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Entry 2019/11/16
Update

映画『FIND』あらすじネタバレと感想。アイドルたちの結末に見たシチュエーションスリラーの新たな方向性

  • Writer :
  • 20231113

アイドルたちが命がけのデス・ゲームに挑戦する!

映画「ソウ(SAW)」シリーズの公開からブームを巻き起こした密室によるデス・ゲーム。

生死をかけた極限の状態で繰り広げられる、ソリッドシチュエーションスリラーです。

映画『FIND』は、そんな人気ジャンルに人気のアイドルたちが挑戦した作品です。

美しき少女たちは、なぜこの場所に、どんな目的で集められたのか。少女たちを襲う者の正体は誰なのか。

生き残るのは誰なのか。そしてあなたが推すアイドルに、どんな運命が待ち受けるのか…。

映画『FIND』の作品情報


(C)2019「FIND」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【監督】
山嵜晋平

【キャスト】
鶴見萌、熊澤風花、花宮ハナ、朝比奈れい、茉井良菜、涼掛凛、神田ジュナ、望月みゆ、相沢梨紗

【作品概要】
理由も判らないまま、森の中の廃教会に集められた8人の少女たち。彼女らを制裁と称して殺害する謎の男。その魔の手から逃れようとする少女たちを描く、シチュエーションスリラー映画。

この映画に集まったアイドルは、「虹のコンキスタドール」のメンバー鶴見萌、「Task have Fun」の熊澤風花、「ARCANA PROJECT」の花宮ハナ、「天晴れ!原宿」の朝比奈れい。

「煌めき☆アンフォレント」の茉井良菜、「Jewel☆Neige」の涼掛凛、「虹のファンタジスタ」の神田ジュナ、「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」の望月みゆ、そして「でんぱ組.inc」の相沢梨紗。

監督の山嵜晋平は、三池崇史監督の下でキャリアを重ね、瀬々敬久監督の『菊とギロチン』など多くの作品で助監督を務めています。

2017年には自ら監督したアクションホラー、『ヴァンパイアナイト』をゆうばり国際ファンタスティック映画祭に出品しました。

続く監督作『テイクオーバーゾーン』は、今年の東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品、高い評価を得ている、若い女性の姿を描く手腕に定評のある人物です。


映画『FIND』のあらすじとネタバレ


(C)2019「FIND」製作委員会

若者の間で、憎む相手を殺してくれるサイトが話題になっていました。そのサイトなら、見つけられない相手でも、探し出して殺害してくれると噂されています。

1人の少女が、そのサイトに興味を示します。サイトの名は“殺人検索サイト”「FIND」…。

森の中にある廃教会の礼拝堂で、ミカ(鶴見萌)が目を覚まします。周囲には彼女同様に意識を失った少女たちがいました。ミカは自分がなぜこの場所にいるのか理解できずにいました。

次々目を覚ます少女たち。皆ここがどこか判らず、互いに面識も無く不審を抱きます。

生まれつき足が悪く、熊のぬいぐるみを抱いたマリコ(望月みゆ)が、恐る恐る皆に名乗ります。続いて自分を紹介したのはスズネ(熊澤風花)。

ジュンコ(茉井良菜)は名乗ると共に、誰かここにいる理由を知っているかを訊ねると、教師のミカは仕事帰りの際に意識を失い、ここで目覚めたと答えました。

レイ(涼掛凛)、アイ(朝比奈れい)、ユキナ(神田ジュナ)、そして気の強そうなアカネ(花宮ハナ)らも、帰宅時か家にいた時が最後の記憶でした。彼女らは意識を失わされた上で、ここに集められたのです。

皆が荷物も、携帯電話も持っていませんでした。動揺する8人に、黒い紙が何枚も舞い落ちてきます。黒い紙には何も記されていませんでした。

しかしスズネの拾った紙にはメッセージが記されていました。彼女は読み上げます。「何か来る、上に逃げろ」と。

階段を上がりバルコニーに向かうスズネ。すると礼拝堂に不気味な仮面をした男が現れ、いきなりユキナを殴り殺します。一同は悲鳴を上げ、スズネに続いて階段をかけ上がります。

バルコニーで彼女らは椅子を積み上げ、階段にバリケードを築きます。しかしアイは足を痛めて取り残されました。男に追われたアイは、バリケードの中に入れるよう必死に訴えます。

男はゆっくり階段を上ってきます。ミカらはバリケードを崩してアイを助け入れますが、アカネは手を貸そうとしません。アイを救って改めてバリケードを築くと、男は諦め立ち去ります。

