2017年12月9日より公開の『DESTINY 鎌倉ものがたり』は、黄泉の国に連れられてしまった妻を取り戻しにいく…。
『ALLWAYS 三丁目の夕日』『ドラえもん STAND BY ME』などの山崎貴監督が不思議な街“鎌倉”を舞台に“運命”を描きます。
見る人、年齢層を問わず楽しめ、感動できるファンタジックでユーモラスな作品をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【監督】
山崎貴
【キャスト】
堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、中村玉緒、田中泯、ムロツヨシ、要潤、市川実日子、古田新太、大倉孝二、國村隼、神戸浩、鶴田真由、薬師丸ひろ子、橋爪功、吉行和子、三浦友和
【作品概要】
「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズや『寄生獣』などでお馴染みの山崎貴監督が鎌倉を舞台にVFXを駆使して製作したファンタジー作品。
原作は西岸良平の漫画『鎌倉ものがたり』であり、山崎貴が西岸作品を原作として扱うのは『三丁目の夕日』以来、二作目となる。主題歌は宇多田ヒカルの『あなた』。
2.映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』あらすじとネタバレ
新婚旅行から帰ってきた正和と亜紀子。
亜紀子は改めて作家の妻になること、鎌倉に嫁ぐことを認識します。
するとふたりの目の前を河童が通り過ぎました。
亜紀子は目を点にして「今のなに?」と尋ねると、正和は平然と「ここは鎌倉だぜ。そりゃ河童くらいいるさ」と告げます。
ここからふたりの鎌倉での夫婦としての生活が始まります。
不思議な出来事に翻弄されながらも楽しく毎日を送っていたある日、亜紀子は納屋の中で古い原稿を見つけます。
正和に渡すと、「これは甲滝五四朗のものだよ」と顔色を一変させます。
正和には家族の“恥”だとして、隠していた過去がありあました。
亜紀子は話したほうが楽になると、聞こうとしますが頑なに拒まれ「もういいよ」と拗ねてしまいます。
正和もどうしていいか分からず、初めての夫婦喧嘩になってしまいました。
その過去とは学者だった父が外出する度に、母が男の作家と浮気しており自分はその作家の子供の可能性が高い。というもので、その作家こそ甲滝五四朗だったのです。
正和は打ち明けるか悩みますが、死んでからもなお仲睦まじい顔見知りの夫婦の幽霊にかんかされ、死神に教えてもらった黄泉の国へと向かう列車を眺めながら、「君には話しておいた方が良いかも知れない」と亜紀子に告白します。
亜紀子は優しく「忘れてしまいましょう」と声をかけそばに寄り添い、ふたりはさらに仲を深めました。
しかし、その頃から不運なことが起こり始めます。
原因は家に取り憑いた貧乏神でした。正和は迷惑だとすぐに追い出そうとしますが、亜紀子は意外にも優しくもてなし始めました。
呆れる正和でしたが、亜紀子は「あなたとなら貧乏でもいいよ」というだけです。
正和の家にお金があまりなかったことと次に懲らしめる人物ができたため、出て行くことになりましたが、亜紀子を心底気に入った貧乏神は彼女に自分の茶碗を「貰ってくれるかい?」と渡しました。
亜紀子はもらうのは申し訳ないと家にあった茶碗と交換しました。
正和が行きつけの居酒屋“静”で飲んでおり、家を空けている時に、亜紀子のもとに「明後日〆切で書いて欲しい」という無理難題の依頼の電話がありました。
途中、魔物に転ばされながらも急いで正和に伝えにいくと、正和は「やるよ。所詮ぼくはそれくらいのレベルの作家だよ、チクショー」と叫びながら風を切るように走って家に帰って行きました。
亜紀子は見届けたあと、自分の顔を触って不思議そうな表情を浮かべます。
自らの体に起きた異変を感じ始めていました。
3.映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』感想と評価
「ALLWAYS 三丁目の夕日」シリーズで号泣した中学時代。主題歌も崇めるように好きだったBUMP OF CHICKENの『花の名』が起用されていたり、またMVを撮影したりと何かと僕の青春に突き刺さっていた山崎貴監督。
そんな山崎貴監督が新たに西岸良平作品を映画化することは20〜30歳くらいまでの同世代には胸の熱くなるニュースだったのではないでしょうか。
