連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第17回
様々な事情で日本劇場公開が危ぶまれた、埋もれかけた貴重な映画を紹介する。劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第17回で紹介するのは『ナイト・ウォッチャー』。
スティーブン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』(2018)で、バーチャル世界で大活躍する主人公を演じ、一躍世界的スターとなったタイ・シェリダン。
本作で彼が演じるのは、アスペルガー障害を持つホテルマン。相手の感情を読み取れず、他人とのコミュニケーションが上手く図れない彼は、ホテルの客を盗撮して観察し、その表情や言葉使いを身に付けようとしていました。
しかしある日、彼が眺めていた映像に、思わぬものが映ります。異色の設定で送る、心理サスペンス映画が誕生しました。
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CONTENTS
映画『ナイト・ウォッチャー』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
The Night Clerk
【監督・脚本】
マイケル・クリストファー
【キャスト】
タイ・シェリダン、アナ・デ・アルマス、ジョン・レグイザモ、ヘレン・ハント、ジョナサン・シェック
【作品概要】
思わぬ事情から殺人事件の容疑者にされた、アスペルガー症候群の青年を描くサスペンス映画。監督・脚本家・俳優と幅広く活躍するベテラン、マイケル・クリストファーがアントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリー共演作『ポワゾン』(2001)以来、久々に監督した作品です。
主演はタイ・シェリダン。共演に『ブレードランナー 2049』(2017)、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020公開予定)のアナ・デ・アルマス。そしてジョン・レグイザモにヘレン・ハントら、実力派俳優が顔をそろえました。
映画『ナイト・ウォッチャー』のあらすじとネタバレ
ショッピングモールで、行きかう人々を観察する青年バート(タイ・シェリダン)。
今彼は、幾つものモニターに映し出された人々の映像を、次々と切り替えて見ていました。それはホテルの客室で過ごしている人々の姿でした。
バートは画面に映し出された人の表情と、彼らが喋った言葉を真似ています。
繰り返し映像の中の人物の、言葉と表情を再現するバート。すると映像の1つが彼に声をかけます。それは台所にいる母エセル(ヘレン・ハント)でした。
モニター越しに食事が出来たと伝えた母に、バートは反応しません。息子のいる地下の部屋の前に、エセルは食事を置いて去ります。
食事を取ると自分の部屋に戻るバート。彼はホテルマンの制服を着ていました。部屋の黒板には家を出る際に、やるべき事が大きく書き出されていました。
ソファに座ると、モニター越しに母と食事を共にするバート。
車に乗ると、バートは勤務先のホテルに向かいます。到着するとマネージャーのベンソンが元気か、と声をかけます。バートはそれは難しい質問で、答えるには時間がかかると返事します。
バートの会話はぎこちないものでしたが、マネージャーは彼がそんな人間だと、良く理解している様子です。言葉を交すとバートは職場に向かいます。
彼はホテルのフロントで、夜間のシフトに入りました。出入りする人の姿もなく、退屈な時を過ごすのに苦労するバート。
1人の女性客が現れます。バートは彼女を驚かせましたが、和やかに会話は始まります。
彼女はペレッティの名で予約が入っているか尋ねました。バートがそれを確認すると、彼女はその部屋は良い部屋か、雑談のように聞きました。
バートはホテルの案内文を丸暗記したかのように、部屋の設備や機能のセールスポイントをまくしたてます。彼女はその態度に違和感を覚えたようです。
彼女を観察して決めたのか、バートは当初案内した部屋と異なる、別の部屋の鍵を渡します。彼女が部屋に向かうと、フロントでタブレットを開くバート。