泣き崩れるアイ。彼女を助けようとしなかったアカネを皆が責めますが、身を守る正当防衛のようなもので、責められるべきは仮面の男だと反発するアカネ。

7人になった少女に亀裂が生まれますが、それでも皆でバリケードの強化に動きます。力仕事に慣れたレイが率先して働き、アイの痛めた足を看護師のジュンコが診ます。

しかしバルコニーの隣の部屋の壁には、怪しげな文字が書かれており、ここも安全ではないと知り動揺します。指示に従い上に逃げるべきか、この場で冷静に様子を見るか、意見は分かれます。

スズネとマリコ、アイとレイは上へと進む事を選びますが、ゆっくりと男の足音が迫ってきます。とっさに身を隠し、果たしてメッセージに従って良かったのか迷う4人。

一方バルコニーに残ったミカ、アカネ、ジュンコの前にも仮面の男が現れ、3人はバリケードを崩し下へと逃れます。彼女らは逃げ込んだ廃物が並ぶ部屋でランプにロープを手に入れます。更に武器になりそうな物を探すミカ。

上に向かった4人は、下で起きた騒ぎを聞いて移動を開始します。足を痛めたアイを、レイがかばって先に進ませますが、レイは突如現れた男に襲われ無惨に殺害されます。

残された者は必死に下へと逃れます。調理場に逃げ込んだスズネはアイと共に身を隠し、ようやく男の追跡から逃れます。

1人になった足の不自由なマリコを、現れたアカネが助けます。マリコはアカネの行動に感謝します。食糧置き場に入った2人は、古い保存食を手に入れ一息つきますが、そこでナイフを見つけると、護身用に密かに所持したアカネ。

食糧を持ったアカネとマリコと、道具や武器になりそうな工具や廃材を持ったミカたちは、ようやく一室で合流することが出来ました。

彼女たちは自分たちが置かれている状況は、ネットで聞いた謎の復讐サイト「FIND」の仕業によるものではないか、と語り合います。

些細な出来事が原因かもしれない、誰かの恨みを買って、「FIND」に書きこまれた結果、ここにいるのではないか。皆心当たりになるような事は無く、復讐サイトなど都市伝説に過ぎないのではないか、との意見も出ました。

するとアイが、自分が「FIND」を作ったと告白します。一同は驚き彼女から殺人者の正体を聞き出そうとしますが、アイはサイトの枠組みを作っただけでその実態は知らず、ここにいる以上自分も殺害の対象に過ぎないと説明します。

ネット上の「FIND」に対する書き込みの中には、脱出方法があったとの意見も出ましたが、それこそ噂の類いに過ぎないと否定されます。

絶望した一同ですが、気を取り直して体力を付けるためにも、皆で食事すべきとの意見が出ますが、アカネが反対します。

マリコと見つけた食糧を、それ以外の人間に渡すのは割りがあわない。そう主張するアカネに、大人しいマリコは従うしかありません。当初金を払えと要求したアカネは、最終的にミカたちが手に入れた武器と引き換えで渡します。

こうして皆に食料を分配し、食事にしようとしますが、これに毒が入っているのでは、という懸念が出出来ます。個々の食糧を皆が毒見しては全員が倒れる可能性があり、遅効性の毒では判断がつきかねません。

そこでスズネの提案で、全ての食料を一つに混ぜ、それを1人が毒見することでリスクを減らす事にします。皆が毒見役を敬遠する中、看護師の立場からそれを進んで引き受けたジュンコ。

そんな一同の姿を、モニター越しに見つめている謎の少女(相沢梨紗)の姿がありました。

時間が経過した後、ジュンコは血を吐き倒れます。その姿に大きく動揺するマリコ。

遺された5人は改めて脱出を決意し、建物内を移動しますが、仮面の男に追われバラバラになります。それでもスズネとアカネとアイの3名は、廃教会の外に出ることに成功します。

スズネは館内に残る2人をどうするか訊ねますが、アカネとアイは助けを呼びに行けば問題無いと答えます。ミカとマリコは今も教会の中で、仮面の男に追われていました。

森の中を進む3人。しかし外にも仮面の男がいました。アカネは1人で逃れる道を探します。スズネとアイは少し休むことにしました。

2人きりになるとスズネは、いきなりアイを斜面に突き落とします。地に倒れたアイに、スズネは尋ねます。「本当はどこまで知ってるの?」

起き上がれないアイに、仮面の男が近づいてきます…。

以下、『FIND』のネタバレ・結末の記載がございます。『FIND』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019「FIND」製作委員会

