脳科学者が連続殺人犯の過去と犯行動機を暴くサスペンス・ホラー
ジョン・ドラコスが監督・脚本を務めた、2019年製作のアメリカのサスペンス・ホラー映画、『15キリングス』。
何が彼を、殺人に駆り立てているのか。シリアルキラーの心に潜む闇とは何か。
15人もの人間を殺害し、投獄された連続殺人犯の脳内プロセスを、脳科学で明らかにしていく物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
連続殺人犯と脳科学者の心理戦によって、連続殺人犯の過去を暴き、その本質と恐怖を紐解いていくサスペンス・ホラー映画、『15キリングス』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
映画『15キリングス』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
ジョン・ドラコス
【キャスト】
スティーヴ・ボンジャールノ、マリア・オルセン、コディ・ベーレンズ、アンドリュー・ジェイコブス、エリース・サントロ、JT・リチャードソン、アダム・S.フォード
【作品概要】
ジョン・ドラコスが監督・脚本を務めた、アメリカのサスペンス・ホラー作品です。
スティーヴ・ボルジャールノが主演を務め、『リメインズ 死霊の棲む館』(2016)のマリア・オルセンや、ゴディ・ベーレンズ、アンドリュー・ジェイコブスらが共演しています。
映画『15キリングス』のあらすじとネタバレ
15人を殺害し、投獄された連続殺人犯ノリス・ジェンセンの元に、脳科学者J(ジュリア)・ケンティル博士がやって来て、あるお願いをします。
それは、「あなたの脳を調べさせて欲しい」というものでした。ノリスの脳をスキャンし、脳波(EEG)を調べ、何がノリスを殺人に駆り立てるのか調べるためです。
ケンティル博士は、ノリスが何人もの人を殺してしまう理由は、彼の過去に問題があるのではないかと考えていました。
ケンティル博士はまず、ノリスが感情が一部欠如した精神病室者「サイコパス」ではないか確かめるため、20世紀の心理学者たちが、サイコパスの特徴をリストにまとめた「サイコパシー(精神病質)・チェックリスト」に基づいたテストを行います。
ケンティル博士はノリスに、サイコパスの特徴である責任感の欠如や他人への非寛容、少年期の非行、少年期の問題行動がないかという特徴がないか尋ねました。
するとノリスは、責任感の欠如に関しては、刑務所で25年服役していることから、罪を償っているといるので否定。
しかし、少年期の問題行動に対しては、否定しませんでした。何故ならノリスは、少年期の時に野良猫1匹を公衆トイレで絞殺し、学校のボランティアで捜索し発見した、行方不明の高齢男性が死んでいるところをずっと眺めていたことがあったからです。
そしてケンティル博士は、莫大な自意識があることや、非現実的な目標を抱いてしまうことを特徴に挙げました。
莫大な自意識があるか、非現実的な目標を抱いてしまうかについても、ノリスに該当する特徴です。
ノリスは、バーで知り合った男性ダニーを言葉巧みに自宅に連れ込んでは、映画祭に出す映画を作る映画監督の如く、男性に厳しい演技指導を行っていました。
7つ目のサイコパスの特徴は、挙動不審であること。ノリスは飼い犬に恫喝したかと思えば、すぐさま態度を変え、何度も謝罪し抱きかかえています。
8と9つ目のサイコパスの特徴は、虚言癖があることと寄生的な暮らし。ノリスは軍隊に入隊し、その後警察官になるなど、その内部に侵入し寄生したことがありました。
さらにノリスは、自身を同性愛者だと言い嫌悪する兄ヴォンの恋人に、恋人の有無を尋ねられ、平気な顔をして嘘の恋人をでっち上げたこともあったのです。
10個目の特徴は、見境のない性衝動。ノリスはこの頃、ダニーと一緒に暮らしており、それでもバーで知り合った女性と一夜限りの関係を築くこともありました。
ノリスと女性の激しい性行為を、ドア越しに聞いて悲痛な表情を浮かべるダニーは後日、寝泊まりしていたノリスの家を出ていってしまうのです。これがノリスに該当する、11個目の特徴「短期的な関係」でした。
ダニーが出ていったことで、ノリスは自暴自棄になってしまったのでしょう。ノリスはダニーや女性と知り合った同じバーで、若い青年コリンに声をかけて家に連れ込みます。
そしてノリスは、ベッドに寝転がったコリンの背後から自身のネクタイで首を絞め、さらに水を入れたバケツにコリンの顔を突っ込み窒息させ、殺してしまうのです。
翌朝、ノリスが飼い犬の散歩に出かけると、彼の隣に住む女性が声をかけてきました。「昨夜大きな物音がしたのですが、模様替えでもしたのですか?」と。
ノリスは平然とした顔で、模様替えをしたと言って誤魔化します。その後、ノリスはスーツに着替え、職業安定所で仕事を行いました。
その夜、ノリスはリビングに放置したままのコリンの死体を白い布に包み、リビングの床下に細工を施して埋めました。
しかしそれでは、飼い犬が嗅ぎつけてしまうほどの腐敗臭がしてしまいます。そこでノリスは、腐敗臭を何とかすべく、コリンと一緒に入浴して匂いを消そうとしました。
