『めまい』(1958)や『鳥』(1963)などで知られるサスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコック監督。
往年の大女優イングリッド・バーグマンと名優グレゴリー・ペック共演の映画『白い恐怖』(1945)。
シュールレアリスムのアーティストで知られるサルバドール・ダリも協力した本作をご紹介します。
映画『白い恐怖』の作品情報
【公開】
1945年(日本公開1951年:アメリカ映画)
【原題】
Spellbound
【監督】
アルフレッド・ヒッチコック
【キャスト】
イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、ドナルド・カーティス、ロンダ・フレミング、ジョン・エメリー、レオ・G・キャロル、ノーマン・ロイド、ポール・ハーベイ、アースキン・サンフォード、ジャネット・スコット、ビクター・キリアン、ウォーレス・フォード、ビル・グッドウィン、ハリー・ブラウン、アート・ベイカー、レジス・トゥーミイ、マイケル・チェホフ
【作品概要】
とある精神病院、新しく病院長に就任したエドワーズ博士は白地に縞がある模様を見ると発作を起こす病癖を持っていました。
実はエドワーズ博士とは別人とは発覚した彼の正体はいったい誰なのか、勤務医のコンスタンスが謎を解くべく奔走します。
原題の『Spellbound』はうっとりする、恍惚とするの意。記憶喪失を取り扱ったサスペンスで、白黒映像が不気味で不穏な空気を煽ります。
映画『白い恐怖』のあらすじとネタバレ
舞台はアメリカのバーモント州にある精神病院。所長のマーチソンが辞め、新しくエドワーズ博士という人物が後任することになりました。
恋愛に興味がないと評判の女医コンスタンスは、歓迎会でエドワーズ博士を見た瞬間恋に落ちてしまいます。
しかしコンスタンスが病院内に作るプールの説明を始めたところ、白地のテーブルクロスに書かれた線を見たエドワーズは不機嫌になってしまいます。
翌日、父親を殺したと思い込んでいる患者ガームズを診療した後、コンスタンスはエドワーズに散歩に誘われました。
その日の夜、エドワーズが書いたサイン入りの本を読んだコンスタンスは所長室を訪ねます。
互いに惹かれていることが分かり抱き合う2人でしたが、コンスタンスのガウンにあった縞模様を見たエドワーズに発作が起きてしまいます。
その直後、ガームズが自殺未遂を起こしたという知らせが届きます。
エドワーズも錯乱状態になってしまいコンスタンスは介抱するのですが、彼が彼女に渡したサインと本のサインが違うことに気がつきます。
映画『白い恐怖』の感想と評価
記憶喪失を取り扱った先の読めないサスペンス映画ですが、恋愛要素が多いところも本作『白い恐怖』の特徴です。
恋愛に奥手だった美人女医が恋に落ち、相手の男性の無実を晴らそうと周りの反対と心配を押し切って奮闘。
奥手で仕事にしか興味がなかった女性が恋によって、時に盲目的だととられるような行動をする、絶世の美女イングリッド・バーグマンが演じることによってコンスタンスの動向に説得力が増しています。
本作品『白い恐怖』の見どころはJ.Bが見た奇妙な夢のシーン。
巨大な眼球がこちらを見つめるカーテン、時空も方向もわからないところに佇む1人の男…シュルレアリスムの代表的な作家サルバドール・ダリが協力したシーンは、一気に彼の幻想的な世界へ私たちを引きずり込みます。
奇妙な病癖から始まり、少しずつ解けていく謎は最後の最後まで先が読めずハラハラさせられっぱなし。
フロイトの夢分析も知的好奇心を刺激させられます。
まとめ
代表作『鳥』『めまい』『サイコ』誕生前の、ヒッチコックのアメリカ初期時代に作られた『白い恐怖』。
イングリッド・バーグマンの優雅で知的な美しさ、記憶喪失と罪責コンプレックスを抱える謎の男を演じたグレゴリー・ペックの怪しい魅力、ダリのイメージが合わさった美しいサスペンス映画です。
時折はさまれる印象的なカットは今でも新鮮に感じられる斬新なものばかり。
カラー映画が主流の現在ですが、白黒映像ならではの恐怖と不穏さの演出をぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。