連載コラム「銀幕の月光遊戯」第45回
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』(2004)が2019年10月04日(金)より、池袋HUMAXシネマズにて2週間限定公開されます。
2.5次元に存在する架空の芸能事務所として、CD、アニメ、ライブ、舞台といった様々なメディアミックス展開を行う『ツキノ芸能プロダクション(通称ツキプロ)』。
初の実写映画化がついに実現! ツキプロ所属の音楽ユニット、「SOARA(ソアラ)」のはじまりの物語は、“青春”を過ごしたすべての人へ贈るバンドストーリーです。
CONTENTS
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』の作品情報
【公開】
2019年公開(日本映画)
【原作】
ツキノ芸能プロダクション『ALIVE』シリーズ(ムービック)
【監督】
伊藤秀隆
【キャスト】
堀田竜成、石渡真修、吉田知央、植田慎一郎、沢城千春、江口拓也、土岐隼一、おかやまはじめ
【作品概要】
2.5次元に存在する架空の芸能事務所としてメディアミックスを展開する「ツキノ芸能プロダクション(通称:ツキプロ)」初の実写映画作品として、ツキプロ所属の音楽ユニット「SOARA」の高校時代を描く青春ドラマ。
オーディションで主人公大原空役を射止めた堀田竜成をはじめ、フレッシュな俳優が顔をそろえている。
監督はあらゆるメディアジャンルの作品を制作し、2.5次元ダンスライブ「ツキステ。」の演出も手がけた伊藤秀隆が務めた。
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』のあらすじ
大原空は、中学二年生の時に授業の課題で「LET IT BE」という曲を作りました。
周りからの評判もよかったのに気を良くして軽い気持ちで動画サイトにアップしたところ、一夜にして大ヒット。
ニュースにも天才少年として取り上げられ、一躍時の人となります。
曲を作ることはとても楽しく、その後もいくつか曲を作りましたが、評判はどれも芳しくなく、ネット上には厳しい批評が寄せられました。空の人格を批判するようなコメントも数多くあり、傷ついた空は、音楽を作ることを封印してしまいます。
時は流れて空は高校二年生となりました。
風邪で欠席している間に「三年生を送る会」の実行委員を押しつけられていて、毎日のように会議に出席しなくてはなりません。
何度話し合ってもこれという意見は出ず、無難に毎年やっていることを踏襲することで落ち着きそうでした。
しかし、三年生を送るために、何かできないかと空は必死に考えていました。友人や後輩の在原守人、神楽坂宗司、宗像廉、七瀬望たちと相談しているうちに、バンド演奏をすることを思いつきます。
皆は賛成してくれましたが、空が自分たちで即席バンドを組むつもりだと知り驚きます。
中でも廉は、剣道で忙しく、とてもキーボードをこなすことなど考えられません。
けれど、空の思いは次第に他の4人の心を動かしていきます。5人は即席バンドを組み、練習を始めました。バンド名はズバリ「三年生を送る会バンド」です!
