ひとりひとりが輝ける場所が、きっとある。
そこで精一杯、輝けばいい。ここは、星屑の町。
劇作家・演出家の水谷龍二とラサール石井、小宮孝泰が結成したユニット「星屑の会」によって、1994年から25年に亘って愛され続けた舞台「星屑の町」シリーズが、映画化となりました。
ヒロインの愛を演じるのは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で一躍人気となった、のん。東日本大震災後、岩手に元気を届けてくれました。
それ以来、ずっと岩手県は、のん推しなのです。「あまちゃん」の聖地、岩手県久慈市でのロケも行われ、地元は盛り上がっています。
東北4県先行上映となった『星屑の町』。全国公開に先駆け、あらすじ、みどころを紹介します。
映画『星屑の町』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原作】
水谷龍二
【監督】
杉山泰一
【キャスト】
大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲、でんでん、有薗芳記、のん、菅原大吉、戸田恵子、小日向星一、相築あきこ、柄本明
【作品概要】
25年愛され続けた大人気舞台「星屑の町」シリーズが、ヒロインにのんを迎えて映画化となりました。
監督は、森田芳光監督の助監督として力を付け、『の・ようなもの のようなもの』で初監督を務めた、杉山泰一監督。
地方回りの売れないムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」が、織りなす人情ドラマ。映画の舞台は、東北の田舎町。
舞台でお馴染みのメンバー、大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰らをはじめ、戸田恵子、柄本明など実力派俳優が勢揃いです。
映画『星屑の町』のあらすじとネタバレ
ここは東北の田舎町。緑の木々の隙間から木漏れ日が差し込み、小川の水面がキラキラと輝いています。町は、祭りの準備で賑わっていました。
自転車で通りかかった久間部愛の足元に、紙飛行機が飛んできます。開いてみると「山田修とハローナイツ歌謡ショー」のチラシでした。
「こらー」。チラシを飛行機にして遊んでいる子どもたちを、山田啓太が叱っています。「頑張ってね」。愛に声をかけられ、嬉しそうです。
愛は、母親の浩美が経営するスナックを手伝っていました。客の話題は、まもなく開催される「山田修とハローナイツ歌謡ショー」についてです。
ここは、山田修の故郷でもありました。修の弟・山田英二は、ママの浩美に惚れています。
酔っ払いの客たちは、英二をからかい始めました。「ハローナイツに愛ちゃんの父親がいるんでねぇが?ママが札幌にいた頃、会ったごとあんだべ。修でねぇのがー」。「んだー。顔っこいい、ボーカルの方だべさ」。噂話をする酔っ払いに掴みかかる英二。
その話を聞いていた愛は、星空を見上げ父親のことを思うのでした。遠洋漁業の船乗りだった父は、海に落ちて死んだと、母親からは聞いていました。
いよいよ、歌謡ショー当日です。舞台となる学校の体育館では、マイクチェックが行われていました。英二は、山田修とハローナイツの前座を務める、キティ岩城を迎えに行きます。
ド田舎に降り立ったベテラン女性歌手のキティ岩城は、「私も落ちたものね」と言いながらも、慣れた感じでステージの準備に入ります。
一方、ハローナイツの控室では、問題が発生していました。「おら、歌手になりたい、ハローナイツに入れでけろ!」。愛の声が響きます。
リーダーの修は、突然のことに驚き困ってしまいます。「誰かに言われたのかい?」。「市村のおじさんが、歌手にしてやるって言ってだ」。「いちむら~!」。
ハローナイツのメンバーのひとり市村敏樹は、お調子者の関西人。前の晩、愛の母・浩美のスナックに顔を出した市村は、歌手になりたいという愛に、良い顔をしようと大口を叩いていました。
その言葉を真に受けた愛は、しつこくメンバー入りを迫ります。愛が、そこまでハローナイツにこだわるのには、ある理由がありました。
