すべては島のため!?
“ノイズ”を排除しようとした者たちの結末は?
筒井哲也のコミック『ノイズ【noise】』を、藤原竜也と松山ケンイチの共演で、廣木隆一監督が実写映画化。
猪狩島で育った泉圭太は、島復興のために黒イチジクの栽培に力をいれていました。島の住民たちも圭太に期待し、島の将来を託しています。
しかし、島に突如やってきた一人の男によって、平和な日常が一変。元受刑者であるその男を、圭太と幼なじみの純・真一郎の3人は誤って殺してしまいます。
この島を、島の人達を守るためにと、3人は殺人の隠蔽に奔走することに。果たして平穏な島に生じた“ノイズ”の排除は成功するのか。映画『ノイズ』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ノイズ』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
筒井哲也
【監督】
廣木隆一
【キャスト】
藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、伊藤歩、渡辺大知、渡辺大知、酒向芳、迫田孝也、鶴田真由、波岡一喜、菜葉菜、寺島進、余貴美子、柄本明、永瀬正敏、大石吾朗、諏訪太朗、飯島莉央、丸山真亜弥
【作品概要】
2017年から2020年まで「グランドジャンプ」で連載された筒井哲也のサスペンスコミック『ノイズ【noise】』を実写映画化。監督は『ブァイヴレータ』の廣木隆一。
事件を必死に隠蔽しようとともがく主人公と幼なじみの3人組を、藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介が熱演。演技派俳優たちの迫真の演技バトルに最後まで目が離せません。
また主人公の妻役を黒木華、島の町長役を余貴美子、刑事役を永瀬正敏が演じるほか、渡辺大知、柄本明など一癖も二癖もあるスリリングな演技を見せてくれます。
映画『ノイズ』のあらすじとネタバレ
猪狩島は、住民がみな顔見知りというほどの小さな島です。年々と過疎化は進み、財政は厳しいものとなっていました。そんな猪狩島の新しい産業として注目を集めたのが「黒イチジク」です。栽培をしているのは、この島で育って35年の泉圭太(藤原竜也)です。
圭太は幼なじみだった加奈(黒木華)と結婚し、現在5歳になる娘・恵里奈(飯島莉央)との3人家族。圭太が運営する「いずみ農園」で育てられた黒イチジクは、全国ニュースにも取り挙げられるほど注目を浴びていました。
島の町長・庄司華江(余貴美子)は圭太の黒イチジクによって、地方創生推進寄付金・5憶円の申請に乗り出します。役場に病院、学校の新設に向けて、島の未来が圭太にかかっていました。
圭太の親友・田辺純(松山ケンイチ)は、普段は猟師として害獣駆除をしていますが、収穫時には農園の手伝いに顔を出してくれます。
ある日、圭太と純は、黒イチジクの無人販売所で不審な男に遭遇。金も払わず黒イチジクにかじりつく男に、観光客と思った純が注意するも、その男は鼻で笑いふらふらと立ち去りました。
その頃、島では庄吉じいさん(柄本明)の車が猪と衝突。駐在員の岡崎正(寺島進)と守屋真一郎(神木隆之介)が事故の対応にあたっていました。ベテラン・岡崎の判断で事故は本島に報告はせず、猪は純に片付けてもらうことにしました。
岡崎は今日で任務を終え、本島へ戻ることに。その岡崎の代わり、今日から駐在員として島に勤務することになった真一郎は、島の出身者で圭太たちの後輩にあたります。警察官となって、大好きなこの島に戻ってくることを彼は夢見ていました。
岡崎は、そんな真一郎に「ここでの警察官の役目は、島の人たちを守ること。時には忖度し、見ないふりも大切だ。すべからく、“かさぶた”になるべし」とアドバイスします。
やがて真一郎のもとに本島の警察から、元受刑者の男・小御坂睦雄(渡辺大知)が行方不明になっていると連絡が入ります。小御坂は少女の強姦殺人で服役していた危険人物とのこと。
真一郎からそのことを聞いた圭太と純は、無人販売所で見かけた男だと確信。家に戻ると、圭太の娘・恵里奈が姿を消していました。必死で捜索する圭太と純と真一郎。
農園のハウスの中で、小御坂を発見します。問い詰めても、薄気味悪いことばかりつぶやく小御坂。揉み合いになった圭太は、彼を突き飛ばします。
石に頭をぶつけ倒れた小御坂は、当たりどころが悪く絶命。「なぁ、正当防衛だよな」と動揺する圭太。「こんなやつのために、島の大事な時に圭太にいなくなってもらっては困るんだ」と純は悔しがります。
真一郎は岡崎の言葉を思い出していました。「島の人たちの“かさぶた”に……」そして彼は、つぶやきました。「これ、全部なかったことにしましょう」と。
