アイドルたちが命がけのデス・ゲームに挑戦する!
映画「ソウ(SAW)」シリーズの公開からブームを巻き起こした密室によるデス・ゲーム。
生死をかけた極限の状態で繰り広げられる、ソリッドシチュエーションスリラーです。
映画『FIND』は、そんな人気ジャンルに人気のアイドルたちが挑戦した作品です。
美しき少女たちは、なぜこの場所に、どんな目的で集められたのか。少女たちを襲う者の正体は誰なのか。
生き残るのは誰なのか。そしてあなたが推すアイドルに、どんな運命が待ち受けるのか…。
映画『FIND』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
山嵜晋平
【キャスト】
鶴見萌、熊澤風花、花宮ハナ、朝比奈れい、茉井良菜、涼掛凛、神田ジュナ、望月みゆ、相沢梨紗
【作品概要】
理由も判らないまま、森の中の廃教会に集められた8人の少女たち。彼女らを制裁と称して殺害する謎の男。その魔の手から逃れようとする少女たちを描く、シチュエーションスリラー映画。
この映画に集まったアイドルは、「虹のコンキスタドール」のメンバー鶴見萌、「Task have Fun」の熊澤風花、「ARCANA PROJECT」の花宮ハナ、「天晴れ!原宿」の朝比奈れい。
「煌めき☆アンフォレント」の茉井良菜、「Jewel☆Neige」の涼掛凛、「虹のファンタジスタ」の神田ジュナ、「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」の望月みゆ、そして「でんぱ組.inc」の相沢梨紗。
監督の山嵜晋平は、三池崇史監督の下でキャリアを重ね、瀬々敬久監督の『菊とギロチン』など多くの作品で助監督を務めています。
2017年には自ら監督したアクションホラー、『ヴァンパイアナイト』をゆうばり国際ファンタスティック映画祭に出品しました。
続く監督作『テイクオーバーゾーン』は、今年の東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品、高い評価を得ている、若い女性の姿を描く手腕に定評のある人物です。
映画『FIND』のあらすじとネタバレ
若者の間で、憎む相手を殺してくれるサイトが話題になっていました。そのサイトなら、見つけられない相手でも、探し出して殺害してくれると噂されています。
1人の少女が、そのサイトに興味を示します。サイトの名は“殺人検索サイト”「FIND」…。
森の中にある廃教会の礼拝堂で、ミカ(鶴見萌)が目を覚まします。周囲には彼女同様に意識を失った少女たちがいました。ミカは自分がなぜこの場所にいるのか理解できずにいました。
次々目を覚ます少女たち。皆ここがどこか判らず、互いに面識も無く不審を抱きます。
生まれつき足が悪く、熊のぬいぐるみを抱いたマリコ(望月みゆ)が、恐る恐る皆に名乗ります。続いて自分を紹介したのはスズネ(熊澤風花)。
ジュンコ(茉井良菜)は名乗ると共に、誰かここにいる理由を知っているかを訊ねると、教師のミカは仕事帰りの際に意識を失い、ここで目覚めたと答えました。
レイ(涼掛凛)、アイ(朝比奈れい)、ユキナ(神田ジュナ)、そして気の強そうなアカネ(花宮ハナ)らも、帰宅時か家にいた時が最後の記憶でした。彼女らは意識を失わされた上で、ここに集められたのです。
皆が荷物も、携帯電話も持っていませんでした。動揺する8人に、黒い紙が何枚も舞い落ちてきます。黒い紙には何も記されていませんでした。
しかしスズネの拾った紙にはメッセージが記されていました。彼女は読み上げます。「何か来る、上に逃げろ」と。
階段を上がりバルコニーに向かうスズネ。すると礼拝堂に不気味な仮面をした男が現れ、いきなりユキナを殴り殺します。一同は悲鳴を上げ、スズネに続いて階段をかけ上がります。
バルコニーで彼女らは椅子を積み上げ、階段にバリケードを築きます。しかしアイは足を痛めて取り残されました。男に追われたアイは、バリケードの中に入れるよう必死に訴えます。
