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『朽ちないサクラ』映画原作のネタバレあらすじと結末の評価解説。杉咲花の演じる公安警察との戦いとは!?

  • Writer :
  • 星野しげみ

柚月裕子原作小説『朽ちないサクラ』が待望の映画化!

大藪春彦賞を受賞し、「孤狼の血」シリーズなどの人気小説の著者柚月裕子の『朽ちないサクラ』」(徳間文庫刊)が、このたび待望の映画化となりました。

映画『朽ちないサクラ』の公開は2024年6月21日(金)です!


柚月裕子著:『朽ちないサクラ』徳間文庫

本来は捜査する立場にない県警広報職員の森口泉が、親友の変死事件の謎を独自に調査し、事件の真相と次第に浮上する公安警察の存在に迫っていく異色の警察小説です。

映画化されるにあたり、主役の森口泉を『市子』(2023)『法廷遊戯』(2023)と主演作が続く杉咲花が演じます。

映画の公開に先駆けて、原作小説『朽ちないサクラ』をネタバレありでご紹介します。

小説『朽ちないサクラ』の主な登場人物

【森口泉】
米崎県警広報公聴課職員。警察の不祥事と親友の死が関係があるのではと調査を始める。

【磯川俊一】
平井中央署生活安全課勤務の警察官。泉とは警察学校の研修で知り合う。

【津村千佳】
米崎新聞社の県警担当記者。泉の高校時代からの親友。ある日川で死体となって発見される。

【富樫隆幸】
米崎県警広報公聴課課長。泉の上司。

【梶山浩介】
米崎県警捜査一課長。

小説『朽ちないサクラ』のあらすじとネタバレ

森口泉、29歳。米崎県警広報広聴課の警察職員として勤務しています。

その米崎県警広報広聴課では、ある警察の不祥事に対する市民からの苦情対応に追われていました。発端は長岡愛梨という大学生のストーカー被害の相談です。

愛梨と両親は安西という男に付きまとわれていることを、平井中央警察署の生活安全課に相談します。が、担当した辺見は安西が犯人である確証がないことを理由に、被害届を受理しません。

愛梨の両親が弁護士を立てると言い出すことでようやく辺見は対応しますが、受理は一週間遅れました。その理由は、人員が出払っているからだとしていましたが、本当は所轄職員で行く慰安旅行を控えていたからでした。

一週間後、被害届は受理されますが、その二日後に愛梨が安西によって殺害されました。警察が初動を間違えなければ助かった命かもしれないので、世間の怒りは警察に向きます。

さらに慰安旅行の件を地元の米崎新聞がスクープとして載せ、世間は警察の怠慢を激しく非難することとなりました。

市民からの苦情対応に追われる警察所内では、なぜ米崎新聞だけが慰安旅行の件を報道できたのか、警察内部の誰かが情報を漏らしたのではないかという疑惑がわいていました。

泉には情報元の心当たりがありました。それは高校時代からの親友で、米崎新聞で県警を担当している津村千佳でした。

泉は千佳と時々会っているのですが、先日会った時に、警察学校時代の同期で生活安全課で働く磯川から慰安旅行について聞かされていて、うっかりその話を千佳にしてしまったのです。

千佳とは、絶対に他の人に話さないと堅く約束をしていましたが、こうして記事になっていることから、泉は千佳が約束を破ったのではないかと疑いました。

千佳に会って問いただすと、千佳は自分ではないと否定。泉も彼女のことを信じようとします。しかし、千佳は自分の上司・兵藤と不倫関係にあり、兵藤のためであれば泉との約束を破ることも十分考えられました。

気まずい雰囲気になる中、千佳は「この件には裏がある、泉の信用を取り戻すために調べてみる」と言い、その日2人は別れました。

慰安旅行報道から一週間がたった頃、千佳の死体が川で見つかります。

事故か自殺に見せかけていますが、肺の中の水の状況から別の場所で殺害されたことが分かっており、警察の疑いは泉にも向きます。

捜査一課長の梶山から泉は事情聴取をされることになりました。上司の富樫も同席し、泉は千佳とのこれまでのやり取りを話しました。

千佳と関わりの深い泉を容疑者から外すことは出来ませんが、富樫は事情を聞く代わりに捜査情報などを泉に提供すると約束しました。

一方、自分が特ダネの情報元になってしまったのではと考える磯川は、泉に騒動に巻き込んでしまったことを謝罪します。

2人は事件について情報を共有し、改めて米崎新聞の情報元について独自に調査を始めました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『朽ちないサクラ』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『朽ちないサクラ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

泉と磯川はまず千佳がなくなるまでの一週間の行動を探り、小先市へ出向いたことをつかみます。小先市で誰と会っていたのか。2人は小先市に住んでいる人はいないか調査します。

