2017年8月19日(土)より新宿シネマートほか順次公開される韓国映画『隠された時間』。
主人公ソンミン役をカン・ドンウォン、そして300倍のオーディションから選ばれた少女スリン役にシン・ウンスが出演!
時が止まった異世界に捕らわれ、大人になってしまった少年の“隠された時間”とは…
パク・チャヌク監督が推薦する秘蔵っ子オム・テファ監督・脚本による新たなる映画とは?
CONTENTS
1.映画『隠された時間』の作品情報
【公開】
2017年(韓国映画)
【脚本・監督】
オム・テファ
【キャスト】
カン・ドンウォン、シン・ウンス、キム・ヒウォン、クォン・ヘヒョ、ムン・ソリ、オム・テグ、イ・ヒョジェ
【作品概要】
カン・ドンウォンの主演で、大人の姿となって現れた行方不明になった少年と、彼を信じる少女をファンタジックに描いたラブストーリー。
ドンウォンが主人公のソンミン役を、スリン役を岩井俊二監督の短編映画「チャンオクの手紙」にも出演したシン・ウンスが演じる。
2.映画『隠された時間』のあらすじ
スリンと空想好きな少年ソンミンの初恋
スリンは小学4年生の時に、再婚して間もない母親が交通事故で亡くなりました。
2年後、トンネル工事現場で働く義父に連れられ離島の小さな町に引っ越してきたスリン。
彼女は義父との折り合いが悪く、転校先の小学校ではクラスメイトから稀有な目で見られて、心が許せる相手が1人もいなかった。
そんな時、児童養護施設で暮らすソンミンという同じ歳の少年と出会います。
温かい家庭に恵まれず空想好きの2人はすぐに意気投合し、スリンが考えた暗号を使って秘密の交換日記を交わすようになります。
森の中に見つけた廃墟で、「ぼくはどこでも生きていけるから、異世界に行ったとしても、ぼくと一緒ならソンミンもだいじょうだよ」と告げます。
ソンミンの顔を石鹸に彫刻して一緒に過ごし、やがて友情が初恋に変わるまでに時間はかかりませんでした。
ソンミンより少し背の高い少女スリンは、「私のことずっと好き?」と尋ねるとソンミンはうなずきます。
廃墟にある階段の踊り場で上の段にいたソンミンに、踵をあげて背伸びしたスリンは、突然、唇を寄せてきました。
神隠し?スリンの前から忽然と消失した少年たち
島に暮らし始めて1ヶ月半が過ぎた満月の日。
ソンミンが同級生の少年たちとトンネル爆破工事を見に行くことを知ったスリンは、自分も一緒に行くと言い張り、子どもたちだけの冒険が始まります。
偶然見つけた立ち入り禁止区域の洞窟の中を恐る恐る探検していた彼らは、地下にあった泉の底で光る卵型の謎の発光体を発見。
「満月の日だけ現れる妖怪の卵かもしれない」などと話しながら洞窟の外に持ち出してしまうソンミンと少年たち。
すると、スリンは母親に買ってもらった大切なヘアピンを洞窟内に落としたことに気がつきます。
彼女が洞窟に戻って探していたその時、爆破工事が始まり、地響きと共に大きな揺れが起こります。
崩落の危険を感じたスリンは必死に洞窟の外に這いつくばり飛び出してきます。
スリンがソンミンたちのいた場所に戻ってみると、そこには粉々に割れ、発光しなくなった謎の物体のみが残骸として散乱していました。
ソンミン、テシク、ジュウクの少年3人組は、忽然と姿を消してしまっていた。
スリンは一晩中、彼らを探して山の中を彷徨いながらも、警察に保護されました。
しかし、帰らぬ子どもたちを心配した親たちは、「トンネル工事で事故に巻き込まれたのではないか」と猛抗議します。
洞窟で見たままを正直に話すスリンの話を義父も刑事たちも信じようとせず、昨日は確かに存在していたはずの洞窟も見つけることができませんでした。
消えた子どもたちは事故か事件に巻き込まれた⁉︎
海沿いの公園でジェウクの遺体が発見され、子どもたちを探す親たちに大きなショックが走ります。
しかも、スリンだけが生きて帰ってきたことに息子たちが帰ってこない親たちはトンネル工事に疑念を抱くようになります。
神隠しのように消えた子どもたちは、実はトンネル工事と関わりがあり、工事責任者である義父の関与が疑われるのです。
「山に入った子どもたちが爆破事故に遭い、それを隠すために会社ぐるみで誘拐したんだろ!」と親たちから噂が立ちます。
そんなある日、ジェウクとテシクの自宅前に失踪当時に着ていた服がきちんと綺麗に折りたたんで置かれていました。
近隣の防犯カメラの解析と目撃者探しが刑事たちによって急務に勧められます。
スリンに会いに来た謎の真犯人?
