男同士の家族愛と絆がひかるSFサスペンス!
ジョナサン・ベイカーとジョシュ・ベイカーの兄弟が監督を務めた、2018年製作のアメリカのSFサスペンス映画『KIN キン』。
未知の武器を発見した14歳の少年が、借金を抱えた血の繋がらない兄と共に思わぬ事態に巻き込まれ、謎の追跡者に追われる羽目になる姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ジャック・レイナーとマイルズ・トゥルイットが血の繋がらない兄弟役を演じ、未知の武器を手に謎の追跡者と犯罪組織から逃亡劇を繰り広げていく、アメリカのSFサスペンス映画『KIN キン』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
映画『KIN キン』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原作・監督】
ジョナサン・ベイカー、ジョシュ・ベイカー
【脚本】
ダニエル・ケイシー
【キャスト】
ジャック・レイナー、ジェームズ・フランコ、デニス・クエイド、ゾーイ・クラビッツ、マイルズ・トゥルイット、キャリー・クーン、マイケル・B・ジョーダン
【作品概要】
ジョナサン・ベイカーとジョシュ・ベイカーの兄弟の、長編映画デビュー作となる新感覚SFサスペンス作品です。
『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)『シング・ストリート 未来へのうた』『ミッドサマー』(2020)などに出演するジャック・レイナーと、長編映画初出演のマイルズ・トゥルイットが、血のつながらない兄弟役を演じています。
さらに兄弟を追うギャングのテイラー役を、「スパイダーマン」シリーズや『127時間』(2011)などに出演するジェームズ・フランコ、兄弟の父ハル役を『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)のデニス・クエイドがそれぞれ演じています。
映画『KIN キン』のあらすじとネタバレ
14歳の少年イーライ・ソリンスキーは、養父のハル・ソリンスキーと彼の亡くなった妻、血のつながらない兄のジミー・ソリンスキーの4人でアメリカのデトロイトで暮らしていました。
しかし、イーライは学校に馴染めず、問題ばかり起こして停学処分になってしまいます。学校から帰る途中、イーライは銅線を探しに、立ち入り禁止という看板が立てかけられた廃工場へ向かいました。
廃工場のボロボロの壁面には、「お前を見ている」という謎のメッセージが書かれていました。イーライは銅線を壁から取り出している最中に聞こえた大きな物音が気になり、恐る恐る奥へ進んでいきます。
イーライは、鎧を着た頭部のない遺体などの多数の死体と見慣れない未知の武器を発見しました。
イーライは金属ケース型の光線銃に興味を抱き、地面に置かれたそれを手に取ってみると、突如金属ケース型の光線銃が起動して驚きます。怖くなったイーライはその場を立ち去り、逃げるように帰宅しました。
その後、『デトロイト再建』という会社を営むハルが帰宅。亡き母親の悪口を言われて同級生と喧嘩し、停学処分になった件を知った彼から、イーライは厳しく叱られます。
窃盗の罪で逮捕されたジミーは、6年間の刑期を終えて出所し、イーライとジミーがいる家へ戻りました。久々に家族3人で食卓を囲みましたが、ジミーとハルの会話はどこかぎこちない……。
また家族と仲良く暮らしていきたいジミーは、ハルのそっけない態度に痺れを切らし、彼が母親の死を告げに来る以外に面会も手紙もなかったことへの不満を口にします。
イーライが見ている前で言い争うジミーとハル、怒ったジミーはそのまま家を飛び出し、ある場所へ向かいました。それは地元の犯罪組織のボス、テイラー・バリックとその兄ダッチらがいる場所でした。
ジミーはテイラーに、刑務所での用心棒代6万ドルを借金しており、その返済についてテイラーと話し合います。ジミーはもし返済できなければ家族を殺す、とテイラーに脅されました。
その頃イーライは、廃工場の床に横たわる遺体と、引き金付近が赤く光る光線銃が動いているという不思議な夢を見ます。イーライはその夢が気になり、家を抜け出して廃工場へ向かいました。
夢で見た場所へ行ったイーライは、そこで光線銃を手に取り、照準器を覗き込むように武器を構えてみます。
すると銃身の上に、光学照準器が浮かび上がり、それに興奮したイーライは光線銃を家に持ち帰ることにしました。
イーライが外壁に立てかけられた梯子で2階の自室へ戻った頃、階段下では戻ってきたジミーとハルが口喧嘩をしていました。
ハルは出来ればジミーを助けたいと思うけれど、彼の借金返済のために事務所の金庫に入った金を横領することはできません。
そう強く断ったハルに対し、ジミーはまるで出来の悪い自分の痕跡を消すかのように、イーライを引き取って育てていることを非難します。
怒ったハルはジミーを家から叩き出しますが、その話は階段上で様子を窺っていたイーライ自身に聞かれてしまいました。
停学中のイーライは翌朝、ハルから仕事へ行く直前、今日1日やる家の手伝いのことが書かれたリストを受け取ります。イーライは持ち帰った光線銃に夢中になりつつ、家の手伝いをこなしていきました。
仕事から帰ったハルは、リビングで洗濯物を畳んでいたイーライに、彼が密かに集めていた銅線などの屑鉄について問い詰めます。
川のそばにある廃工場で拾ってきたと話すイーライ、そんな彼にハルは、「それは何年も前から置かれているいらない金属であるものの、その屑鉄は土地開発業者のものであって、お前のものではない」と怒りました。