タブレットの画面には、部屋に入った先程の女の姿が映し出されていました。幾つかのアングルの映像があり、複数のカメラで撮影していました。
彼女が外に面した、出入りできる掃き出し窓を開けると1人の男が入ってきます。バートはその様子を観察します。
そこに交代のスタッフ、ジャックが現れます。慌てて画面を閉じたバートに、同僚はポルノ動画でも見ていたのか、と軽く言いました。
否定するバートに、映像はこのホテルの客室みたいだった、と告げるジャック。彼が挨拶で元気かと言うと、それは難しい質問で、答えるには時間がかかると返事するバート。
ジャックもそんなバートの姿勢に慣れた様子です。もういいと言われるまで帰ろうとせず、また明日と、別れの挨拶を繰り返し告げるバートの態度に、ウンザリした様子を見せました。
職場を出るとガソリンスタンドの売店により、大量にアイスを買うバート。彼はカウンターの店員に、彼の来ているシャツの柄が、派手すぎて目を刺激すると指摘します。
突然そんな事を言われ、機嫌を悪くして悪態をついた店員に、礼を言って去るバート。
帰宅したバートは、アイスを食べながら先程の女の映像を見ていました。女は男と会話を交わしています。彼はその言葉を真似ていました。
ところが女は、男が別の女と会っていると責め始めます。言い争いに気付き、バートは戸惑います。
男が女をベットに突き飛ばし、女は相手を嘲笑します。男の顔を見ることは出来ません。そして床に落ちたバックから、拳銃がこぼれ出たとバートは気付きました。
男は彼女の首を絞めているようです。慌てたバートはホテルに電話をかけますが、まずい行動と気付き電話を切ります。
何度も自分に大丈夫だと言い聞かせ、車に乗り込みホテルに向かうバート。
ホテルに到着すると、裏口から入り部屋に向かうバート。煙草を吸いに外に出た同僚のジャックは、駐車場にバートの車が停まっていると気付きます。
バートは問題の部屋の前に到着します。そしてジャックは、1発の銃声に気付きます。
ジャックが扉の開いた例の部屋に入ると、倒れている女の隣でバートがベットに座っていました。この人は死んでいると告げたバート。
同僚はバートに何も触るな、と言い通報に向かいました。すると彼は隠しカメラのメモリカードを回収し始めます。しかし焦ったバートは、1枚のメモリカードを落します。
翌朝、ホテルに現れたエスパダ刑事(ジョン・レグイザモ)は、マネージャーのベンソンと話していました。彼は刑事に、バートは有能な従業員だと説明していました。
ホテルの採用条件を満たしており、彼は決して問題を抱えた人物ではないと説明し、もう3年近く務めトラブルも起こさなかったと語るベンソン。
刑事がやって来ると、いきなりバートは財布を忘れたと言い出します。刑事が質問する前に、ジャックが交代の時間の午前4時より、いつもより早く15分前に現れたと告げました。
そして家に帰る途中アイスクリームを買い、家でテレビを見ていて、財布を忘れたとに気付き、ホテルに取りに戻ったと一方的に、かつ詳細に話したバートにエスパダは驚きます。
年齢を聞かれ、23歳と答えるバート。恋人も友達もいないと説明し、性的な興味を問われると、答えるのが難しい質問だと言うバート。
それは理解できると言うエスパダ刑事に、バートはもし関心があるなら、私の方ではあなたのような、年配の男性に性的興味はありませんと答えます。
エスパダは呆れながらも、バートがどういう人間かを理解したようです。その上で彼が帰った姿を見ておらず、銃声の前に彼の車を駐車場で見た同僚の証言を伝えました。
ホテルに戻った時なぜ玄関から入らなかった、なぜ袖口や手に血が付いているのか、との刑事の質問に、あれこれ話し出すバート。
刑事が君は問題を抱えていると、言葉を選びながら語ると、自分はアスペルガー障害だと認めるバート。そして、その特徴を詳細に語り始めました。
一方的にしゃべり続けたバートに、エスパダは落ち着くよう告げます。彼は賢い人間だと認めながらも、財布を忘れたなら帰宅途中に、どうやってアイスを買ったと聞くエスパダ。
バートは警察署に連れて行かれます。そこでエスパダは、同僚のペレッティ刑事(ジョナサン・シェック)を慰めます。殺されたのは彼の妻でした。
