ファティ・アキン監督がサプライズ登壇。
今後の展望…観客に明かされる映画の裏側を明かす。
第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品、ファティ・アキン監督最新作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』。
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』は2020年2月14日(金)バレンタインデーより、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開されます。
この度1月23日(木)に本作の先行試写会が実施され、上映後にはファティ・アキン監督がサプライズゲストとして登壇。
衝撃的な殺人鬼の物語を目の当たりにした観客とQ&Aが行われました。
CONTENTS
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』先行試写会の概要
画像:『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』撮影現場でのアキン監督(右)
【開催日時】
2020年1月23日(木)
【会場】
ゲーテ・インスティトゥート東京
東京都港区赤坂7丁目5−56
【スケジュール】
18:20開場/18:40-20:30上映
20:30-21:00ファティ・アキン監督によるトークイベント
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』トークリポート
30代で世界三大国際映画祭すべてで主要賞受賞の快挙を成し遂げ、前作『女は二度決断する』でゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞、主演のダイアン・クルーガーにカンヌで主演女優賞をもたらしたファティ・アキン監督。
最新作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』では70年代ハンブルクで実際に起きた連続殺人事件の犯人フリッツ・ホンカを「ごく普通の連続殺人鬼」として描き出します。
公開に先駆け、1月23日(木)に一般試写会が開催されました。
試写終了後、衝撃的な殺人鬼の物語に震撼する会場に、サプライズゲストとしてファティ・アキン監督が登場すると、大きな拍手とどよめきが。
この題材の映画を作ろうとした理由
ファティ・アキン監督(以下 アキン監督):本日はありがとうございます。僕は日本が大好きで、数年に1回は必ず来るようにしています。何か聞きたいことがあればどんどん聞いてほしいですが、自分でもこういった作品に質問をするのは難しいと思います(笑)
──何故、この題材の映画を作ろうとしたのでしょうか。
アキン監督:この映画には原作小説があります。作者は僕と同じハンブルク出身でコメディアンでもあるハインツ・ストランクです。
フリッツ・ホンカについての小説が出版されると聞き、発売日の朝一番に本屋へ駆け込みました。そしてその日の午後に半分読み終えた時点で、弁護士へ映画化権を取得してほしいと連絡をしました。
この物語を映画にするかどうか、悩んでいる間に他の人に映画化権を取られたくなかった。ちょうどその頃『女は二度決断する』でゴールデングローブ賞を頂いたので、“ゴールデン・グローブ”(本作で登場するバーの店名であり原作小説名)を映画にしなければ!と最終的に決心しました。
ヨナス・ダスラーのイノセンスな眼差し
──本来は容姿端麗な美青年であるヨナス・ダスラーを主演に起用した理由は?
アキン監督:フリッツ・ホンカというキャラクターに、観客の皆さんがついてきてもらう必要がありました。彼のようなキャラクターに共感してもらうのは難しいのですが、彼が幼少期に酷い目にあったことを描写して、ホンカに対して同情して欲しくなかったのです。
そこで、若い方をキャスティングしようと思いつきました。若い人の目にはイノセンスが宿っていて、それはどんな特殊メイクでも隠しきれません。
ヨナスは撮影当時22歳くらいだったのですが、彼の目に宿るイノセンスをホンカに移すことで、観客が彼についてきてくれるのではないかと思い、キャスティングしました。
──ゴールデン・グローブというバーの名前の由来は?また、実際ハンブルクにはあのようなお店がたくさんあるのでしょうか。
アキン監督:“ゴールデン・グローブ”は1960年代前半にオープンした店です。今のオーナーの祖父である当時のオーナーがボクサーで、ボクシングの優勝タイトル「金のグローブ」から名前を取ったそうです。
あのバーは今も24時間年中無休で営業しています。あそこに行くと自分の中に潜む危険性が目覚めてしまう気がするので、僕はあまり行かないようにしていますが、ハンブルクには他にも大衆向きのパブがたくさんあります。
普段出会えない人と会えるのが楽しいので、僕もパブに飲みに行くのが大好きです。
今後の作品作りについて
──他に映画化してみたい殺人鬼はいますか?
アキン監督:特にいません!(笑)
ただ、ナチについては以前から題材として興味をもっています。フランスの著者によるヨーゼフ・メンゲレ医師(アウシュビッツ強制収容所で非道な人体実験を行った、「死の天使」の異名を持つドイツ人医師)についての本があって、ヨナスにも読んでもらいました。
彼ともう1本撮りたいと話をしているので、もしかしたら実現
するかもしれません。
──この事件は実際ドイツ国でどのくらいポピュラーな事件なのでしょうか。
アキン監督:ドイツでの興行成績に答えが表れていて、北部に行けば行くほど成績が良く、南部に行けば行くほど成績が下がりました。実際に起きた事件ですが、南部の人たちにとってホンカは“私たちの殺人者”ではなかったんでしょうね。
──世界中から注目されている監督ですが、今後もしハリウッドの大作から声がかかったらオファーを受けますか?
アキン監督:脚本の質で決めます!
僕は映画のジャンルやスタジオ、予算などに偏見を持つことはありません。素晴らしい脚本であればなんでも引き受けたいと思っています。
その作品の中で、挑戦できるものが見つかれば…。ただその手の作品って、たいてい脚本がよくないんですよね!(笑)
まとめ
冗談を交え答え、客席に笑いが起きたところでトークイベントは終了しました。
トーク終了後、サプライズ登壇にも関わらず、監督にサインや写真撮影を求める人が絶えず、その一人一人に丁寧に対応していたファティ・アキン監督でした。
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』は2020年2月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開です。
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』の作品情報
【日本公開】
2020年(ドイツ映画)
【原題】
Der Goldene Handschuh (英題: The Golden Glove)
【監督・脚本】
ファティ・アキン
【キャスト】
ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、ハーク・ボーム
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』のあらすじ
敗戦がまだ尾を引いていた1970年代ドイツ、ハンブルク。
安アパートの屋根裏部屋に住むフリッツ・ホンカは、夜な夜な寂しい男と女が集るバー“ゴールデン・グローブ”で酒をあおっていました。
彼がカウンターに座る女に声を掛けても、いつも顔をしかめられるだけ。
一見、無害そうに見えるフリッツの狂気に気づく常連客は誰ひとりいませんでした…。