Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

Entry 2020/08/30
Update

映画『テネットTENET』あらすじ感想と考察評価。クリストファーノーラン新作おすすめの見どころ解説

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショーされます。

“ダークナイト3部作”「インセプション」「インターステラー」「ダンケルク」のクリストファー・ノーラン監督の3年ぶりの作品です。

「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描いています。

主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントンが務めます。

時間の逆行という能力と第三次世界大戦の危機に瀕した世界で、危険な任務に挑む“名もなき男”の闘いの姿を描くスパイアクション。

映画『TENET テネット』の作品情報


(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
TENET

【脚本・監督】
クリストファー・ノーラン

【キャスト】
ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー、マイケル・ケイン、アーロン・テイラー=ジョンソン、ディンプル・カバディア、ユーリ・コロコリニコフ、ヒメーシュ・パテル、マーティン・ドノヴァン、クレマンス・ポエジー

【作品概要】
『TENET テネット』はクリストファー・ノーラン監督の3年ぶりとなる作品です。時間を逆行する能力と第三次世界大戦の危機に瀕した世界で奮闘する“名もなき男”の姿を描くSF&スパイアクション。

主演は『ブラック・クランズマン』のジョン・デヴィッド・ワシントン。共演には新たにバットマンを演じることになったロバート・パティンソン、ノーラン映画常連のケネス・ブラナー、マイケル・ケインなど。

映画『TENET テネット』のあらすじ

(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

満席の観客でにぎわうウクライナのオペラハウスで、テロリストによる占拠事件が勃発。多数の人質を救出するために特殊部隊が館内に突入します。

突入部隊に紛れ込んだ“名もなき男”(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は混乱の中で、オペラ会場にいた仲間の救出に動きます。

仲間の救出を果たした男ですが、その後、身代わりとなって捕まってしまいます。男は、自殺用の毒薬を飲んだのですが、薬は鎮痛剤にすり替えらえていました。

昏睡状態から目覚めた男は、そこであるミッションを命じられます。それは未来からやって来た脅威と戦い、世界を救うというモノでした。

“時間の逆行”を可能とする装置が極秘に現代に送られてきたことを男は知らされます。

人や物が過去に移動できるようになっていたこの技術は、“第三次世界大戦”を引き起こしかねない危険性を孕んでいました。

大きな謎を孕んだこの任務に挑むことになった男に、すべてのカギを握る存在として“TENET(テネット)”という言葉が伝えられます。

映画『TENET テネット』の感想と評価

(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

英国出身でありアメリカとの二重国籍を持つクリストファー・ノーラン。今年で50歳となる彼ですが、自らの映画原体験に『スター・ウォーズ』(1977)『ブレードランナー』(1982)を挙げています。年齢からみれば、10歳前後のことです。

そして、これらの作品と並んで自身への大きな影響を与えた作品として、“007”シリーズを挙げています(特にお気に入りは『女王陛下の007』(1969))。

2010年の『インセプション』を発表したときに「いつか、ボンド映画を監督したい!」と語っており、実際に007の製作陣にコンタクトを取ったこともあるそうです。

『TENET テネット』はそんな007愛、スパイ映画愛が今までの作品の中で最も濃い作品と言えます。

主人公の“名もなき男は特殊工作員であり、世界各国をまたにかけるスパイでもあります。世界各国でロケが行われ、風光明媚なリゾート地や都市の各国の様子が描かれます。

予告でも使われたボートのシーンなどそのままボンド映画に転用できそうな画角です。

エリザベス・デビッキ演じるヒロインの立ち位置も、今までのノーランの映画のヒロインというよりは歴代の“ボンドガール”を想起させるキャラクターになっています。

謎多き“テネット”がいわゆるマクガフィンであることも、これまで多くの作品をコラージュしてきたノーランらしい設定であると言えるでしょう。

また、『TENET テネット』を見ると、クリストファー・ノーラン監督はやはり時間というものをテーマにすることを好んでいるのだなということがわかります。

デビュー作の『フォロウィング』(1998)とブレイク作となった『メメント』(2000)では、エピソードの時勢を意図的に入れ替えました。

『インセプション』(2010)では夢の階層ごとに時間の流れを変えて描きましたし、『インターステラー』(2014)でも地球と宇宙空間、ワームホールの先の星では時間の流れが大きく変わります。