時間だけが虚しくすぎる中、相変わらず森に入ったスリンは行方不明となった少年たちの手がかりを探しています。
ふと、誰かの気配を感じたスリン。そこに彼女を呼び止める黒いパーカーのフードを深く被る不審な男がいました。
「スリン…、ぼくはソンミンだよ」と告げる男の澄んだ瞳に見覚えを感じながらも、自分より背の高い見知らぬ男に怯えるスリン。
不審な大人に呼び止められたことに恐怖を感じたスリンは、泣き叫びながらその場から逃げ出します。
やがて、警察は森の中で発見したというノートをスリンは受け取ります。
それはソンミンとスリンだけが読める暗号絵文字で書かれた2人の秘密の交換日記だったのです。
そこには「スリン…ぼくはソンミンだ。君が洞窟に入った後、おかしなことが起きたんだ。」という言葉で始まる日記は何冊も増えていました。
スリンは大人たちに隠れて夢中に読み始めます。
……あの日、スリンが洞窟から戻ってくるのを待っている間、ソンミンの提案で卵型の物体を割ってしまった……
3.映画『隠された時間』の感想
今作『隠された時間』は、リアリティーとファンタジーの境界を行き来する韓国特有のラブストーリーです。
オム・テファ監督は、1枚の絵画に描かれた“大きな波の前に並んで立つ男性と少女”の作品を見た際に、インスピレーションを受けて、わずか数日で映画のストーリーを完成させたそうです。
とはいえ、この物語の構成は単純なお話で書かれた物語ではありません。素晴らしいですよ!
主人公スンミンをはじめとした少年たちが迷い込んだ“隠された時間”と現実社会の対比は、映画ファンのあなたを満足させだけの面白さを持った作品となっています。
複雑な環境下で出会った少女と少年がお互いの心を開き、2人のみが知る交換日記や秘密の廃墟のシチュエーションは、あなたのみずみずしく飾り気のない幼き頃を彷彿させてくれるでしょう。
オム・テファ監督のプロフィールと先輩監督の評価は?
1981年生まれで韓国映画アカデミー出身のオム・テファ監督。
テファ監督はパク・チャヌク監督の演出したMTVや、映画『親切なクムジャさん』また、iPhone4短編映画『ナイト・フィッシング』などの助監督として演出の腕を磨きました。
2012年にテファ監督の制作した『森(原題)』は第11回ミジャンセン短編映画祭にて、大賞とホラーファンタジー作品賞をダブル受賞の二冠に輝く快挙。
審査員を務めた韓国映画界を代表する監督と俳優10人が全員一致で選出をして、「審査員の監督らを緊張させる圧倒的な作品力」と絶賛されます。
続く翌年2013年に発表したインディーズ映画『イントゥギ(原題)』では、インターネット世代の青春を描いたテファ監督。
それを観た師匠パク・チャヌク監督は「韓国インディーズ映画史に新たな章が始まった」と言わしめ、また『暗殺』『10人の泥棒たち』のチェ・ドンフン監督は「最も強烈な韓国映画だ」と賛辞を贈ったそうです。
斬新なアイデアとそのテーマ性に観客を共感させる繊細な感情描写と演出力は、オム・テファ監督の最も強みな特徴といえます。
きっと、あなたも『隠された時間』を観ることで納得されることでしょう。
特にオススメなシーンは“止まった時間の世界”の描写。さすがパク・チャヌク監督の秘蔵っ子、なかなかシュールで楽しめますよ。
オム・テファ監督の理想のキャスティングが実現!
