行方不明の女子高生をなぜ誰も探そうとしないのか!?
韓国映画で今最も注目を集める俳優、マ・ドンソクが今回扮するのは、元ボクシング・チャンピオンで女子校に体育教師として赴任した男。
学費を滞納している生徒たちに金を督促する役目を押しつけられる中、彼は、一人の少女の失踪とその少女を必死で探し出そうとしている少女の存在に気付きます。
しかし、大人たちは誰も真剣に少女を捜索しようとしません。警察さえも。一体、何故!?
マ・ドンソクの魅力が炸裂する映画『守護教師』をご紹介します!
映画『守護教師』の作品情報
【日本公開】
2019年公開(韓国映画)
【監督】
イム・ジンスン
【キャスト】
マ・ドンソク、キム・セロン、イ・サンヨプ、チン・ソンギュ、チャン・グァン
【作品概要】
マ・ドンソクが女子校に体育教師として赴任してきた元ボクシング・チャンピオンに扮し、失踪した友人を探す女子高生に『アジョシ』の名子役ぶりで注目を集めたキム・セロンが扮している。監督を務めるのはマ・ドンソクの長年の朋友イム・ジンスン。
映画『守護教師』あらすじとネタバレ
かつてボクシングのチャンピオンとして名をはせたギチョルは、先輩の指導の仕方に抗議した挙げ句、暴力沙汰をおこしたため、仕事をクビになってしまいます。
姉のはからいで、とある街の女子校に体育教師として赴任することになり、街にやってきた彼は、今は警官になっている教え子のドンスと再会します。
学校側は彼に学年主任の肩書を与えますが、実際のところ、それは学費を滞納している生徒から金をとりたてる役割で、皆がいやがる仕事を体よく押し付けられたのでした。
学費の支払いが遅れている生徒の中に、ユジンという少女がいました。彼女はギチョルがこの街にやってきた時、なにやら他の女子高生ともめていた少女でした。
もうひとり、ハン・スヨンという少女も学費を滞納していましたが、この生徒は長い間、学校にも出てきていない様子でした。
彼女のことを尋ねると、ユジンは彼女は家出したのではなく、失踪したのだと応えます。ユジンは一人で、尋ね人のチラシまで作り、彼女を探そうとしていました。
街は知事選の真っ最中。女子校の理事長、キム・キデが立候補していました。街の中心地では理事長が選挙演説を行っており、支援者から大きな声援が送られていました。
ギチョルは、そんな光景を横目にゲームセンターに入り、ぬいぐるみをゲットし大喜び。その様子を通りかかったユジンが呆れたように見ていました。
彼女は、今日もスヨンの行方を突き止めるため、一人で、スヨンが残した手がかりを頼りに歩き回っていました。
ようやくみつけた店に入っていくと、強面の男たちが彼女を取り囲みました。たまたま前を通りかかったギチョルが助け出しますが、ユジンは彼に心を許しません。
教師たちは皆、スヨンは家出したのだと取り合ってくれず、警察さえも、捜索願を受理してくれないのだと彼女は言うのです。
ギチョルはドンスに行方不明の少女について問い合わせます。ドンスは、今は選挙中でそれどころじゃないんですと応え、「それはおかしいだろ」とギチョルは問いただします。ドンスは家族から委任状が出ていないので受理できないのだと応えました。
スヨンの両親は亡くなっており、彼女は年老いた祖母と2人で暮らしていました。ギチョルは、スヨンの祖母を訪ね、委任状にハンコをもらいます。
ドンスは委任状をしぶしぶ受け取りました。捜索願が受理されたと聞いた別の刑事がドンスに「受理させるなと言っていただろ?」と詰め寄ってきましたが、「委任状が出されたものですから」とドンスは苦虫を潰したような顔で答えました。
ある日、向かいの校舎のトイレの窓から煙草を吸っている女子生徒の姿を目撃したギチョルは女子トイレに乗り込んでいきますが、生徒たちは素早く吸い殻をトイレに流して出ていってしまいます。
その時、偶然、ギチョルはトイレの個室にコンパクトなカメラが取り付けられていることに気づきます。
盗撮を目的としたカメラで、その内容にギチョルは顔をしかめますが、映像には取り付ける男の姿が映っていました。それは職員室でギチョルの隣に座っている美術教師のキムでした。
キムはこざっぱりした男前で、女子生徒たちに人気がありました。キムがユジンと一緒にいる姿をギチョルは最近よく目にしていました。
ギチョルはキムが他の教師と一緒に教材を運ぶため席を立った際に、立ち上げたままのパソコンを調べてみると、なんとハン・スヨンと連絡を取り合っていたことがわかります。
さらにユジンとも連絡をとっていました。胸騒ぎがしたギチョルがユジンに電話すると今まさにユジンはキムの運転する車に乗っているところでした。
