ふたりの交渉人が火花を散らす緊迫のサスペンス
『ミニミニ大作戦』(2003)『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019)などのF・ゲイリー・グレイ監督が1998年に製作したサスペンス・アクション。
「スター・ウォーズ」シリーズ、「アベンジャーズ」シリーズ、『パルプ・フィクション』(1994)のサミュエル・L・ジャクソンと『アメリカン・ビューティー』(1999)『ベイビー・ドライバー』(2017)のケビン・スペイシーが共演。
ふたりの人質交渉人が人質犯と彼に指名された交渉人という立場で対峙するハラハラドキドキのサスペンスの見どころを、ネタバレありでご紹介いたします。
映画『交渉人』の作品情報
【公開】
1999年(アメリカ映画)
【原題】
The Negotiator
【監督】
F・ゲイリー・グレイ
【脚本】
ジェームズ・デモナコ
【キャスト】
サミュエル・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー、デビッド・モース、ジョン・スペンサー、J・T・ウォルシュ、シオバン・ファロン、ポール・ジアマッティ、リジーナ・テイラー、ブルース・ビーティ、マイケル・カドリッツ、カルロス・ゴメス、ティム・ケルハー、ディーン・ノリス、ネストール・セラノ、ドグ・スピノザ、レナード・L・トーマス、スティーブン・リー、ポール・ギルフォイル
【作品概要】
監督は『ミニミニ大作戦』(2003)『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019)などのF・ゲイリー・グレイ。
共演は「スター・ウォーズ」シリーズ、「アベンジャーズ」シリーズ、『パルプ・フィクション』(1994)『ミスター・ガラス』(2019)のサミュエル・L・ジャクソンと、『アメリカン・ビューティー』(1999)『ビヨンド the シー 夢見るように歌えば』(2005)『ベイビー・ドライバー』(2017)のケビン・スペイシーが凄腕交渉人の頭脳戦を繰り広げます。
映画『交渉人』あらすじとネタバレ
シカゴ警察人質交渉人のダニー・ローマン警部補は、娘を人質に取った犯人と自らの命を賭して事件を解決に導きました。ニーバウム・トラビス署長の誕生日パーティーではテレビからダニーの活躍がニュースでも取り上げられ、署長や同僚からも称えられます。しかし、SWAT隊長のアダム・ベックからは仲間を危険にさらしたやり方を批判されました。
ダニーの相棒・ネイサンが大事な話があると言い、ダニーとネイサンだけでパーティーを抜け出します。
ネイサンは、障害基金のお金が200万ドル近く横領されていることを内偵者から聞いたと言うのです。それも自分たちの仲間が犯人で内務捜査局の人間もかかわっていると。さらにニーバウムの名前も挙がっていると言います。
誰が内偵者かは言えないが、彼とは警察学校で同期だったと言うネイサン。
基金の委員をするダニーは、会計監査では不正の証拠もなく何も聞かされていませんでした。
同僚がパーティーを抜け出した二人を探しにやってきて、またあとで話そうと話は途中に。
帰宅すると妻のカレンが今回のような身を賭して事件にあたることを心配し、もう無茶なことはしないと誓います。
ダニーのポケベルにネイサンから「11時半にフランクリン公園で」と連絡が入り、会いに出掛けてみると、車の中で射殺されたネイサンの姿を発見します。その直後に警察のパトカーがやってきました。
ネイサンもポケベルにダニーと同じ内容のメッセージが入り、一足先に公園に車を止めて待っていたのです。
ポケベルの宛名はダニーからでした。そしてネイサンと顔見知りの誰かが現れると、そいつは持っていた銃を発砲し、ポケベルと銃を目の前の池に投げ入れて逃走したのです。
ダニーは警察署でネイサンから聞いた障害基金の横領のこと、犯人たちに気づかれたからネイサンは殺されたんだとフロストに話します。
そこには、ネイサンから名前が挙がったニーバウムもいて、捜査局の人間が絡んでいると話しますが、しらを切ります。
ダニーはネイサンの葬儀に参列し、相棒の死を悼みました。泣き崩れたネイサンの妻・リンダを傍でカレンが支えます。
翌朝、ダニーの家に署長とフロスト、ニーバウムがやってきて、発見された凶器の銃が窃盗もので、それはダニーが発見した銃だったため、家宅捜査の令状が出たと言うのです。
身に覚えのない海外口座の明細書が見つかり、ダニーは「おれのじゃない ハメたな」と訴えますが、聞き入れてもらえません。
警察署の前ではすでに噂を聞きつけたマスコミがダニーを取り囲みます。同僚の仲間たちも白い目でダニーを見、署長からは銃とバッジを置いていくように停職処分を言い渡されます。
市行政ビルで会ったリンダの様子ががらりと変わり、敵意をむき出しに「絶対に許さない」などと非難されます。
地方検事からは、間違いなく有罪だが、残りの金の在りかと共犯者の名を言えば罪を軽くすると取り引きを持ちかけられます。
弁護士も取り引きに応じた方が良いと忠告し誰一人としてダニーの無実を信じていません。
付き添っていたカレンに車で待つように伝えるとダニーは、20階にある内務捜査局に押し入りニーバウムに真相を問い詰めます。
知らぬ存ぜぬを決め込むニーバウムは、部下に追い出すように言います。その部下と取っ組み合いになったダニーは銃を奪い、「答えるまでここにいてもらう」とその場にいたニーバウム、その助手のマギー、タレ込み屋のルーディーと後でやってきたダニーの同僚フロストを人質にとり立てこもります。