愛は歌手を夢見て一度上京した経験がありました。東京で、悪い人に騙され借金を作り、田舎に出戻っていましたが、歌手になりたい夢は諦められませんでした。
そして何より、ハローナイツに本当のお父さんがいるかもしれないと、愛はそう信じていたのです。
愛の必死さに、ハローナイツのリーダー修は、オーディションを提案。愛は、ギターを弾きながら「新宿の女」を歌い上げます。
愛の性格を現すような、真っ直ぐで伸びやかな歌声に、ハローナイツのメンバーは驚きます。
歯痛で苦しんでいたメンバーのひとり青木五郎だけは、イライラした口調で「磨いてもイモはイモや」と吐き捨て、反対します。
しかし、他のメンバーは「やる気が感じられる、愛&ハローナイツも良いな」と、前向きです。
いざ、愛をメンバーに入れようと決心する修の元に、弟の英二が何やら深刻な顔つきでやってきます。「愛ちゃんの苗字知っとるが?久間部だべ。あの六造の孫だ。愛ちゃんをこの村から出すだけでも殺されっぞ」。
慌てだす山田兄弟。英二は、愛の祖父・六造の伝説をメンバーに話して聞かせます。
「今から40年前、この村に3人のよた者が流れ着いたさ。男たちは、村の娘を手籠めにし、好き勝手して帰りよる。
男たちが村を去ろうとした時、六造が日本刀を持って現れ、めった刺しにし、切り刻んで炭焼きで焼いたんだべ」。
炭焼き職人の真っ黒い顔をした六造の様子が浮かび上がり、ハローナイツのメンバーは震えあがります。
映画『星屑の町』の感想と評価
笑って、泣いて、歌う人情映画『星屑の町』。懐かしい昭和の名曲の数々と、主人公・愛のサクセスストーリーに、心がほっこりします。
島倉千代子の「ほんきかしら」を始め、藤圭子「新宿の女」、内山田洋とクールファイブ「中の島ブルース」、ピンキーとキラーズ「恋の季節」など、一度聴いたら病みつきの名曲揃いです。
映画館では、年配の方々が思わず一緒に歌い出してしまう場面もありました。
そして、1996年に発売されている、山田修とハローナイツのオリジナル曲「MISS YOU」。主人公・愛(のん)と、真吾(大平サブロー)のデュエットもみどころです。
また、今作でもオリジナル曲が誕生しています。愛&ハローナイツで「しゃぼん玉」です。のんの可愛らしい高音の声がよく合うアップテンポなリズムに、ハローナイツの絶妙なコーラスが入り、楽しい気分になる1曲です。
舞台で25年間愛され続けた『星屑の町』シリーズなだけに、ハローナイツのメンバーの息のあった芝居が光ります。
「コント赤信号」のメンバーだった小宮孝康とラサール石井、「太平サブロー・シロー」の漫才コンビだった大平サブローと、昭和のお笑いを盛り上げた芸人さんたちの掛け合いは、面白くないはずがない。
低音ハスキーボイスのボーカル、しんちゃん(大平サブロー)の歌声にしびれます。
ベテラン女性歌手・キティ岩城を演じたのは、これまたベテラン女優の戸田恵子。彼女の貫禄ある豪ジャスな歌いっぷりに、村の体育館も高級クラブに大変身です。
豪華キャストの中に新たに加わったヒロイン・愛を演じたのん。田舎娘が似合うこと。今作ではギターの弾き語りにも挑戦。藤圭子の名作「新宿の女」を、心を込めて歌い切りました。
ロカビリーファッションに身を包み、ハローナイツのメンバーと歌うのんの姿には、子の成長を喜ぶ親の気持ちになってしまいました。
歌の力で、一歩一歩前に進んで行く人々の姿を描いた映画『星屑の町』は、自分の輝ける場所がきっとあることを教えてくれます。その場所で、精一杯輝ける自分でありたいものです。
まとめ
映画『星屑の町』のロケ地のひとつとなった岩手県久慈市では、女優のんの里帰りに大盛り上がりです。
のんは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で天野アキを演じて以来、岩手県のPR活動に積極的に参加しています。
地元では、今作公開に向け「公式応援隊」が結成され、久慈市ではロケ地マップも作成されました。
昭和の名曲にのせて、ヒロイン・のんの七変化をお楽しみください。
映画『星屑の町』は2020年3月6日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショーです。