映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国ロードショー!
『メメント』(2000)では記憶を通して時間を描き、『インセプション』(2010)では夢の世界で、『インターステラー』(2014)では宇宙旅行を通じて、異なる時間の流れを描いたクリストファー・ノーラン監督。
本格的戦争映画『ダンケルク』(2017)でも、陸・海・空3つの視点を異なる時間で見せ、それを融合することで戦いの全貌を描き出しました。
そのノーラン監督最新作が『TENET テネット』。テーマはついに、時間の流れそのものになりました。誰も見なかった、想像しなかった映像世界が、今始まります
映画『TENET テネット』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
TENET
【監督・脚本】
クリストファー・ノーラン
【出演】
ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー、マイケル・ケイン、アーロン・テイラー=ジョンソン、ディンプル・カバディア、ユーリ・コロコリニコフ、ヒメーシュ・パテル、マーティン・ドノヴァン、クレマンス・ポエジー
【作品概要】
仲間を救うために敵に捕らえられた、名もなき特殊部隊の男。彼にあるミッションを命じられます。それは未来から現れた敵と戦い、第三次世界大戦を阻止するものでした。
未来では“時間の逆行”を可能とする装置が開発され、人と物の未来からの移動が可能になっていました。それによって引き起こされる陰謀の阻止が、名もなき男に命じられます。
そしてミッションのキーワードは、TENET(テネット)…。果たして敵の正体は何者で、彼は世界の滅亡を阻止できるのか。
主演は『ブラック・クランズマン』(2018)のジョン・デヴィッド・ワシントン。彼の片腕となる男を『トワイライト〜初恋〜』(2008)の、「トワイライト・サーガ」でスターとなったロバート・パティンソン演じます。
物語の鍵となる女を『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)のエリザベス・デビッキ、敵役にクリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』(2017)のケネス・ブラナー、ノーラン作品に欠かせないマイケル・ケインらが出演しています。
映画『TENET テネット』のあらすじとネタバレ
ウクライナの都市キエフの、観客で満員のオペラハウスが、テロリスト集団に襲われる事件が発生します。
対テロ特殊部隊が駆けつける中、早くから待機していた車両の中に、アメリカ人と呼ばれる”名も無き男”(ジョン・デヴィッド・ワシントン)がいました。
CIAのエージェントである彼は、対テロ部隊の突入に紛れて行動します。観客の中には行方不明のプルトニウム241を求め、潜入したスパイがいたのです。
突入開始後、スパイと接触し共に脱出しようとする”名も無き男”。しかし彼は突入した部隊が爆薬を仕掛け、観客ごと全てを吹き飛ばそうとする姿を目撃しました。
観客を救おうを彼は爆薬を回収します。敵に襲われ危うい時に、壁に命中した銃弾が逆行して戻る、奇妙な現象を目撃します。この現象のおかげで、彼は命を救われたのでしょうか。
観客席の爆薬は回収され、被害は最小限で済みました。しかし彼は敵の手に囚われます。
口を割ろうと制限時間を設け、彼に拷問を加える男たち。残された道は自殺することでした。隙を見て毒薬の服用に成功する”名も無き男”…。
彼が目覚めた時、君は死んだと語る男フェイ(マーティン・ドノヴァン)がいました。
彼は任務に最善を尽くし、テロから無関係な市民を救おうと行動し、敵に口を割らなかった”名も無き男”に、テストに合格したと告げます。
困惑する”名も無き男”に、彼は第三次世界大戦の危機から世界を救って欲しいと頼みます。ミッションのキーワードは「TENET」。その言葉の使い方次第で、未来が決まると言うのです。
謎を抱きながらも”名も無き男”は言葉に従います。彼は海上の風力発電所の作業員に紛れ、とある場所へと導かれます。
建物の地下で、女研究員のバーバラ(クレマンス・ポエジー)から、時間の逆行現象を見せられる”名も無き男”。
それは目の前に置かれた空の銃に、壁に打ち込まれた銃弾が戻ってくる、信じ難い現象でした。