男はゆっくり階段を上ってきます。ミカらはバリケードを崩してアイを助け入れますが、アカネは手を貸そうとしません。アイを救って改めてバリケードを築くと、男は諦め立ち去ります。
泣き崩れるアイ。彼女を助けようとしなかったアカネを皆が責めますが、身を守る正当防衛のようなもので、責められるべきは仮面の男だと反発するアカネ。
7人になった少女に亀裂が生まれますが、それでも皆でバリケードの強化に動きます。力仕事に慣れたレイが率先して働き、アイの痛めた足を看護師のジュンコが診ます。
しかしバルコニーの隣の部屋の壁には、怪しげな文字が書かれており、ここも安全ではないと知り動揺します。指示に従い上に逃げるべきか、この場で冷静に様子を見るか、意見は分かれます。
スズネとマリコ、アイとレイは上へと進む事を選びますが、ゆっくりと男の足音が迫ってきます。とっさに身を隠し、果たしてメッセージに従って良かったのか迷う4人。
一方バルコニーに残ったミカ、アカネ、ジュンコの前にも仮面の男が現れ、3人はバリケードを崩し下へと逃れます。彼女らは逃げ込んだ廃物が並ぶ部屋でランプにロープを手に入れます。更に武器になりそうな物を探すミカ。
上に向かった4人は、下で起きた騒ぎを聞いて移動を開始します。足を痛めたアイを、レイがかばって先に進ませますが、レイは突如現れた男に襲われ無惨に殺害されます。
残された者は必死に下へと逃れます。調理場に逃げ込んだスズネはアイと共に身を隠し、ようやく男の追跡から逃れます。
1人になった足の不自由なマリコを、現れたアカネが助けます。マリコはアカネの行動に感謝します。食糧置き場に入った2人は、古い保存食を手に入れ一息つきますが、そこでナイフを見つけると、護身用に密かに所持したアカネ。
食糧を持ったアカネとマリコと、道具や武器になりそうな工具や廃材を持ったミカたちは、ようやく一室で合流することが出来ました。
彼女たちは自分たちが置かれている状況は、ネットで聞いた謎の復讐サイト「FIND」の仕業によるものではないか、と語り合います。
些細な出来事が原因かもしれない、誰かの恨みを買って、「FIND」に書きこまれた結果、ここにいるのではないか。皆心当たりになるような事は無く、復讐サイトなど都市伝説に過ぎないのではないか、との意見も出ました。
するとアイが、自分が「FIND」を作ったと告白します。一同は驚き彼女から殺人者の正体を聞き出そうとしますが、アイはサイトの枠組みを作っただけでその実態は知らず、ここにいる以上自分も殺害の対象に過ぎないと説明します。
ネット上の「FIND」に対する書き込みの中には、脱出方法があったとの意見も出ましたが、それこそ噂の類いに過ぎないと否定されます。
絶望した一同ですが、気を取り直して体力を付けるためにも、皆で食事すべきとの意見が出ますが、アカネが反対します。
マリコと見つけた食糧を、それ以外の人間に渡すのは割りがあわない。そう主張するアカネに、大人しいマリコは従うしかありません。当初金を払えと要求したアカネは、最終的にミカたちが手に入れた武器と引き換えで渡します。
こうして皆に食料を分配し、食事にしようとしますが、これに毒が入っているのでは、という懸念が出出来ます。個々の食糧を皆が毒見しては全員が倒れる可能性があり、遅効性の毒では判断がつきかねません。
そこでスズネの提案で、全ての食料を一つに混ぜ、それを1人が毒見することでリスクを減らす事にします。皆が毒見役を敬遠する中、看護師の立場からそれを進んで引き受けたジュンコ。
そんな一同の姿を、モニター越しに見つめている謎の少女(相沢梨紗)の姿がありました。
時間が経過した後、ジュンコは血を吐き倒れます。その姿に大きく動揺するマリコ。
遺された5人は改めて脱出を決意し、建物内を移動しますが、仮面の男に追われバラバラになります。それでもスズネとアカネとアイの3名は、廃教会の外に出ることに成功します。
