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映画『タイニー・ファニチャー』あらすじとキャスト。感想レビューも

  • Writer :
  • 西川ちょり

2017年12月16日より、下北沢トリウッドにて「歳末青春大セール!ティーンムービー傑作選」という特集上映が行われます! 

日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営するGucchi’s Free Schoolによる選りすぐりの傑作青春ムービー8本が勢揃い!

今回ご紹介する映画は、人気テレビドラマ『GIRLS/ガールズ』の原点ともいうべき作品、レナ・ダナム監督、脚本、主演の『タイニー・ファニチャー』(2010)です。

1.映画『タイニー・ファニチャー』の作品情報

【公開】
2017年(アメリカ映画)

【原題】
Tiny Furniture

【監督】
レナ・ダナム

【キャスト】
レナ・ダナム、ローリー・シモンズ、グレース・ダナム、ジェマイマ・カーク、アレックス・カルボウスキー、デヴィッド・コール、メリット・ウェバー、エイミー・サイメッツ

【作品概要】
レナ・ダナムが監督、主演したHBO制作のテレビドラマ『GIRLS/ガールズ』の原点ともいうべき自伝的作品。SXSW映画祭でグランプリを獲得している。大学を卒業したが職もなく、付き合っていた彼とは別れ、実家に帰ってきたオーラの悩みもがく日々をコメディタッチで描く。

2.映画『タイニー・ファニチャー』のあらすじ

24歳のオーラは荷物とハムスターの入ったケースを抱えて、ニューヨークの実家に帰ってきました。

オハイオの大学を卒業したものの職はなく、彼氏のオーウェンとも別れてしまって最悪の気持ちでいるのに、芸術家の母は仕事で忙しく娘の世話どころではないし、妹とは部屋の取り合いで早速もめてしまいます。

妹に言われて電球をとりに来たオーラが母に場所を聞くと、「白い棚にあるわ」と答えが返ってくるのですが、白い棚は壁一面にあって、どこに入っているのかわかりません。棚を一つ一つあけて探していると、母の日記が出てきました。

ちょうど今のオーラと同じ年頃の時の日記で、芸術家として頑張る決意などが書かれていました。

母にお金を借り、友人のパーティーに出かけると、YouTubeに自作の動画をあげている、ジェドという男性を紹介されます。オーラも動画制作をしているので、彼の作品は知っていました。

その時、オーラとは子どものころからの付き合いのシャルロットが現れます。

実はオーラは彼女とは、5年間、会うのを避けていたのですが、彼女は悪びれず、「新たな友だちとしてやり直そう」と言うのでした。

シャルロットにバーのホステスの仕事を紹介されたオーラは面接を受けに行き、昼間の受付係として採用されます。

家に戻ると、妹が合衆国で最高の賞を獲ったと母が嬉しそうに報告してきました。なんでも高校の「詩」の分野の最高賞を獲ったのだそうです。

妹は詩を朗読してくれました。オーラは「詩的すぎなくていい」と褒めたあと、「私が大学で書いた詩は処女喪失の話しばかり」と続け、「まだ処女なの?」と聞き、妹をキレさせてしまいます。

ジェドと映画を観に行く約束をしたので、母親の靴を借りようと白い棚をあさっていると、母が声をかけてきたので、ジェドの動画を観てもらいました。

「知的で軽妙でしょう?」と問うも、「軽妙だけど間抜けだわ」と返されてしまいます。

待ち合わせの時間に遅れてやってきたジェドはお金がまったくないと言うので、映画を観るのは中止。母と妹が大学の見学に出かけて数日家を開けているのをいいことに、オーラはジェドを家に誘いました。

ジェドにハムスターを見せようとすると、死んでおり、困ったオーラはハムスターをジップロックして冷蔵後に。

二人は別々のベッドで眠り、翌朝、早く起きたオーラは、寝ている彼を置いて、仕事に向かいました。

職場では副料理長のキースと話しをするようになりました。鎮痛剤が友人からいつでも手に入るという話しをすると彼は目を輝かせました。そして恋人と今うまく言っていないことを告白し、同棲しているのは金がないからだと愚痴るのでした。