やがて、以前に磯川と同じ生活安全課の臨時職員として働いていた百瀬美咲が、小先市出身だとわかりました。

百瀬は生活安全課の雇用契約を更新出来たはずなのに、なぜか途中でやめてしまっていました。不審に思った磯川が調べをすすめると、百瀬が上司の杉林課長と不倫をしていたことわかります。

契約を更新するかしないかの決定権を握る杉林は、自分の立場を利用して不倫関係だった百瀬との縁を切ったのです。

磯川から話を聞いた泉は、真実を確かめるために磯川と一緒に百瀬の自宅へ行きました。しかし、時すでに遅く、百瀬は自殺していました。

生活安全課の元職員だった百瀬は、慰安旅行の日程も知っていました。杉林に捨てられた百瀬が彼に対する恨みから、米崎新聞のデスクの兵藤に情報を漏らしたのです。

百瀬は本当に自殺なのか? 米崎新聞のスクープに関係している人間が同じ時期に2人も死亡していることに、泉は疑問を持ちました。

泉は磯川とも相談し、2人で調べた内容を、もと公安刑事だった広報広聴課の課長・富樫に話します。

これまでの情報をつなぐと、情報漏洩をしたと泉に疑われた千佳が、自分の濡れ衣をはらすために情報を漏らした犯人と思われる百瀬に接触を試みようとします。2人の接触を避けたい人物が2人を殺害したのではないかと思われました。

富樫は、泉の情報に返すように、女子大生ストーカー事件の犯人である安西がカルト教団・ソノフの関係者であったことを明かしました。

一方、女子大学生ストーカー事件の相談を遅れて受理した辺見は、突然生活安全課を退職しました。

あの事件以来、様子がおかしかった辺見が気になり、辺見がソノフから何らかの圧力を受けているのではないかと思った磯川は、事情を聞こうと辺見を訪ねます。

ですが、辺見は「警察官だから、市民を守る義務があが、そうは思ってもどうしようもないこともある」と言い、「もう、何を信じればいいのかわからない」「世の中には、知らない方がいいこともある」と呟いたきり、何も語りません。

磯川から聞いた辺見の話も、泉は富樫に言います。捜査員が自分の職務に失望するときは、警察組織の在り方に疑問や不満を抱いたときだ、と富樫は言いました。

泉と一緒に話を聞いていた梶山が、「サクラか」とつぶやきます。サクラは公安警察の暗号名です。

辺見のもらしたつぶやきから、一連の事件で公安が関連し、辺見に圧力をかけていたのは、ソノフではなく公安だったということがわかりました。

ソノフとしては、ストーカー事件の犯人の安西がソノフの信者であることがわかると教団が注目を浴びるから、安西が信者であることを世間に知られたくなかったのでしょう。

辺見を苦しめているのが公安だったとしても、スクープのネタ元を追っていた千佳を、ソノフが殺害した可能性が高いと考えられました。百瀬も自殺と見せかけて殺害された可能性があります。

やがて公安が極秘情報として保持しているカルト教団ソノフの信者のリストを、公安出身の富樫は手に入れました。このリストの中には安西の名前もありました。

そのリストの中の情報をもとに警察は、津村千佳、百瀬の死に関する重要な情報を持っていると思われる人物を割り出しました。それはコンビニバイト店員の浅羽弘毅でした。

調べをすすめ、捜査員が浅羽の行動確認をしているとき、浅羽の乗る車が事故をおこし、浅羽は死んでしまいます。

浅羽の所持するパソコンから千佳の行動を監視している証拠が見つかり、ほぼクロと断定できたのですが、泉はその記録の日付けから浅羽は犯人にされたのではと思います。

誰かが浅羽に千佳と百瀬殺害の濡れ衣を着せようとしているのでは? そう考えると浅羽の事故死も怪しくなります。

泉はこれまでの一連の出来事を思い起こし、自分と殺された千佳が会っていたことを知っている数少ない人物のうちの一人、公安出身の富樫が黒幕だと気が付きました。

一連の事件が終わってみれば、千佳と百瀬は死に、辺見は辞職。女性それぞれの不倫相手だった杉林課長と兵藤は左遷となりました。それぞれの遺族たちはこれからも深い悲しみを抱いて生きていかねばなりません。

そんななか、浅羽の逮捕劇によって公安警察だけはその活躍を世間に認められて褒め称えられていました。

実は、女子大生ストーカー事件の犯人・安西と事故死した浅羽は、カルト教団信者であり、公安のスパイだったのです。

泉は富樫を呼び出し、これまでの事件においての泉の見解を話しました。事件の真相に辿り着けそうになった千佳と百瀬を殺すように浅羽に命令をだし、2人を殺した浅羽も口封じのため、公安に殺されたと。

