日本と香港の若き才能が集いクランク・インした映画『ある殺人、落葉のころに』。
冬空の下、神奈川県の大磯で行われるロケーション現場では、三澤組のスタッフたちの間に日本語、英語、中国語の掛け声が飛び交っています。
なかでも覚えたてのカタコトの日本語をあえて使い、ユーモアたっぷりにおどけて見せるコミュニケーション能力で、三澤組の現場を盛り上げるムードメーカーがいました。
本作の香港側のプロデューサー黄飛鵬(ウォン・フェイパン)。
今回は監督の三澤拓哉を支えるプロデューサーのウォン・フェイパンをご紹介します。
プロデューサー黄飛鵬(ウォン・フェイパン:右)
ウォン・フェイパンのプロフィール
黄飛鵬(ウォン・フェイパン)は、香港城市大学クリエイティブメディア学部卒業後、いくつかの映画やテレビドラマで、キャメラマン、編集などの下積みの経験します。
その後に制作した『Leave Them Dry and High』は、2015年香港インディペンデント映画祭のフレッシュウェイブ2014のオープンカテゴリーに参加、また『Stray Dog』は、2014年深圳湾フリッジフェスティバルに参加すると、第17回ifvaの審査員推薦映画に選ばれました。
さらに『An Odd Fish』は、2014年ブラウンシュバイク国際映画祭では、がヨーロッパとドイツのプレミア上映され、第11回北京インディペンデント映画祭のクロージング、南方影展(台湾)の「華人影片競賽」に選出され、審査員特別賞を獲得します。
香港映画『十年』の予告編
ウォン・フェイパンの日本で知られる活動では、2017年7月22日に公開された香港映画『十年』の監督の1人に抜擢されます。
若手監督5名による短編作品の第2話の監督を務めます。
5つのショート・ストーリーで構成されこの作品は、映画制作をした揺れる世相であった2015年の香港からその先の10年後の未来の香港をコンセプトに描いた作品です。
ウォン・フェイパンは、失われゆく記憶の記録に思いをはせる主人公を描いた近未来SF映画『冬のセミ』を制作しています。
説明を排する詩的な表現に力を入れた作品で、5作品の中でも異彩を放った難解さと深いテーマ性を醸し出しています。
そのほかに、2017年9月には、ミュージシャンの坂本龍一が国際的に短編映画の応募を募った『async-短編映画コンペティション』に、ウォン・フェイパンはチャレンジしました。
18世紀中頃に書かれた中国の長篇小説『紅樓夢』をテーマに映画化を試みた作品で応募したのです。
この小説は14巻にも及ぶもので、中国では三国志や水滸伝などと共に知られる中国文学の大作。
若いながらにウォン・フェイパンは、時代性のある古文の映像化に挑んだことで、若手作家として温故知新にアイデアの矛先を向けた点や幻想的でエッジの効いた艶のあるビジュアルセンスで、またしても注目を集めます。
ウォン・フェイパンと三澤拓哉監督の出会いは
大磯のロケ現場で香港キャメラマンと演技プランを議論する三澤拓哉監督
三澤拓哉監督とウォン・フェイパンが初めて出会ったのは、2014年に互いとって異国の地である韓国の釜山国際映画祭。
その際の三澤拓哉監督は、釜山国際映画祭が主催するAFA(アジアンフィルムアカデミー)に参加するために訪韓でした。
若い2人はそれぞれの渾身の一作の映画を話題に対話をし、言葉の壁を苦にもせず、すぐに異文化の才能を認め合うアジアの同志になります。
そんな彼らが再会を果たしたのは、ウォン・フェイパンが香港映画『十年』の上映のために訪日していた2016年に日本で開催された大阪アジアン映画祭2016での会場でした。
三澤拓哉とウォン・フェイパンは大阪の夜に、またしても釜山の時のように縁を深め合う酒を酌み交わし、夜明け近くまでホテルの一室で映画の夢を熱く語りあったそうです。
その際にウォン・フェイパンが三澤拓哉に約束したことが、三澤作品のプロデューサーを自分が買って出るというアイデアでした。
今、その2人の夢が日本の地で叶い、大磯のロケ現場で香港・日本合作映画として花開いたということです。
演出を三澤拓哉が務め、ウォン・フェイパンがプロデューサーを果たす『ある殺人、落葉のころに』は現在撮影快調!
三澤拓哉監督の第2作は2018年公開予定。引き続き、レポートをお楽しみに。