ペレッティは妻は護身用に銃を持っていたと告げ、現場にいたバートが、何か知っているのかと訊ねました。そして夜間、妻はホテルで何をしていたと呟きます。
警察署に現れたエセルは、息子とは弁護士立ち会いでないと話をさせない、と主張します。エスパダが質問したいと言っても、彼女は激しく断り息子を連れ帰りました。
家に帰るとバートに、正直に何でも話して欲しい、常にあなたの味方だと告げるエセル。
バートは黙ったまま、自分の頭を母の顔に近づけました。
その夜エスパダ刑事は、自宅でパソコンに向かい、アスペルガー症候群について理解しようとしていました。エセルは1人ソファに横たわり、思いにふけります。
バートは自室で、事件を撮影した映像を見ていました。あの部屋にいた男の腕に、鳥のタトゥーがあると気付くバート。
翌日マネージャーのベンソンは、バートに対し解雇はしないが同じチェーンの、他のホテルに異動させると告げました。そこでは今と同じシフトで働けると説明します。
言葉に従い、新たなホテルで働き始めたバート。そこに客として若い女が現れます。
チェック・インを求めた彼女は、アンドレア・リベラ(アナ・デ・アルマス)と名乗りました。
このホテルを度々利用しているらしい彼女は、彼が新顔だと気付きました。彼女に聞かれ自分の名を名乗るバート。
彼は自分のネクタイにカメラを仕掛けていました。録画したアンドレアとの会話を再生し、バートは彼女の表情や喋り方を真似ます。
それを参考に、彼女との受け答えをシュミレーションしますが、色々と詳細に語り始めるバート。自分が喋り過ぎたと反省しました。
もう一度彼女との会話を想定し、試してみたバート。彼はアンドレアに関心を抱いたようです。
今日もまた母は、バートとモニター越しに会話し、部屋の前に食事を置きました。自宅から歩いて買い物に出るバートを、車の中から見つめるエスパダ刑事。
バートは入ったスーパーで、アンドレアと出会います。アンドレアの方から話しかけられると、食品の成分について詳細にまくし立て、自分が喋り過ぎたと気付いたバート。
彼女は気にしていません。自分は厄介な性格だと告げたバートに、自分の弟も同じだったとアンドレアは語ります。
弟はアスペルガー症候群の影響で、働く事が出来なかったと彼女は告げます。苦心しながらも世に出て働くバートを、彼女は好意的に見ていました。
それを聞いた彼は、自分は他人の行動を見て学び、それと同じように振る舞う訓練をしなければならないと、自分の状況を打ち明けます。
人々を観察できるホテルの仕事は、自分に向いていると考えたバート。
彼はアンドレアに、弟について聞きました。彼女は弟は長らく入院し、退院することなく亡くなったと教えます。
深刻な話題になると、バートには彼女にかける良い言葉が浮かびません。一方的に別れを告げると、彼女の前から立ち去りました。
自宅に戻ったバートは、事件のあった部屋から回収した、メモリーカードやカメラを確認していました。そしてメモリーカードが1枚無いと気付きます。
そのカードは警察が入手していました。その映像をペレッティに見せるエスパダ刑事。
妻と彼女を襲う正体不明の人物が映る映像を見せられ、ペレッティ刑事は驚きます。盗撮はバートの仕業だと、エスパダは考えていました。
なぜ彼を逮捕しない、と言うペレッティに、バートは盗撮を行い何かを目撃したが、彼と犯行を直接結び付けるものは無いと説明するエスパダ。
ホテル従業員のジャックは、バートがフロントでタブレットを見ており、そこにホテルの部屋のような映像が映っていたと、警察署でエスパダに証言します。
なぜそれを話すと刑事に聞かれ、事件のあった部屋で遺体の傍で、黙って座るバートの姿が気味悪かったと答えるジャック。
フロントにいるバートは監視カメラが映す、ホテルの駐車場にいるアンドレアの姿を見ていました。彼女は車に乗っている誰かとキスをしているようです。
彼女はフロントに1人で現れました。アンドレアに元気かと話しかけられ、それは非常に難しい質問だ、と答えるバート。
彼は彼女の部屋で作業が行われたので、何かが動いているかもしれないと告げます。
バートは彼女の部屋に、隠しカメラを仕掛けていました。彼が見つめるアンドレアは、物憂げな表情をしていました。
飲み過ぎて眠れず、煙草を吸うのにマッチが欲しいと、ナイトガウン姿でフロントに現れた彼女に、バートは館内は禁煙だと告げ、煙草の害を延々と説明します。