圭太と純、加奈の両親は3人が幼い頃、嵐の夜に船で遭難。一晩のうちにそれぞれの両親を亡くしてしまった3人は、島民たちに育てられてきたおかげで今日があります。黒イチジクの栽培に成功し名産品にすることは、島のみんなへの恩返しになるのです。
なお圭太の娘・恵里奈は、近所へ遊びに行っていただけでした。偶然とはいえ、殺人は殺人。3人には、小御坂の死体を隠し通すしか道はありませんでした。
その頃、本島の警察も小御坂の捜索に乗り出していました。出所後、小御坂の仕事先を世話していた保護司・鈴木(諏訪太郎)から捜索願いが出ていたからです。
そして、鈴木が小御坂に世話しようと思っていた就職先こそが「いずみ農園」でした。島の住民を増やそうと、農園では若い働き手を募集していたのです。
ほどなくして島では、車中に遺された鈴木の他殺体が発見されます。犯人は小御坂で間違いありません。刑事・畠山(永瀬正敏)は島で目撃情報を集めようとしますが、住民は口を揃えたかのように「知らない」と答えます。
閉鎖的なこの島で、畠山たち本島の警察はよそ者扱いです。しかし、それだけでは片付けられない違和感に、畠山は「この島はおかしい。何か隠しているようだ」と口にします。
映画『ノイズ』の感想と評価
藤原竜也・松山ケンイチ・神木隆之介の“演技バトル”
大ヒットを記録した実写映画『デスノート』(2006)から15年。死神との邂逅を機に正義の執行者となろうとする主人公・夜神月と、月に立ちはだかる「世界一の名探偵」Lをそれぞれ演じた藤原竜也と松山ケンイチが、『ノイズ』では幼なじみの共犯者を演じます。
物語の舞台は、未来が開けつつあった平穏な孤島・猪狩島。この島に、平穏を掻き乱す凶悪犯=“ノイズ”が来訪したことから、島の日常が崩壊へと向かっていきます。
圭太と幼なじみの純、真一郎は、島にやってきた凶悪犯を誤って殺してしまいます。事件をなかったことにしようと死体を隠すことにした3人。警察の捜査網が3人を追い詰めていきます。
思いもよらない結末へと、ノンストップで駆け落ちていく感覚と、すべてを知った後の何とも言えない薄気味悪さが見どころです。
また、主人公の圭太役・藤原竜也、幼なじみの純役・松山ケンイチ、後輩で警官の真一郎役・神木隆之介の3人の、ひりひりする演技バトルも見どころのひとつと言えます。
犯行を隠そうと幼なじみ3人が協力するも、圭太の平然と嘘を吐ける一面を知り疑心暗鬼になったり、純の暴走に手を焼いたり、罪の重さに苦しむ真一郎が早まってしまったりと、その関係性はとめどなく狂っていきます。
死体の後始末がもたつき、突発的でその場しのぎの行動のお粗末さに、観ている方も「どうすんだよ!」と感情移入してしまいます。
それは、3人の幼なじみの演技が非常に自然でリアリティがあったからでしょう。中でも駐在所の就任初日に、先輩二人の犯罪に巻き込まれ翻弄される真一郎を演じた神木隆之介の哀愁の演技には、せつなさがこみ上げます。
3人だけじゃない!実力派キャスト陣の演技が光る
警察がもうすぐそこまで来ているというクライマックスの場面では、圭太と純が口論になりながらも、最後は自分が罪を被ると言い合いになります。
藤原竜也と松山ケンイチの芝居を長回しで映し出した同場面は、最も過酷で緊迫した見ごたえ十分なシーンになっています。
また映画『ノイズ』の面白い点として、圭太たちの犯罪に加担していく島の住民たちの滑稽さがあります。
表と裏の二面性を持つ庄司町長は、死体を前にしても寄付金のことしか頭にない腹黒町長でした。純を罵り、平気で「罪を被れ」と迫る姿は悪魔そのものです。
「町長なら島のために協力してくれるはず」と彼女に死体の在りかを報告していた庄吉じいさんも、町長の思わぬ裏切りに激怒し襲いかかります。この二人の乱闘シーンはコミカルにさえ感じます。演じた余貴美子と柄本明の怪演に魅せられます。
そして、島の“ノイズ”となった元受刑者の小御坂。演じたのは渡辺大知です。殺されても仕方ないと思わせてしまう気持ち悪さを見事に演じています。彼の演技の力もあるからこそ、観客は圭太の味方をしてしまうのです。
小御坂を追って島に入る刑事・畠山は、鋭い洞察力で圭太たちを追いつめて行きますが、島の住民たちが圭太をかばい「よそ者は、島から出て行け」と最後まで悪者扱いされます。畠山役の永瀬正敏の演技が、物語に緊張感を与えます。
実力派俳優たちの熾烈な演技合戦で、最後の最後まで分からない事件の真相。見事に騙されます。
まとめ
「殺した。埋めた。バレたら終わり」……狂気が暴走する新感覚サスペンス『ノイズ』を紹介しました。
閉鎖的な島で暮らす住民たちの歪んだ正義と、隠されてきた裏の顔、蓄積された嫉妬心が耳障りな“ノイズ”になって溢れ出す。
よーく耳を澄ませば、あなたのすぐ近くにも狂気の“ノイズ”が鳴っているかもしれません。薄気味悪さマックス!映画『ノイズ』をぜひご覧ください。