ハルは屑鉄を元の場所に戻し、土地開発業者に謝罪しに行こうと、家を出てイーライを車に乗せます。ハルは運転中、イーライから「自分はジミーという息子の代わりなのか」聞かれました。
それを聞いてハルは、昨晩ジミーが言ったことを聞かれていたと知り、「お前の実の母はもう何年も前に亡くなっているが、お前は誰の代わりでもなく、私たちの息子だ。お前を大事にしているから厳しくしている」と伝えます。
ハルはその後、自身の会社の事務所へ車を走らせました。すると、南京錠で閉めたはずの鉄条網が開いていることに気づき、ハルはイーライを助手席に残して事務所へ向かいます。
事務所には、昨晩家から叩き出されたジミーと、彼が金を借りているテイラーとダッチ、テイラーの配下のレミーがいました。ハルは、金庫から金を盗もうとしているテイラーを注意します。
これに怒ったテイラーは、持っていた銃でハルを射殺します。ジミーは父親を殺されたことに怒り、銃を持つテイラーの腕に飛びつきました。
抵抗するテイラーはそのまま引き金を引き続けたせいで、後ろにいたダッチとレミーを撃ってしまうのです。首に被弾したダッチは、テイラーの腕の中で息を引き取り、レミーは左腕に被弾しました。
ジミーはテイラーからの銃撃を避けるために身を隠した机の下で、静かに息を引き取ったハルの姿を目撃します。ジミーは6万ドル詰めた鞄を持ち、事務所を逃げるように出ました。
助手席で待っていたイーライは、突然運転席に乗り込むジミーの姿に驚きます。ジミーはとりあえず、イーライと一緒に車で家へ帰りました。
そしてジミーは、イーライにハルの死は伝えず、「3人で旅行する約束をしていた。仕事が忙しい父は後から合流するから、先にタホ湖近くにある小屋へ行こう」と言い、彼に身支度をさせます。
支度を終えたジミーたちが家を出た直後、ダッチを殺されて怒るテイラーが、レミーたち配下を連れてソリンスキー宅へ押し入りました。
ジミーは、途中で別の車から盗んだナンバープレートに付け替えた車を運転し、イーライを連れてネブラスカのモーテルへ向かいます。
モーテルの部屋に到着し、イーライは持ってきた光線銃を浴室で眺めた後、自分が眠る予定のベッドの上に、貰うはずのジミーのスニーカーがメモと一緒に置かれていることに気がつきました。
爆睡するジミーが持ってきた鞄の中には、イーライたち家族4人で撮った写真が入っています。その頃テイラーは、招集した配下たちの前でダッチの遺体を火葬し、配下たちにジミーの首を取ってこいと命じました。
イーライが持つ光線銃と同じ武器を持った謎の2人組が、廃工場に突如現れます。男女2人組は、廃工場から持ち出された武器の痕跡を発見し、武器を回収しにその場を立ち去っていきました。
次の日の朝、目が覚めたイーライは部屋を抜け出し、車の中でジミーの携帯を使ってハルに電話をかけます。
イーライはハルの携帯に、「タホ湖で会おう。クズ鉄を盗んだことごめん。早く会いたい」と留守電を残しました。
その留守電のメッセージを聞いたのは、現場からハルの携帯を持ち出したテイラーでした。テイラーは早急にジミーたちを探すため、配下たちに休む暇を与えず、車でタホ湖へ向かいます。
映画『KIN キン』の感想と評価
イーライとジミーが、離れていた6年間を埋めようと、逃亡生活中に仲を深めていく姿は、とても微笑ましいです。
ジミーとハルが最後まで和解できなかったことが悲しいですが、ハルの正義感と遺志は、しっかりイーライに受け継がれていました。
その証拠にイーライは、テイラーたち犯罪組織や、ジミーが揉めたリーたちストリップ劇場の男たちに立ち向かっていきます。
学校に馴染めず問題ばかり起こして、そのたびにハルに叱られていたイーライが、立派な大人へと成長していくその姿は勇ましくて格好良いです。
それにイーライが、何度もハルの携帯に留守電メッセージを残す場面、子が親を恋しがるその姿が悲しくて涙が止まりません。
本作の一番の見所であるイーライが手に入れた金属ケース型の未知の武器、そこから放たれる威力の凄さは勿論、それを持ってイーライが悪党を蹴散らす場面はSF映画好きにはたまらないものでした。
そしてイーライだけしか認証しない武器や、イーライの手の甲に浮かんだマークが何だったのかはハッキリと劇中で明かされていません。そんな謎に包まれているところを色々考察する楽しみもあります。
SF要素は未知の武器と別の世界からきた2人組だけしか描かれていませんが、続編が出たら迷わず観ようと思えるほど面白い作品です。
まとめ
イーライとジミーという血のつながらない兄弟が、悪党と謎の追跡者に追われながら絆を育んでいくSFサスペンス作品でした。
イーライ、ジミー、ハルが一緒にいたのは物語の前半だけですが、ハルが死んでからも、男だらけの家族の絆の強さが伝わるセリフや場面が盛り沢山あって感動します。
マイルズ・トゥルイットは、本作が長編映画初出演とは思えないほど演技が素晴らしく、兄や父を大事に想うイーライに完璧になりきって演じていました。
ジミーたちに復讐をするため、死に物狂いで追いかけるジェームズ・フランコ演じるテイラーもまた、死んだ兄に対する想いを語る場面があります。
最愛の兄の死を悼むテイラーの姿を見れば、非情なだけでなく兄弟愛が強い男だと分かり、悪党だけど好感が持てることでしょう。
家族と兄弟の絆と愛を描いたサスペンスストーリーに、SF要素が加わった本作は、今までのSF映画にはない新感覚な体験が味わえます。
胸が熱くなる男同士の兄弟愛と家族愛を感じつつ、SFものが登場して楽しみたい人に、とてもオススメなSFサスペンス作品です。