彼はバーバラから、何者かが時の流れを逆行させる、エントロピーを減少させる装置を発明し、その影響でこの現象が起きたと説明します。
彼女は時の逆行を秘めた物は、操ることも可能だと示します。それは感覚的に掴みとり、引き出すしかないものでした。
この技術を開発した者、つまり未来人こそ世界の敵でした。彼らは時間を逆行して現代に様々なものを送り込み、何か破滅的なことを引き起こそうと企てていたのです。
この銃弾を使用した者が、敵につながると判断した”名も無き男”は銃弾の成分を調べさせ、インド製だと気付きます。
敵につながる人物はインドの武器商人だと睨んだ彼は、その男サンジェイ・シンに接近を試みます。
インドのムンバイに現れた”名も無き男”の前に、同じ組織の男ニール(ロバート・パティンソン)が手助けに現れます。
ニールは事前にリサーチしたのか、”名も無き男”が任務中は酒を飲まないと知っており、彼にダイエットコーラを注文します。
ニールが信用できる人物か疑念を抱きますが、彼の準備し用意した計画は完璧でした。
逆バンジージャンプの要領の技で、サンジェイ・シンの自宅であるビルに忍び込む”名も無き男”とニール。
しかしサンジェイ・シンは商売上の表の顔に過ぎず、武器取引はその妻、プリヤ(ディンプル・カバディア)が仕切っていました。
2人の実力を認めたプリヤは、ロシアの新興財閥を築いた、武器商人でもある男セイター(ケネス・ブラナー)こそ、この件の背後にいる人物だと教えます。
“名も無き男”はプリヤに、セイターに接触する仲介を求めますが、用心深い彼との接触は困難でした。
そこで仲介出来きる人物として、イギリス諜報部に近い人物クロズビー卿(マイケル・ケイン)を紹介します。
ロンドンに飛んだ”名も無き男”はクロズビー卿に接触します。ロシアの秘密都市スタルスク12の出身の危険な男、セイターに接触する術はありません。
またスタルスク12ではキエフのテロと同じ日、爆発事故が起きていました。やはりセイターが全ての背後にいるようです。
セイターには妻キャット(エリザベス・デビッキ)を通じ、接触すべきと語るクロズビー卿。
“名も無き男”は息子マックスを学校に送るキャットの姿を確認します。そして絵画の鑑定士として働く彼女に、”名も無き男”はゴヤの絵を見せます。
その絵は贋作で、同じ作者の描いた偽の絵画を、彼女は夫に売っていました。贋作者と図って夫に絵を売った弱みに付け込み、”名も無き男”はセイターに紹介させようとしたのです。
しかし彼女は、その事実はバレていると告げます。セイターはそれを武器に鑑定士である妻が不正を働いたと脅し、別れたら子供に合わせないと宣言し、彼女を暴力的に支配していました。
妻に接近した”名も無き男”に、嫉妬深いセイターはボルコフ(ユーリ・コロコリニコフ)ら、屈強な手下を送り込みます。
それでもキャットに連絡先を伝え、迫る手下たちを倒し脱出する”名も無き男”。
キャットの協力を得るには、彼女が夫に売った絵を回収するべきと考えた”名も無き男”は、ニールに行方を探させます。絵は税金を逃れるために、オスロ空港の保管庫に収められていました。
空港の保管庫は、税金逃れが目的の資産家にとって、格好の収蔵場所になっていました。そこに潜入し絵を回収しようと、”名も無き男”とニールは計画を立てます。
それは保管庫のあり建物に、金塊を運ぶ貨物機を衝突させ、空港の目をそれに引き付けた上でセキュリティを破り、絵を奪う大胆なものでした。
彼らの仲間マヒア(ヒメーシュ・パテル)が飛行機事故を引き起こした隙に、保管庫に潜入する”名も無き男”とニール。
目的の場所に着いた時、そこに銃が落ちガラス塀に銃弾の後があります。警戒する2人の前に奇妙な装置が現れます。
その中から黒い装備に身を固め、ガスマスクを付けた男が現れました。
時間を逆行する動きを見せるその男と、奇妙な戦いを繰り広げる”名も無き男”。戦いの果てに男は事故機のエンジンに吸い込まれたかのように姿を消します。
一方のニールも、同じ姿の男に遭遇します。その男は同じ時間の流れにいました。男を追跡するニール。
絵は回収出来ませんが、状況が判明するまで時間がかかるはずです。”名も無き男”はキャットに、絵を回収したと伝えます。
こうしてセイターに接触出来た”名も無き男”。しかしセイターは、彼を妻に近づく男として敵視していました。
“名も無き男”は自分をプルトニウム241を求める、腕と実力を持つ武器商人だと売り込みます。