彼の隣に座ったアンドレアは、プールサイドで煙草を吸うと言いマッチを受け取りました。
トップレスで泳いでいた彼女の前に、タオルを持ったバートが現れます。驚いた彼女に、ライフガードがいないから来た、と説明したバート。
アンドレアは彼を隣に座らせました。バートは彼女に詫びると、駐車場で誰かとキスしている姿を見てしまったと告げます。
相手は誰で、どうしてキスをしたかと聞かれ、それは難しい質問だと答えるアンドレア。
恋人はいるかと聞かれ、いないと答えるバート。恋愛は奇妙に思える言う彼に、それは誰にとっても難しい問題だと、アンドレアは語りかけます。
あなたの中で、どんな気持ちが芽生えているのと聞かれ、思わず彼女にキスをするバート。
優しく笑ったアンドレアと対象的に、バートは思わぬ自分の行動にパニックになります。
不適切な行為なら謝罪する、2度としないと言うバートに、隣に座るよう誘うアンドレア。
バートの髪に触れ、キスは寂しいからするの、と言いキスをした彼女。膝枕の姿勢になったバートに、自分の相手は既婚者だと告げ、人目を忍び長い間付き合っていると説明します。
自分の今の状況を上手く説明出来ない、と言う彼女にバートは話し始めます。
Nerd(オタク)という言葉は、1950年にドクター・スース(『グリンチ』の原作者)が書いた絵本、「If I Ran the Zoo」に初めて登場した、と教えるバート。
他人をレッテル貼りすることが好きな人々は、その言葉を奇妙な人物や、外見のさえない人物に対して使うようになりました。
しかし今では特殊な技術的才能を持つ者を示す、良い意味でも使われ、テクノセクシャルの世界ではセクシーな、愛の神の意味すら持っていると説明します。
笑いながら何を言ってるのか判らない、と告げるアンドレア。発言を後悔したバートに、自分たちの事を話したのか、と彼女は尋ねました。
あなたは私の愛の神なの、と訊ねた彼女に、自分はあなたのライフガードになれる、と言うバート。
あなたならそれが出来る、私には出来ないが、あなたの様な人ならきっと出来る、そう告げたアンドレアは、部屋に戻って行きました。
プールサイドに残ったバートは、ビーチチェアに1人横たわり微笑みました。
映画『ナイト・ウォッチャー』の感想と評価
参考映像:『MUD マッド』(2012)
アスペルガー症候群の人物が登場する映画は多数あります。映画の常として、その特徴が誇張して描かれたり、極端な善人・悪人として描かれることもありました。
しかし映画に限らず多くの作品に登場したことで、アスペルガー症候群に対する理解は広がりました。その半面、マイナス表現の言葉として、安易に使用されている感もあります。
それはさておき、意欲ある俳優にとってこの特徴的な人物を演じるのは、大いにそそられる行為でしょう。主人公を演じたタイ・シェリダンもその1人で、本作の製作にも名を連ねています。
『レディ・プレイヤー1』でブレイクした感のあるタイ・シェリダンですが、映画デビュー作は伝説の巨匠、テレンス・マリックが監督した、賛否分かれる問題作『ツリー・オブ・ライフ』(2011)です。
次いで「未体験ゾーンの映画たち2014」上映作品の、カンヌでパルム・ドールを争ったジェフ・ニコルズ監督作『MUD マッド』に出演、子役時代から演技力を求められる作品に出演しています。
本作は、まずはタイ・シェリダンの演技に注目してご覧下さい。
演劇界の重鎮俳優が監督した作品
本作監督・脚本の、1945年生まれのマイケル・クリストファーは、今も現役のベテラン俳優としても活躍しています。
さらに映画だけでなく、演劇の演出家・脚本家としても有名で、アメリカでは演劇界の大御所と言うべき、尊敬を集める存在です。
その彼が久々に監督した本作だからこそ、このキャストが集まったと言えるでしょう。
主演したジョナサン・シェックによると、自身も俳優である監督は出演者について、よく理解した上で撮影に臨んでくれたと証言しています。
監督は出演者が互いを知ることができるように、事前にいくつかの課題を与えました。そして入念に準備した脚本を用意しながらも、即興での演技を許しそれを作品に取り入れました。