執拗にアイに「FIND」の事を訊ねるスズネ。彼女の知っていた情報では、最後に残った1人は助かるとされていました。

しかしアイは、「FIND」の実態について答えられません。サイトを作った頃と異なり、「FIND」には良くない事が起た結果、自分も狙われたのだと訴えるアイ。

それでもアイの知っている事を聞き出そうとするスズネ。アイが知らないと言っても、話さねば命を奪うと脅します。アイに近寄る仮面の男。

最後のチャンスとして、5からカウントダウンを始めるスズネ。何も答えられなかったアイは、男の手で惨殺されます。

一方廃教会内に残されたミカは、足の悪いマリコをかばいつつ、罠を仕掛けて仮面を男を倒し、捕える事に成功します。2人は男を縛り付けて拘束します。

外にいたアカネは、スズネが廃教会へと向かう姿を目撃します。スズネは自らの体に血を付け、建物の中に入ります。その行動に不信を感じたアカネも、意を決して中に入ります。

ミカにマリコは彼女がどうして教師になったかを訊ねます。中学生の頃、諦めずに自分を見てくれた先生がいたおかげで、生きてこれたと打ち明けたミカ。

だから私も子供たちに逃げるな、諦めるなと伝えたい、とミカは言葉を続けます。ヌイグルミを片時も離さぬないマリコは、だから先生は強いんだな、と感心します。

ミカとマリコに、スズネが声をかけ3人は無事を喜びます。外に逃げたものの辺りは深い森で、しかも仮面の男が現れて、逃れられないと説明するスズネ。

それを聞いて絶望するマリコ。しかし助かる道があると信じ、ミカは捕えた男から脱出方法を聞き出そうと試みます。

別の覆面の男が近づく足音がします。3人は逃げ出しますが、スズネは別の方向に動きます。

体力の限界に達し、諦めの言葉を口にし始めたマリコを、ミカは励まして進みます。

その頃スズネは捕えられた男を解放していました。密かに彼女の後を付け、その光景を見たアカネは「裏切り者!」と叫び、隠し持っていたナイフを突きつけますが、男に阻止されその隙にスズネは逃げ出します。

礼拝堂に逃れたミカとマリコの前にスズネが現れ、捕えた仮面の男が逃げたと訴えます。一方まだ生き延びる事を望んでいるアカネも、仮面の男をナイフで刺し礼拝堂に向かいます。

現れたアカネはバルコニーにいるミカとマリコに、スズネが仮面の男を逃がした、敵側の人間だと訴えます。しかし共にいる2人に、裏切り者はアカネだと説明するスズネ。

仮面の男を捕えたロープは切られていた、とスズネは説明しまず。アカネの手にはナイフが握られていました。ナイフを今まで隠し持っていたアカネを、ミカとマリコは信用できません。

またしても現れた仮面の男に襲われるアカネ。階段を上がりバルコニーに向かいますが、椅子を積み上げたバリケードで入る事が出来ません。裏切り者はスズネだと訴え、中に入れてと懇願しますが、誰も耳を貸しません。

アカネは男の手によって惨殺されます。しかし残された3人の背後に、新たな仮面の男が現れます。

逃げ遅れたマリコが倒され、ミカとスズネは礼拝堂の祭壇に逃れます。助けてくれた礼の言葉を、スズネに対して伝えるミカ。

ミカはマリコと3人で、絶対にここから出ようと言いますが、スズネはそんなに助かりたいですか、と呟くと、ミカをナイフで刺します。

あなたを「FIND」したのは私です、と打ち明けるスズネ。思い当たる理由も無く驚くミカ。

スズネは3年前のマンションの火事について話します。その時ミカが無造作に置いた自転車が非常口を塞いだ結果、煙と炎に巻かれた老女が亡くなっていました。

その老女こそ、スズネの唯一残された肉親の祖母でした。彼女が“殺人検索サイト”「FIND」に依頼すると、すぐ仇であるミカの身元が判明したのです。

ミカへの復讐のため、「FIND」と取引をして内部に紛れ込んだスズネ。他の「FIND」した人の復讐の成功に協力する事が条件でした。

最初に皆を上に誘導したのも、食事に毒を混入したのもスズネでした。

祖母への復讐の念に憑りつかれたスズネ。ミカは泣きながら謝りますが、自分が死ねば家族や友人が、スズネと同じ苦しみを味わうと悟ります。

何で死ななければいけないの、と叫んだミカとスズネは、互いに凶器を手にして襲います。

スズネの手にしたナイフが2人の間に落ち、ミカも凶器を捨てました。和解したかに見えた2人はナイフを奪い合います。ナイフを手にしたのはミカで、彼女はスズネを刺しました。

