海外ドラマ『LOST』で話題を集めたJ・J・エイブラムス製作作品
映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、2010年にバンパイア映画『モールス』や、2014年には映画史に残るSF映画の新シリーズ『猿の惑星:新世紀』など、リメーク、リブート作品で実績を積んできたマット・リーヴス監督。
今回ご紹介する『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、劇場公開では「クローバーフィ-ルド」シリーズの第1作目にあたります。
また、2018年にマット監督自身は、本作の前日譚となる、Netflix映画『クローバーフィールド・パラドックス』では、製作総指揮を務めています。
突如、ニューヨークに怪獣が現れ、街を破壊し、逃げ惑う市民をPOV(Point Of View:主観ショット)で捉えた怪獣・パニック映画。
POVを用いたフェイクドキュメンタリーという手法により、被害の渦中にいる恋人の探索、滅び行く街を臨場感や迫力が並々ならぬものとなっております。
CONTENTS
映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』の作品情報
【公開】
2008年(アメリカ映画)
【原題】
Cloverfield
【監督】
マット・リーヴス
【キャスト】
マイケル・スタール=デヴィッド、マイク・ヴォーゲル、オデット・ユーストマン、リジー・キャプラン、ジェシカ・ルーカス、T・J・ミラー
【作品概要】
『猿の惑星:新世紀』の監督を手がけたマット・リーヴスが監督を務めるパニック映画。ニューヨークに現れた怪獣に逃げ惑う様子を、ホームビデオ風のPOV映像で非常に近い距離感、息が詰まるほどの臨場感の中で、愛する人のの救出を目指す物語です。
製作は『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などで知られるJ・J・エイブラムスです。
映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』のあらすじとネタバレ
4月27日、ニューヨーク、ロブは恋人のベスの寝起きの姿をカメラに収めていました。ベスはネットに流すつもりかと、冗談めかします。ロブは、ベスの父が出張中なのをいいことに、宿泊していました。二人はなんとも、幸せな様子でした。
5月22日、ロブは仕事の都合で日本に行くことになりました。
送別会は盛大に行われ、ロブの兄ジェイソンや、ロブの友達ハッドは、パーティの様子をカメラに写し、送別のメッセージを集めます。
ベスは日本行きを直前まで知らされず、自分は遊びだったんだと、嘆き、恋心は少し冷めています。
ハッドは送別のメッセージをマリーナにも求めます。ハッドはマリーナのことが好きで、メッセージをマリーナに近づく口実にしました。
会場にロブが到着し、サプライズパーティに驚きを隠せないでいました。
ベスもメッセージを求められますが、日本行きを知らされなかった怒りに震えており、ロブとベスは会場の外で口論になります。
兄のジェイソンは、ロブのためにベスと仲直りをして欲しいと願い、それをロブに伝えます。ロブはベスへの愛の告白を考えます。
そんな時、突如大きな揺れが起こります。マンハッタンの様子を見に、屋上まで行くと、遠くでは爆発が起こっていました。危機を感じ、パーティを中止して非常階段で降ります。
地上に降りると、自由の女神の頭が飛んできます。
パニックに陥る人々の中、ロブとジェイソン、ジェイソンの恋人のリリーやハッドは、近くのコンビニに避難。そこにマリーナが合流します。
隙間からは、非常に巨大な生物の足のような物が見えます。ビデオは一度止まり、ロブとベスの幸福なデートが移し出されます。
一同はマンハッタンからの脱出を図り、ブルックリン橋へと向かいます。ロブはベスからの電話に気付き、ベスが自宅から身動きできなくなっていることを知ります。
脱出のため、橋は人や車で溢れかえっていました。そしてそこに、大きな尻尾のようなものが橋を崩します。ジェイソンはそこで、崩壊に巻き込まれ落命しました。
ロブは再び、ベスの様子を知ろうと電話をかけますが、充電切れのため、家電店に入ります。
テレビには、ありえないほど大きく、醜い生物がいました。尻尾は長く、奇妙な足が街を踏み荒らす、また、小さな生物を産み落とす。今回の騒動は、この怪獣によるものでした。
ロブはベスを助け出すため、怪物が暴れているまさに渦中へ行くと言い出し、ベスのアパートを目指します。
怪獣は目の前にいました。軍隊が攻撃するも、有効なダメージは与えられません。ロブ達は地下へと逃げ込みます。
なるべく安全なルートをとり、思惑通り、怪獣が歩く地下を通りぬけていきます。ロブの母がロブを心配し、電話を鳴らします。
ロブはそこで、ジェイソンが命を落としたことを告げました。
映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』の感想と評価
臨場感を生み出した撮影
本作品『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、POVによるフェイクドキュメンタリーという演出も相まって、怪獣が街を破壊していく様子を、ミクロで主観的に描いた映像は、鬼気迫る迫力があり、鑑賞後もしばらくは緊張感が冷めません。
マット・リーヴス監督の演出による、劇中で途中で挟む“ロブとベスの幸せな日常の映像”も、二人を引き裂いた悲惨な状況をギャップにより、より一層引き立たせています。
また、著名なキャストを使わずに、それまで露出が少なかった俳優を起用し、撮影を行ったことも、フィクションであることを忘れさせ没入させてくれます。
怪獣といえば象徴としての“メタファー(隠喩)”
世界的な人気を誇る怪獣王ゴジラが原水爆のメタファーであることは、言わずと知れた事実です。
では、『クローバーフィールド/HAKAISHA』に現れる怪獣は、どのようなメタファーなのでしょうか。
劇中、ベスとロブは離れています。この怪獣は人と人の絆を分断させたのです。
2000年に入って人々をなんとなく包み込んでいた恐怖や不安。ベスがロブを勝手に突き放したように、自分の想像で他人を決めつけるような自己保身が、人々を分断させたことを暗示しているのです。
恐怖する個人を切り抜いたことにより、物語の全体像や設定は見えにくくなっています。
それでも怪獣が恐ろしいのは、逆に映像に現れすぎないことで、見せないことで増幅させています。
1954年に劇場公開された初代の恐ろしいゴジラは、「ゴジラ」シリーズが進むごとに恐ろしさなど薄れていきました。
それはゴジラ自身の人気も相まって、カメラに写りすぎたことにより、観客とフレンドリーに慣れてしまったからです。
その点、本作のように姿を見せずに恐怖心を煽り続ける怪獣には決して慣れず、強大な怪獣を前に我々は、恐れるしかありません。
まとめ
怪獣が巣くう世界を描いた「クローバーフィールド」シリーズの劇場公開の第1作である本作『『クローバーフィールド/HAKAISHA』。
ロブがベスの救出を目指すといったシンプルなストーリーながら、多くの観客を虜にしました。
怪獣はなぜ現れたのか、それはシリーズが進むと分かっていくのですが、この時点ではあまりにヒントが少なく、頭を抱える人も少なくはありませんでした。
それでも本作品をシリーズ化するほどの人気になったのは、POVで怪獣を描いたという手法の成功です。怪獣を見せすぎず、人にスポットライトを当てた“怪獣映画”という、異例の演出が斬新かつ素晴らしいと言っても過言ではありません。
そして、自由の女神の顔が何者かによって吹き飛ばされる。そんなショッキングな映像も相まって、『クローバーフィールド/HAKAISHA』は多くの観客を痺れるほど緊迫する、怪獣と超至近距離の世界へと誘い、熱狂させたのです。