たちまち大勢の警官で20階から下を包囲されますが、爆発物と警察の戦略を熟知しているダニーは建物の構造や周りの様子を見ながら策を練っていきます。
署長はまず、立てこもった中の様子を探るため19階と21階にカメラとマイクを配置させ、ファーリーを交渉役に指名しました。
FBIのグレイとモランが連邦政府のビルは我々の管轄だと言って、交渉役として現われますが、ベックが我々がやると言って主導権を譲りませんでした。
ダニーは、配置されたカメラマイクをすべて取り除き、わざと接触経路を断ちます。
交渉役となったファーリーが20階に電話をかけると、ダニーは西地区の凄腕交渉人、クリス・セイビアンを20分でこさせることを要求し、セイビアン以外と話はしないと伝えます。
クリス・セイビアンは、自宅で機嫌を損ねた妻を説得するのに手を焼いていました。
セイビアンが向かう時間を延ばしてもらうためファーリーが電話をかけますが、かえってダニーに言い負かされ、ダニーは脅かすために天井に向けて銃を発砲しました。
ダニーを説得するのは不可能で突入するしかないと署長に言うベック。
ビルの周りには多くのマスコミも殺到し、ニュースで事件の様子が一部始終流れていました。
ダニーは電話先でベックや狙撃手のパラーモの様子を見抜くことを言い、無線で聞いている警官仲間たちに向けて、基金横領事件とネイサン殺しの真犯人を探すために立てこもっていることを伝え、こうする他になかったと話し始め、真犯人を突き止めるまでここを動かないと断言しました。
この無線はマスコミも聴取し、セイビアンも向かう車で聞いていました。
セイビアンを要求した時間はあと残り4分。その間にニーバウムを観察し問い詰めますが、白状しません。
ビルの前で車を降りたセイビアンは、さも時間に間に合ったように携帯でダニーに電話をかけました。
ダニーに仕事をしていない時は何をしているか尋ねられると、家で本を読んだり、古い西部劇映画を観ていると答えます。
ダニーは、セイビアンがどんな人物かを品定めするといった具合に西部劇の「シェーン」は良かったと話を続け、セイビアンは映画について話をしながら、周りの状況を瞬時に把握していきます。
ダニーはセイビアンの頭の回転の良さに納得すると、要求リストを提示しました。それは、①バッジを届けること。②死んだら警察署で葬儀をすること。③内偵者を捜し出すこと。④相棒殺しの真犯人を捜し出すことでした。
8時間以内にどちらも見つからなければ、1時間ごとに人質を1人殺すとも言い、最後に今すぐ直接セイビアンと話したいと言って電話を切りました。
セイビアンは、すぐさま防弾チョッキを着て、心理分析のトンレイから本気で無実だと思っていることを聞きます。
18階までは荷物用エレベーターで行き、内務捜査局へ通じている暖房用の蒸気管を交渉に使うと的確な指示を出してから、現場に向かいます。
映画『交渉人』感想と評価
本作はアクション映画を得意とするF・ゲイリー・グレイ監督が、1998年に製作したサスペンス・アクションです。
後に強盗アクションの『ミニミニ大作戦』(2003)、カーアクションの『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)、SFアクションの『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019)などを製作し、本作がF・ゲイリー・グレイ監督のアクション映画の原点と言えるでしょう。
冒頭から人質交渉人・ダニーが人質犯を交渉していく話術と事件解決までの緊迫感で引き込ませ、人質事件において、犯人と交渉して解決するダニーと、突入こそが最良の解決と思っているベックとで隔たりがあることを示唆します。
そして、殺人犯の汚名を晴らすことと相棒を死に追いやった真相を暴くために、ダニーは内務捜査局で人質を取って立てこもり、交渉人・セイビアンと対峙します。
大勢の警官、パトカー、ヘリが立てこもったビルを包囲し、壮大なスケールを映し出しますが、立てこもったフロアーの一室と警官の司令室を電話(無線)のやり取りの中で、一体誰が犯人なのか切羽詰まった心理戦で切迫感を煽っていきます。
本作の見どころは、数十年共に働いてきた仲間の信用が一夜にして揺らぎ、敵味方が入り乱れていく面白さです。
誰が共犯者で首謀者は誰なのか? それが今まで信頼し互いの命を守ってきた仲間の中にいるのを、2人の交渉人が暴いていきます。
セイビアンもまた、嘘に翻弄されながらも真相を突き止めていく姿も痛快です。
そして、数時間のうちに仲間が敵に、人質が味方に、他人が仲間と目まぐるしく変化していく人間関係の面白さとスリリングさを味わいます。
また、変わらない妻・カレンとの愛情があったからこそ、ここまでの執念が報われるのです。
まとめ
劇中に散りばめられた伏線が回収される度に事件の真相に繋がっていき、次の展開がどうなっていくのかというハラハラ感を誘います。
映画『シェーン』(1953)のラストで主人公が死んだか、死んでないのかという話題での伏線回収も見事です。
冒頭で西部劇が好きと言ったセイビアンが、ラストで西部劇の決闘のように黒幕を騙し討ちする痛快さはたまりません。
勇敢で頭脳明晰という共通しているふたりの交渉人という登場人物。この2人のキャラクターでもっとも重要な共通点は、人命救助をなにより優先できるという点です。
また、終始一貫して人命より犯人逮捕のための突入に強情さを見せたベックが、ラストで自分の過ちを認めるような表情がはじめて人間らしくて印象的でした。
ダニーを何としてでも殺そうとしていたのに、真相が明かされると手のひらを返す態度が可笑しみを含んでいました。