映画『かごの中の瞳』は9月28日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
夫であるジェームズの赴任先のタイ・バンコクで、妻のジーナはともに結婚生活を過ごしていましたが、彼女は子どもの頃に遭った交通事故が原因で、目の視力を失っていました。
それでも優しい夫の献身的な支えもあり、不自由のない人生を送っていたある日、病院で受けた角膜移植により、ジーナは片方の瞳だけは視力を取り戻すことになるが…。
映画『かごの中の瞳』は夫婦関係の何たるかを仲睦まじい妻と夫の様子で幕を開けますが、単なるラブストーリーでも、夫婦で問題を乗り越える人間ドラマでもありません。
マーク・フォースター監督の独自の視覚的な映像美と音響効果の冴えで、観客に目撃者にさせてくれるエロティック・サスペンスの真実とは!
CONTENTS
映画『かごの中の瞳』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
All I See Is You
【脚本・監督】
マーク・フォースター
【キャスト】
ブレイク・ライヴリー、ジェイソン・クラーク、ダニー・ヒューストン、ウェス・チャサム、アナ・オライリー、イボンヌ・ストラホフスキー
【作品概要】
『007 慰めの報酬』『ネバーランド』で知られるマーク・フォースター監督が、テレビシリーズ『ゴシップガール』のブレイク・ライヴリー主演に迎えたエロティック・サスペンス映画。
盲目の妻ジーナ役をブレイク・ライヴリーが演じ、夫ジェームズ役を『エベレスト3D』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』のジェイソン・クラークが務めています。
映画『かごの中の瞳』のあらすじ
タイのバンコクに夫ジェームズと暮らすジーナは、その日、いつになく緊張していました。
子どもの頃に両親を亡くした交通事故で、彼女は視力を失っていました。
しかし、評判の高いヒューズ医師の診察を受けることで微かな希望が見出せそうでした。
保険会社に勤める夫ジェームズに優しく付き添われ、不安を抱えたジーナは辛い検査に耐えるのが精一杯でした。
ヒューズ医師は角膜の移植手術で、右目の視力は0.4まで回復すると診断しました。
「素敵」と喜びを隠せぬジーナに、「素敵どころじゃない。最高のニュースだ」と夫ジェームズは歓喜します。
その後、ジェームズとジーナはもうひとつ望んでいることがありました。
2人は待望する赤ちゃんが今月も授からなかったことを落ち込んでいました。するとその夜、角膜提供の順番待ちにキャンセルが出て、急遽ジーナの手術が行われます。
翌日、眼帯を取ったジーナの瞳には、まだぼんやりとだったが、初めて見たジェームズがボヤケて映っていました。
感激に涙するジーナですが、夫の姿は想像とは違っていたのも事実でした。
ヒューズ医師から2種類の目薬を渡され、退院するジーナ。
優しい夫ジェームズの「何が見たい?」という問いかけに、「色が見たい」と答えたジーナを、ジェームズは生花市場へと連れて行きます。
まるで色彩の洪水のように咲き溢れた状況に、満面の笑顔を浮かべたジーナ。
しかし、一方で初めて見た自分たちの住む自宅の部屋には、「想像と違った」とやはり失望を隠せません。
そんなジーナに、ジェームズからサプライズのプレゼントを用意していました。
ジーナの視力が快復したお祝いに、かつて新婚旅行で訪れた南スペインを再訪し、そこからバルセロナで暮らすジーナの姉のカーラに会いに行こうというものでした。
しかし、幸せなはずの“2度目の新婚旅行”で、ふとしたことをきっかけにジーナとジェームズの気持ちのすれ違いが浮き彫りになると…。
映画『かごの中の瞳』の感想と評価
演出に手腕を見せるマーク・フォースター監督
本作品『かごの中の瞳』マーク・フォースターは、1969年11月30日、ドイツに生まれます。
彼はニューヨーク大学映画学科卒業後、大手スタジオからインディペンデントまで多種多様な作品の監督を務め、独特の美学で映画ファンを魅了する映像作家です。
初めに注目されたのは、2001年公開のハル・ベリーとビリー・ボブ・ソーントンが共演した『チョコレート』。この作品でハル・ベリーはアカデミー賞主演女優賞に輝きます。
2004年にジョニー・デップとケイト・ウィンスレット共演作『ネバーランド』で、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞の監督賞にノミネートされると、その才能を一気に世界に知らしめます。
その後は『ステイ』(2005)、『主人公は僕だった』(2006)、『君のためなら千回でも』(2007)を手掛け、2008年には「ジェームズ・ボンド」シリーズ22作目のダニエル・クレイグ主演の『007/慰めの報酬』で、当時のシリーズ史上最高額の興行収入を記録します。
参考作品:監督作品『プーと大人になった僕』(2018)
そのほかにもブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』(2013)をヒットさせたり、ユアン・マクレガー主演の『プーと大人になった僕』(2018)があります。
マーク・フォースター監督の映像美の特徴
マーク・フォースター監督が魅せる確かな演出の力量は、素晴らしいのひとこと。
本作『かごの中の瞳』は、海外では2016年に公開され、それから2年後の2018年にいよいよ日本公開されます。
この作品で描いたエロティック・サスペンスな作風は、サスペンスの神様として知られる巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督を思わせる要素が見られる特徴があります。