そしてノリスが、次に標的にしたのは、同じバーで知り合った中国人男性です。広東語・英語・スペイン語を話せる男性は、ノリスと互いに縛り合ったまま性行為に及ぶ気満々でした。
しかしノリスは、金欠だという男性に金をちらつかせ、油断させた彼の靴紐を解いて、そのまま背後から首を絞めます。
ところがここで予想外なことが起きました。それはノリスに首を絞められた男性が、何とか自力で抜け出し、ノリスの家を飛び出し警察署に駆け込んだのです。
しかし男性は何故か、ノリスを告訴することを躊躇います。翌日、ノリスは同僚のロンの誕生日を祝い、彼との親睦を深めて自宅に招き入れました。
外国から1人で仕事のために引っ越してきたロンにとって、知り合いがおらず心細かったので、地元民のノリスの親切心溢れるおもてなしは、本当に嬉しいことでした。
しかしノリスは、音楽好きなロンにヘッドフォンを着けて音楽を聴くよう促し、その背後から彼を襲い、ヘッドフォンのケーブルを使って絞殺したのです。
ノリスはコリン同様、ロンの死体と一緒に入浴し、彼を身綺麗にしてから隣のソファーに座らせ、一緒に映画を鑑賞します。
後日、ノリスは常連客と化したバーで、別の男性に接触。ノリスは、言葉巧みに男性を自宅に招き、ソファーで酔って眠ってしまった彼の首を、彼が着けていたネクタイで絞めました。
しかし、目が覚めた男性が強い力でノリスに抵抗し、彼の手から逃れて、近くの公衆電話から警察署に通報。「イカレた男に急に襲われた、一瞬で人が変わったんだ。ローズ通りの123番に早く来てくれ」
男性の通報により、ノリスの家に1人の男性警官が訪ねてきました。ノリスは平然とした顔で、「性的な遊びだ」と言うと、警官から「男性がお前を告訴する気でいる」と聞かされます。
男性の告訴を受理する前に、事情聴取にやってきた警官は、襲っていないと言うノリスの主張を鵜吞みにし、厳重注意と召喚状だけにとどめることにしました。
そして警官は帰り間際、ノリスの家から漂う異臭に気づき、彼をマークすることにしました。
ここで場面は、ノリスの殺人遍歴から取調室に戻ります。ケンティル博士はノリスに、脳のどの部分で酸素が消費されているか画像化することが出来る方法「fMRI」でスキャンした、人間の脳の画像を見せながらこう説明しました。
ケンティル博士が言う、カイル博士という人物はこの「fMRI」を使って、500人以上ものサイコパスの囚人の脳を比較検証したのです。
「被験者に単語を見せていくの。“死”“殺す”“憎悪”など感情的な単語から、“机”“椅子”“窓”など無機的な単語まで」
「普通の人間の脳は、感情的な単語に強く反応する。でも研究によると、サイコパスの反応は弱いの」
映画『15キリングス』の感想と評価
脳科学者ケンティル博士により、サイコパスと診断された連続殺人犯ノリス。彼は愛犬だけは、可愛がっていました。
そんなノリスが、まるで息をするように淡々と、家に15人の男性を連れ込み殺害した場面は、観ているこちらがゾッとしてしまうほど恐ろしいです。
サイコパスのノリスは、おそらく少年期に見た、行方不明の認知症を患った高齢男性の死体がきっかけで、他者の死というものに興味を持ってしまったのでしょう。
それからノリスは、平然とした顔で普通の生活を送りながら、野良猫から始まり、バーで知り合った男性を次々と殺していく殺人鬼へと変貌します。
どうして他者を殺してしまうのか、ノリスの口から明かされる描写は劇中にはありません。またノリスは、普通に誰かを愛し結婚する生活を、「凡人のすること」として一切興味を持ちません。
ノリスの過去を回想する場面では、彼が行く場のない若い男性を絞殺するという2つの共通点だけが明かされています。でも逮捕された時のノリスは、どこか逮捕されたことに安堵していたように見えたのが不思議です。
普通の生活を送れないことを、心のどこかで渇望しつつも諦めてしまったノリス。そんなノリスの殺人遍歴と彼の人知れない苦悩こそ、本作の見どころです。
まとめ
15人の男性と猫一匹を殺害した、連続殺人犯ノリスの恐るべき殺人遍歴と本質を、脳科学の観点で紐解いていくアメリカのサスペンス・ホラー作品でした。
サイコパスなシリアルキラー、ノリス。彼はバーや路上で知り合った男性たちを、平然とした顔で淡々と絞殺していきます。
人を殺し、死体を解体するノリスの姿は勿論恐ろしいです。また殺人後、まるで殺人なんてしていないかのように日常生活に戻る彼とのギャップに、また違った恐怖を体感できます。
エンドロール前、「現代では、150人に1人がサイコパスと診断されている。彼らは“苦悩する魂”である」というテロップが流れました。
もしかしたらノリスのように、普通に生きることが難しく、殺人衝動が抑えられないサイコパスなシリアルキラーは、その「苦悩する魂」を持つ者なのでしょう。
苦悩する魂を持つ連続殺人犯の殺人遍歴に恐怖しつつ、彼の本質を脳科学の観点で紐解いていくサスペンス・ホラー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。