スヨンがいなくなった日、キムはスヨンに連絡をとっていたんだとギチョルはユジンに告げました。「今、キムと一緒にいるのか?」とギチョルが尋ねるとユジンはそうだと答えました。
ギチョルは「行く先を連絡してくれ」と言い、自身も車に乗り込みました。
「誰からの電話?」とキムが聞いてきました。「母親からです」と答えるユジン。信号待ちをしていると、前方にパトカーが見えました。
パトカーに助けを求めようとドアノブに手をのばすと、突然キムが荒々しく手を伸ばしてきました。
「シートベルトをつけないとね」と彼は言い、ベルトをつけられたユジンは降りる機会を逸っし、パトカーは行ってしまいました。
「街に行くなら反対側では?」とユジンが尋ねると、「ぼくのうちに用事があるんだ、少し寄らせてくれ」と彼は答えました。ユジンは「先生の家」とラインをギチョルに送りました。
キムが身につけている蝶のアクセサリーを見て、「スヨンからプレゼントされたんですか?」と尋ねると彼はそうだと答えました。スヨンがいなくなった日にスヨンに会ったのかと尋ねると彼は突然怒り出してユジンを殴りつけました。
ユジンが意識を取り戻すと、口はガムテープで塞がれ、手足も縛られていました。キムが近づいてきた時、ドアを拳で破り、ギチョルが乗り込んできました。
ギチョルに殴られ、震え上がるキム。「すみません。通報しないでください。正直に話します」
彼が言うにはスヨンから迎えにきてくれと連絡を受け、車で迎えに行ったのだそうです。しかし、彼女の携帯が鳴り、彼女は車を降りて、相手と話しをしていましたが、電話を切ると、「これから迎えが来るので先生は先に帰ってください」と言い、一人残ったそうです。
一旦、車を発車させましたが、気になって戻ってみると、彼女の姿はもうなく、トイレに携帯だけが落ちていました、彼はその携帯を見せました。それはひどく割れていました。
「それ以来、スヨンを見ていません」というキムにギチョルはなぜ、警察に連絡しなかったと問いただしました。「着任したばかりだったから、大事にしたくなかった。本当に好きだったから優しくしようと・・・」と言いわけを始めるキム。
その時、警察がやってきました。「通報しないでと言ったのに」と慌てるキムに「私が通報しました」とユジンは強い口調で告げ、キムは逮捕されました。
ギチョルはドンスに「スヨンの最後の通話履歴を調べてくれ」と言って、携帯を手渡しました。
その頃、ユジンが訪ねていった店では、社長が警察から連絡を受けていました。「捜索願いを受理したばかりか証拠の品まで持ってこられた」と刑事は言い、社長はあおざめました。
社長があわてて訪ねた相手は理事長のキム・キデでした。理事長は怒り出し、社長を何度も殴りつけました。
翌日、ギチョルは理事長に呼び出され、クビを言い渡されます。この職につかせるため、姉がお金を作って、学校に寄付金を払ってくれていたことがわかりました。それなのにクビになり、力を落とすギチョルのもとにドンスから連絡が入りました。
スヨンの水死体が発見されたのです。ギチョルはドンスにスヨンの最後の通話記録は調べられたかと尋ねると、証拠品が鑑識に回っていないことがわかります。
警察にも共犯者がいるとふんだドンスは放置されていたスヨンの携帯を盗み出し、知り合いの技術者に復元を頼みます。結果、例の店の社長とイスルという女性との通話記録が残されていました。
再び、店を尋ねたギチョルは、イスルという女性従業員を捕まえて、何があったのか、教えてほしいと頼みます。女性は最初は知らないと証言を拒否していましたが、スヨンが死んだときかされ、話し始めました。
学費をかせぐために、店で働いていたスヨンがいなくなった日は、店に理事長と選挙対策委員長が来ていたそうです。
スヨンが祖母の具合が悪いという連絡を受け動揺していた時、理事長が通りかかりました。「助けてください。理事長」とスヨンは言い、祖母が具合が悪いのだと告げますが、理事長は、自分の高校の生徒が店に雇われていることに驚き、社長を叱りつけます。
その間、選挙対策委員長がスヨンに手を出し、それに抵抗してスヨンは逃げ出しました。
自分の保身のために理事長は彼女を追うよう命じ、イスルが彼女に電話をしたのだそうです。
その時、店の屈強な男たちがやってきました。彼らは武器を振り上げ、ギチョルに襲いかかりましたが、ギチョルは次々に男たちを倒していきました。
ギチョルは最後に残った社長に「お前が首謀者か!?」と怒鳴りつけましたが、「俺は殺していない」と社長は答えました。
何があったのか白状するよう迫ると社長は話し出しました。スヨンを追いかけていったものの彼女の姿はなく、公衆トイレに隠れているのかと中を覗き、恐ろしいものを見たのだそうです。
映画『守護教師』の感想と評価
