感情を持ったAI。人類とAIの未来とは?
『GODZILLA ゴジラ』(2014)のギャレス・エドワーズ監督が手がけた近未来SFアクション。日本を代表する国際派俳優・渡辺謙との再タッグにも注目です。
人類の暮らしを守るため、欠かせない存在となったAI。ところが2075年、そのAIによりロサンゼルスで核爆発が引き起こされます。
人類はAIを禁じ、米軍を中心に「AI狩り」が激化。元特殊部隊のジョシュアは、命令により人類滅亡の兵器を作り出した創造者(クリエイター)を探し、暗殺に向かいます。
そこにいたのは、全てのテクノロジーを操れる超進化型AIであり、その姿は幼い少女・アルフィーでした。ジョシュアは愛する妻に会うため、アルフィーを利用しようとします。次第に心を通わせていく二人。
果たして人類とAIの運命は?映画『ザ・クリエイター 創造者』を紹介します。
映画『ザ・クリエイター 創造者』の作品情報
【日本公開】
2023年(アメリカ映画)
【監督・原案】
ギャレス・エドワーズ
【脚本】
ギャレス・エドワーズ、クリス・ワイツ
【キャスト】
ジョン・デビッド・ワシントン、ジェンマ・チャン、渡辺謙、スタージル・シンプソン、マデリン・ユナ・ボイルズ、アリソン・ジャネイ、アマル・チャーダ=パテル
【作品概要】
監督は『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)、そして日本の「ゴジラ」のハリウッドリメイク版『GODZILLA ゴジラ』(2014)を手がけたギャレス・エドワーズ。
主演は『TENET テネット』(2020)のジョン・デビッド・ワシントン。人類の存亡をかけAIの「クリエイター(創造者)」を追うも、反対にAIを守る立場となってしまう主人公を演じます。
また『GODZILLA ゴジラ』(2014)に次ぐ出演となった渡辺謙が、今回はアンドロイド姿で登場し、AI軍のリーダー・ハルンを演じます。
映画『ザ・クリエイター 創造者』のあらすじとネタバレ
人類はこれまで様々なテクノロジーを開発し、人間を守るため人工知能=AIを作り上げました。創造者(クリエイター)は「ニルマータ」と呼ばれています。
人類とAIは共存し、AIは人間と同じように感情を持てるようになりました。ともに働き、ともに食事をし、ともに暮らし、家族を作ります。
そんな暮らしも、2075年には終わりを告げます。ロサンゼルスで核爆発が発生。原因は、AIによるものでした。AI開発は中止され米軍を中心に「AI狩り」が始まりました。
人類とAIとの戦争は10年続き、人類は「ノマド」と呼ばれる最強の飛行基地を建設。AIの生息するラボを発見しては核並みのレーダーで焼き払います。
一方のAI側はニルマータにより、全てのテクノロジーを操れる超進化型のAIを新たに創造していました。その姿や全貌は隠されています。
時は5年前。ロサンゼルス壊滅で両親を亡くし、片腕を失くした米軍特殊部隊のジョシュアは、軍の命令でニルマータ暗殺のためAIコロニーに潜入捜査を行っていました。
ジョシュアは身分を偽ってAIの情報を探る中、マヤという女性と出会います。二人は恋に落ち、マヤのお腹の中には赤ちゃんが授かりました。
そんなある日、米軍がコロニーに押し寄せてきます。マヤを連れ逃げようとするジョシュアでしたが、AI戦士に捕えられた米兵を助けます。その姿をマヤに見つけられ、自身が米軍のスパイであった事実がバレてしまいます。
ジョシュアのマヤへの愛は本物でした。驚きで震えるマヤを説得するも、マヤはひとりAI軍の船に乗って海へと漕ぎ出していきます。
その時です。人類最強の兵器ノマドがコロニーに近付いてきました。マヤたちが乗った船を目がけてレーダーが発せられます。あっという間に船は殲滅し、崩れ落ちるジョシュア。悲しみに暮れたまま5年の時が経とうとしていました。
US軍大佐・ハウエルは、今回のミッションのために、どうしてもジョシュアの協力が必要でした。乗り気じゃないジョシュアにある映像を見せます。
その映像には死んだはずのマヤの姿が写っていました。当然疑うものの、自分が渡した指輪をしているマヤの姿に、ジョシュアは心動かされます。
ジョシュアに課されたミッションは、人間とAIが共存しているコロニー「ニューアジア」に潜入し、ニルマータが創造した秘密兵器を破壊すること。
ジョシュアの協力もあり、軍は兵器が置かれたラボを見つけます。容赦なくAIを破壊しながら奥へと進んでいくジョシュアたち。AI軍も到着し、激しい戦いが始まりました。
ジョシュアは厳重に閉ざされた部屋に入ることに成功します。そこにいたのは、幼い少女の姿をしたアンドロイドでした。
まだ人間の子どものように幼く、事態を理解しているようではありません。戸惑うジョシュアの隙をつき、少女は地上へと逃げていきます。