鑑賞後、点として魅力を感じた部分が多くありましたので、ポイント立ててお伝えしていきます。
見どころ1:不思議な舞台設定とVFX
魔物や妖怪、死神などファンタジーな生物が数多く登場する今作。
いかに無理なく、さも当然のようにそこいる感覚を演出するのは重要なことだと思います。
現実世界ではありえない設定を観客が疑問に思わず、すっと映画世界に没入できる工夫が舞台設定にありました。
以下、『DESTINY 鎌倉ものがたり』の中での“鎌倉”の特徴です。
・街並みはイメージするいかにも鎌倉であり、街に走っている車はどれもレトロカー。
・街を歩くカップルなどは現代的な服装。
・ネットやスマホは登場せず、仕事も直接作家の自宅に原稿を取りに来るなど昭和的。
・主人公夫婦や死神など会話のノリや言葉使い、愛情表現、感情表現は非常に現代的。
以上、特徴としてあげた事柄から、現代と過去が不思議なバランスで混ざり合っています。
山崎貴監督自身も「現実から半歩ファンタジーに近づいた鎌倉を目指した」とインタビューで答えており、CGを駆使して背景に林を合成したりと“鎌倉”の街つくりにこだわっています。
決して注目して見る部分ではない、舞台設定や背景。しかしファンタジー作品にとって舞台設定の作り込みが映画の説得力に大きく影響します。
今作での、その不思議なバランスをもって作り上げられた“鎌倉”は非常に魅力的な街として完成しており、映画にストレスなく没入することが出来ました。
また、街にひしめく魔物や妖怪たちを表現するVFX(※映像を加工する技術)が素晴らしく、本当に生きてそこにいるような感覚を楽しめます。
魅力的な舞台にリアルな魔物達が生活している。これだけでも胸が踊るようです。
見どころ2:高畑充希の飛び抜けた可愛らしさ
とにもかくにも、一色亜紀子を演じる高畑充希が可愛いです。
もちろん可愛いだけではありません、亜紀子の性格はベタベタと正和にくっついたり、「一生そばにいたい」と伝えるなど直接的な愛情表現をします。
故に薄っぺらい人間に見えてしまったり、鼻についてしまったりしてしまいがちな役柄です。
しかし、高畑充希は軽はずみな行動をする亜紀子の奥にある確かな“覚悟”や“母性”を感じさせてくれます。
一度こうと決めてしまえばテコでも動かないような頑固さや、根底に流れている昭和の思想、本当に構成する要素の多い役柄なのですが、見事に演じ切っていてとても魅力的です。
どれだけ主人公のことが好きになれるかも心を動かされる上で必要な要素で、映画の前半部分からすっかり虜になってしまいました。
映画の中で魅力を放ち続けるその姿はまさに女神。
ぼくのように虜にされてしまった男性、また女性も多いのではないでしょうか。
見どころ3:エンドロール
映画館での鑑賞中、エンドロールが流れ出すとすぐ席を立つそこのあなた。
「急いで帰らないといけない」「早く一緒に見た友達と話し合いたい」と、いろいろな理由はあると思いますが、エンドロールがどれだけ素敵なものかを説明させていただきます。
今作ではタイトルに冠されているように“DESTINY”つまり“運命”が大きなテーマとなっています。
何度生まれ変わっても巡り会う。見つけ出す。そんな重大なテーマをエンドロールが物語っていました。
流れるクレジットの後ろに映し出される置物や巻物など、これらは全て本編の中で登場したものです。
何気に亜紀子が「これ、欲しい」など本能的に惹かれる描写があります。
この描写こそが伏線となっており、実はその品々は前世の正和と亜紀子そのものを描いた作品であり、無意識で選ぶ行為そのものが“運命”を表現しています。
粋な演出に個人的に今年の“グッドエンドロール賞”を勝手に授与させていただきたいと思います。
と、まぁ冗談はさておき、他の作品でもエンドロールは鑑賞後の作品に浸れる最高の時間です。
劇場で鑑賞していた際に、約2割ほど席を立たれていました。
主題歌『あなた』宇多田ヒカル
「あ〜なた〜以外、なんに〜もい〜らな〜い」主題歌である宇多田ヒカルの『あなた』のシンクロする曲を聴きながら、一度本当の最後まで作品に浸ってみてはいかがでしょうか。
4.まとめ
“運命”という大きなテーマを描きつつも、個性豊かな登場人物が闊歩するファンタジックでユーモラスな作品です。
『ALLWAYS 三丁目夕日』を製作した山崎貴監督が家族を描いて感動しないはずありません。
家族、友達、恋人、頭の中に浮かぶ大切な人と、ぜひ足を運んでみてください。