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映画『エジソンズ・ゲーム』ネタバレ感想と考察評価。電流戦争を起こしたエジソンと実業家ウェスティングハウスの激しいビジネス闘争

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

エジソンvsウェスティングハウス。電気産業の裏で繰り広げられる熾烈な闘い

電気による新時代の誕生と共に天才発明家とカリスマ実業家の間で繰り広げられた「電流戦争」を描いた、映画『エジソンズ・ゲーム』。本作は、2020年6月19日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。

新たな時代の主導権を握る為、エジソンとウェスティングハウスの間で繰り広げらた、白熱の攻防をスピーディな展開で映像化。

映画『ぼくとアールと彼女のさよなら』(2015)などで知られるアルフォンソ・ゴメス=レホンが監督をつとめ、主演のベネディクト・カンバーバッチが、傲慢で厄介なエジソンを、繊細かつ魅力的に演じた本作をご紹介します。

映画『エジソンズ・ゲーム』の作品情報


(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年公開(アメリカ映画)

【原題】
The Current War: Director’s Cut

【監督】
アルフォンソ・ゴメス=レホン

【脚本】
マイケル・ミトニック

【製作総指揮】
マーティン・スコセッシ

【キャスト】
ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、ニコラス・ホルト、キャサリン・ウォーターストン、トム・ホランド、タペンス・ミドルトン、スタンリー・タウンゼント、マシュー・マクファディン

【作品概要】
舞台は19世紀のアメリカ。電気の供給システムを巡る争い「電流戦争」を軸に、エジソン、ウェスティングハウス、ニコラ・テスラという3人の天才の姿を描いたヒューマン・ドラマ。

傲慢で癖のあるエジソンを、『ドクター・ストレンジ』(2016)などで知られるベネディクト・カンバーバッチが熱演。エジソンに対抗する実業家、ウェスティングハウスを『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』(2008)『ノクターナル・アニマルズ』(2016)で、2度のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマイケル・シャノンが演じます。

監督は「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」などのテレビシリーズや、サンダンス映画祭のグランプリと観客賞を受賞した映画『ぼくとアールと彼女のさよなら』(2015)などで知られるアルフォンソ・ゴメス=レホン。

映画『エジソンズ・ゲーム』のあらすじとネタバレ

(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

19世紀のアメリカ。

天才発明家として名高いトーマス・エジソンは、電気の研究に力を入れていました。

エジソンは傲慢な男で、気に入らなければ大統領の依頼も断っていましたが、大統領からの依頼内容は兵器の開発の為、「人殺しの道具を作りたくない」というエジソンの信念を優先させた結果でした。

エジソンの他に、電気に魅力を感じている男がもう1人。

カリスマ実業家として有名なジョージ・ウェスティングハウスは、ガスの供給に興味を持った事がキッカケで、電気の供給にも興味を持っていました。

ウェスティングハウスは、エジソンの能力を高く評価しており、協力して電気事業を起こそうとしますが、招待した晩餐会に、エジソンは現れませんでした。

1882年、エジソンは白熱電球を発明し、資産家のモルガンから出資を受け、電気を供給する会社「エジソン・エレクトリック」を設立します。

この「エジソン・エレクトリック」に、もう1人の天才が現れます。オーストラリア移民のニコラ・テスラは、エジソンと仕事をする事に憧れ「エジソン・エレクトリック」に入社しました。

「エジソン・エレクトリック」は、全米の電気供給を目指しますが、そこへウェスティングハウスが立ちはだかります。

エジソンが目指す電気の供給方法は「直流方式」でしたが、ウェスティングハウスは「直流方式は大量の発電機が必要」と指摘し、安価なうえ発電機1基で遠くまで電気の供給が可能な「交流方式」を提案します。

しかし、エジソンは「交流方式」は電気の持つ力が強すぎる為、感電死する危険を指摘し、「交流方式」を認めようとしません。

世界を明るくする電気を巡り、供給方法で対立するエジソンとウェスティングハウス、後に語られる「電流戦争」の始まりです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『エジソンズ・ゲーム』ネタバレ・結末の記載がございます。『エジソンズ・ゲーム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

1886年、ウェスティングハウスは「交流方式」による実演会を成功させます。

その事に焦りを感じたエジソンは、ウェスティングハウスが実演会で使用したのが、自らが発明した白熱電球である事を知り激怒します。

エジソンは新聞社に「ウェスティングハウスに発明を盗まれた」と発表し、再び「交流方式は死を招く」と主張します。

エジソンは、ウェスティングハウスを特許侵害で訴えますが、ウェスティングハウスは電球を巧みに作り替え、特許侵害を回避します。

アメリカ各地で、ウェスティングハウスの「交流方式」を取り入れる州が増え、エジソンは焦りを感じます。

テスラも「交流方式」が効率的と主張しますが、エジソンはこれを一蹴、これまでどんなに成果を出しても認められない事に、テスラは不満を抱え、エジソンを見限り「エジソン・エレクトリック」を退社します。