一斉に攻めてくる人間軍。ラボに仕掛けた爆弾が作動し、辺りは酷い有様です。水辺に流され助かったジョシュアは少女と再会します。
少女にマヤのことを訪ねると、居場所を知っているそぶりをみせます。ともに行動することにしたジョシュアは、名前がないという彼女に「アルフィー」と名付けます。
アルフィーは、すぐにその特別な能力を発揮します。あらゆる情報を瞬時に学習し、電波機器をコントロールしていきます。
「天国って誰でも行けるの?」というアルフィーの問いに「善人だけが行けるんだ」と答えるジョシュア。「じゃあ、私は行けないね。人間じゃないもの」……アルフィーはどこか寂しそうでした。
映画『ザ・クリエイター 創造者』の感想と評価
ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014)を手がけたギャレス・エドワーズ監督の近未来SFアクション映画。物語は、AIと敵対する米軍をはじめとする人間軍と、AIと共存するニューアジアのAI軍の戦いを描いています。
親日家でもあるギャレス・エドワー監督ならではの、日本的要素が散りばめられた描写にも注目です。
ニューアジアのモデルはフィリピンのようですが、看板や町並みなど東京を連想させる部分も多く、言語も日本語を話すなど、日本人が見たら感情移入できる設定になっています。
本作の見どころのひとつに、アンドロイドのビジュアルがあります。後頭部から耳にかけてが機械部分で、耳の辺りが空洞になっています。SF映画でもこれまでにないビジュアルです。
ロボットだと一目で分かるものの、人間の顔との違和感がなく感情が読み取れます。AIの機密最終兵器が幼い少女アルフィーだったことで、可愛らしい姿に惹かれます。
また本作は、SF映画の中でも動的なストーリーが魅力となっています。人間対AIの戦いというだけではなく、感情を持ったAIとの共存の物語でもあります。
設定は2075年、AIの誤作動により核爆発が起こったという時代から始まります。事件前は、感情を持ったAIと人間は共存していました。ともに働き、ともに喜び、ともに分かち合い、愛し合い、家族となりました。
「AIが感情を持つ」ということに驚かなくなった昨今、本作で描かれる世界はフィクションでありながらも、現実社会でも起こり得る近い未来の姿とも言える気がします。
主人公のジョシュアは、はじめAIを壊滅させるため人間軍のスパイとして潜入捜査をしています。AIの誤作動で起こった核爆発で両親を亡くし、AIに憎しみを抱いていたからです。
同じくUS軍大佐・ハウエルもAIにより子どもを亡くしていました。戦う人間たちにもそれぞれ忘れることのできない悲しい経験がありました。
許すことのできない怒りや恨みは、一方的に相手にぶつけられます。しかし、相手はどうでしょうか。やはり、同じ経験をしているかもしれない。力でねじ伏せようとする者、自分のことで精一杯な者、なんとか共存しようとする者……現実世界の国々の特徴とも重ね合わせられます。
ストーリーの中で、進化する少女AI・アルファーが大人に「何か欲しいものある?」と聞かれ、「ロボットの未来」と答える場面があります。
人間も同じです。「人類の未来」を願っています。ロボットも人間も「未来」を求める気持ちは一緒なはずなのに、争わなければならない。テクノロジーが進化し続けても、争いはなくならないという現状を物語っています。
ジョシュアとアルフィーは、ともに助け合うことで絆を深めていきます。そして、アルフィーの運命を知ったジョシュアは、アルフィーを助けようと反旗を翻します。
最後は創造者(クリエイター)こと「ニルマータ」であった妻のマヤが、ジョシュアとの子どもを進化系AIにコピーしていたことで、アルフィーは生まれてくるはずだったジョシュアの子どもだと判明します。
アンドロイドに対して、自分の子どものように愛情が湧くのか。それは考えるまでもなく、感じるままに、ジョシュアはアルフィーを愛していました。そして、アルフィーもまたジョシュアを愛していました。
SFアクション映画としても充分楽しめますが、人間とAIとの家族愛に感動すること間違いなしです。
まとめ
独創的なビジュアルと感動ストーリーでおくる近未来SFアクション『ザ・クリエイター 創造者』を紹介しました。
人間対AIの争いを描いた作品はたくさんあれど、人間とAIの「家族愛」についても描かれた本作。
多様性が重視される今だからこそ、互いを理解し受け入れること。平和な暮らしのために一致団結して協力し合うこと。人間同士で争わないこと。
感情を持ったAIとの暮らしが、近い将来やってくるかもしれません。未知なるものとの共存に、あなたはどう応えますか。