世界映画史に残る名作『めまい』や『白い恐怖』はもちろんのこと、『北北西に進路を取れ』や『ファミリー・プロット』に至るまでリスペクトした場面を感じさせてくれ、映画ファンを満足させてくれるはずです。
参考作品:ヒッチコック監督の最高傑作『めまい』(1958)
ドイツ生まれのマーク監督の原点を考えたとすれば、むしろヒッチコック監督が夢中になった巨匠フリッツ・ラング監督のドイツ表現主義やフィルム・ノワールといった風合いだと考える方が、マーク監督の映像美学を捉えやすいかもしれません。
また、12歳のマーク少年だった時に、1979年公開の名匠フランシス・フォード・コッポラ監督作品『地獄の黙示録』を観て熱中したのが映画体験ということもあり、マーク監督は真に映画美学の醍醐味を知り尽くした映像作家だといえますよね。
マーク・フォースター監督の演出意図
本作品『かごの中の瞳』の脚本・監督を務めたマーク・フォースター監督は、かねてから視覚的な拘束のない映像で物語を伝えたいと考えていたようです。
映画は常に登場人物の行動の動機づけや、物語の流れに縛られると指摘をしており、その拘束から逃れて、まるで画家が一瞬一瞬を切り取り、自由に物語を語るにはどうしたらいいかと思惟をしていたのです。
その際に浮かんだプロットが、視力を失った主人公が再び視力を取り戻すというストーリーで、その人物の生きる現実は、記憶、想像、音、物事に対する解釈によって作られるのではないかというアイデアが生み出されました。
また、マーク監督はインタビューで、目が不自由な女性を主人公にした理由を次のように述べています。
「僕は以前から独占欲の絡むラブストーリーを作りたいと思っていました。目の見えない人を主人公にすることにより、あなたが見える物と見えない物を知っていることと知らないことが、ラブストーリーのメタファーになると考えました。盲目はこの作品のプロットの一
部ですが、ジーナというキャラクターの一面でもあります」
これはとても興味深い発言ですね。
ハラハラやドキドキしたサスペンスが生まれる要素として、実はラブストーリーはとても重要な働きと効果を見せてくれます。
ある特殊な事件を追う刑事や諜報員などでなくとも、登場人物に沿った恋愛感情には心拍数を上げるだけの要素があるからです。
そして映画のフレーム内に登場する人物たち、それぞれ人物はすべての状況を知らなくとも、観客のこちら側だけは物語の進行状況を博していることで、ストーリーの先行きの不安や恐怖を観客が登場人物よりも先に察知することで、映画のサスペンスは成り立っているからです。
また、今回の“盲目のもうひとつ真の意味”は、登場人物が視覚を取り戻すということでなく、真実を認識する開眼のラストが待っていることも大きな見どころになっています。
まとめ
本作品『かごの中の瞳』の演出を務めたマーク・フォースター監督。
映画の冒頭から主人公ジーナの過去を示す映像の情報が、まるで洪水のように観客に押し寄せます。
マーク監督が画家のように一瞬一瞬を切り取ったというメタファーは、例えば、曲がりくねった道、トンネル、スピード、歪みなど多種多様に切り取られ、女性ジーナについての真実を雄弁なまでに見せる映画の謎解きから始まります。
盲目の女性というアイデアから豊富に産み落とされたイメージが盛り込まれた構造的な脚本。これに惚れ込んだ主演女優ブレイク・ライヴリーは、初めて脚本を読んだ際に、まったくこれまでにない物語であると興奮し、難役に挑んだそうです。
映画『かごの中の瞳』は、過去の出来事で止まったままの時間に生きる1人の少女ジーナの思春期や自我の芽生え、また性的な目覚めという女性の成長物語を、“盲目から視覚を取り戻した大人のジーナが再体験”する構成になっています。
2018年に観てきた洋画の中では、映画ファンの女性に1番に観ていただきたいオススメの作品といってもよいでしょう。
障がいのある弱者の立場や、女性が自由に意志を見出す権利があるのかなど、サスペンス以外にも語りたい要素や見どころに溢れた秀作。
これまで映画とはまったく異なる映画を観たいあなたに、マーク・フォースター監督らしい独自の映像美を見せる本作は、劇場のスクリーンで、ぜひともご覧いただきたい価値ありの逸品ですよ。
本作を上映する劇場情報
【北海道地区】
北海道 ディノスシネマズ札幌劇場 9月28日~
【東北地区】
青森 シネマディクト ルアール/ルージュ 11月10日~11月23日
青森 フォーラム八戸 11月16日~11月22日
宮城 チネ・ラヴィータ 11月2日~11月15日
山形 フォーラム山形 順次公開
福島 ポレポレいわき 順次公開
【関東地区】
東京 TOHOシネマズ シャンテ 9月28日~
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 9月28日~
神奈川 TOHOシネマズ川崎 9月28日~
【中部地区】
新潟 JMAX THEATER上越 順次公開
富山 JMAX THEATERとやま 順次公開
静岡 静岡シネギャラリー 10月27日~11月9日
静岡 CINEMAe_ra 順次公開
愛知 センチュリーシネマ 9月28日~
【近畿地区】
大阪 大阪ステーションシティシネマ 9月28日~
兵庫 シネ・リーブル神戸 9月28日~
兵庫 TOHOシネマズ西宮OS 9月28日~
【九州・沖縄地区】
福岡 KBCシネマ 9月28日~
熊本 Denkikan 11月3日~
沖縄 桜坂劇場ホール 11月3日~
*上記の劇場情報は2018年9月18日現在のものです。作品の特性からセカンド上映や全国順次公開される場合もございます。お近くの映画館をお探しの際は必ず公式ホームページを閲覧の上、お出かけください。