エジソンは自身の名誉の為に、「直流方式」の研究に没頭しますが、開発資金が底をつき始めます。さらに、妻のメアリーにも先立たれてしまい、失意のエジソンは、自身が発明した蓄音機で、亡きメアリーが残したメッセージを何度も聞いていました。

落ち込むエジソンですが、助手のサミュエルの提案で、蓄音機を販売し開発資金にする事にします。蓄音機は大ヒットしますが、開発資金には到底足りません。

それでも、エジソンはサミュエルから「シカゴ万博」が開催される事を聞き、「シカゴ万博」の電気供給システムに「直流方式」を採用させる事で、形勢逆転を狙います。

「交流方式」の評判を落とす為、エジソンは馬を使った電気実験をマスコミに公開。馬が感電死した事で、あらためて「交流方式」の危険性を広めようとします。

その電気実験を見ていた、ブライアンという男から、エジソンは死刑に使う電気椅子の開発を依頼されますが「人殺しの道具を作りたくない」という信念に従い、エジソンはこれを拒否します。

「交流方式」の危険性を訴え続けるエジソンですが、実際に被害は出ていませんでした。しかし、ウェスティングハウスが最も信頼していた技術者、フランクリン・ポープが電気事故により命を落とします。

ショックを受けたウェスティングハウスは、電気事業をモルガンに売り払い、エジソンと組む事を望みます。ウェスティングハウスは、電気を巡る一連の争いの中でも、エジソンの能力を高く評価していました。

ですが、モルガンは「交流方式」にも慎重で、ウェスティングハウスはモルガンに「あなたはどっちの方式を取る?」と問いかけると、モルガンは「エジソンが決めた方」と答えます。

一方、エジソンのもとを離れたテスラは「交流モーター」を開発し、世間から注目されていましたが、他の資産家に会社を乗っ取られており、苦しい生活を送っていました。

そこへ、ウェスティングハウスがテスラを訪ね「手を組まないか?」と提案します。ウェスティングハウスも「シカゴ万博」で「交流方式」を採用させる事を狙っており、その為に「交流モーター」が不可欠でした。

テスラはウェスティングハウスの申し出を受けます。その頃エジソンは、開発資金を獲得する為、電気椅子の開発に携わっていました。

自らの信念を曲げてしまったエジソンですが、開発に直接携わる事は無く、手紙でブライアンに指示を出していたのです。

エジソンは手紙を燃やすように要求していましたが、全ての手紙は残されており、手紙を見つけたウェスティングハウスにより、マスコミに暴露されてしまいます。

エジソンは「シカゴ万博」前に窮地に立たされます。そして開催された「シカゴ万博」。

ここでエジソンはモルガンに「エジソン・エレクトリック」を吸収し、新たな会社「ゼネラル・エレクトリック」を設立する事を聞かされます。

ショックを受けたエジソンはその場を退席しますが、「ゼネラル・エレクトリック」の副社長に、助手のサミュエルが就任する事を聞かされます。

エジソンは、サミュエルに「シカゴ万博」で採用される電気のプレゼンに行くよう指示し、サミュエルはウェスティングハウスと白熱したプレゼン合戦を展開します。

しかし、「シカゴ万博」で採用されたのは「交流方式」でした。「シカゴ万博」の会場内を散策していたエジソンは、ウェスティングハウスと偶然会います。

エジソンは、その場で自分の負けを認め、エジソンはウェスティングハウスを「ジョン」と、ウェスティングハウスはエジソンを「トム」と、それぞれ愛称で呼び検討を称えます。

「電流戦争」に敗北したエジソンですが、自らが発明した蓄音機と併せて、新たな発明品「映写機」を発表します。それらのエジソンの発明から生まれたのが、新たな産業「映画」でした。

映画『エジソンズ・ゲーム』感想と評価

(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

発明王として有名なエジソンと、カリスマ実業家のジョージ・ウェスティングハウスの間で19世紀に勃発した、電気の供給方法について、実際に繰り広げられた争い「電流戦争」を描いた映画『エジソンズ・ゲーム』

作中のセリフでもありましたが、現在においてなくてはならない電気という「未来を作る戦い」を描いた本作は、スピーディな展開が特徴です。

作品の主軸になっているエピソードが「電流戦争」なので、「電気」の誕生やエジソンが白熱電球を開発するまでのプロセスは一切説明されていません

作品冒頭で、いきなりエジソンは「直流方式」による、電気の供給システムを、アメリカに広げようとする場面から始まります。

当初はエジソンと協力しようとしていた、実業家のウェスティングハウスが、エジソンに対抗するように「交流方式」での供給システムを提案します。

その後、本作は終始、エジソンとウェスティングハウスの、電気の供給システムにおいて「どちらが主導権を握るのか?」という展開が続きますが、前述した通りスピーディな展開な為、「直流方式」と「交流方式」の具体的な説明がなかったり、ウェスティングハウスがどうやって「交流方式」を開発したかも不明だったりします。

そもそも、エジソンに対してウェスティングハウスは、日本では馴染みが無い為「ウェスティングハウスって誰?」と思う人もいるのではないでしょうか?