守人は空に提案します。せっかくならオリジナル曲も入れたいと。彼は中学のころ、空の作った歌を聴き、心動かされた思い出がありました。
守人の言葉に触発され、空は長年の封印を解き、再び曲を作り始めます。
ついに「三年生を送る会」の幕が開こうとしていました。
もしうまくいかなかったら・・・。あの時のようにバッシングされたら・・・。不安が頭をよぎります。でも・・・。
「この歌は俺だけの歌じゃない。みんなで一緒に作った最強の歌だ。だから…さぁ、音楽をはじめよう!」。
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』のキャスト紹介
堀田竜成(大原空役)
1994年生まれ。愛媛県出身。
看護師として働きながら路上ミュージシャンとして活動していたところをスカウトされ本作のオーディションを受けました。
見事、主役の座を射止め、映画デビューを果たしました。
さわやかな笑顔と軽やかな身のこなしが、明るく前向きで行動力のある大原空のイメージにぴったりで、彼のもとに仲間たちが集まってくることに説得力をもたせています。
石渡真修(在原守人役)
1993年生まれ。神奈川県出身。
ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン7代目青学・桃城武役を務め、『逆鱗アンドロイド』では主演に抜てきされるなど、舞台やミュージカルで活躍。
映画は大学の映画研究部員の姿を描いた『EIKEN BOOGIE~涙のリターンマッチ~』(2015)などに出演しています。
本作では、大原空のことを暖かく見守り、彼に再び曲を作るきっかけをあたえる重要な役柄を演じ、爽やかなメガネ男子ぶりを発揮しています。
吉田知央(神楽坂宗司役)
1999年生まれ。神奈川県出身。
ティーン誌『HR』やCMなどのモデル、舞台、ドラマと幅広い活躍をみせています。
今回演じた神楽坂宗司は、漫画やドラマなどでしばしば登場する典型的なクール系かと思いきや、吉田知央は、落ち着いた雰囲気の中に優しさを忍ばせ、紋切型でない人間味のあるキャラクター像を作り出しました。
植田慎一郎(宗像廉役)
1993年生まれ。兵庫県出身。
第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト ファイナリストを経て、数多くの舞台に出演。
TVアニメ『惡の華』の主人公・春日高男役の声を担当。ロストコープで製作されたアニメということで実写キャストも務めました。
作品の中では剣道場である宗像廉の家の事情はそれほど多く語られませんが、放任家庭でない不自由さといった高校生らしい悩みが演技から伝わってきます。
沢城千春(七瀬望役)
1987年生まれ。東京都出身
2013年、アニメ『犬とハサミはつかいよう』で声優デビューを果たします。声優として多数の作品に出演する他、舞台、映画でも活躍しています。
今回演じた七瀬望は、とにかく軽い! まさに今風の軽~いノリの高校生なのですが、不思議と軽薄さはありません。
先輩にもタメ口をきく馴れ馴れしさもまったく嫌味がなく、人懐っこい人物像を鮮やかに表現しています。
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』の感想と評価
高校生を主役にした本作には、いじめも恋愛も非行も描かれません。地方都市に住む屈折や、周りとうまくいかない孤独感という、青春映画によくあるテーマも登場しません。
ここでは、少年たちの穏やかな“友情”がひたすら描かれます。このストレートさが、実に新鮮です。
爽やかな主人公たちと温かな仲間たちがバンドを組むお話というだけで(ツキノ芸能プロダクション『ALIVE』シリーズの実写版であることは別にして)作品が成立するということが、ある意味奇跡のようです。
毎日、友だちとわいわい楽しいやり取りをして、学校の帰りに大盛りのラーメンを食べたり、商店街でコロッケを買い食いしたり、そんなささいなことが、それだけで人の心を掴むのだなと思い知らされました。
また、あまりにも普通の生活が描かれるからこそ、逆に登場人物たちが心の中に持つ様々な感情に気がつくことになります。
製作側は特にそこを強調することはせず、さらっと提示することで、観るものの想像力にまかせるのです。
バンドものも数多くの映画を観てきましたが、卒業していく3年生のために何かしたいというような純粋な理由で頑張る少年たちの姿のなんと尊いことか。
主人公の大原空役の堀田竜成を始め、若い俳優たちが、ひとつ間違えれば、マンガチックな類型的なキャラクターに陥ってしまうところ、溌剌とした生命を吹き込み、生き生きと躍動しています。
まとめ
爽やかな青春映画になっています。5人の主人公以外にも、すぐにボールをなげてくるクラスメイトや、洋菓子作りの専門学校に進みたがっている肉屋の跡取り息子、バスケット部のキャプテンなどが、ただの脇役としてでなく、作品の貴重な存在として登場します。作り手の温かな眼差しがちゃんと注がれているのです。
女生徒がひとり、上級生に告白しようとするシーン以外は恋愛要素がないのも新鮮です。
こうした爽やかで元気になれる青春映画を待っていた人も多いのではないでしょうか?
劇場版SOARA『LET IT BE -君が君らしくあるように-』は、2019年10月04日(金)より、池袋HUMAXシネマズにて2週間限定公開されます。今後、大阪、名古屋をはじめ全国順次公開も予定されています。
次回の銀幕の月光遊戯は…
11月1日公開の『不実な女と官能詩人』をお届けする予定です。
お楽しみに!