実力を認め、自分の豪華ヨットに来るよう告げるセイター。しかし彼は妻キャットに問題の絵を見せます。何故か彼は襲撃の前に、オスロ空港から絵を回収していました。
キャットは自分を騙したと、”名も無き男”を責めます。彼女はキエフのテロの日、このヨットで夫と争っていました。
それでも真相を突き止めるまで、セイターへの接触を保ちたい”名も無き男”。
次の日、”名も無き男”とセイター、キャット夫婦は海上をトーネード(双胴の帆走高速ヨット)で走り楽しみます。しかしキャットは、隙を見て夫を海に落としました。
真相をつかむため、セイターが必要な”名も無き男”は彼を救います。信頼を得た”名も無き男”は、キエフのテロで行方不明になったプルトニウム241の奪取を任されます。
セイターは生まれ育った秘密都市スタルスク12で、爆発事故を起こし四散した核物質の回収で財を築きました。
汚い仕事を引き受け、汚い手を使ってのし上がったと打ち明けるセイター。
一方で”名も無き男”の行為でセイターから逃れられなくなり、夫の異常な支配欲の前にキャットは震えました。
プルトニウム241はエストニアの都市、タリンに運ばれる事になっていました。”名も無き男”とニールは、車で輸送される物質の奪取を計画します。
それは移送車両を大型車両で囲み、無線を妨害し停車させることなく、消防車を使って乗り移り奪い取るものでした。
プルトニウムの入るトランクの奪取に成功した”名も無き男”とニール。しかしトランクの中には、何か奇妙な物体が入っています。
彼らの前に、時間を逆行して進む車が現れ横転します。同じように逆行して現れた車には、酸素マスクを付けたセイターとキャットが乗っていました。
セイターは未来から来たのでしょうか。全てを把握しているかに見える彼は、キャットに銃を突きつけ、トランクを渡せと要求します…。
映画『TENET テネット』の感想と評価
凄い映画です。ハマると何度も見直すハメになる、クリストファー・ノーランらしい作品といえるでしょう。
“時間の逆行”という、話題の設定に皆が興味深々ですが、実は意外と地味です。あくまで『インセプション』や『インターステラー』に比べて地味、という話です。
逆に一見サラッと流れるシーンだけに、時間を逆行して再度、同じ場面を別の視点から見せられると、様々な仕掛けに気付かされました。
その結果見終わってから、「あのシーンの意味は」「あのセリフの意味は」と考えさせられること多数。今もあれこれ思案しています。
あらすじネタバレを紹介しましたが、文字を読んでも映画に凄さは一切伝わらない、体験し自分で考えるべき作品でした。
映画が入替制でない時代なら、将に朝から晩まで、まさに映画館に座り続けたであろう作品です。
映像が話題のクリストファー・ノーランですが、希代のストーリーテラーでもあります。実は”時間の逆行”は、映像よりも物語に様々な仕掛けがあります。
映像に目を奪われず、しっかり物語を追いかけて下さい。でも映像に目を奪われて、物語の確認に再度見る。繰り返し見る”時間の逆行”行為に囚われるのは、ハマった観客でしょう。
まとめ
参考映像:エディット・ピアフの歌と『インセプション』テーマの比較
現代量子学や、物理学を駆使した物語である『TENET テネット』。難しい映画ではありません。むしろ素朴なSF的発想を確認させてくれた作品でした。
漫画「ドラえもん」にあった、様々なタイムトラベル(トラブル)エピソードの数々を思い出させるような疑問の数々。
逆行世界の描写は、「もしも」の世界を追求する楽しさを再確認させてくれました。
本作を叩き台に、このテーマをより発展・追及した設定のSF映画が、今後続々誕生するのではないでしょうか。
実はこの映画を見た後、何かの仕掛けに気付いていないはずだと、自分自身に疑心暗鬼になっています。
エディット・ピアフの曲をスローで再生すると、ハンス・ジマー作曲のテーマ曲になる仕掛けがあった『インセプション』。
『TENET テネット』の逆行時間の音声を、逆再生すると意味があるとか、絶対にそんな仕掛けがあると信じています。まだそこまで追求している人は、世界でもすくないでしょう。
これから、色んな発見が出てくるはずの『TENET テネット』。人より早く何かを見つける、そんな鑑賞法もある映画です。
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国ロードショー!