ちなみにウェスティングハウスは、自動空気ブレーキ システムを発明し「鉄道革命」を起こした人物です。鉄道革命後も他分野の研究を続け、その中で誕生したのが「交流方式」なのですが、作中でその説明もありません。

『エジソンズ・ゲーム』で描かれているのは、電気の供給システムが出来るまでの「科学の歴史」でもなく、エジソンとウェスティングハウスの「偉人伝」でもなく、天才とカリスマによる、電気供給システムの主導権争いです。

なので、深掘りされているのは、エジソンとウェスティングハウスが「どういう人間だったか?」という点で、特徴的なのが、エジソンを傲慢で癖のある、かなり厄介な人物として描いている点です。

エジソンもウェスティングハウスも、新聞記者を利用して、自身に有利な情報を流し、主導権を握ろうとします。

そこでエジソンが行ったのが、高電圧の交流電力の危険性で「交流方式で人が死ぬ」という、いわゆるネガティブキャンペーンです。

作中のエジソンは「人殺しの道具は作らない」という信念を持っていますが、ウェスティングハウスに勝利する為、処刑の道具である電気椅子の開発に加担するなど、手段を選ばない、狂気じみた行動にも出るようになります。

本作は、実話をもとに脚色された部分もありますが、実際のエジソンも、電気を自身の専門領域としていた為、ウェスティングハウスの参入に激怒していました。

新聞記者を通したネガティブキャンペーンや、感電死という言葉が無かった当時に、電気による処刑を「ウェスティングハウスする」と表現した、映画内で語られているエピソードは、実際の話のようです、

傲慢で癖のあるエジソンですが、自身の家族の前では、良き夫、良き父親であろうとする、人間的な部分を見せ、妻のメアリーを失ってから、深い喪失感を見せるなど、主演のベネディクト・カンバーバッチが、エジソンを繊細かつ魅力的に演じています。

エジソンに対抗するウェスティングハウスは、実はエジソンの能力を高く評価しており、「交流方式」による供給システムの普及より、エジソンと組んで事業を展開する事を望んでいました。

そのエジソンと「電流戦争」を繰り広げなければならなくなった事に、苦しんでしるウェスティングハウスが印象的です。

そして「交流方式」が採用され、エジソンが敗北した後、エジソンとウェスティングハウスはラストに顔を会わせます。

ここで、お互いの健闘を称え合い、お互いを愛称で呼んで別れるこの場面は、カンバーバッチは「人生の教訓を教えてくれる場面」と語っており、非常に印象深い場面です。

それでも、最後に「映画産業」を立ち上げたエジソンは、やはり「電流戦争」に負けた事が悔しかったんだと感じます。

映画『エジソンズ・ゲーム』は、電気の歴史や偉人伝的な映画ではなく、「電気の供給システム」を巡るビジネスの争いを徹底的に描いた作品で、マスコミの利用や、ネガティブキャンペーンなど、19世紀を舞台にした作品ながら、現在にも通じる部分があります。

説明不足の点もありますが、それは映画のスピード感を持続させる為であり、本作は天才とカリスマの、白熱した主導権争いが展開される、手に汗握るエンターテイメント作品となっています。

まとめ

(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

エジソンとウェスティングハウスの「電流戦争」を描いた映画『エジソンズ・ゲーム』。本作を語るうえで欠かせない、重要な天才がもう1人います。

「交流電流」の発電装置を発明した、ニコラ・テスラです。

テスラはエジソンに憧れ「エジソン・エレクトリック」に入社しますが、「交流方式こそ効率的」と考えるテスラは、直流方式にこだわるエジソンに一蹴され、「エジソン・エレクトリック」を去ります。

ですが、その後ウェスティングハウスと組み、エジソンに勝利する事になります。

テスラは、圧倒的に上の存在であるエジソンに逆らう事は許されず、ウェスティングハウスに救われた形となります。

実は『エジソンズ・ゲーム』は、製作過程や公開まで一筋縄ではいかなかった作品で、その裏にハーヴェイ・ワインスタインの存在がありました。

『エジソンズ・ゲーム』は、ワインスタインが共同創業者である「ワインスタイン・カンパニー」の作品として製作されました。彼が編集などに頻繁に口を出し、一度完成した作品は、監督のアルフォンソ・ゴメス=レホンにとって不本意なものでした。

そして、ワインスタインによるセクハラや性的暴行が発覚し、『エジソンズ・ゲーム』は公開延期となります。

その状況を救ったのがレホンの師匠、マーティン・スコセッシでした。

スコセッシは、作品の再編集を支援し、レホンは再撮影を敢行、ディレクターズ・カット版を製作し、2年越しで公開を実現させました。

レホンにとって、エジソンに捨てられウェスティングハウスに助けられたテスラは、自身と重なる部分があるのではないでしょうか?

このエピソードからも『エジソンズ・ゲーム』が、現在にも通じる、ビジネスの厳しさを描いた作品であるといえます。


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