのか質問を受けたクラシンスキーは「実の妻でなければうまく演出できないようなシーンがあったから」と答えています。

釘を踏んでしまうシーンやバスタブで出産をするシーンなど、ハードなシーンが多いエブリン役。

実の妻であるからこそ、お互いに率直に意見を出し合って、リアルな演技、リアルなシーンを作れたと語ります。

しかしそれだけでなく、そもそもの話がこの夫婦の人生と重なっていたからこそ、『クワイエットプレイス』は生まれたのです。

この話を最初に思いついたのはスコット・ベックとブライアン・ウッズという脚本家コンビ。

2人はアイオワ州のド田舎で生まれ育ち、農場を舞台にしたホラーを考えていました。

終盤で、穀物を貯蔵する塔”サイロ”に落ちてしまうことをホラー演出に使うというアイデアは、2人が農場の付近で暮らしてきた経験に基づくものです。

音を立ててはいけないというアイデアは、彼らが学生時代にサイレント映画を浴びるように見ていたから思いついたそうです。

そして原案を基に2人は脚本を完成させました。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

2016年7月にクラシンスキーは本作の脚本を読み、大変興味を持ちました。

①音を立ててはいけないこと

②親が必死で子供たちを守る

この2つの要素に彼は特に惹かれました

なぜなら、彼の妻エミリー・ブラントはちょうど第2子を出産したばかりで、子供にストレスを与えないようになるべく音を立てないように神経を配った生活を送っていたからです。

その生活と、『音を立てたら死ぬ世界で親が子供を守りぬく』という本作のプロットがシンクロしているのが、クラシンスキーの最大の興味の理由でした。

この両親を監督夫妻が実際に演じるというのはとても必然性があります。

音を立てずに暮らすというのは、非常にストレスが貯まるものです。

世の中の親たちがそんな気を遣う生活が送れるのは、子供への愛があってこそ。そして親というのはいつでも子供が心配なのです。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

クラシンスキーは「『クワイエット・プレイス』の世界観は、親であるために感じる不安を最大限に感じる状況」と考え、本作を家族の物語として描くことにしたのです。

そして、親にとって最大の恐怖である“我が子が死ぬ”という衝撃の幕開けから本作はスタートします。

死ぬのは末っ子ですが、彼が死ぬ原因を作ったと自分を責めてしまうのが、耳が不自由な長女リーガン。

ちなみに人類がほとんど死に絶えた地球でこの一家が生き残っている理由は、おそらくこの長女にあります。

元々アボット家は、リーガンとコミュニケーションするために全員手話が使えたのです。

ほかの人類がどうしてもお互いの意思疎通のために音を立ててしまう中、この一家は手話で生き延びたのでしょう。

リーガンはちょうど思春期を迎えており、自分に対する嫌悪感と親への反抗心がごっちゃになってきています。

そして夫婦は出産も控えてきています。

変化していく子供達、新たな命の誕生への準備。

子どもを育てる親なら誰もが感じる不安や悩みが、この世界では倍増して襲ってきます。

この映画が恐ろしいのは、“単に絶望的な世界に置かれているというだけではなく、その恐ろしい世界に自分の愛する人々も暮らしている”という点にあります。

自分のミス一つで愛する人が死ぬかも知れない。

しかしそんな状況が、ただ楽しみもなく生き延びるしかない世界を乗り切る活力になっているのも真実なのです。

映画の中盤で、自分の妻を失ってしまった老人が絶望のあまり大声を上げて死を選ぶシーンがあります。

あそこはただショッキングな場面というだけでなく“生きがいとなる存在を失った人間がどうなるか”を描いています。

常に音を立てず、コソコソ動いて、ただ生き延びることだけを考えて怯えて暮らす

自分が生き残るためだけに、そんな生活をずっとできるわけがありません。

だからこそ、それを目撃した父親と長男は心底恐怖を覚えたのでしょう。

そのシーンがあるからこそ、直後に家で待っていた母親が危機にさらされているのを知った親子の行動に説得力が生まれます。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

あんなに臆病だった長男が、母親を守るために決死の覚悟で花火を打ち上げるのも、“愛する人を失うことの恐ろしさ”を知ったからでしょう。

そしてクライマックスで父リーは中盤の老人と対比するように、最愛の子供たちを守るため、わざと大声を上げて怪物を呼び寄せ死にます。

子供たちは父の死を乗り越え、母親と新しく産まれたばかりの赤ん坊を守るために戦います。

そして怪物は、リーガンが付けていた補聴器の発する音が原因で倒されます。

それは父が彼女のために作ってくれたもの。

そして自分のせいで末っ子を死なせてしまったと思っているリーガンが、家族を守る打開策を自分のハンディキャップから見つけるという展開もとても感動的です、

この映画は親が子供を守る映画として始まりますが、最終的には子供たちが成長して親を守り、一緒に戦う話になります。

極限状態が生む家族愛と成長譚をしっかり描いているのがこの映画が支持されている理由です。

音を立ててはいけない世界は何を意味するのか


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

音を立てたらすぐさま怪物がやってきて殺される世界。

非常に恐ろしいですし、アイデアとしても面白いですが、少し突飛な設定にも感じます。

しかしSFやファンタジーやホラーというのは、作者が意図していてもしていなくても、何かのメタファーになっていることが多いです。

この映画では“音を立てる=何か失敗をする”という図式が成り立っています。

そして失敗をすると世界から排除される。

これは我々が生きる現代社会と同じではないでしょうか。

SNSも発展し誰かが失態を犯したりするとすぐに糾弾され、どんどん生きにくくなっていく社会。

先ほど言った子育てという点で言っても、SNSでは子供が公共機関で騒いだりした場合の親への非難が相次いだり、子育ての仕方に赤の他人が文句をつけてくることもある時代です。

そんな世界を家族が生き抜く話にも見えます。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

赤の他人や社会からは常に監視され、愛する人とのコミュニケーションもろくに取れない。

これはかつてよくSFで描かれていた、徹底的に人間が抑圧され管理されたディストピア社会の要素です。本作は社会ではなく崩壊した世界でありながら抑圧された監視社会になっているとも言えます。

そんな中でも人が生き抜くのは自分だけでなく愛する誰かの為。

本作を批判する意見の中では「なぜあんな世界で子供を作るんだ」ということをよく目にします。

しかしあんな状況だからこそ、誰かとつながっていたいという気持ちは理解できるでしょう。

短いシーンですが、イヤホンを使って夫婦が束の間音楽で踊るシーンがあります。

あれと同じように、極限状態だからこそ性の営みが行われ、そして新たな家族の生きる希望となる赤ん坊が産まれたと考えることができます。

過酷な人生を乗り切るには愛する人、そして次世代への希望が必要。

愛する“人”という部分を仕事や趣味といったものに変えてもいいかもしれません。

自分の命をかけられるくらい大切なものがある。

それこそが人が生き抜く糧になるのです。

そんなシンプルかつ力強いメッセージを与えてくれる映画です。

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まとめ

本作『クワイエット・プレイス』は、ピンチの連続で、一瞬たりとも息をつかせない映画になっています。

また、“音を立ててはいけない”というシチュエーションの恐怖を最大限に味わうには、映画館で見るのが最も効果的です。

まずはシンプルに映画を楽しんでいただいて、感動や何か心に残るものがあれば、再度、この解説を読んで下さいね。

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