スズネは倒れ、呆然と立つミカの体を噴き出したガスが包んでゆきます。

やがてマリコが礼拝堂に現れます。今まで引きずっていた足が、軽やかな歩みに変わります。彼女が肌身離さず持っていた熊のぬいぐるみには、カメラが仕込まれていました。

マリコによって「FIND」の模様は、映像として記録されていたのです。カメラを取り出したぬいぐるみを礼拝堂に残し、マリコは廃教会を後にします。

後日、何者かに映像を記録したカメラを渡したマリコは、新たに使用するぬいぐるみを渡されます。

暗い部屋の椅子で目覚めたスズネ。彼女は「FIND」の一員に迎え入れられたのか、それとも彼女もまた「FIND」される対象なのか。

そして病室のベットに横たわるミカ。心身共に打ちのめされた彼女は、うわ言を呟きながら身を丸くして、1人震えていました…。

映画『FIND』の感想と評価


(C)2019「FIND」製作委員会

一味違う人物描写で見せたソリッドシチュエーション

典型的なサスペンス・ホラー映画は、映画の冒頭で生き残る人物、死ぬ人物が想像できるもの。最後まで生き残る女性、いわゆる“ファイナル・ガール”と言えば清純派で賢く、悪や欲望に染まらぬ強さを持ち、死の危険の直面する事で成長を遂げる人物です

将にアイドルが演じるべき典型的なキャラクターです。一方“殺されるキャラ”の性格は、その一部や多くが欠けた存在となります。

という分類は70~80年代のホラー映画を基に確立し、90年代頭に提唱されるようになりました。それ以降のホラー映画は、そのパターン崩しに挑戦する作品も増えましたが、一方でそのお約束に徹して娯楽を追求する作品も数多くあります。

さてこの映画『FIND』は、まだ演技経験が少ないアイドルたちが出演する映画です。そこで彼女たちが本来持っている魅力を、映画のキャラクターに当てはめる、典型的なパターンの作品であろうと予想していました。

ところがこの作品に登場する主要人物は、内に別の一面を秘めた人物ばかりです。演じる者はそれを引き出して見せる事を要求され、見事それを成し遂げています。

そこには若い女性の描き方で評価されている、山嵜晋平監督の演出と、彼女たちが見せる表情の切り取り方が存在します

映画の性格上、セリフが多いシーンやアクションが絡むシーンもありますが、全てを役者に背負わせる演出をせずに、良い表情を切り取る手腕には納得させられました。

あえて謎解きや説明に終始せず


(C)2019「FIND」製作委員会

一方で映画で解明されなかった部分、「FIND」という組織の実態、描かれなかった登場人物の背景などが、大いに気になる方もいるでしょう。

9名の演技力を持つアイドルが出演していますが、やはり映画の中で振り分けられる時間的制約がある以上、切り捨てられる部分はどうしても発生してしまします。

その結果説明的な部分が、大きく切り捨てされたと解釈しています。もし逆に出演者に非日常なセリフを与える、説明部分に時間を割くスタイルであれば、どんな映画になったでしょうか。

それこそ映画の要素の大きな部分を、出演者個人に背負わせた、説明的な映画になったでしょう。山嵜監督はそれよりも彼女たちの日常的な表情と、それが特殊な環境において変化する様を描く事を選びました

解明されない謎は、「FIND」に巻き込まれた登場人物同様、突然降りかかった不条理なものを観客に体感させた、と解釈しましょう。

それでは納得しない?ならば解決策は、別のアイドルたちを起用した、続編で描くしかありませんね。『ソウ(SAW)』の様にシリーズ化しますか?毎回“ジグソウ”の顔を見るより、アイドルたちの顔を見た方が、間違いなく楽しいでしょう

まとめ


(C)2019「FIND」製作委員会

アイドルたちが出演すると聞いて、ホラー映画の類型的な人物の登場を予想していた『FIND』でしたが、実際にはかなり掘り下げて描いた人物が登場し、驚きました。

これは山嵜監督の力量と、演技力をもった出演アイドルの選抜を果たし、製作者の期待に応えた、彼女たちの演技の成果と言えるでしょう

出演者にとってこの映画は“ルックブック”の様なもの。ぜひ今回の経験が、次の仕事につながる事を期待しています。

かつてのホラー映画が類型的であったように、アイドルと言えば基本清純派、という思い込みは古いものの様です。

『FIND』は彼女たちに、困難な役を演じさせています。この調子では仮面を被った殺人鬼を演じるより、アイドル活動の方が大変だと断言します




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