数々の作品で名バイプレーヤーとして活躍してきたマ・ドンソクが一躍、脚光を浴びることとなったのが2016年の作品『新感染 ファイナル・エクスプレス』(ヨン・サンホ)です。
筋肉むきむきのがっちりした体形で、襲いかかるゾンビを次々となぎ倒し人々を守り続けるその姿に、世界中の人々が賞賛の声を上げました。
さらに『犯罪都市』(2017/カン・ユンソン)では強面の破天荒な刑事を演じ、凶悪な犯罪者と熾烈な闘いを繰り広げ21世紀のアクションスターとしての地位を確立しました。
一方で、“マブリー”という相性で親しまれ、人の良い愛すべきキヤラクターという側面も持ち合わせています。
そんな彼の作品は「マ・ドンソク映画」ともいうべき一つのジャンルを確立しているといって良いでしょう。
本作よりも日本で先に公開された『無双の鉄拳』(2018/キム・ミンホ)は、うまい話に騙されやすい恐妻家のマ・ドンソクが、妻を誘拐され、取り戻すために身一つで乗り込んでいくという作品でした。
かつては暗黒社会に生きた強面であったらしいという話をそっと忍ばせなから、彼が見せる豪腕ぶりが実に痛快でした。
本作も同様に、マ・ドンソクの真面目な人の良さと、圧倒的な強さという2つの持ち味のバリエーションとなっています。
一人で行方不明の友人を探そうとする少女に寄り添い、悪党から武器やナイフで襲われてもそれを体で受け止め、そんなものよりも数倍重いパンチをうち込むマ・ドンソクの姿に魅せられることでしょう。
しかし、作り方を一つ間違うと、どうせマ・ドンソクが駆けつけてくれて助けてくれるんでしょ、といったふうに緊張感が損なわれる可能性があります。
実際、ヒロインである女子高生の危機にはマ・ドンソクが必ずたどり着き、助けてくれるのだろうという安心感がどこかに漂っています。
ただ、この作品、そうしたお約束を踏まえつつも非常に緊張感のあるものに仕上がっています。
観客の思い込みを上手に使うミスリードや、ミステリーとしての物語の組み立てがともかく巧みなのです。
アクション映画の名作『ダイ・ハード』(1988/ジョン・マクティアナン)がアクションシーンのド派手さだけではなく、実によく出来たシナリオのもとに作られていたことが思い出されます。
さらに夜道を歩く少女に近づく車のシーンや、少女が乗るバスを見送る不審者のシーンなどは見事なスリラー演出で、実に恐ろしいと言わずにはいられません。
一人の少女の失踪をなぜ、誰も真剣に取り扱おうとしないのか!?
様々な登場人物とその複雑な関係も見どころの一つとなっています。
丁寧に作られた良質の「マ・ドンソク映画」として大いに楽しめる作品になっています。
まとめ
失踪した友人を必死で探す少女ユジンを演じているのはキム・セロンです。ウォンビン主演のアクション映画『アジョシ』の小さな女の子といえば、ご存知の方も多いでしょう。
『アジョシ』では第8回大韓民国映画大賞新人女優賞を史上最年少で受賞。天才子役として名を馳せました。
2014年の『私の少女』(チョン・ジュリ)では、父親と義理の祖母に虐待される少女を演じ、複雑な役柄を繊細に演じました。
本作でもその成長ぶりは顕著で、思春期の女子高生の脆さとたくましさを絶妙に演じきっています。
美術教師を演じたイ・サンヨプは、ドラマ、バラエティでも活躍している人気俳優で、映画は本作が5年振りの出演となります。
また、理事長を演じるチャン・グァンは、最近でも『神と共に 第一章:罪と罰』(2016/キム・ヨンファ)、『安市城 グレート・バトル』(2018/キム・グァンシク)、『ザ・ネゴシエーション』(2018/イ・ジョンソク)など話題作に多数出演。名バイプレーヤーとして韓国映画になくてはならない存在です。
怪しい飲み屋の社長に扮したチン・ソンギュは、マ・ドンソク主演の『犯罪都市』で凶悪犯のひとりを演じ、大ブレイク。2017年、青龍映画祭で助演男優賞を受賞しています。
錚々たる顔ぶれを迎えて監督を務めたのはイム・ジンスン。イム・ジンスンとマ・ドンソクは古くからの友人で、本作を作るのに5年以上を費やし、ついに映画化を実現したという熱いエピソードがあるそうです!
さて、マ・ドンソクですが、マーベル新作映画『エターナルズ』(Eternals)に出演が決まりハリウッドデビューが決定!
また、マ・ドンソク主演で韓国で大ヒットした『悪人伝』(2019/英語タイトル;The Gangster,The Cop,The Devi)がシルヴェスター・スタローンの手でハリウッドリメイクされることが決定し、マ・ドンソクも出演することが決まっています。
どんどん活躍の舞台を広げるマ・ドンソクからますます目が離せません。