劇作家の監督が脚本を執筆したこともあり、作品には舞台劇の要素が多数あります。その一方で隠しカメラの設定で、幾つものアングルで撮影する、映画的工夫も凝らされています。
マイケル・クリストファーのような、作家性の強い監督と仕事をするのは大好きだ、と語っているジョナサン・シェック。
そんな監督の下で演じ、このようなインディーズ作品への出演を好む、実力ある俳優との共演は、大変刺激になったと振り返っています。
入念に練られたサスペンス劇
本作でタイ・シェリダンが演じた、アスペルガー症候群の主人公の姿は非常に説得力あるものだと感じました。
間違いなく人より優れた点があったとしても、多くの者にそれが見えません。接した者に違和感を与える、時に愚かな振る舞いに見え、時に攻撃的な態度に見える姿を描いています。
そんな態度の裏側に主人公なりの意図や、出来事に対する受け止め方があることを示す、綿密な人物描写と言えるでしょう。類型的な純粋な善人や、怪物的な人物として描いていません。
また彼の周囲にも、それを理解した上で付き合える上司、理解しようと努力し見極めようとする刑事を配し、あるべき他者の関わり方を示した作品とも言えるでしょう。
これはあくまで映画として見た人間の受け止め方なので、実際にこういった方自身や、その周囲にいる方にも本作を見て頂き、どのように感じられるか意見を聞きたいものです。
とはいえ関係者から、手放しで支持される作品ではないでしょう。いくら悪意はない、あくまで人間観察のためと主張しても、この主人公はお客さんを盗撮していますから。
ここはヒッチコックの『裏窓』(1954)以来の、覗き設定のサスペンス映画だからと、どうか温かい目で見守って下さい。
そしてキャスティングの妙。『レディ・プレイヤー1』で現実世界より、バーチャル世界で生き生きしていたタイ・シェリダンが、現実と折り合えない複雑な主人公を演じます。
また『ブレードランナー 2049』でライアン・ゴズリング演じる人造人間の、良き理解者だった家庭用AIのバーチャル美女、”Joi”を演じたアナ・デ・アルマスが、主人公の前に現れます。
彼女は『ブレードランナー 2049』同様、問題を抱えた主人公の、良き理解者でしょうか…。とミスリードを誘うキャスティング、と映画好きなら感じるでしょう。
まとめ
複雑な主人公の人間像を描写し、それが謎解きの仕掛けにもなっている『ナイト・ウォッチャー』。ミステリー映画ファンなら必見です。
そして身近にアスペルガー症候群の方と接する人や、人と接するのに悩みや違和感をお持ちの方も、どうか見て下さい。共感や何らかのヒントが得れるかもしれません。
アナ・デ・アルマスもキアヌ・リーブズに地獄を見せた『ノック・ノック』(2015)や、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)など、変わった役を演じるのが好きな女優です。
本作は優れた俳優による、アンサンブル演技が楽しめる作品でもあります。
ところで劇中で、タイ・シェリダンはアナ・デ・アルマスに対して、テクノセクシャルという言葉を使っています。
様々な意味のある言葉ですが、一つには「機械フェチ」「バーチャル愛」といった意味を持っています。日本の「バーチャルアイドル」的な存在をイメージして下さい。
ハリウッド映画では『ブレードランナー 2049』に登場した”Joi”が、新たなテクノセクシャルのアイコンとして君臨しました。
その言葉を彼女に対して使っています。もうお歳のマイケル・クリストファーが、このセリフを書いてたら大したものですが、おそらくタイ・シェリダンのアイデアでしょう。
感動的なシーンなのに、こんな背景があると考えれば笑えます。何を口走っているんだ、タイ・シェリダン…。アナ・デ・アルマスが「何を言ってるのか判らない」、と答えるのも当然です。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」は…
次回の第18回は、記憶を無くした裏社会で生きる男が、ギャングと警察を相手に繰り広げる抗争劇を描く、仁義なきクライム。アクション『KILLERMAN キラーマン』を紹介いたします。お楽しみに。
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