映画『だれもが愛しいチャンピオン』は2019年12月27日(金)よりロードショー!
プロバスケットボールチームのコーチを務めた男が、ひょんなことから知的障がい者のバスケットボールチームを預かることに!?
『だれもが愛しいチャンピオン』は、奇想天外でユーモアあふれる物語の中にホロリと涙を流しそうな人情劇を盛り込んだハートフルコメディー映画です。
監督・共同脚本、編集を務めたのは『ミラクル・ペティント』『モルタデロとフィレモン』を手掛けたハビエル・フェセル 。主人公マルコを、『マーシュランド』『オリーブの樹は呼んでいる』のハビエル・グティエレスが演じます。
その他に、マルコが受け持つチーム・アミーゴスのメンバーには実際に障がいをもつ10人の俳優が、600人もの中からオーディションで選ばれキャスティングされています。
ユーモラスでハートフルなストーリーの中に、2000年のシドニー・パラリンピックでスペインが引き起こした実際の事件を織り込むなど、近年大きく注目されているパラスポーツというジャンルについて、改めて言及する内容も含まれています。
CONTENTS
映画『だれもが愛しいチャンピオン』の作品情報
【日本公開】
2019年(スペイン映画)
【英題】
CHAMPIONS
【監督・共同脚本】
ハビエル・フェセル
【キャスト】
ハビエル・グティエレス、アテネア・マタ、フアン・マルガージョ
【作品概要】
プロバスケットボールチームのコーチと知的障がい者のバスケットボールチーム“アミーゴス”との出会い、そしてトレーニングを通じて培われる絆を、コメディー要素タップリに描きます。
監督・共同脚本、編集を務めたのは『ミラクル・ペティント』『モルタデロとフィレモン』を手掛けたハビエル・フェセル 。主人公でバスケットボールのコーチ・マルコ役を『マーシュランド』『オリーブの樹は呼んでいる』のハビエル・グティエレスが演じます。
ストーリーには実際に2000年のシドニー・パラリンピックでスペインが引き起こし、パラリンピックから競技が除外されるきっかけとなった事件にも言及しています。
また、アミーゴスのメンバーには、実際に障がいをもつ10人の俳優が600人もの中からオーディションで選ばれキャスティングされてており、ユーモアだけでなく障がい者の生活、そしてパラスポーツというジャンルに深く言及する内容となっています。
作品は2018年、スペインのアカデミー賞とも言われるゴヤ賞で作品を含む3部門を制覇。特に受賞者には、障がいをもつキャストのヘスス・ビダルも含まれており、大いに注目を浴びました。さらに作品はスペイン国内でも大ヒットを記録し話題を呼びました。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』のあらすじ
プロバスケットボールチームのサブコーチを務めるマルコは負けず嫌い。ある日チームのゲーム中に、ヘッドコーチとお互いのコーチングをめぐって言い争いになり、相手を殴ってしまったあげくに飲酒運転事故を起こして逮捕されてしまいます。
チームを解雇され、裁判所からは90日の社会奉仕活動を命じられたマルコ。そしてその裁判所の命令で行き着いたのは、公共の体育館でした。
そこでマルコはこの体育館を本拠地とする知的障がい者のバスケットボールチーム・アミーゴスをコーチングすることに。
基礎的なトレーニングはおろか、会話すら満足にかみ合わない面々。途方に暮れるマルコでしたが、チームの責任者・フリオから彼らが普段は複雑な事情を抱えながらも仕事をこなし、自立した生活を送っていることを知らされます。
その話を聞いたマルコは、彼らへの見方を変え辛抱強くコーチングを続けます。そして途中からチームに合流した新メンバー、コジャンテスの荒くれファイトのかいもあり、チームは上昇ムードに乗り全国大会決勝に向かうことに。
その経過とともに、周囲がマルコを見る視線も変わっていきます。一方で、マルコは妻ソニアとの間に、ある一つの問題を抱えていたのでした。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』の感想と評価
障がい者がエンタメで活躍できる
いかにも“スペインらしさ”を感じさせるテンポの良さ。音節がはっきりしていることもあってか、例えばスペイン語は日本語に比べると非常に早口に聞こえますが、そのポンポンと進む言葉のテンポにうまく合わせたユーモラスな展開が、とても小気味良く感じられます。
そこで特筆すべきは、やはり俳優陣。これだけのテンポの良さを、実際に障がいをもった俳優陣で実現したということに、驚かれる方も多いでしょう。
賛否量両論あるかもしれませんが、通常の商業映画に鑑みても、全く遜色なく、むしろ一般俳優よりも魅力的です。
しかもその一人ひとりが、生き生きと役者としての表情を見せており、融通のきかない交通巡視員のマリン役を務めたヘスス・ビダルはゴヤ賞2019の新人賞を得るほどで、その才能と可能性を今後の映画出演に感じられそうです。
障がい者は、社会的にエンタテインメントという分野にはなかなか入れづらい空気も、場合によってはいまだにあることでしょう。
2012年に公開された映画『チョコレートドーナツ』のような例もありますが、これは障がい者がまだ社会に受け入れにくいという認識の上での描き方となっています。
それを考えると本作のように、本当の障がい者とともにしっかりとエンターテインメント・ストーリーを成立させたことは、障がい者と健常者の垣根を一段低くするような可能性も見えてくるはずです。
近年は障がい者に対しての視点も徐々に変わってきました。これは日本でも2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を控えた今日、障がい者という位置づけは特に注目を浴びつつあります。
映画でも、例えばスポーツではありませんが、近年ハリウッドリメイクを果たした『最強のふたり』や、車いすテニスのシーンも印象的な『パリ、嘘つきな恋』など、新たな視点から障がい者との接し方を描いた作品も登場してきました。
以前は障がい者に対し「いかに社会に受け入れていくか」という視点でありましたが、先述の2作は「健常者と同じ社会の一員として、いかに彼らに接していくべきか」という視点へ、一歩進んだ関係に描かれています。
そしてこの『だれもが愛しいチャンピオン』は、一歩踏み込んだ視点で、彼ら障がいの有る人たちから“障がいの無いと思い込んでいる健常者”が教えを請うカタチで描かれています。
それは誰が人生を生きるなかで、“メインであり、サブであるか”と拘ることに意味はないと、声高々に人生を真実を歌いあげています。
人との向き合い方を考えさせるもの
本作は単にコミカルなものにしているだけでなく、ある意味従来から議論されている「障がい者を、いかに社会に受け入れるか」という視点についても言及しているかは先ほども述べた通りです。
その大きな問いは、主人公マルコとその妻ソニアとの関係の奥にもありました。その秘密については劇中の物語の中で明らかにされますが、その展開からは障がい者のバスケットボールチーム・アミーゴスの面々の成長が、一つの答えを与えています。
そしてそれこそがこの作品のタイトル『CHAMPIONS』という言葉に集約されているようでもあります。登場人物それぞれに、こうした人々との生活というものを深く考えさせてくれる作品といえます。
まとめ
映画のクライマックスには、息つく暇もないほどのバスケットボール・ゲームシーンが設けられています。
さすがに知的障がい者のプレーですので、例えば『コーチ・カーター』のようなスーパープレーが見られるわけではありませんが、それでもなかなかの白熱ゲームシーンを見せており、物語を盛り上げます。
そしてラスト間際では、あっと驚く展開に。きっと多くの人は“そりゃないでしょ!?”と肩透かしを食らいながらも、最後には納得しつい笑顔になってしまう自分に気づくでしょう。
楽しくも暖かく、そして人を好きになる。そんな表現がピッタリな作品であります。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』は2019年12月27日(金)より公開されます!