スズネは館内に残る2人をどうするか訊ねますが、アカネとアイは助けを呼びに行けば問題無いと答えます。ミカとマリコは今も教会の中で、仮面の男に追われていました。
森の中を進む3人。しかし外にも仮面の男がいました。アカネは1人で逃れる道を探します。スズネとアイは少し休むことにしました。
2人きりになるとスズネは、いきなりアイを斜面に突き落とします。地に倒れたアイに、スズネは尋ねます。「本当はどこまで知ってるの?」
起き上がれないアイに、仮面の男が近づいてきます…。
映画『FIND』の感想と評価
一味違う人物描写で見せたソリッドシチュエーション
典型的なサスペンス・ホラー映画は、映画の冒頭で生き残る人物、死ぬ人物が想像できるもの。最後まで生き残る女性、いわゆる“ファイナル・ガール”と言えば清純派で賢く、悪や欲望に染まらぬ強さを持ち、死の危険の直面する事で成長を遂げる人物です。
将にアイドルが演じるべき典型的なキャラクターです。一方“殺されるキャラ”の性格は、その一部や多くが欠けた存在となります。
という分類は70~80年代のホラー映画を基に確立し、90年代頭に提唱されるようになりました。それ以降のホラー映画は、そのパターン崩しに挑戦する作品も増えましたが、一方でそのお約束に徹して娯楽を追求する作品も数多くあります。
さてこの映画『FIND』は、まだ演技経験が少ないアイドルたちが出演する映画です。そこで彼女たちが本来持っている魅力を、映画のキャラクターに当てはめる、典型的なパターンの作品であろうと予想していました。
ところがこの作品に登場する主要人物は、内に別の一面を秘めた人物ばかりです。演じる者はそれを引き出して見せる事を要求され、見事それを成し遂げています。
そこには若い女性の描き方で評価されている、山嵜晋平監督の演出と、彼女たちが見せる表情の切り取り方が存在します。
映画の性格上、セリフが多いシーンやアクションが絡むシーンもありますが、全てを役者に背負わせる演出をせずに、良い表情を切り取る手腕には納得させられました。
あえて謎解きや説明に終始せず
一方で映画で解明されなかった部分、「FIND」という組織の実態、描かれなかった登場人物の背景などが、大いに気になる方もいるでしょう。
9名の演技力を持つアイドルが出演していますが、やはり映画の中で振り分けられる時間的制約がある以上、切り捨てられる部分はどうしても発生してしまします。
その結果説明的な部分が、大きく切り捨てされたと解釈しています。もし逆に出演者に非日常なセリフを与える、説明部分に時間を割くスタイルであれば、どんな映画になったでしょうか。
それこそ映画の要素の大きな部分を、出演者個人に背負わせた、説明的な映画になったでしょう。山嵜監督はそれよりも彼女たちの日常的な表情と、それが特殊な環境において変化する様を描く事を選びました。
解明されない謎は、「FIND」に巻き込まれた登場人物同様、突然降りかかった不条理なものを観客に体感させた、と解釈しましょう。
それでは納得しない?ならば解決策は、別のアイドルたちを起用した、続編で描くしかありませんね。『ソウ(SAW)』の様にシリーズ化しますか?毎回“ジグソウ”の顔を見るより、アイドルたちの顔を見た方が、間違いなく楽しいでしょう。
まとめ
アイドルたちが出演すると聞いて、ホラー映画の類型的な人物の登場を予想していた『FIND』でしたが、実際にはかなり掘り下げて描いた人物が登場し、驚きました。
これは山嵜監督の力量と、演技力をもった出演アイドルの選抜を果たし、製作者の期待に応えた、彼女たちの演技の成果と言えるでしょう。
出演者にとってこの映画は“ルックブック”の様なもの。ぜひ今回の経験が、次の仕事につながる事を期待しています。
かつてのホラー映画が類型的であったように、アイドルと言えば基本清純派、という思い込みは古いものの様です。
『FIND』は彼女たちに、困難な役を演じさせています。この調子では仮面を被った殺人鬼を演じるより、アイドル活動の方が大変だと断言します。