これまで、『フォロウィング』と『メメント』では”物語”(記憶と記録)を挟み『インセプション』は”夢”を、『インターステラー』では宇宙探検というモノをクッションにして“時間”を描いてきたノーランですが、今作の『TENET テネット』は間に何も挟まず、直に“時間”を描いてきました。

自身が常に突き詰めてきた“時間”の在り方をダイレクトに描くという意味では、『TENET テネット』はクリストファー・ノーラン史上もっと挑戦的で野心的な作品といっていいと思います。

まとめ

(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

クリストファー・ノーランはかつて自分を育ててくれたSF映画、スパイ映画などのブロックバスター大作への思いが強い監督でもあり、消費される大衆娯楽の一環で終わらせたくないという使命感を持っています。

“ダークナイト3部作”でも、かつて、ティム・バートンとジョエル・シュマッカーが作り上げたゴシックとビザールなセンスに溢れた世界感をリアルな犯罪映画として一新。

『インセプション』も古典的な泥棒ものを舞台を“人の夢の中”に設定したことで、斬新な映像作品に生まれ変わらせることに成功しました。

『インターステラー』でも曖昧になりがちな宇宙の仕組みを現役の物理学者を監修に招いて特殊相対性理論やワームホール理論を組み込み“リアル”を創り上げました。

『ダンケルク』では戦争映画を陸の一ヶ月、海の一日、空の一時間という風に場面ごとに時間の大枠を変えて描いて見せることで、今までになかった臨場感を与えてくれました。

そして『TENET テネット』は、王道のスパイ映画的な展開に時間の逆行という能力を持ち込んで、またもや“見たことのない映画”を創り上げました

今回は時間の逆行のシステムについて、“未来からテクノロジー由来というかなり強引な力業”の設定を持ち込んできました。全てを整理して語り切ることを止め、わからないことが多い物事のままで物語を推し進めています

ここが少し乱暴というか強引な印象を受ける人もいるかもしれません。今まで多くの作品で共同脚本として、作品に参加してきた弟のジョナサン・ノーランが、不在ということも影響しているかもしれません。




関連記事

アクション映画

映画『殺しが静かにやって来る』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

“その男の歩いた後は死の沈黙が訪れる…” セルジオ・コルブッチが辿り着いたマカロニ・ウエスタンの極地『殺しが静かにやって来る』をご紹介します。 CONTENTS映画『殺しが静かにやって来る』の作品情報 …

アクション映画

【ネタバレ】パイレーツ・オブ・カリビアン1呪われた海賊たち|あらすじ感想結末と評価解説。ジョニー・デップ代表作は“海賊映画とジャック・スパロウ”を世界に知らしめた海洋アクション!

大人気映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ第1作目! ゴア・ヴァービンスキーが監督を務めた、2003年製作のアメリカのアクションアドベンチャー映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊た …

アクション映画

イーサン・ホーク主演『リミット・オブ・アサシン』。父の日を記念した場面写真と特別映像解禁!

復讐に与えられたのは24時間限りの命『ジョン・ウィック』製作陣とイーサン・ホーク主演のノンストップ・キリング・アクションが誕生。 映画『リミット・オブ・アサシン』は6月16日(土)より 新宿バルト9ほ …

アクション映画

香港映画『コンシェンス裏切りの炎』動画無料視聴方法とネタバレ感想

2017年10月のU-NEXTで特集が組まれているダンテ・ラム監督特集。 『ビースト・ストーカー/証人』は、脚本、『密告・者』では原案を担当していますが、今回ご紹介する『コンシェンス 裏切りの炎』は脚 …

アクション映画

【ネタバレ】ミッションインポッシブルデッドレコニング|あらすじ感想と結末の評価解説。トムクルーズ代表作のスパイアクション前編で命がけ⁈

イーサン・ハントの過去が明かされる。 シリーズ集大成となる第7作目。 トム・クルーズの代表作のひとつ、人気のスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第7作目となる『ミッション:インポッ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学