家に戻るとジェドは母の部屋は少し寒いといい、妹の部屋で寝てもいいかと尋ねてくるので、オーラは承諾します。

母と妹が帰ってくる日が近づいてきました。ジェドは売り込みのため、まだ一週間ほどニューヨークに滞在するので、もう少し置いてくれといい、居座る気満々です。

さらにシャルロットが遊びに来て、三人で母のワインを勝手に飲んでしまいました。

帰ってきた母はあまりの惨状にオーラを叱りますが、逆ギレしたオーラは「卒業したばかりで、まだ若くて、必死で頑張ってるの!」と泣き叫び、母はあと一週間という約束でジェドを泊めることに同意します。

キースとデートする約束をしたオーラはシャルロットに服を選んでもらい出かけますが、時間になっても彼は現れず、約束をすっぽかされてしまいました。

洗濯物の色移りの件でついに堪忍袋の緒が切れた母がジェドを追い出すように言いつけます。

オーラがそのことを告げると、「出来ない約束はするもんじゃないね」と皮肉を言って、彼は出ていきました。

初めての給料はわずか176,76ドル。すっぽかしたことを謝りもしないキースのことも頭に来て、オーラは仕事をやめてしまいます!

踏んだり蹴ったりの毎日。オーラの夢が形となり、安息を覚える日は来るのでしょうか?

3.映画『タイニー・ファニチャー』の感想と評価

レナ・ダナムが監督、主演したHBO制作のテレビドラマ『GIRLS/ガールズ』(2012~)のシーズン1、第1話では、大学を出て2年になるハンナが両親から仕送りの打ち切りを言い渡されるシーンがあります。

アメリカの若者は、10代の頃から自立の準備をし、大学を出た頃にはすっかり自立しているのだろう、なとど勝手に思っていたので、この現実は衝撃的でした。

その背景には就職難や住宅難など様々な要因があるようです。

『タイニー・ファニチャー』の主人公・オーラも、母に頼るつもりで戻ってくるのですが、親の方は完全に子離れしています

とりあえず、迎え入れてはくれたものの、もうここはあなたの場所じゃないのよ、早くでていきなさいという無言のプレッシャーがかけられており、それでもここに居たいオーラとの一種の心理的攻防が密やかに展開しており、実に面白いです。

家の中を文字通りTシャツ一枚でうろうろするなど、カメラの前の無防備さに少々ドキドキしてしまう面もありますが、考えて見れば、普段、人間はカメラなんて意識していないし、家の中では家族以外、誰も見てないんだから、これは自然なこと

母親がパンスト一枚でカメラにお尻を向けているシーンもあります。

リアリティの追求というよりは、YouTube世代の、カメラに自分をさらけ出すことへのてらいのなさが現れていると言ってもいいでしょうか?

情けなかったり、滑稽だったり、軽率だったり、本当にダメダメな主人公なので、もしこれがレナ・ダナムでない誰かが演じていたり、レナ・ダナムでない誰かが脚本を書いていたら、ひどくイライラさせられたかもしれません。

物事を軽やかに相対化し、将来への夢と不安を抱えた若者の心理や現状をユーモラスに綴るレナ・ダナムの手腕は、コメディー映画界の超大物、ジャド・アパトーの目にとまり、『GIRLS/ガールズ』の誕生へとつながっていきます。

本作は『GIRLS/ガールズ』の原点ともいえる作品。この作品が日本で見られるとはなんて幸せなことでしょう! 

4.まとめ

母親を演じているのはレナ・ダナムの実際の母親で写真家のローリー・シモンズです。

妹もレナの実の妹でモデルとしても活動しているグレース・ダナムが演じています。

撮影に使われた家もレナの実際の家だそうで、本作はわずか200万円ほどの費用で制作されました。

他のキャラクターも皆、強烈な個性の持ち主ばかり。シャルロット役のジェマイマ・カークは、レナと同じ高校に通っていた友人で、予算がないために出演を懇願され引き受けたのだそうです。

シャルロットのキャラクターは『GIRLS/ガールズ』のジェッサに受け継がれます。

ジェド役のアレックス・カルポフスキも、『GIRLS/ガールズ』にレイ役で出演しており、俳優業のみならず、『レッド・フラッグ』(2012)などフィルム・メーカーとしても注目されています。

『タイニー・ファニチャー』はレナ・ダナムの成功を導いただけでなく、様々な点で多くの若い映像作家に影響を与えたと言われています。

12月16日より、下北沢トリウッドにて開催される「歳末青春大セール! ティーンムービー傑作選」の1本として公開されます。

上映時間など詳しくはトリウッドのHPでご確認を。

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