映画『横須賀奇譚』は2020年8月29日(土)より元町映画館(神戸)、シアターセブン(大阪)他にて全国順次公開! (速報)京都みなみ会館にて9月25日(金)に公開決定!
東日本大震災で亡くなったと思っていた元恋人が「生きているかもしれない」という情報を受け、男は横須賀へ向かうー。
映画『横須賀奇譚』は、大塚信一監督が、およそ5年の歳月を費やし作り上げた劇場デビュー作品です。小林竜樹が主人公・春樹を、元恋人役をしじみが演じる他、川瀬陽太、烏丸せつ子、長内美那子、長屋和彰らが脇を固めています。
東京・新宿K’sシネマでの公開を好評のうちに終え、現在は全国順次公開中。8月29日(土)には元町映画館、シアターセブンでの上映がスタートし、大塚信一監督とメインキャストのひとり、しじみによる舞台挨拶が行われました。
本記事では元町映画館での舞台挨拶イベントの模様をお届けします。
映画『横須賀奇譚』舞台挨拶リポート
倫理的な格闘から生まれた奇妙な映画
本編上映終了後、大塚信一監督と本作のメインキャストである、しじみさんが登壇しました。元町映画館の支配人、林未来さんの質問に大塚監督、しじみさんが応えるという形で進行。
林さんの「映画『横須賀奇譚』は今ご覧いただいたようにすごく不思議な手触りの映画で、ラストシーンに行きつくところには驚きもあり、皆さん、持ち帰っていただくものや感じてもらうものがそれぞれ生まれているんだろうなという気がしていますが、そもそもどういったきっかけでこの作品は生まれたのですか?」という質問に大塚監督は次のように応えました。
「最初から震災をテーマに撮ろうと思っていたわけではなくて、SF映画を撮りたいなと思っていたんです。僕は長崎出身で、長崎に原爆は落ちてないよと言われる男の不条理劇を撮ろうとずっと思っていたんですが、それを今やるなら福島だろうと考えました。それで進めていたのですが、近しい過去なだけにSF映画で遊びたいという気持ちと、ちゃんとやらないといけないという気持ちで揺れていて、倫理的な格闘ですよね。それがそのまま反映されて奇妙な映画になってしまいました(笑)。」
さらに、作品に流れる「現実と非現実性」という指摘には、
「東京では新宿K’sシネマで上映が始まったのですが、新宿区の演劇を上演していた劇場で、新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したのと同時期で、新宿の街自体、ひとっこひとり歩いていないんですよ。すごく非現実的な空間が広がっていました。現実のほうが不条理劇のようになっていてとんでもない世界に突入したなと思いながら上映していました。」と応えていました。
誰よりも映画を理解してくれていた
継いで、林さんに「そんな作品の中で、存在的にも難しい役どころだったと思うのですが、映画に参加してみていかがでしたか?」と問われ、しじみさんは
「震災を扱った映画の出演は初めての経験で不安もあったのですが、観た方から楽しめたという感想をいただいて、出演してよかったなと思いました。予告に幽霊みたいというセリフがあって、本編には使われていないんですが、私が演じた知華子は、生きているのか死んでいるのかよくわからないキャラクターなんですね。普段も幽霊役を演じることが多くて、そういう自分の雰囲気をいかすことはできたと思っています」と応え、場内を沸かせました。
完成した作品を観て、「自分の中で解読しきれないところがあった」と語るしじみさんですが、大塚監督からは次のようなお話も。
「しじみさんがほんとすごいなと思うシーンがあって、トンネルのシーンなんですけど、『そんなの書いてたよね。私』って自転車で振り返って言うあそこの一連のシーンはミステリ調のつもりだったんです。記憶を失っていて変なこと言っているなと主人公と観客が同時に思うようなシーンとして作っていて、カメラワークもそういうふうにしていたのですが、しじみさんが振り返って言った瞬間に、台詞も芝居も一切変えずにもう一回主人公が恋するシーンに変えちゃったんですね。役者さんてそういうことができるんだという驚きがありました。解読しきれないと言いながら、誰よりも映画を理解してくれていたんです」
もう一つの結末の存在
本作は当初、別の結末があったそうです。