オム・テファ監督は“大人の姿をした子ども”というメインキャラクターに求めていたのは、「成人でありながら、少年っぽさを失わない俳優」「自己を客観的に見つめられる俳優」でした。
『華麗なるリベンジ』(2015年制作)
その理想の俳優だと言えるカン・ドンウォンに会うために『華麗なるリベンジ』の撮影中に釜山まで直接訪ねて行き、同じ歳の2人は互いを尊重し合う関係を築き上げたそうです。
少年そのもままのピュアな瞳を持つカン・ドンウォンは、子どもようにその時々で変化する心理をまるで小動物のような表情で伝達し、観る者の共感と感情移入させる心の扉を開く才能を見せています。
また、カン・ドンウォンの最年少パートナーのシン・ウンスは、300倍という競争率のオーディションを勝ち抜き、ドンウォンとの共演に抜てきされました。
ヒロイン役のスリンは繊細な感情をもった少女。それを演じる女優キャスティングをするため、今作スタッフは何度もオーディションを繰り返し、約6か月の時間を費やしながらシン・ウンスを女優に選び抜いたといいます。
テファ監督は難しい役柄を演じたシン・ウンスについて次のように述べています。
「オーディション時、自らをアピールしようとしない姿が、逆に良く映った。キュートな容姿の内側に、荒削りな部分が隠されているような印象を受けた。また、孤独さを持ち合わせたスリンのイメージにマッチし、単純に可愛いだけの容姿ではなく、顔そのものにストーリーが込められていた」
このように述べると、スリン役の飾らぬ表情自体で物語を感じさせる演技を導き、“孤独な少女スリン”を完成させました。
また、成長したソンミン役として共演をしたカン・ドンウォンは彼女についてこのように語っています。
「ファーストインプレッションは『作品にマッチした子』だった。常に準備を怠らず、役への理解度にも秀でていた」
子役ながら女優であるシン・ウンスに称賛しています。
ぜひ、大人でありながら心は少年のままのソンミンと孤独にソンミンを守り続けるスリンに要注目ですよ!
どなたも唸る演出と演技を魅せてくれる韓国映画の1本!一押しです!
まとめ
今作『隠された時間』の見どころは、カン・ドンウォン&シン・ウンスの演技のほかにもあります。
冒頭のエピソードにある廃墟のシーン。その階段の踊り場で初恋のキスを少女スリンから少年スンミンに口を寄せます。
あの場面でスンミンに魔法のような“一生の時間をかけてスリンを愛する”という呪文がかかります。
少しだけ少年スンミンよりも背の高い少女スリン。次に大人になったスンミンが姿を現した際には、スリンよりも背の高い大人になってしまっていました。
孤独な彼女を守ってあげるために、ソンミンは早く背が高くなりたかったのでしょうし、また、メタファー(隠喩)として、いつまでも初恋という過去の少女スリンに拘る“男性の初恋への忘れられじ思い”、そのような思いをこの映画は描いているのでしょう。
この作品には月や泉、時を司る謎の物体を通して、極上の韓国映画らしい、韓国映画ならではのロマンティックなラブストーリーを最後の最後まで紡ぐことに成功させた作品です。
あえて、書きませんが見どころは満載!オム・テファ監督はこれからの韓国映画界の牽引的存在になること間違いなし!
2017年8月19日(土)より新宿シネマートほか順次公開される韓国映画『隠された時間』。
ぜひ、真夏の劇場で観ることをオススメです!お見逃しなく!