泉が考え抜いてやっとたどり着いた推論を、富樫は真面目に取り扱おうとはしません。逆に既に終わった事件を警察や検察が蒸す返すと思うのか、と問われます。

理不尽なことがおこなわれる口惜しさに泉は震え、「公安を許せない」とつぶやきますが、富樫に「公安は職務を遂行するために、誠意努力するだけだ」と言われました。

警察という職務の上下関係の歪さ、理不尽さをいやというほど思い知った泉ですが、このまま何事もなかったかのような日常を送ることはもうできません。

理不尽さを真っ向から受け止めて、自分に何ができるか探し出そうと思い、泉は警察職員を退職し、警察官になる決意を固めます。

小説『朽ちないサクラ』の感想と評価

小説の主人公、森口泉は警察官ではなく、警察広報課に勤務する一般職員でした。それが警察内部の情報漏洩の鍵を握る親友の死に伴い、自ら事件の調査に乗り出します。

事件の真相はあくまで泉の推論ですが、キーマンは公安警察出身の上司・富樫。ラストでの泉と富樫との対峙場面では、泉の意志と正義感の強さを思い知らされました。

タイトルのサクラは、公安警察の暗号名です公安警察は「国家を守る」という大義の元、諜報活動などで、極右、極左、カルトの捜査に当たる秘匿性の高い特殊な警察組織なのです。

その特殊性もあり、職務遂行のためなら、裏から手を回そうと敵の中にスパイを潜り込まそうと、何でもお構いなしにやり抜きます。

小説でも、カルト教団に忍ばせたスパイの正体がばれそうになったので、仲間である警察官に圧力をかけたり、刺客を差し向けてターゲットを闇に葬りました。

社会の平和を守るため、犠牲者はつきものだとでもいうのでしょうか。理不尽な殺人をしながら、表向きは正義を全うしていると言い繕う公安警察に怒りを覚えることでしょう。

警察が「社会の悪」を取り締まるのは当然ですが、そのために罪のない人が犠牲になっていいはずがありません。ところが、それを暗黙の了承として、正義のためと言い繕って通してしまうのが、公安警察なのです

そんな公安警察の怖さを知ってしまった泉ですが、警察職員を辞めるのかと思いきや、敵の手中に突入するかのように、事務職ではなく本当の警察官になろうとします。

警察組織の中に身をおいて、公安警察のすることが本当に正しいのかどうか見極めるつもりなのでした。

事務員でありながら、自分の推論と主張を強面の上司にも堂々と述べる強さを持っていた泉です。上からの命令には絶対服従の縦社会の警察の中で、本当の正義を貫こうとするその勇気はとても尊いものです。

一概の女性警察官に出来ることは限界がありますが、それでも組織の中の醜い闇と闘おうとする泉にエールを送りたくなります

映画『朽ちないサクラ』の見どころ

親友の変死をきっかけに、警察の掲げる正義と社会の平和を守ることの裏にある醜さに気が付く泉。原作は、泉の心理を追いながら一連の事件の真相に迫るという異色の警察小説です。

作者の柚月裕子は「孤狼の血」シリーズでは、刑事でありながら暴力団と深く関わる主人公を描きました。

この作品では、世の中の理不尽や不条理なことに、懸命に立ち向かっていく人間が描かれていて、‟正義”とは何かと考えさせられました

小説『朽ちないサクラ』でも、警察内部における公安が掲げる正義について問いかけられます。

映画化されるにあたり、テーマともいえるその問いかけはどのように表現されるのでしょう。

また、主人公の森口泉役に抜擢された杉咲花は、公安への怒りを胸に世の中の闇に潜む薄汚れた悪と戦う決意をする泉をどうのように演じるのでしょうか。

杉咲花演じる、真っ直ぐに‟真相を見つめる眼”を持つ森口泉にご期待ください

映画『朽ちないサクラ』の作品情報


(C)2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会

【公開】
2024年(日本映画)

【原作】
柚月裕子:『朽ちないサクラ』(徳間文庫)

【監督】
原廣利

【脚本】
我人祥太、山田能龍

【キャスト】
杉咲花

まとめ

柚月裕子の小説『朽ちないサクラ』をネタバレありでご紹介しました。

警察の中でも特殊性の高い公安警察の醜い任務遂行の在り方に、主人公の泉でなくても疑問を感じることでしょう。

警察の中における闇と向き合いながら、真実の正義を守ろうとする泉に拍手を送りたくなる作品でした。

凛とした強さと美しさを持ち合わせた森口泉を演じるのは、近年著しい活躍の若手俳優の杉咲花です。

杉咲花の新たな魅力も見いだせるかもと、公開前からワクワクします。

映画『朽ちないサクラ』の公開は、2024年6月21日(金)です! 


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