「今日観ていただいた通りの結末で、クランクイン直前まで撮影を行っていたのですが、直前にロケ地の都合で、僕が思っていた通りのものが撮れないと判明して、それなら思い切って変えてしまおうかと思って、変えて撮ったら失敗だったんですね(笑)。追撮してもとに戻したいと思っていろんな人にお願いしたら断られたんです。いろいろ言葉を尽くして説得して、それに半年か一年かかったんですけど(笑)、追撮して今の形になりました」
ちなみにパンフレットを購入すると、そこに記載されているQRコードでもう一つの、本編で使われなかった結末が観られるそうです。
「せっかく撮ったんでみてほしいですね」としじみさん。もう一つのラストは、まったく違う内容になっているとのこと。本作のメインビジュアルは、使われなかったラストシーンのカットが使用されているそうです。
映画『横須賀奇譚』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督】
大塚信一
【キャスト】
小林竜樹、しじみ、川瀬陽太、烏丸せつ子、長内美那子、湯舟すぴか、長屋和彰
【作品概要】
大塚信一監督が、自ら脚本も手掛け、5年の歳月をかけ完成させた長編映画デビュー作。
カナザワ映画祭2019に、期待の新人監督賞として正式出品を果たした。
東日本大震災で亡くなったはずのかつての恋人が横須賀で生きているという怪情報をもとに、半信半疑で旅に出る男の物語。
小林竜樹が主人公・春樹を、元恋人役をしじみが演じる他、川瀬陽太、烏丸せつ子、長内美那子、長屋和彰らが出演。
映画『横須賀奇譚』のあらすじ
2009年3月、東京。知華子は、友達の絵里に手伝ってもらい、引越し作業をしていました。小説家を目指している知華子の荷物は、たくさんの本で一杯で、引っ越しの準備は結構な力仕事でした。
夜になって、ようやく春樹が帰ってきました。春樹が酔っ払っていることに気がついた絵里は、「信じられない。今日、引越しって知ってたよね」と春樹を責めます。
「本当に2人は別れるの?」と問う絵里に「しょうがないだろ」と応える春樹。父親の介護のため、実家の福島に帰ることにした知華子と、今の仕事をそのまま続けようとする春樹は何度も話し合った上、別れを決めたのです。
「いいの。この人はいい人なの。浮気もしないし、お金にもきれいだし。欲がないの。でも、執着がないということは愛がないということでしょ? この人、とっても薄情なの」と知華子は言うのでした。
9年後の東京。証券会社で働く春樹は、後輩に付き添い、ある老人との契約を取り交わしました。しかし、老人は自分が何にサインをしているのか春樹たちが誰なのかもわかっていませんでした。
そんな中、春樹はばったり絵里に再会します。絵里は知華子のお墓を建ててあげたいんだけどと語り、春樹を驚かせます。知華子は東日本大震災で実家が津波で流され、行方知らずのままだというのです。「いままで知らなかったの? あんな大きなことがあって、何もしなかったの? 本当に薄情だね」と絵里は春樹を責めました。
春樹は休暇を取り、福島へと向かいます。新しい堤防の上で海を眺める春樹の携帯電話が鳴ります。春樹が電話に出ると、「1回ぐらい遊びに来なよ」という女性の声がしました。知華子の声でした。
再び電話が鳴り、春樹があわてて出ると今度は絵里からでした。知華子は生きているかもしれないと彼女は言い、死亡届とは別に知華子の転移届が提出されていたことを知らせてきたのです。転移先は、横須賀ということでした。
春樹は半信半疑のまま、知華子を探すために横須賀へと向かい、知華子と再会しますが・・・。
まとめ
2020年8月29日(土)に元町映画館(神戸)にて行われた、映画『横須賀奇譚』上映後舞台挨拶イベントの模様をお届けしました。終始、和やかな雰囲気で、笑いの絶えない舞台挨拶となりました。
現実と非現実が交錯するSFタッチの面白さの中、太平洋戦争や東日本大震災を背景に人間と社会の「記憶」が問われる本作。是非、多くの方に劇場に足を運んでいただきたい作品です。また、2度、3度と見るうちに、新しい発見を生む作品でもあり、リピートされることもおすすめいたします!
映画『横須賀奇譚』は2020年8月29日(土)より元町映画館(神戸)、シアターセブン(大阪)他にて全国順次公開! 京都みなみ会館は9月25日(金)に公開決定!