発明王として知られているトーマス・エジソンは、約1300もの発明を手にした人物だと言われています。実は、以外に知られてはいませんが、映画の原点を作ったのもエジソンでした。
今回は、意外と知られていないエジソンが製作した映画『Sandow』をご紹介します。
映画『Sandow』の作品情報
【公開】
1894年(アメリカ)
【製作】
トーマス・エジソン
【キャスト】
ユージン・サンドウ
【作品概要】
トーマス・エジソンの発明したキネトスコープによる作品。“近代ボディビルの父”と呼ばれるユージン・サンドウが、様々なポージングを行う姿が記録されています。
映画『Sandow』の感想と評価
この作品は、当時有名で人気もあった怪力男サンドウの筋肉美を撮影して、人々にお金を払わせて観せるものでした。
1分弱の短い作品ですが、怪力男サウドウの身体の記録といえる映像になっています。
一般的に広く“映画の父”として知られているのは、フランスのリュミエール兄弟。
彼らが発明したシネマトグラフが、1985年12月28日に、パリのグランカフェで一般有料の公開を行ったことによります。
一方でエジソンの場合は、「蓄音機による耳の記録ができるなら、眼の記録も可能ではないか」と考え、ジョージ・イーストマンの開発したセルロイドのフィルムの両側にパーフォレーション(フィルムの両サイドの穴)を付けることを提案。
1891年にキネトスコープとキネトグラフをエジソンは完成させます。
エジソンがこのプロジェクトに大きく動いた理由は、映像が絵画や写真以上に、身体性を記録することに秀でていることに早くから気付いていたからです。
エジソンの映画スタジオ「ブラック・マリア」(1893)
しかし、当時の撮影機と映写機は、非常に重く自由に持ち運ぶことは不可能だったため、エジソンは、他所の場所へ対象物を撮りに行くのではなく、撮影する対象物を撮影機と映写機の前に持ち込むことにしました。
今でいう映画撮影所を作ったのです。スタジオの名前は「ブラック・マリア」。ここに撮影する被写体を迎え入れて、いくつかの映像を撮影しました。
かつてエジソンが撮影したとされる映像は、アメリカ国立公文書記録管理局(US National Archives)が、YouTudeで一般公開しています。
まとめ
映画の三大要素は、「物語性」、「表現性」、「記録性」と言われていますが、エジソンの映像は、その中でも「記録性」に富んでいると言われています。
見せ物としての映像というだけでなく、記録することで複製を可能させ、複製された映像を違った場所で多発的に再生する仕組みを作りあげたのです。
これは後の、ハリウッド映画の大量消費を連想させます。
また、怪力男サンドウのスター・システムの利用は、マッチョな肉体派俳優のシルベスター・スタローンや、アーノルド・シュワルツェネッガーと、それほど大きく変わらないのではないでしょうか。
映画『Sandow』の他にも、いくつかのハリウッド映画に近い観点を見いだせる作品があります。
ぜひこれを機会に発明王エジソンの製作した映画を観るのはいかがでしょうか。